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みんなで綴る物語  作者: サラサ
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年長期D

 お姫様と交渉に来ていた使者が散々騒いでいたが、交渉決裂で女官と護衛を引き連れてブラウ国に帰っていった。


 すぐに戦争の準備を始めつつ、内輪だけで兄姉達の婚約祝いをすることになった。

 簡単な祝いの席になってしまったが、家族と親しい人間と獣人だけなので、とっても楽しい時間だった。


『ミズ様、どうされますか?我々は基本干渉しないのが掟なのですが、神獣様にミズ様の事を頼まれていますので、指示があれば我々が隣国を消滅させますが?』

『獣と人にも取り合えず静観してもらっているから、国の消滅までは必要ない。獣人達は王都や国境の町の防衛をしてくれ。』

『承ります。ミズ様は戦地に赴くのですか?』

『反対されているが、こっそり行く。』

『そうですか、隣国は遠距離攻撃が得意ですので、お気をつけて。』

『そうなのか。どのくらい飛ぶか分かるか?』

『城壁からここまで位は飛びますね。王都に来る前に追い返さないと、王都壊滅は確実かと。』

『ああ、城壁は強化するし王都全体に物理結界を張るつもりだから、その辺の心配はいらない。』

『そうですか。それなら安心ですね。』


 我が念話で獣人達と話していると、シェーシャさんがやって来た。


「ミズちゃん、ちょっといい?」

「何ですか?シェーシャ...母さん。」

「あら!初めてミズちゃんに母さんって言われたわ。認めてもらえたのかな?嬉しいわ。」

「...御用は何ですか?」

「ああ、そうだったわ。つい嬉しくて。あのね、ブラウ国との戦争なんだけど、第三王子だけは殺さないで欲しいの。」

「なんで僕に言うの?父さん達に言った方が良いよ?僕は戦争に参加させてもらえないし、何も出来ないよ?」

「以前、空に浮いていたでしょ?私、目は良いのよ?」


 見られてたのか。

 全然気がつかなかった。

 今は光精霊がいるから見えなく出来るけど、前は丸見えだったから、色々とばれているみたいだった。


「第三王子は本当に良い人で、和平条約を結ぶなら、第三王子が王位についた後がいいわ。ただ、第一王女が生きていると色々と困ることが起きるから、第一王女は絶対に殺さないと駄目よ。」

「なんで?我が儘なだけじゃないの?」

「あの王女は嫁いだ妹達に毒を盛ったり刺客を送って殺しておいて、妹が殺されたと騒ぎ立てて戦争に持ち込むような奴だし、自分が次期国王になる気満々でもうだいぶ国の中枢を治めてるのよ。」

「第六王子は?」

「第六王子も野心家で、実質皇太子の扱いを受けてるわね。でもちょっとお馬鹿なので、第一王女にいいように使われているわ。多分、第六王子を大将にして五十万の兵力で攻めてくるわね。」

「そんなに多いの?」

「前回は十万で蹴散らされてしまったから、五倍から十倍の兵でくるわね、絶対。後、別働隊でミズちゃんを拐いに来ると思うわ。」

「え?僕を拐っても何にもならないよ?」

「特別な子供だから脅して見方に引き込むか、人質にして戦争を有利にするか、薬で意思を奪って傀儡(くぐつ)にするかかな?とにかく、ミズちゃんは狙われているわよ?」

「僕が特別だと分かっているなら、手は出せないんじゃないの?国が消滅するよ?」

「嘘、そこまで力があるの?困ったわね。第三王子に知らせてもいい?」

「駄目に決まってるでしょ?家族の内緒だよ?」


 我を狙うのなら、隣国には消えてもらおう。

 それまでは静観で父達の応援でもしていよう。


「ミズっち、これで家族の仲間入りだね!お姉ちゃんって呼んでいいよ?」

「サクヤ、まだ婚約しただけだから、家族じゃないよ。」

「えー、もう家族同然なのにー?」


「ミズ、冷凍実験の改良をしたいと思うのですが、明日から付き合ってくれますか?」

「イワナガ、戦争になるかもしれないのに、実験なの?」

「だって、子供が手伝えることなんかないでしょ?」


「ミズっちー、何か楽しいねー。」

「あ、コノハナ、お酒飲んだでしょ?子供は駄目だよ?」

「今日だけはお祝いだから、いいじゃーん。」


 三人娘達は婚約祝いでとても嬉しそうにしていた。

 ヤヨイ姉さんもサツキ姉さんもとても幸せそうだった。


「ミズちゃん、私にもムツキ姉さんにしたお(まじな)いして欲しいなー。」

「???、お呪い?なんかしたっけ?」

「以前の戦争の時にムツキ姉さんにお呪いしたでしょ?ミズちゃんと話してたら体がホワっと暖かくなったって言ってたよ?」


【絶対防御】の加護のことだろうか?

