年長期A
王都に帰ってきた。
衝撃の告白から王都に帰って来るまで、夜になると三人娘達と姉達がキャッキャと騒いでいたので、精神的に疲れる日々だった。
兄達にいつ三人娘と親しくなったのか聞いてみたら、すでに王都にいた時からだった。
三人娘達が我に抱きついたり、ベットに潜り込んで来るのは我が好きなのだと思っていたので、我のことをどう思っているのか聞いてみたら、可愛い弟だと思っていると言われた。
母達や姉達によく抱かれていたので、真似していたということのようだった。
ベットに潜り込んだのは、我が一人で寝てるのが心配だからということらしい。
なんだか勘違いしていて恥ずかしかった。
気落ちしていてすっかり忘れていたけど、コクヨウ兄さんを問い詰めるんだった。
コクヨウ兄さんを探していると何故か前に我と交換留学していた隣国の姫様に出会った。
「ちょっとそこの坊や、シバ様をお見かけしませんでしたか?」
「え?見てませんけど。」
「そう。ならいいわ。」
どうも父を探しているようたが、何しに来たのだろう?
近くを通り掛かった衛兵に聞いてみたところ、父に会いに勝手に家出してきたそうた。
今はその外交問題真っ只中で、大騒ぎ中らしい。
下手をするとまた戦争になりかねない大問題だった。
「父さん!、どうなってるの?」
父を見つけたので開口一番聞いてみた。
「ああ、ミナツキお帰り。国中巡った感想はどうよ?」
「そんなことより、お姫様だよ!どうするの?」
「うーん。どうすっかねー。これだけ愛されると満更でもないんだが。」
「まさか、手を出したりしてないよね?」
「あー、わりぃ。夜中に抱いてくれと突撃されて...ついな。」
「...信じられない。父さんといい、コクヨウ兄さんといい、みんな何考えてるの?頭に花でも咲いてるの?」
プンプン怒りながら父を叩いていると、姫様がやって来た。
「こちらにいらしたのですね。探しました。」
「ああ、すまん。そうだ、こいつが今のところ末っ子のミナツキだ。」
「あら、あなたはさっきの。そう、あなたがミナツキ君ね。初めまして、私が新しい母のエリザベスです。よろしくね!」
「...よろしくお願いします。」
もうすでに母になることが確定している物言いだったが、身分的にこのお姫様が正妻になるんだろうから、父が亡くなったらこのお姫様が家長になるのか。
上手くやっていける自信がないな。
そういえば父がもう手をつけたと言っていたので、もしかしてと【ステータス】で見てみたら、受精卵有とか見えた。
今なら着床阻害して妊娠しないように出来るが、生命を弄ぶのはちょっとどうだろうと考えて、自然に任せて着床せずに流れてしまうことを神に祈った。
祈りながらふと考えたが、この場合の神とは、獣のことだろうか?人のことだろうか?それとも我のことだろうか?
我だとすると、自分で自分に祈るという可笑しな感じになるなと少し愉快になった。
まあ、今回妊娠しなくても、あの熱心さなら近々懐妊してしまうだろう。
お姫様と父に挨拶してその場を離れ、ふらふらと城内を歩いていると中庭で鍛練しているキサラギ兄さんを見つけた。
「中兄、コクヨウ兄さんを見なかった?」
「ああ、帰ってからまだ一度も見てないな。」
「そっか。まあ今は隣国問題の方が重要だからサツキ姉さんの件は後回しかな。中兄、どうなると思う?」
「さあな、このまま和平条約維持なら、なんかしらの代償を支払わなきゃ駄目だろうな。それこそ父さんが隣国に移るとか。」
「え?そうすると僕達も隣国の民になることになるよね?」
「まあ父さんが行けば、母さん達も付いて来るだろうな。そうすると、ミズはまだ5歳だから一緒だろうな。そんで、俺達はどっちか選べと言われるな。」
「えぇ?家族がバラバラになっちゃうの?そんなの嫌だよ。今は平和でもそのうちまた戦争になっちゃうでしょ?そしたらどうなるの?」
「その時は敵味方に別れているから、殺しあいになるな。」
「やっぱり。そんなの駄目だよ。」
「父さんが行かないなら、多分ムツキ姉とゲンブが人質に取られるな。前はコクヨウ兄さんに妻と子がいなかったから、お前が行くことになったけど。」
「今回も僕じゃ駄目なの?僕なら何かあってもすぐに逃げ出せるのに。」
「まあ、駄目だろうな。前回はコクヨウ兄さんの血族がいなかったから、父が次代の王として王位継承権を持っていて、お前を人質に出しても合意が取れたが、今はゲンブがいる。」
