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みんなで綴る物語  作者: サラサ
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小壱期5

 風精霊による空路の整備が完成した。


 あまり多く作ると渡り鳥が困ってしまうので、各国の首都を結ぶ路線だけにしてみた。

 隣国のブラウ王国の首都は禁断の地に指定したので今回の空路には入れていない。

 この東大陸の半分以上を占めている隣国のブラウ王国に空路が無いのは少し不便かもしれないが、首都を中心にして多くの町村は廃墟になっているし、教会が残っている町村は各国の国境に近い所だけなので、隣接している国に飛んでからブラウ国に向かう方が早いのでちょうど良い。

 教会のない廃墟になった町や村にも人間が住み着いて復興し始めている所もあるが、教会がないと獣人のサポートを受けられないので、今のところ放置するしかない。

 結界もないし、大分過酷な環境だと思うのだが、自ら進んでそこに住んでいるので特に助けを必要としていないのだろう。

 東大陸の教会のある町村全てに結界を張り終えたので、父を探しがてら南大陸の教会のある町村に結界を張りに形代を飛ばすことにした。



 空路の発着所は獣人達に作ってもらったので、質素だけれどとても機能的な建物になった。

 まだ使用するのが我の家族と獣人だけなので、一般的な人間に試してもらわないと、普通の人間が耐えられるかどうかの検証ができない。

 学校の先輩達にお願いしても怖いからと断られてしまったし、三人娘達は普通じゃないし、誰か参加してくれる人間はいないものか。

 色々悩んでいたら、兄姉達から連絡がきた。


 ヤ「ミズちゃん、兵士で良ければ連れて帰るよ?」

 ム「ミズちゃん、傭兵を連れてくね。」

 サ「ミズちゃん、元山賊を送るよ。」

 キ「ミズ、すまん。学生達は怖くて無理だそうだ。」

 ウ「ミズ、説得に失敗しました。しばらく様子見させます。」


 姉達は半ば強引に実験に参加させているらしく、涙目になりながら兵士や傭兵や元山賊達がやって来た。

 強面のいい大人なのに半数が気絶して失禁、1/4が発狂、残りの6人だけ無事?に到着した。

 後から姉達がやって来て不甲斐ない大人達をしかりつけていた。


 やはり鍛えた大人でも駄目なら、一般人は耐えられないか。

 何が怖かったか聞き取りしたところ、

 ・地面が遥か下に見える

 ・体が上下左右にふられたり回転したりして安定しない

 ・時々体が浮く感じがして背筋がぞくぞくする

 ・回転が多くて気持ち悪くなる

 などが多かった。

 外の景色が見える方が安心すると思ったのだが、見えないように囲った方が良いのかな?

 ただの椅子が空を飛ぶのだから不安になるのかな?