 迂闊につけると、手術が出来ないからどうしたものかと思ってから、はたと気がついた。


「中姉、もしかして戦争に参加するつもり?赤ちゃんいるのに?」

「ムツキ姉さんだって行ったじゃない。」

「それは、そうだけど...」

「だから私にもお呪いお願い。」

「あ、私もー。」

「え?小姉も行くつもり?子供なのに?」

「あ、酷いミズちゃん。発育は少し遅いけど、もう12歳の立派な女性よ?赤ちゃんいるし!」

「赤ちゃんいるから余計に駄目でしょ!」

「大丈夫よ!ムツキ姉さんだって元気な赤ちゃん産んだじゃない!」


 説得できなさそうなので、【絶対防御】を付けておいた。


「「ありがとー。」」


 加護を付けると、付けられた人間は何かしらの変化に気づくのか。

 家族にバレバレな理由が少し分かった。


 数週間後、隣国から条約破棄と宣戦布告の通達が届いた。

 と同時に国境の町ツヴァイに遠距離攻撃をしてきたようだ。

 各町には我が予め幾重にも結界を張ったので、物理攻撃も魔物も寄せ付けないはず。

 我も狙われているらしいので、安全な王都の教会で戦況を聞くだけにして、大人しくしていた。


『ミズ様、隣国の間諜が教会に入ってきました。念のため、獣人の国に避難していて下さい。』

『分かった。』


 我は獣人の国に行き、先生の家から戦況を聞くことにした。


『城には間諜は行っていないのか?』

『城に潜り込んだ段階でシェーシャさんが始末してます。元同僚だから顔を知っているんでしょうねぇ。』

『容赦ないな。』

『教会の方の間諜は私の部屋に無断で立ち入ったとして捕まえました。どうなさいますか?』

『ああ、目的と誰の命令か聞いたら用無しだから、逃がしていい。また来るなら容赦しないが、一回は許す。』

『分かりました。』


 やはり第一王女から我を捕まえて来るように言われたそうだ。

 父や兄姉達がいなければ、守りが手薄になると思ったらしい。

 我を捕まえる為だけに戦争を起こしたようなものなのだそうだ。

 薬と催眠術で傀儡(くぐつ)にして、世界制服を目論んでいると言うから笑ってしまった。

 第一王女だけは殺した方がいいと言うシェーシャ母さんの言うことが少し分かった。

 我は獣人の工作員にお願いして、隣国の第一王女を消してもらうことにした。

 うまくいかなかったら、我が直接排除しに行くことにして、暫くは様子見することにした。


 戦況が次々に伝えられた。

 絶対防御を付けているので、我の家族が死ぬようなことはないが、少々苦戦しているらしい。

 町には結界もあるし、籠城戦は有利に進んでいるようだが、五十万の敵を蹴散らすのは五千の兵では難しいようだった。

 本隊から別れた五万の別働隊が山越えのルートで国境を超え、アイン町を攻撃中という報せが届いた。

 更に海上ルートで五万の別働隊がフィーア町を攻撃中という報せが届いた。

 海上は獣人の領域で、船は商船しか認められていないので、獣人達に船ごと廃除してもらうとして、アイン町に侵攻してきた別働隊をどうするか。

 獣人達に頼むと世界のバランスが変わってしまうから、今のところは静観するしかないのだが、念のために結界を張った町以外の田畑や宿場町は荒らされ、航行中の商船は沈められていた。

 侵攻されると思わなかった宿場町には正規兵もいないので、確実に被害が増えていた。


『どうされますか?』

『別働隊は今はどの辺りにいるかわかるか?』

『現在、王都に一番近い部隊は第五宿場町に向かっています。アイン町を包囲している部隊は五千人位です。』

『我がこっそり行って蹴散らすか。』

『後でお父上に怒られませんか?先に了承を取ってみてはどうでしょう?』

『そうだな。父さんもこっちまでは手が回らないだろうから、許してくれるかも。伝達してくれ。』

『承りました。』


 父達に連絡をとってもらう間に光精霊オプトを呼んでちょっと浮かんだ計略が可能か聞いてみた。


『オプト、一定の範囲内に光を集約して高温を維持する事は可能か?』

『範囲が狭ければ狭いほど高温に出来ますが、範囲が広いと暖かい程度にしかなりません。どのくらいの範囲をどのくらいの温度にするのですか?』

『五万の部隊を丸々焼けるといいのだが、無理そうか?』

『私だけで五万は無理ですが、500体の光精霊を産み出せば可能です。』

『分かった。後で実行してもらうかもしれないから、準備しておいてくれ。』

『はい。創造主ミズ様。』


 父から王都の守りを任されたので、早速光精霊を連れて第五宿場町に向かった。

 敵の部隊は律儀に街道を進んでいたので、大分長い隊列になっていた。

 今なら攻撃し放題なのだが、兵士はみんな国境の町に行っているし、宿場町にいる傭兵はせいぜい20人程度なのでちょっと無理がある。

 街道を塞いでしまえばいいかと大岩を置いてみたら、山に逸れてからまた街道に出てきた。

 蟻の行列に石を置いたときと同じだなと思ってしまった。


 障害物は効果がないので、最初の予定通り、兵士を熱することにした。

 精鋭部隊だろう五万の兵士達は、軽量とはいえ金属の鎧を身に付けており、熱のこもった鎧を着込んだまま進むうちに大半は熱中症で倒れていった。


 いつもなら倒れた兵士を抱えて撤退するのに、今回は見捨てて侵攻してきた。

 熱中症で倒れた兵士達は放置すると死んでしまうのだが、治療する素振りも見られず、撤退する気配がないので、更に温度を上げていった。

 感覚遮断でもしているのか、少なくない人数の兵士達が燃えながら最後まで進もうとしていた。


『なんだあれ?おかしいだろ!』

『どうやら意思を剥奪して傀儡にした兵士みたいです。魔草から抽出した劇薬を使用して、更に催眠術で命令を与えているようです。』

『それも第一王女の仕業か?』

『恐らく。』


 第一王女がとても危険人物なのがよく分かった。

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