小壱期A
キサラギ兄さんを起こしに行ったら、なぜかウツキ兄さんと三人娘も部屋にいた。
「なんでみんないるの?」
「あぁ、カードゲームをしていてそのまま寝ちゃったみたいだ。」
「あれ?ミズっち、おはよう?」
「まだ夜中だよ。客室に戻って寝た方が良いよ?」
「それより、何か急用だったのでわ?」
「そうだった。中兄、ちょっとブラウ王国まで護衛についてきて。」
「何かあったのか?」
「ミズ、僕も行くよ。」
「ありがとう。小兄。すぐにでも出たいから準備して。」
「「私達もー。」」
「一緒に行きます。」
「危険かもしれないから、駄目だよ?」
「そうだな。危ないからついてこない方が良い。」
「キサラギさんも、ウツキさんも心配し過ぎです。私達は結構凄いですよ?ね?ミズ。」
「うーん。確かに強いけど、どうする?中兄?」
「強いのは知ってるが、まだ年齢的には子供だからなー。」
「そう。可愛い顔に傷でもついたら、大変。」
「えーっと。可愛いっていうのは嬉しいけど、ごまかされないからね!」
何か仲良しオーラが出まくりなので無視して話を続けて、結局みんなついてきた。
六人になったので中部屋を飛ばそうとしたら、コノハナとサクヤが前に飛ばした家が良いと言い出した。
「飛ばすの結構大変なんだよ?」
「私達も手伝うわよ?土魔法は得意なんだから!」
土に魔力を流して土を操る方法を土魔法と呼んでいるらしい。
他にも水を操る水魔法と風を操る風魔法と炎を操る火魔法が自由にできるようになったのだそうだ。
炎の始祖精霊と風の始祖精霊と水の始祖精霊に聞いてみたら、極小から中位の精霊達を使いこなしているらしい。
土の精霊はまだ造っていなかった気がするのに、勝手に発生したのだろうか?
少し気になったので三人娘達に家の土地をえぐってもらうことにした。
「僕が家を浮かすから、この辺まで庭ごと土を抉ってくれる?」
「「「分かったわ。」」」
三人がそれぞれ家から離れて土に手を置くと、すぐに離れて少し離れた所にまた手を置いた。
よく見ると手を置いた所には光る石が置いてあった。
家を中心に光る石の円が出来ると三人娘達が水晶を取り出して魔力を流し始めた。
円から光の柱が立ち上ったと思ったら地面が揺れた。
「どう?出来たわよ?」
我が以前重力制御で抉り取った時よりも綺麗に固まって固定されていた。
「すごーい。どうやるの?これ。教えて?」
「おい、ミズ。急ぎじゃなかったのか?」
「到着するまで時間があるのだから、後で聞けばいい。」
感動してすっかり忘れていた。
到着するまで二刻ほどあるから、その間に修得出来るかやってみよう。
浮いた土地ごと家を固定して、家の重力を書き換え、風精霊達に最速で運んでもらうことにした。
飛行中に光っていた石をひとつもらって同じように魔力を流してみたのだが...
...土精霊ができました。
同じようにやったのに、我がやると精霊が出来るのか!
創造できてしまったので、他の始祖精霊と同じようにレベルを書き換えて、意思疎通できるようにした。
『創造主様。お会いできて光栄です。いつも近くに感じていたのですが、なかなか呼んでいただけなかったので、やきもきしていました。』
『え?精霊っていつも近くにいるものなの?』
『自我のない状態のものから、あるものまで沢山の同胞がいますよ。創造主様のエネルギーが回りのものに蓄積されて次々に出来ている状態です。きっかけさえあればすぐに顕現するでしょう。』
どうやら我の本体からのエネルギーが、人間の器が小さすぎて溢れ出てしまい、回りに影響を与えているらしい。
極少まで絞ったつもりだったが、絞りきれていなかったようだ。
我の家族が皆強すぎるのも、何らかの影響を及ぼしていたのだろうか?
『そこの娘さん達は大分影響を受けていますが、お兄様方は多少影響を受けている程度ですな。』
『分かるのか?』
『私は無機質の風や光と違って有機物なので、どちらかと言うと人間に近いですからな。』
『うーん。植物の精霊とか動物の精霊とかいるの?』
『創造主様が動物を素材にされれば、動物の精霊として顕現すると思います。』
ふむ。
さっそく鳥の骨を使って魔力を流してみたところ、鳥精霊と読める光の玉が生まれたので、レベルを書き換えてみたら、人間の背中から羽が生えたような形に変化した。
『初めまして。創造主様。』
簡単に精霊を造ってしまえるのは、人間的にはどうなんだろうか?
人間としての人生を体験するために生まれてきたはずなのだが、最近普通の人生からずれてきている気がする。
とりあえず、念話が出来る人間はここにはいないので良かったが、二体の精霊に我を呼ぶ時の注意を与えた。
『二人とも、我のことはミズと呼ぶように。』
『畏まりました。ミズ様。』
『はい。ミズ様。』
『他に何か御用はありませんか?』
『そうだなー。土精霊はどの程度土を操作できるんだ?』
『私は大地のものであればどこまでも操作可能です。土から食器を作るのも家を作るのも可能ですな。』
家の壁は土を固めて焼いたものや焼かずに干したものでできているので、簡単に作れるということだった。
土だけでなく石の生成も可能だそうで、宝石をゴロゴロ出してくれた。
『人間はこれらを使用するのでしょう?どうぞお使いになってください。』
『いや、我にはまだ必要ないな。どうせなら魔石とか水晶の方がいいかな。』
『魔力を込めた石ですか。私は魔力を余り出せないのでどこかから調達することになるのですが、空中ですとちょっと。せめて地面に降りられれば地脈から魔力を吸い上げられるのですが。』
『分かった。じゃあ、目的地に着いたらやってみてくれ。』
『畏まりました。』
土精霊は大分使えそうな感じで良かったが、鳥精霊ってなんなんだろう?
