年長期B
隣国から使者が来た。
お姫様の嘆願書もあり、条約破棄して攻め込んで痛手を負うより、交渉で父を引き抜く方向に変えたようだった。
父を引き抜く事が出来れば、優秀な子供達も付いてくる上、この国の戦力を落とせる一石二鳥の考えなのだろう。
だが、これにはお姫様が反対した。
父を城に入れたら、残っている姫全員父の愛人になるだろうと忠告したそうだ。
そもそも軍事大国で、強いものが大好きな国民ばかりの国に、世界一かも知れない父を迎えたら、国をのっとられる可能性もあるとも言ったらしい。
交渉に来ていた使者達は国に持ち帰り協議した上、改めてまた交渉に来ることになった。
一方で、母達はヤヨイ姉さんとサツキ姉さんの結婚の儀の準備と、キサラギ兄さんとウツキ兄さんの婚約披露の準備で忙しそうにしていた。
父とお姫様の結婚式は隣国の許可が降りるまで出来ないそうなので、今のところ式の準備は保留になった。
ただ、許可が降りればやることが多くて大変になるので、今のうちに出来ることは進めるらしい。
許可が出たら、お姫様は一旦隣国に戻り、双方から結納をかわした後、身の回りの世話をする侍女と護衛の兵士を連れて大行列で輿入れしてくるそうだ。
なので、隣国から王都までのツヴァイ町や宿場町や街道の整備だけは先に進めるらしい。
王族の結婚式は色々と面倒な手続きと、各国への披露宴の招待とで、準備に一年かけても間に合わない位、本当に大変なのだと母達は言っていた。
父は一応王位継承からまだ外されていないので、条件次第ではお姫様が輿入れしてくる可能性が高い。
父は現在王位継承第3位だけど、ヤヨイ姉さんとサツキ姉さんが出産したら、第7位になる。
第1位はゲンブ、第2位はヤヨイ姉さんの子供、第3位はサツキ姉さんの子供、第4位はムツキ姉さん、第5位はヤヨイ姉さん、第6位はサツキ姉さん、第7位に父がくる。
降嫁するとはいえ、まだ王族と言えなくもないから、輿入れの可能性は高い。
最近、隣国の工作員疑惑のシェーシャさんが母に加わったばかりなのに、今度は隣国のお姫様が正妻として加わり、コクヨウ兄さんにも隣国の姫を王妃に迎える様に言ってきているし、内部から取り込んで吸収合併を狙っているのだろうか?
再び隣国の使者が来た。
表向きは友好を確かなものとするために両国間で婚姻を結ぶとあるが、父と末の姫の結婚を認める代わりに、第一王女をコクヨウ兄さんの正妻に迎えることを提案してきたそうだ。
我は会談に参加出来ないので、給仕に往き来する侍従に聞いて回ったところ、いくつかの提案が出されているらしい。
話をまとめると、
1・第一王女をこの国の王妃に据える
2・父を将軍として迎え、末の姫の婿にする
3・ゲンブを人質として第三王子の養子にする
4・ムツキ姉さんかヤヨイ姉さんかサツキ姉さんを第三王子の側室にする
5・キサラギ兄さんかウツキ兄さんか我を第七王女の婿にする
ということらしい。
まだまだ交渉中なので、他にも出てくるかもしれないが、どうも我が家の戦闘力の高さを欲している気がする。
確かに父の遺伝で元から戦闘力は高いが、両親の指導があればこそであった。
普通の女性だったはずの母達も両親の指導で一流程度にまで剣を使えるようになっていたのだから。
我は隣国の王家を調べるために教会に行くことにした。
司教様の部屋を借りて獣人の国へ行き、そこで王族の構成を調べたところ、
第一王子は戦死
第二王子は病死
第三王子(28才)は病弱で療養中
第四王子は病死
第五王子は戦死
第六王子(25才)は第二王位継承者で皇太子の補佐
第七王子は戦死
第八王子は病死
第九王子(19才)は他国に留学中
第十王子は病死
第十一王子は事故死
第十二王子(16才)は他国に留学中
第十三王子は病死
第十四王子は病死
第十五王子(9才)は寮から通学中
第十六王子は病死
第十七王子は病死
第十八王子(6才)は寮から通学中
第十九王子は病死
第一王女(35才)は出戻り
第二王女は嫁ぎ先で病死
第三王女は嫁ぎ先で事故死
第四王女は嫁ぎ先で毒殺
第五王女は嫁ぎ先で行方不明
