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みんなで綴る物語  作者: サラサ
38/73

年長期8

 7日たっても冷凍した魚は凍ったままだった。

【ステータス】で確認しても状態は維持されているので、このまま一ヶ月保てるか実験することになった。


 冷凍庫は大理石で作った箱の中に氷で作った箱を入れて、氷が溶けないように魔力を定期的に作動させて、水が凍るくらいまでの温度を維持することで完成した。

 最初の氷の箱は、木型に海水を入れて凍らせようとしたが上手く凍らなかったので、地下水を集めて木型に流し込み凍らせて作った。

 海水は塩が入っているのが駄目らしく、海水から水を集めて凍らせてみたらうまくいった。

 海水のまま凍らせられないか実験してみたところ、水が凍る温度よりも低い温度なら凍ることが確認できたので、二種類の氷の箱で運搬してみることになった。


 魚介を運ぶので、この町で各町から購入した小麦、落花生、鉄、木材、金を売ることになった。

 相場は普通だったので、少し損をした気分だったが、荷物が多くなりすぎて座るところがなくなるので処分することになった。

 絹織物は母達へのお土産として売らずに持って帰ることになった。

 実験に使う魚は、毎日兄達が磯釣りで魚を釣って持って帰ってきたものを、せっせと凍らせて冷凍庫に放り込んだので、購入しなくても良くなった。

 せっかく港町に来ているので、名産の干物を購入して、名産の塩は海水から水を抽出するときに勝手に出来ていたので買わずに次の町に向かった。


 芸術の町フンフに着いた。

 一日一回魔力を作動させて冷やすだけで今のところ劣化は見られない。

 この前創ってしまった氷の精霊は雪の結晶のような形をしていてレベル1のままなので、一粒の雪のようだった。

 こちらの意思を理解することはできるので、海水から作った冷凍庫のほうにくっついてもらっていた。


「すごーい。綺麗な町だねー。」

「うん、きれー。」

「ここは劇場もあるのでみんなで()に行きましょう!」

「劇場って何があるの?」

「劇場だけじゃなく、美術館や博物館もあるぞ。」

「僕は歌劇というものを観てみたいかな。」


 この町の民家は白い壁に青い屋根で統一されていて、町全体が綺麗な絵画のようだった。

 所々にある大きな建物が美術館や博物館や劇場ということらしい。


 宿屋に馬車を停めて、荷物を部屋に置いてから町に繰り出した。

 町の中心にある広場の噴水は、細かな彫刻が彫られていて綺麗だった。

 この噴水を待ち合わせ場所にして、各自好きなところを回ることになった。

 ウツキ兄さんと三人娘達は歌劇とかいうものを観に行き、我は博物館に行くことにした。

 キサラギ兄さんは美術館をちょっと観たら博物館に来るそうだ。


 博物館には絶滅した動物達の化石や剥製が並んでいた。

 我が意思のみの存在だった頃に生息していた動物達なので、”見た”のは初めてだった。

 死んでしまっているので、あの時感じとった動物の感情がどの動物のものか分からなかった。

 まあ、どの動物も『食べたい』『寝たい』『生殖したい』だったので、どれでも大差ないのだが。

 それに比べて人間の感情は多彩だった。

『嬉しい』『楽しい』『悲しい』『辛い』『悔しい』『羨ましい』『恋人欲しい』『お金持ちになりたい』『美人になりたい』『幸せになりたい』等々、本当に沢山の感情に溢れていた。

 だから体験したくなったのだが、負の感情は思いの外きつかったので、今ではできるだけ体験したくないと思っている。

 一人で考えながら館内を回っていたらキサラギ兄さんが追い付いてきた。


「ミズ、何か面白いものあったか?」

「中兄、ちゃんと美術館観て回った?早すぎない?」

「何か芸術は俺にはよくわからん。つまらなかったからこっちに来た。」

「中兄、ここも大して面白いものはないよ?興味深いものならあるんだけど...あっちはこの世界の成り立ちなんかが展示されてて、こっちはこの世界ができてからの生態系の変化だって。」