 獣人達に頼んで小部屋を作ってもらって、今度は小部屋を飛ばすことにした。

 風精霊達は楽しいから良かれと思って回転させたのだろうが、普通の人間は回転するのは苦手だから止めるように言った。

また、なるべく上下左右にぶらさないよう、まっすぐ飛ぶようにとも言っておいた。


 翌日、なんとか己を取り戻した兵士・傭兵・元山賊の尻を蹴飛ばしながら姉達がやって来たので、早速飛んでいってもらうことにした。

 今回は小部屋なので、詰めれば行き先毎に三回飛ばせば終わるが、聞き取りをして改良しないといけないので、一緒に飛んでちょこちょこ改良する予定だ。

 みんな飛ぶのを渋るので、昨日無事だった人間から参加してもらった。

 どの程度揺れるのか水を入れたグラスを床に並べ、ムツキ姉さんと傭兵四人と我でオラーンジュ王国首都に飛んだ。


「ミズちゃん、外の景色も見れないし回転もしないからつまらないんだけど。」

「姉さん達は楽しいかもしれないけど、他の人達は怖がってるんだよ?」

「えー。大丈夫よね?」

「はい」

「「「...はい」」」


 圧力かけて頷かせている気がする。

 とりあえず、風精霊達は我の注文通り全く揺らすことなく飛んでいた。


「やっぱり外が見たいわー。」

「そうだね、何もない部屋に閉じ込められている感じがして落ち着かないね。」

「せめてこの辺に窓が欲しいわー。」


 指定された場所を光精霊に頼んで焼き切ってもらって、傭兵に取り外してもらった。


「うん。やっぱり外は見えた方が良いわ。」

「そうですね。」

「まあこの程度なら、平気か。」

「床がちゃんとあるからな。」

「窓のない部屋に押し込められた時は不安だったが、外が見えればまあ平気か。」


 どうやら只の箱のような部屋は駄目だったらしい。

 グラスの水もこぼれることなく到着したので、帰りは中に椅子とテーブルを入れて食事をしながら飛んでみよう。

 ヤヨイ姉さんとサツキ姉さんに無事に到着した連絡を入れて、戻るのに同じ位の時間がかかるから、残ってる人達には今日の実験は無しと伝えてもらった。


「ミズちゃん、早く乗ってみたいんだけど。」

「私も乗りたい。」


 姉二人がどうしても今日中に試したいというので、光精霊と獣人に窓を作ってもらって、先に椅子とテーブルを運び込んで食事出来るか試してもらうことにした。

 行き先はここにしてもらって、姉達と連絡を取りながら待っていると、ムツキ姉さんが傭兵四人を連れて出掛けようとしていた。


「ちょっと、大姉?!夜には帰るよ?どこいくの?!」

「すぐ帰るわ。大型の魔物が出たって言うから、退治してくるだけよ。」


 数刻の間もじっとしていられないとは。

 結界があるから町村には被害が出ないのに。

 数日なら食料だってあるから外に出られなくても問題無いのに。

 獣人の国から食料補給すれば年単位だって平気なのに。

 ただ単に戦いたいだけで、戦闘狂なのは血筋なのだろう。

 姉達が到着するまでに退治して戻って来ないといけないので、ムツキ姉さんと傭兵を風精霊に運んでもらうことにした。

 我と一緒に飛ばしてもらうので、椅子も部屋も無しの身一つで飛ぶのだが、椅子飛行が平気だった人間達なので、最初は戸惑っていたがすぐに慣れた様子で落ち着いていた。


 大型の魔物は熊に魔がとりついて変容したものらしい。

 通常の熊の五倍に巨大化した魔物は元が熊とは思えない位に変容していた。

 尾は五本生え、それぞれの尾の先にトゲのある丸い球体が付いていて、背中には大きな羽が生え、巨体なのに飛んでいた。


「なにこれ?」

「ミズちゃんはこれ見るのは初めて?」

「うん。見たことないよ。」

「『空の熊さん』よ。」

「え?本当にそんな名前なの?」

「私が付けたのよ。この辺の魔物は何故か皆羽が生えるのよね。」


 我と会話しながらもムツキ姉さんは魔物に切り込んでいた。

 魔物本体は空を飛んでいるので弓部隊がいないと射落とせない。

 今日一緒に来た人間は近接攻撃しか出来ないらしく、飛んでくる尾を切りつける程度しか出来ていなかった。

 そんな中ムツキ姉さんは木をかけ登り、枝を踏み台にして飛び、魔物に切りかかっていた。

 たまに我の方に攻撃が来るが、風の結界を張っているので特に何事もなく観戦していた。


「ちょっと、坊っちゃん。手助けくらいしてくれませんかね?」

「え?手助け必要?大姉?」

「いらないっ...わ。」


 うん。

 少し手こずっているみたいだから、地面に落とすくらいしておこう。

 余り時間をかけると姉達が到着してしまうから、風精霊に頼んで羽を切り落としてもらった。

 地面に落ちた魔物は抵抗むなしく姉に頭を切り落とされ、傭兵達にバラバラに解体されてしまった。


「ずいぶん簡単に解体できるんだね。」

「見た目が変わっても重さは変わらないのよ?」

「攻撃さえ当たらなきゃ、ただの熊だからたいしたこと無いのさ」

「そのわりに苦戦してたよ?」

「飛ばれると厄介なんでさー。」

「そうそう。こっちの剣は届かないのに、あっちの攻撃は届きやがるから、ホント厄介だよ。」


 どうやら形が変わっても質量は変わらないらしい。

 魔鳥や魔虫は元々飛んでるし、攻撃は本体ごとなので、はたき落とすように一体づつ処理するから問題ないそうだ。

 問題なのは魔獣で、この地方の魔獣は何故か皆飛ぶようになるらしい。

 通常、弓で落としてから首を切り落とすのだが、中には皮膚?や体毛?が固く変質してる魔物もいて、弓矢が通らない時は投石して落として皆でタコ殴りが定番らしい。


「なんで石投げなかったの?」

「俺らは投石下手だから、当たらないんでさー。」

「大姉は得意だよね?」

「私は切る方が好きなの!」


 石を投げて殺すより、切り殺したかっただけらしい。


「血抜き終わりました。」

「毛皮剥いで乾燥中です。」