第六王女は嫁ぎ先で暗殺
第七王女(24才)は行き遅れ
第八王女(23才)は他国に嫁ぎ済み
第九王女(22才)は他国に嫁ぎ済み
第十王女(21才)は他国に嫁ぎ済み
第十一王女(20才)は他国に嫁ぎ済み
第十二王女(15才)は婚約中
第十三王女(15才)は婚約中
第十四王女(14才)は婚約中
第十五王女は(13才)は婚約中
第十六王女(12才)は婚約中
第十七王女(10才)が父の嫁希望の末の姫
となっていた。
結構怨みを買っている為か、嫁ぎ先での死亡率が高すぎる。
というか、お姫様はまだ10歳だった。
サツキ姉さんより発育が良いから13歳位だと思っていた。
12歳までは子供扱いなので、結婚は出来ないから婚約という形になるのだろう。
そもそも、まだ子供の年齢なのに手を出すとか、父はいったい何を考えているのか。
今回は妊娠しなかったから良いものの、父にはよく言っておかないとダメなのかもしれない。
さて、今回提案に出ていた第一王女と第七王女と第三王子を調査しよう。
第一王女は金髪の美人だが、わがままで傲慢な性格をしていて、嫁ぎ先の財政を悪化させて追い返されたそうだ。
その後父王に泣きついて、追い返したのは宣戦布告と見なすとして嫁ぎ先の国を滅ぼしたそうだ。
更に、第二王女から第六王女も嫁ぎ先で死亡したのは敵対行為だとして王女達の嫁ぎ先を滅ぼすように父王に進言したのも第一王女だそうだ。
これは拒否したい案件だな。
受け入れても財政悪化させた後で、なにかしらの理由をつけて戦争になりそうだ。
第七王女は黒髪のあまり美人ではない細身の内向的な性格で、人見知りするので身の回りの世話をする侍女も決まった三人しか受け入れないらしい。
年齢差はちょっとあるが、あまり干渉してこなさそうだから、我は婿に行っても大丈夫そうだ。
第三王子は子供の頃から病弱ということだったが、第六王子の母親の親族から頼まれた侍従が毒を盛っていたそうだ。
現在は隔離された療養所で信頼できる侍従だけ連れて静養中らしい。
王子達の死亡率が高いのはどの国でも同じ理由なので、どれだけ自己防衛できるかで、有能無能が目に見える形で現れる。
生き残っている者は全て有能。
毒を解毒しているのか、もともと抵抗力が高いのか細かな調書がない時点でかなりくせ者のような気がする。
姉達はすでにコクヨウ兄さんの嫁に決まっているので、側室にする案は最初から無しなのだが、ゲンブを人質に取られた時の為にもう少し人となりが分かる調書が欲しかった。
こっそり隣国に行って調べる事にした。
『光精霊オプト、光の波長を変えて我の姿が見えなくなるようにできるか?』
『創造主ミズ様、私が絶えずお側にいれば可能です。ただ、音や気配までは消せません。』
『そうか、まあ見つかったら逃げればいいだけのことだから、頼む。』
『承りました。』
第三王子の療養地は静かな湖畔にあった。
オプトの調整は完璧で、草が擦れる音がしたものの、見咎められることもなくすんなり屋敷の中庭に入れた。
中庭に面した暖かそうな部屋で読書をしている男性が多分第三王子だろう。
勉強好きな理知的な感じの好青年だった。
我の姉達のような脳味噌筋肉族(略して脳筋族)ではなく、戦略を練る参謀タイプなのだろう。
しばらく覗いていると、密偵らしき人物が王子に何かを渡してスッと去っていった。
小さな紙に何か書いてあるらしく、ここからだと見えないし何も聞こえないので、部屋の中に入ることにした。
第三王子は羽ペンを取り、手紙を書き始めていたので、そっと近づいて覗いてみると、シェーシャさん宛の手紙だった。
手紙の文面から、二人は子供の時からの友人のようで、出産のお祝いの言葉が書き込まれたのを見て驚いた。
そういえば、最近姿を見ていなかった。
全く気にしていなかったから、妊娠何ヵ月かも見なかったし、出産予定日も聞かなかった。
誰も我に教えに来なかったし、兄姉の話にも上らなかったし、母達も無視していた気がする。
赤ちゃんは男の子でフミツキと言うらしいのが見てとれた。
帰ったら早速見に行ってみよう。




