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みんなで綴る物語  作者: サラサ
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小壱期1

 我が植物人間になっている間に、世界はとんでもなく変わろうとしていた。


 第一王女の呼び掛けに賛同した国々が次々に同盟に参加して、国際同盟が出来上がっていた。

 獣人達は基本的に人間の世界に関与しないので放置しているようだが、今回の同盟の攻撃対象が獣人の国だというのに、良いのだろうか?

 地下に広がっている獣人の国に人間の軍が来れる訳がないと思っているようで、危機感を全く感じていないようだった。


 我が植物人間になっている数ヵ月は精神体だけで世界を眺めていたので、別の大陸の動向も見て取れた。

 どの国も獣人の監視は好ましく思っておらず、技術の発展を禁止されている上、生活水準を上げて平均寿命を延ばすことも禁止されているのが問題のようだった。


 我も子供の死亡率が高すぎるとは思っていたが、どうやら他の大陸でも問題だったらしい。

 時々流行り病が発生して、大勢の人間が死んでいるのだが、予防法を確立した人間は異端者と見なされ、処罰されているらしい。

 何故そんなことをするのか聞いてみたら、人間の繁殖率が高すぎて間引かなければすぐに食料難になって自滅するとのことだった。


 我の国も上下水道の整備や鉄道の開発などしているが、禁止項目ではないのか聞いてみたところ、まだ問題ない範囲なのだそうだ。

 鉄道も動力を魔力によるものにすれば問題ないそうで、何が問題なのか聞いてみると、大気汚染となる火力によるものが一番駄目だそうだ。


 かつてこの世界の人間は地上を汚染しまくり、食料難になると戦争をして食料のある他国を奪い合い、戦争に化学兵器を使用したせいで汚染されていなかった土地も汚染されてしまい、自滅していったそうだ。

 獣人達は汚染に敏感だったので、大気汚染された段階で、地下に逃れて都市を作って暮らすようになったそうだ。

 地上の人間達が自滅してしまった後に、獣人達が頑張って汚染された土壌を除去し、植物を植えて動物を放ち、一緒に地下に避難していた人間達がまた地上に住めるようにしてあげたそうだ。

 しかし、人間達は百年もするとまた人口が増え、大気を汚し大地を汚し川や海を汚し始め、食料難になってまた戦争を始めたので、戦争を禁止したが、そうすると今度は一定の人数に減るまで餓死者が増え続けたそうだ。


 人間の繁殖率が高すぎるのがそもそもの原因なので、増えるのを抑制する必要があるということになったそうだ。

 火力によらない戦争の許可をすると各地で領地の奪い合いが始まり、一定数を維持することができていたが、平和になるとまた増え始めたので、流行り病を促して減らすということを続けてきたそうだ。


 確かに獣人の話を聞く分には間引きと科学技術の抑制は必要に思えるが、間引きに関しては、子供を一生に一人か二人産むだけにすれば、増加することもないだろうし、妊娠抑制するほうが大分良い。

 科学技術の方は、汚染に繋がるような開発は禁止するとして、そうでないなら生活水準を上げる為にも許可してもらいたい。


 精神体のままなので、獣人やオプト経由でコクヨウ兄さんや父さんに意見を伝えてもらい、我が国は同盟に参加するのか聞いてみたら、獣人達には色々と助けてもらっているので、我が国は同盟には入らないで獣人の国と同盟を結ぶつもりだそうだ。

 獣人達は基本的に人間社会には不干渉なので、同盟を結ぶのは無理だと思うが、攻撃に参加しないだけでも有り難い。


 体を動かすことができるようになった頃、各地で教会が焼き払われ、獣人達を排斥する動きが見られた。

 神託を告げに行くのも危険な為、教会を焼き払った各都市や町の上空に音声だけ発生する機械を浮かべ、神獣の天罰が下ると放送していた。


 我は久しぶりに人と獣に話しかけてみた。

「人と獣よ。天罰はどの程度にするのか?」

「ミズ様、お久しぶりです。大変な思いをしていらっしゃるようですが、大丈夫ですか?」

「違反した国の人間達全て。」

「ミズ様にご希望があれば、それに従います。」

「第一王女に洗脳されているだけかもしれないし、余り被害を出したくはないな。とりあえず各国の首都を潰して様子見がしたい。」

「分かりました。では、そのように。」


 7日間に渡り神獣の雷が各国の首都を襲い続け、許しを乞う人間達が出始めていた。

 まだ教会が残っている町や村が半数近くあるので、許しを乞う人間達が首都を脱出して、その町に向かう間だけ雷を止めることにした。


 突然空に轟音が響いた。


『ミズ様、大変です。空に穴が開きました。』


 オプトが外の様子を報せにやって来た。

 まだ自由に動き回れないので、風精霊に運んでもらい、被害状況を確認した。

 隣国がまた火力兵器を使用したようで、前回よりも大きな穴が開き、下敷きになった獣人が数人いたらしい。

 すぐに救助されて運ばれて行ったようで、我が着いたときには修復作業が始まっていた。


『ミズ様。また何か飛んできます。』


 我は慌てて空の部分に【絶対防御】を張った。

 今度は連続で爆発していたが、防御が間に合ったので被害が広がることは無かったが、開いている穴から魔物が多数飛来してきた。

 獣人の国には軍隊がなく、飛来してきた魔物を退治するのは警備員か警察の仕事になり、人数が圧倒的に足りないので我も手伝う事にした。


 光精霊は光を集めて魔物を一体づつ燃やし、風精霊は一定範囲にいた数体を風で引き裂き、氷精霊は凍らせてから破壊し、炎精霊は炎の渦に巻き込みながら灰にして、みんなで手分けして魔物を駆除していった。