「ゲンブが取られるなら、僕もついていく。何かあったら連れて逃げる。」
「ああ、それはいいかもな。人質が決まったら、一緒に行ってやってくれ。」
「うん。僕が絶対守るよ。」
我が何とか出来るなら、何とかしないとと思いながら、またコクヨウ兄さんを捜しに歩き出した。
執務室に続く回廊を歩いていると、配膳係の侍従を見つけたので、コクヨウ兄さんの居場所を聞いてみると、これから食事を運ぶ執務室にずっと籠って仕事していると教えられた。
侍従に付いて一緒に執務室に向かいつつ、最近の城の様子を聞き出した。
復興も進んで、長年戦争していた隣国との和平も結ばれて、どこもかしこも浮かれていたそうだ。
一週間前に隣国の姫が家出してくるまでは...。
今はみな狼狽えている状態で、夜もよく眠れずに仕事にも支障が出始めているそうだ。
道理で魔が濃くなっている訳だ。
不安の感情があちこちで溢れているらしく、各所に置いた水晶にどんどん魔力として貯まっていた。
後で取り替えないとと思いつつ、執務室に着いたので、一緒に中に入った。
「お食事をお持ちしました。」
「ああ、そこに置いておいてくれ。」
こちらを見ずにそれだけ言うと、また何やら書類を見ながら唸っていた。
「大兄、食事を持ってきたから食べようよ。」
「っえ?ミズいたのか。お帰り。その、すまん。」
「何を謝っているの?食事のこと?僕がいたのに気づかなかったこと?それとも、姉さん達のこと?」
「すまん。でもみんな大好きなんだ。大事にする。」
「...もういいよ。後できっちり経緯を説明してもらうけど、今はお姫様の問題でしょ?」
「ああ、姫を返さないと条約破棄して力ずくで取り返しに来るそうだ。もしくは、俺の国の王妃に据えろだそうだ。」
「え?でも父さんともう関係もっちゃってるよ?」
「そうなんだよ。それで返事をどうするか悩んでる。そろそろ隣国にも伝わる頃だし、その反応を見てから対応した方がいいのか、先に父の嫁になったと親書に書くべきか...」
「とりあえずお姫様にも一筆書いてもらって、父に降嫁したことを伝えるべきじゃないかな。」
「そうだな。そうしてもらおう。あとは向こうの反応次第か。最悪の事態だけは避けなきゃな。」
「もし、ゲンブが人質にとられるようなら、僕も付いてくから、安心して。」
「ああ、頼りにしてるよ。」
国際問題は相手の反応待ちに決まったので、早速姉達に手を出した経緯を聞いてみた。
最初はヤヨイ姉さんの結婚相手を探そうと集団見合いをしたのだか、自分より強い男じゃなきゃ嫌だと言うので途中から武闘大会になり、結局ヤヨイ姉さんより強い男はおらず、サツキ姉さんにさえ勝てる男はいなかったので、二人でやけ酒してたので止めに入ったら、組み敷かれてしまったそうだ。
そういえば、我が研究に勤しんでいたときに何やら大会があったとか言ってた気がする。
「俺も我慢してたんだが、色々されると反応してしまって、上に跨がれてしまってな。まあ、結局二人と最後まで...すまん。」
「僕に謝られても。ムツキ姉さんは知ってるの?」
「ああ、翌日にすぐ謝った。ヤヨイとサツキも一緒に。」
「ふーん。許してもらえた?」
「ああ、ヤヨイとサツキなら第二第三夫人にしてもいいそうだ。」
「そう、なら僕はもういいよ。」
コクヨウ兄さんは父より大分ましなので、自分から女性を抱くことはそうそう無いだろう。
泣きつかれたり寝込みを襲われたら怪しいけれど、父みたいにほいほい抱く男じゃないと信じることにした。
聞きたいことは聞けたので、自室に戻って交換用の水晶を取りだし、夕飯までの間に城中の水晶を交換して回った。
執務室には実験として、極小の光精霊を瓶に入れて、天井に吊るさせてもらった。
「ミズ、これはなんだい?」
「ランプの代わりになるものだよ。明かりを点けたいときは[光]って言って、消すときは[闇]って言ってみて。」
「面白そうだな。[光]。」
我が意思を示さなくても、明かりが点くかの実験だったのだが、問題なく点灯消灯ができたので、量産してくれと言われた。
無限に分霊出来ると言っていたし、まあ大丈夫だろうから明日中に城内の灯りを交換して回ることにした。
光精霊は日中の光が届くところにいれば、消滅することもないので、燃料要らずの便利製品になるだろう。
光精霊を入れる瓶には止まり木用の細い竹の繊維を入れてある。
竹の繊維に止まって発光しているので、見た目は繊維が発光しているように見えた。