【ステータス】で見てみてもあらゆる鳥類を操れるとしか書いてなかった。
『鳥精霊はどの程度なんだ?』
『はい。ミズ様。私は鳥を操る事しか出来ません。卵をすぐに孵したり、成長を早めたりは出来ます。』
ふむ。食用の鶏を簡単に増産出来そうだから、養鶏所でも作って任せてみようかな?
とりあえず鳥精霊は王都に戻るまでは出番は無さそうだった。
「ミズっち。お風呂って使っていいの?」
「私はトイレー。」
「あ、コノハナ、サクヤ、ちょっと待って。今行く。」
上下水の準備をしていなかったので、水精霊にお湯を出してもらって、お風呂の温度の微調整は我がすることにした。
トイレは汲み取り式だが、使用後に陰部を洗い流す水を用意していなかったので、桶に水を入れて使えるようにした。
...お風呂の精霊とトイレの精霊が我の回りをクルクル回っていた。
『オプト、これはどういうことだ?』
『皆、顕現したがっているので、ちょっとしたことでも出てきてしまうのでしょう。』
『我は何もしてないぞ?』
『お風呂の温度調整に少しと水桶を運ぶ時に少し魔力を使いましたよね?』
『いつもやってる事だぞ?』
『これからはほんの少しでも魔力を流すと、精霊が顕現するとお考え下さい。』
『お風呂とかトイレとか、どんな精霊だよ?使いどころが無いだろう?』
小さな光の玉が我の回りを抗議するかのように飛び回った。
『なんて言ってるか分かるか?』
『こうして顕現してしまうと、同族で無ければ小さすぎて念を感じとれません。』
『うーん。レベルを書き換えれば聞こえるようになるが、お風呂とトイレじゃあなー。』
今のところ、使い道が分からないので放置することした。
極小サイズの精霊は寿命があって、一定期間を過ぎると消滅するので、それまで好きに過ごしてもらえばいいか。
この後も魔力を使う度に変な精霊がぽこぽこ顕現してしまった。
「ミズっち、なんか光ってるー?」
「光ってるねー。」
「どうしたんですか?それ。」
生まれた精霊達がどこに行くこともなく、我にくっついているため、全身ほんのり光ってる感じになってしまった。
魔力を流していないのに触った物がどんどん精霊に変わるので着替えも出来なかった。
着替えようとしたら、服の精霊やら布の精霊やら靴の精霊やらになり、食事をしようとすればスプーンの精霊やらナイフの精霊やらコップの精霊やらに変わってご飯もろくに食べられなかった。
手掴みでパンを持ったらパンの精霊になるくらいなので、赤ちゃんのように三人娘達に食事の世話をされた。
非常に恥ずかしい。
『ミズ様、目的地付近に到着しますが、どうされますか?』
一面氷の世界で上空まで冷気がきているようで、風の結界の外は雪がちらついていた。
「ミズ、止まったみたいだが、降りるのか?」
「安全を確認してから降下した方がいい。」
「そうだね。僕もそう思う。ちょっと精霊達に見てきてもらうよ。」
我が光精霊(小)に頼もうとしたら、我の回りにくっついていた精霊達が一斉に地上に向かって飛んで行った。
念話出来ないのに偵察に出ていかれても、なんの意味もないので、光精霊達にお願いして映像を届けてもらうことにした。
凍り付いた第一王女のいるはずの場所を撮してもらったはずなのだが、そこには何もなかった。
時々偵察に行ってもらっていた光精霊からの情報では、昨日まではここにあったらしい。
溶け始めたからすぐに伝達しにきたそうだが、準備や移動で6刻程経過してしまったので、何処かに逃げてしまったようだ。
隅々まで撮してもらって、危険は無いと判断してから地面に下ろした。
今回は土精霊にお願いして、家の敷地にぴったり合う範囲をくりぬいてもらったので、段差も傾きもなく、もとからそこにあったかのような完璧な接合になった。
『見事だな』
『お褒めに預かり、光栄です。では、魔石作りを開始します。』
『ああ、よろしく。我は調査に出かける。』
『はい。畏まりました。』
家の結界を出る前に、全員に風精霊の結界をはってもらって調査に出掛けた。
まだ我の絶対零度が効いており、結界が無ければ我らの方がすぐに死んでしまう。
「何か寒そうだねー。」
「いや、そんなレベルじゃないぞ?これは。」
「うん。血も息も凍るよ。」
「僕たちは安全なんでしょうね?」
「うん。一人に一体の風精霊を付けて、結界をはってもらってるから。全然平気でしょ?」
不安がっているので、絶対零度は解除しておこうかな。
第一王女を閉じ込める為だけに凍らせたから、逃げたのなら意味がない。
魔人になってしまっているとはいえ、数刻程度で移動できる距離はたかが知れているので、どちらの方向に逃げたか手がかりを探して追跡を開始した。