「羽はどうしますか?」

「爪と牙を集めておきました。」


 傭兵達は商人ギルドに売り飛ばす素材をてきぱきとまとめていた。


「こっちで売る?戻ってから売る?最寄りの町まで飛ぶけど、どうする?」

「うーん。持ち歩くと生臭いから、すぐに売っちゃいましょう。」

「じゃあ近くの町に飛ぶね。もうそろそろ中姉と小姉が到着するから、急がなきゃ。」


 オラーンジュの首都はまだ復興中で、やっと教会が再建出来たばかりなので、民家も少なく商館もなかった。

 一回更地にした方が再建しやすそうだが、他国なので手を貸すわけにもいかず、遅々として進まない復興をイライラしながら見守るしかなかった。


 何処に町があるのか分からないので、適当に高度を上げて見渡すと、町らしき建物が見えたのでそっちに飛んでみた。


「こんなとこに町があるなんて知らなかったわー。」

「さっきまで何も無かったよな?。」

「いきなり町が表れた!?」

「「???」」

「とりあえず、住人に話を聞いてみようよ。」


 森の中にあるのに魔獣に襲われた様子もなく、変わった建物がいくつも並んでいた。

 中央の広場に降り立つと、住人達が大騒ぎで集まってきていた。

 やや老人が多い人だかりに向かって、とりあえず挨拶してみた。


「今日は。すみません。ここはなんという町ですか?」


「ここは忘れられた村ですじゃ。名前はなんだったかのー。」

「アー村でいいんじゃないかのー。」

「そうじゃのぅ。」


「この建物は何ですか?」


「これは古代文明の遺跡だよ。」

「遺跡というかまだ稼働中の現役さ。」


 数人しかいない若者が説明してくれた。

 町の中は天候が調整され、衣食住は人の要望に合わせて自動で提供される。

 魔獣などの害意のあるものは、町に張り巡らされている何かで常に駆除されているそうだ。

 彼らは古代文明の生き残りで、古代文明は前回の世界崩壊よりも前の文明らしい。

 そう言えば最初に人と獣と同じ形で創造した生物がいた気がする。

 あまりにも怠惰な生活をしているから、つまらなくなって途中で放置していたはず。

 まだ生き残りがいたとは驚いた。

 文明が発達しすぎて何もかも機械任せの自分達では何も出来ない人達と、自然に同化しすぎて他の動物と同じになった獣がまだこの世界に残っているようだ。


「あなた達も逃げてきたの?」

「あなた達と同じような格好をした人間が大勢逃げ込んできてるわよ?」


 若い女の人に案内されて建物のひとつに入ると、護衛らしき人間が数人現れた。

 話を聞くとこの国の王族がいるらしい。



「もう天罰は終わっています。今は復興中なので王都に戻って民の為にも政治をしてください。」

「イヤじゃ。イヤなのじゃ。わらわはここから出たくないのじゃ。」


 ムツキ姉さんが説得しようとしている子供のような人間が、この国の王族の生き残りらしい。

 ムツキ姉さんよりも年上だというお姫様は、いち早く逃がされたので城の崩壊に巻き込まれずにすんだらしい。


「そうじゃ。そなたにこれをやるから、そなたが王になれば良いのじゃ。」

「いけません!姫様!」


 この国の国印をムツキ姉さんに押し付けて逃げていってしまったお姫様を侍従らしき人間が追いかけ、その後ろを姉達が追いかけて行ってしまった。


「どういうこと?」


 残っていた人間に経緯を聞いてみたが、雷を避けるように森に入り、さまよっていたらこの町にたどり着いたそうだ。

 この町では欲しいものは簡単に手に入り、欲しいと思えば金銀財宝、宝石のついた豪華な衣裳等もすぐに提供されるのだそうだ。

 姫とはいえ、小国の財政などたかがしれているので、ここでの暮らしはまさに天国のようであったらしい。


 物欲はそれで満たされるだろうけど、色欲の方はどうなのかなと思ってこっそり聞いてみたら、物凄く現実的な夢を見られる所があって、そこで処理するらしい。


 ここに逃げ込んだ人間達は、みな快適な暮らしと安全の保証と何もしなくても物欲性欲を満たせる生活に満足していて、危険で大変な外の世界には戻りたくないらしい。

 侍従はここを王都にして外に出ることなく政治をすれば良いと言って先住民を臣下にしようとしたらしいが、そもそも働かなくても問題ない町なので無理だったらしい。

 それなら占領してしまえと侍従に先住民達の捕縛を頼まれたものの、余り気乗りしないので現状放置しているそうだ。


 長居すると姉達も腑抜けになってしまいそうだから、すぐにでも連れて帰ろう。


「大姉、商館ないし、帰るよー。」

「ちょっと待って、お姫様を説得しなきゃ。」

「えー。すぐに考えが変わるとは思えないし、中姉と小姉がもうすぐ来ちゃうよ?どうせ何処にも行かないんだから、また来れば?」

「そうねー。各町村の責任者にも一緒に来てもらって説得してみるわ。」


 普通の人間はここに来たら駄目人間になる気がするけど、長居しなければ平気かな?

 一緒に来た傭兵達も何でも提供される仕組みにはまだ気づいていないし、さっさと帰ろう。


「また来ます。その時にはいいお返事を期待しています。」

「何度来ても無駄なのじゃ。わらわはこの町から一歩も出ないのじゃ。出たら全て消えて無くなってしまうのじゃ。」


 どうやら町への持ち込みはできても町からの持ち出しは出来ない仕組みらしい。

 試しに金剛石をもらって思いきり外に投げたら町の境界らしき門の辺りで消えた。

【ステータス】で見ていたので、正確には元素に分解されて回収されていくのが分かった。

 外に何も持ち出せないなら、今の世界に影響を与えることもないだろうし、引き続きここは放置することにした。


 ムツキ姉さんと傭兵達を呼んで飛んで戻ると、ちょうどヤヨイ姉さんとサツキ姉さんが到着した。

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