 我はみんなが魔物退治をしている間に、空に開いた穴を塞ぎ、獣人に他の地域に被害は無いか聞いてみた。


『東の大陸で兵器開発をしていたのはブラウ国だけなので、この地域はブラウ国の地下エリアだけ被害が出ています。』

『北の大陸でも首都の地下エリアに被害が出ています。』

『西の大陸でも首都の地下エリアに被害が出ています。』

『南も同じです。』


 我は光精霊達に各地域の魔物排除を頼み、北大陸首都の地下エリアに向かった。

 光精霊はオプトに200体分霊してもらったので、各所に50体派遣したのだが、我が北のエリアに着く頃には魔物は殆ど駆除されていた。


『光精霊達、ご苦労様。大したものだな。』

『ミズサマニ ホメラレタ』

『ガンバッタ ヨ』

『ワーイ』


 あちこちで騒ぎ始めて煩くなったので、我は空に開いた穴を塞ぐ作業に取りかかった。

 仕上げに【絶対防御】を付けて、西大陸首都の地下エリアに向かった。

 西も光精霊達によって魔物は駆除されており、獣人達が修復作業をしていた。

 我は空に開いた穴を塞ぐと【絶対防御】を付けて南大陸首都の地下エリアに向かい、同じように穴を塞ぐと【絶対防御】を付けた。


 獣人達はすぐに制裁実行しようとしていたので、少し待ってもらった。

 獣人が手を出すと、また反感を買ってしまうので、神に天罰をお願いした方が良いだろう。

 人と獣に教会を焼き払った各国の首都と町をひとつづつ押し潰すように言うと、各町の上空に巨大な手が表れ、建物ごと押し潰していった。


 生き残った人間達は他の町に向かい、街道には長い行列ができていた。

 先に逃げ出せた人間達は家財道具や食料を持って馬車で移動していたが、天罰をギリギリ免れた人間達は何も持たずに歩いていた。

 首都に近い町はどの大陸も天罰を受けているので、田舎と言われる辺境の町や村に向かうしかない。

 徒歩だと一ヶ月はかかるから、水も食料も無しだと確実に死ぬことになるだろう。

 獣人に救助をしてもらうにも、まだまだ反感を持っている人間達が生き残っているだろうから、精霊達にお願いすることにした。

 ついでに氷精霊と炎精霊と風精霊のレベルを書き換え、分霊してもらった。

 風精霊達には獣人の国から食料を運んで、移動中の人間達に配ってもらった。

 炎精霊達には人間達に同行して、野宿する人間達を暖め、魔物や肉食動物達から守ってもらった。

 氷精霊達には水の生成をお願いしたのだが、人間の数が多すぎて充分な量を大気から作るのは無理と言われてしまった。

 我や三人娘達がやるように地下水を吸い上げられないか聞いてみたが、温度変化しかできないから土が凍るだけだと言われた。


 仕方がないので、大量の水を操作できる精霊を造る事にした。


 光精霊は水晶の中に入り込んだ光から、氷精霊は氷から、風精霊は空気から、炎精霊は溶岩のマグマだった時の記録からできているので、水精霊は水から創造してみることにした。

