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みんなで綴る物語  作者: サラサ
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小壱期E

 愛人達の要求が煩わしい。


 妊娠中は何かと不安定になるものだからと母さんに言われているけど、それにしても毎日で困る。

 一番の被害者は家精霊なのだろうが、ある程度丈夫に造ってあるので、手足を切り落とされても死にはしない。

 流石に切り落とすような暴力は受けていないそうだが、料理中に邪魔をしに来て、熱した油をわざと落としたり、掃除した後の廊下をわざわざ汚れた靴で歩いたりはしているそうだ。

 我も毎日くだらない用事で呼び出されて、正直イライラし始めていた。

 今日も一大事だと呼び出されたので来てみると、体型が変わって着る服がないから買ってくるように言われた。

 我を便利な小間使いだと思っているのだろうか?

 三人娘達に愚痴をこぼしたら十歳前の子供の扱いなんてそんなものだと言われた。

 十歳からは、家を出るまで普通に働かされるから、小間使い程度は大した労働ではないし、気にしない方が良いと言われた。

 この国では子供を労働力の代わりにしないように周知徹底して学校に通わせているのだが、他の大陸ではまだまだ子供は労働を担っているようだ。


「カッテキマシタ。」


 我が大きめのサイズの服を五十着ほど用意すると、愛人達が群がってワイワイ話ながら体に当てていた。


『ミズ樣。「これらはもらうけど、そっちのはいらないわ。」「センス悪いわね。質も悪いし、安物ばかりじゃない。」「そうよ。もう少しまともな服をもってきなさいよ。」だそうです。』


 我慢が辛いものだと初めて感じたかもしれない。


 我のおこずかいはそんなに多くない。

 まだまだ子供だから自分で稼ぐこともままならない。

 造る事は可能だけど、愛人達の為に力を使いたくない。

 母さん達は離縁したから関係無いと言っていたので、支援を頼むのは申し訳ないし、兄姉達に頼むにもお金をあまり持っていない。

 コクヨウ兄さんはほぼ無償で国の経営をしているようだし、他の兄姉達は魔物討伐の素材を売って稼いでいるみたいだけど、復興支援に寄付しまくってるから余分なお金などなさそうだった。

 母さんは愛人達の生活費を稼ぐ為に毎日魔物退治で素材売りをしているので、これ以上稼ぐのは困難だろう。

 あまり気がすすまないが、我も魔物退治をして母さんに素材を売ってもらうことにした。

 魔物が減るのは住民の為になるし、素材を提供すれば商人が儲かるから経済が回るし、愛人達の為だけじゃないからと自分に言い聞かせた。



 我は精霊達を連れて母さんと亡国ブラウに向かった。

 魔が多く溜まっているこの地にはまだ各国から魔物が引き寄せられてきていた。


「ここなら魔物を探す手間も要らないし、魔石を作る拠点もあって滞在しやすいから、いっぱい狩れるよ。」

「ミズちゃんはいろんなことしてるのね~。お父さんがダメな人で、苦労かけてごめんね~。」

「父さんは世界一強くて自慢だし、世界一強いからモテるのはしょうがないね。ただ、今は無職でお金が無いのが痛いかな。」

「シバは向こうではどの国にもこう待遇で迎えられていたみたいよ~。女性も斡旋されてくると言ってたわ~。」

「それで、なんでお金ないの?」

「お金の管理なんて関心無いから、女性達にねだられるとすぐ何でも買ってくるように言ってたみたいよ~。貰ったお金が無くなると次の町、次の国と転々としていたわね~。追いかけるのに苦労したわ~。」

「それ、給料泥棒じゃないの?留まって欲しいからみんなお金渡してたんでしょ?」

「ハッキリ言わないとシバには伝わらないわね~。なんか知らんがみんなお金を支援してくれるって言ってたわ~。ただ、毎日魔物退治はしていたみたいだから、提供された魔物でチャラになってるんじゃないかしら~?」


 母さんと話している間に精霊達が辺りの魔物を狩り尽くしていた。


「あら?母さんのでるまく無かったわ~。」

「だから僕一人で平気だよって言ったでしょ?」

「そうね~。でも万が一ってあるでしょ?前科あるしね~。」


 あれは第一王女が規格外過ぎただけで、それに今の方が精霊も多いし、大丈夫なはず。


「あの時は油断してただけだもん。今は平気だよ!」

「えい!」


 いきなり母さんに頭を叩かれた。


「はい。また油断してるわよ~。やっぱり心配ね~。」

「今のは無しだよ!これから油断しないもん!」


 我は風精霊の結界を纏ってもう平気と言い張ったら、足元を掬われて転がった。

 結界があるから怪我はしないけど、体制を整える前にいつの間にか掘ってあった穴に落とされて閉じ込められた。

 結構深く掘ってあった上、穴を塞がれて念話が届きにくくなってしまい、ようやく風精霊に外に運んでもらうと、母さんが笑って見ていた。


「はい。また油断~。」

「...分かりました。」

「いくらミズちゃんが精霊に守られていても、お母さん位の強さの人間になら殺されちゃうわよ~?魔物は単純だから策を(ろう)しないけど、人間はいくらでも卑怯な手を考えつくから~。特にまだまだ子供のミズちゃんには分からないような罠があったりね~。」

「魔人が出るかもしれないから、おとなしくしていなさいってことですか?」

「そうよ~。お母さんの側にいてね~。守ってあげるから~。」

「...分かりました。」


 我は母さんにかけている風の結界を更に強くして、【魔人探知】の加護も付けた。

 これで魔人が近くにいれば分かるだろう。


「あら?あっちの方が凄く気になるわ~?」


 どうやら魔人が気配を断って近づいて来ているらしい。

 姿も見えず、気配も無いとなると我には気づけない。

 精霊達なら四方八方に飛び回ってぶつかれば分かると言うので、母さんが気になるという方向に光精霊(極小)と風精霊(極小)を飛ばした。


『ミズ樣。あちらの岩の影に魔人が潜んでいるようです。精霊達に気づいたようで、影の中に潜ってしまいました。』

『影に潜る?岩の後ろに隠れているのでわなく?』

『はい。地上にはいませんでした。地下も浅い所なら探知可能なので探しましたが、岩の影に違和感があるだけで見つけられませんでした。』


 異空間と呼ぶものがあるのだろうか?