「あー。まあ、博物館も興味ないな。でも歌やら音楽やらよりはまだましかな。最強の動物とか展示されてるだろ?」

「うん。絶滅した古代の竜とかならあっちにあったよ。そっちにはおとぎ話に出てくる妖精の展示だって。」

「妖精?本当にいたのか???」

「さあ?各地の伝承をまとめて展示してあるらしいよ?。」


 実際妖精はいたのだが、人間が増えるのに反比例して減っていった。

 妖精達は人間ほど感情豊かではなかったが、そこそこ楽しませてもらっていたので、獣人の国に保護してもらった。

 現在、数は激減したが辛うじて種族の存続は守られている。

 人間達に知られると剥製にされかねないので、秘密にしていた。

 竜も四頭だけだが、保護されて獣人の国で生きている。

 もう繁殖は無理みたいなので、今の四頭が亡くなったら絶滅してしまうだろう。

 獣人達がクローンがどうのと言っていたが、自然にまかせる方向で世話をお願いしている。


「ミズ、俺は竜を観に行ってくるわ。」

「うん。僕は生態系の変化の展示を観てるね。」


 陸上の生態系の変化は、植物→昆虫→動物→獣人→人間の順で展示されていた。

 現在の生態系のトップは人間ということらしい。

 実際に争ったら獣人の方が強いのだが、繁殖力は人間の方が高いので、数的に人間がトップなのは間違いないなと感心していた。

 一つ一つの展示に時間をかけて観ているせいか、キサラギ兄さんが戻ってきて先に出ていった。

 存分に堪能して広場まで戻るとウツキ兄さんと三人娘達がちょうどやって来た。

 キサラギ兄さんは待ちくたびれたようで、噴水の横に座り込んで寝ていた。

 キサラギ兄さんを起こして宿屋に戻り、夕食を取りながら歌劇の素晴らしさや博物館の展示の素晴らしさを報告しあった。


「へー。面白そう。明日は歌劇を観てみるね。」

「「私達は博物館に行ってみる!」」

「私はもう一度、歌劇を観たいからミズと一緒かな。」

「あ、ずるーい。」

「じゃあ私達ももう一回歌劇にするー。」

「俺はもう明日には出発したい。」

「まあまあ、兄さん。ちびっこ達の教育の為なんだから、もう少しこの町でのんびりしようよ。明日は僕も一緒に付き合うから。剣舞を観るもよし、郊外で魔物退治するでもいいから。」

「うーん。この辺りは魔物ってあまり出ないよなー?。隊商の護衛でもすっかなー。でも十日もこの町にいないだろ?」

「流石にそこまでは...長くてもあと3日程度だと思うよ。」

「中兄、小兄、明日は歌劇を観て交易品の売買したら明後日出発でいいよ。」

「「えぇ?」」

「それなら明日は博物館と美術館を回って時間があれば歌劇は夜の上演を観ることにします。」


 結局、我は一人で歌劇と美術館を観に行き、三人娘達は博物館と美術館を観に行き、兄達は剣舞を観に行くことになった。


 歌劇は上演時間によって内容が変わるので、我が観た時間は女性だけの歌劇で、男役も女性が演じる歌劇になっていた。

 なんと言うか...色々派手だった。

 色とりどりのきらびやかな衣装に、素顔が分からないくらいの化粧に、唐突に歌い出す演出に、全てに驚いた。

 観客もほぼ女性ばかりだったので、居たたまれない感じで観ていた。

 終演すると半数以上の観客が舞台のほうに移動して、花束や宝石や貴金属を手渡していた。

 どうやら男役していた女性が一番人気らしい。

 持ちきれない花束と服のあちこちに差し込まれた宝石や貴金属が凄かった。

 我にはまだ分からない世界だなと思いながら、美術館へ向かった。


 美術館はキサラギ兄さんが言っていたように良く分からない物から普通に綺麗な絵まで色々展示されていた。

 芸術も時代毎に流行に合わせて変化しているようだった。

 現代は良く分からない方向に進んでいるらしく、我には意味不明な落書きのような絵や、魔物の死体のような彫刻が並んでいた。

 百年前の展示場は普通に綺麗な風景画や裸体の彫刻が並んでいるのに、たった百年でこうも変わってしまうとは驚きだ。

 人間が誕生した頃に描かれた壁画には狩猟の様子がみてとれたが、これは獲物を獲るための作戦会議に使用したのだろう。

 この頃に絵を描く余裕はなかったはずで、毎日飢えを凌ぐのに精一杯で、趣味に絵を描く人間など皆無だったろう。

 美術品を一つ一つ観て回っていたら、三人娘達がやって来た。


「やっほー。ミズっち。」

「こんなとこにいたー。」

「一通り観て回ったのでミズがいるか探してました。」

「そうなの?歌劇に大分時間とられたから、美術館に来るのが遅くなったかな?」

「ああ、歌劇はどうでしたか?私達が観た演目と違うものだったでしょ?」

「なんか、色々すごかったよ。」

「「えー、観たかったなー。」」

「夜はまた違う演目だから観れなくてちょっと残念。夜の歌劇は一緒に観ましょうね!」


 あまり気が進まなかったが、一緒に行くことが決まっているらしく、一旦宿屋に帰って夕飯を食べてから劇場に向かった。


 ...今度は男性だけの歌劇だった。

 女役も男性が演じるので、喜劇になっていた。

 これはこれで面白いのだが、結局まともな歌劇を観ることはできずに次の町に向かうことになった。

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