 獣人の国には魔力がないので、三人娘達に魔力の貯まった水晶を持ってきてもらい、水精霊を造ってレベルを書き換えて、早速分霊してもらった。


『造ってすぐに扱き使ってしまってすまない。地下水を吸い上げて人間達に与えてくれ。』

『はい、ミズ様。皆、ミズ様のお役にたてるのが嬉しいので、喜んでいます。』


 とりあえず、水と食料と安全を確保してみたら、安心したのか廃墟に仮小屋を建てて暮らし始める人間が出てきた。

 別に定住するのは構わないが、一生食料を配給するつもりはないので、水と食料と安全保証はあと25日間だけだと通達した。


 教会のある町や村に続々と人間達がやって来ていた。

 原住民達は教会の周りを絶えず見張り、天罰を受けた町の二の舞にならないように注意していた。


 最近は光通信が発展して映像を写し出すことに成功したので、光精霊達に各地の様子を映像で届けてもらっていた。


 教会には獣人の司教様がいるのだが、反感を持っている人間が危害を加えないように、入り口で原住民達が所持品検査をするという徹底ぶりだった。


 許しを乞うために教会に来た人間達は一人づつ懺悔していたが、内心を見ることはできないので、本当に改心しているかは分からなかった。

 ただ、獣人の司教様に触られて嫌な顔をしたもの達には町から出ていってもらっているようだった。


 廃墟に定住していた人間達は、25日が経過した後、山に近ければ狩りや木の実を採取して食料を確保して、川に近ければ魚を取って食料を確保していた。

 飲み水は井戸だった所から湧き水がしみ出して小さな池が出来ていたので、毎日汲みに行っているようだった。


『ミズ様、コクヨウ様から伝達です。』


 リハビリしながら各地の様子を見ていたら、オプトから念話が入った。


『最近、魔物の数が激増していて、困っているとのことです。』


 天罰とはいえ大勢死んでいるから、魔が溜まってしまったのだろう。

 もしかしたら魔人になってしまった人間もいたかもしれない。


『光精霊、隣国の首都を映してくれ。』

『ハイ、シバシ オマチクダサイ。』


『オマタセシマシタ』

『いや、待ってないぞ?相変わらず早いな。』


 隣国の首都の映像を見ると一ヶ所建物が無傷で残っていた。

 ...我が第三王子の為に【絶対防御】を付けた療養所だった。

 他に気になるところは無かったので、各国の首都と周辺の町を調べに行った光精霊達の映像をひとつづつ確認していった。


 定住した人間達がいる所は死体を片付けてあったので隣国の首都の映像の時には気がつかなかったのだが、人間達が定住していないどの廃墟にもまだ死体が転がっていた。

 一部で魔草や魔虫が見えたので、各地で魔物が発生していそうだった。


 隣国の首都に死体が無いのが気になったので、療養所を中心にもっと細かく映像をとってきてもらうことにした。


 療養所の内部は魔人だらけだった。

 しかも、第一王女が統率して軍団を作っていた。

 第三王子はすでに死んでしまっているのか見当たらなかった。


 我が張った【絶対防御】は我にしか解けないので、今すぐ行って再度天罰を下したいが、まだ黒炎の防御方法が分からないので、迂闊に近寄れない。

 姿を消して、見えるギリギリの場所からなら大丈夫かもしれないが、魔虫や魔鳥も支配下にしていたら見つかるかもしれない。

 今は監視を続けるだけに徹して、先にリハビリを完遂しよう。


 精神体が定着するまでは時々離脱してしまっていたが、リハビリを続けるうちに完全に定着して、筋力も元に戻ったので、家に帰れることになった。


 家に帰ると怒濤の出産ラッシュが待っていた。

 母とヤヨイ姉さんとサツキ姉さんが、我の帰還に喜び過ぎたのか一斉に陣痛が始まり、何かあるといけないので【絶対防御】を解き、状態を見ながら【苦痛緩和】の加護を付け、適宜【精神安定】や【不安解消】も付けた。


 しばらくすると母が破水し、一気に赤ちゃんが降りて来て、男の子を出産した。

 泣き声をあげなかったので、獣人の医者が喉や鼻に詰まった羊水を吸い出していると、ヤヨイ姉さんとサツキ姉さんも破水した。

 医者が一人しかいなかったので、呼びに行ってもらっていたのだが、まだ到着しておらず、我はオロオロと歩き回っていた。


「ミズちゃん、大丈夫よ。初産は時間がかかるから、破水してもすぐには生まれないわよ。」

「シェーシャ母さん、どうしよう。まだお医者さんが来ないし、母さんが産んだ赤ちゃんが泣かないの。」

「大丈夫よ。肺に入っている羊水を出す処置をしてるみたいだし、すぐに泣き出すわ。」


 我がオロオロと歩き回っていたら赤ちゃんが泣き出した。

 我はほっとしてヤヨイ姉さんの側に行くと、苦しいはずなのに頭を撫でてくれた。


「大丈夫?中姉。痛くない?」

「す、ごく、い、たい、よ。でも、が、んばる。」

「もう、う、まれ、そ、う。」


 サツキ姉さんが言うと、ヤヨイ姉さんも言い出した。


「先生、もう生まれそうです。こっちをお願いします。」

「分かりました。今行きます。」


 まだ(へそ)の緒の処置をしている所だったが、もう頭が見えている状態だったので、急いで呼んだ。


 先生が来ると同時に二人とも出産したので、床に落ちないように風精霊が浮かせてくれていた。

 ヤヨイ姉さんとサツキ姉さんは一息ついて、何故かお互いに握手していた。

 生まれたての赤ちゃん達は、風精霊に浮かせてもらいながら、二人とも泣き出していた。

 一人づつ臍の緒を処置した後、しばらくしたら胎盤も出てきた。


 身体を拭かれてきれいになった赤ちゃんをそれぞれの母に渡し、周りの後片付けをしていると、母子共に寝始めたので、我は自分の部屋に戻った。

 この一年の間に色々なことが起き、レベルを確認するのを忘れていたので見てみると、いつの間にかレベル10になっていた。

 年齢もひとつ上がって六歳になっていた。

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