 この世界を造るときに重ならないように注意したから、異世界では無いはず。

 異空間なら時空の歪みがあれば出来てしまうが、歪むほどの力が発生した形跡は無い。


『オプト、あの岩を壊してくれ。』


 影が無くなったらどうなるのか気になったので、光線で破壊してもらうと空間の揺らぎが見えた。


『ミズ樣、随分と変質してしまっていますが、あれは私の眷族(けんぞく)のようです。』


 風精霊がそう言うので【ステータス】でよく見てみると、魔に侵食された風精霊(小)だと分かった。

 ...精霊も魔物化するとは知らなかった。

 ここには魔石造りの為に、土精霊達がたくさん作業していて、防御も兼ねて風精霊もたくさんいたはず。


『土精霊、お前達は大丈夫なのか?』

『ミズ樣。暫しお待ちください。数が多いので余り把握しておりませんでした。...ああ、七体ほどおりませんな。』


『風精霊の方はどうか?』

『こちらはかなり多いです。通信用にも使用されているので、不明な数は正確にはまだ分かりません。』

『オプト、ちょっと各地の風精霊の数を数えて来てくれ。』

『はい。ミズ樣。』


 オプトが光精霊(中)を各地に飛ばしている間に、魔物化した風精霊(小)を何とかすることにした。


「ミズちゃん、どうしたの~?何かあった~?」


 我が一点を凝視して岩を砕かせたりしていたので母が不審がっていた。


「あそこに元風精霊の魔物がいて、元に戻せないか考えてるんだけど、どうすれば戻せるかな?」

「う~ん。お母さんも魔物の戻し方は知らないわ~。精霊は実体がないから切れないし、力を消費して消えるのを待つのじゃダメかしら~?」

「やっぱり、それしかないかなー?」


 精霊達がこの世界に顕現し続けるにはエネルギーとなる我の力が必要だが、我は始祖精霊達に絶えず与えて、始租精霊達がそれぞれ分霊した精霊達に与える形をとっていた。


『風精霊、あれへの力の供給を止めろ。』

『はい。ミズ樣。既に断っております。ですが、魔力で補っているようですので、消滅には至りません。自我が残っているらしく、ミズ樣の側に行きたいけど魔物だからもう会えないと悲しんでいるようです。』

『自我があるのか。よし、ステータスを書き換えてみよう。』

 我は"時空の魔物"と見える箇所を"風精霊"と書き換えてみると、文字が少し光った後"時空の精霊"になった。

 もう一度書き換えて見たら"時精霊"、更に書き換えてようやく"風精霊"に戻った。

 元に戻った風精霊(小)は嬉しそうに我の回りをクルクル回っていた。


 それにしても面白い実験が出来た。

 他にも魔物化した精霊達がいそうなので、元に戻る途中段階で止めて観察することにしよう。


『ミズ樣。風精霊のおおよその数が分かりました。魔物化した風精霊も数十体見つけましたが、いかがいたしますか?』

『ああ、ちょうど良い。近くにいるなら連れてきてくれ。土精霊、お前も魔物化した眷族がいたら連れてきてくれ。』

『『かしこまりました。』』


 精霊達が魔物化した精霊達を連れて来るまでは退治された魔物の素材を集めて回った。

 風精霊達に毛皮、肉、角や爪やキバ、骨と綺麗にバラバラにして貰って、素材毎に木箱に放り込む。

 痛みやすい生肉は氷精霊に任せている冷凍用の木箱に入れてあるので、鮮度を気にせずにどんどん放り込む。

 実際は指示するだけで我は何もしてなかったりするのだが。


「母さん、この辺の魔物は全部片付けたよ。まだ狩る?」

「そうね~。私はまだ何もしてないから、戦いたいわ~。」

「首都の方に行ってみる?だいぶ氷も溶けてきたから動き出す魔物もいると思うし、地下には魔人もいたはず。動き出す前に退治できたらいいな。」

「氷づけの魔人を切ってもつまらないわね~。動き始めたら教えて欲しいわ~。」

「動き始めてから知らせが来るだと、急行しても逃げられるよ?実際、溶け始めたと知らせを受けてから支度をして急行したら逃げられたし。」

「あらあら、そうなの~?。気が進まないけどそれなら仕方ないわね~。でも、魔人の氷だけを溶かすこと出来ないの~?」

「...できます。」

「じゃあ、そっちの方が良いわ~。お願いね~。」


 母さんなら魔人より強いから問題ないだろう。


 首都の城のあった地下に数体、保養所のあった地下に数体いた魔人を母さんが簡単そうに倒していった。


 城下町にも子供の魔人が氷付けになっていたのを見つけたのだが、母さんは流石に子供の姿のままの魔人を切り殺すのは躊躇(ためら)っているようだった。


「母さん、ちょっと倒す前に実験させて。」


 我は氷づけになっている子供の魔人を"人間"と書き換えてみた。

 やはり一度では書き換わらず、"魔間(まげん)"となった。

 魔間ってどんな種族になるのだろうか???

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