年長期6
今日から学校に通うことにした。
学校は希望者ではなく住民である子供全員が学べるように義務にしたため、かなり大きな校舎になった。
全寮制にするか悩んだが、通学したいと思う人間もいるだろうから、希望者だけ寮に入れるようにした。
学校は3歳から12歳になるまでを義務教育にして、その後は12歳から18歳になるまでを希望者だけ学べるようにした。
ちなみに、0歳から3歳までは愛児園を作ったので希望者はそちらに預ける事も可能だ。
学費も寮費も食費も全て無料なので、行き場のない子供たちも定職に就けるまで保護することができる。
適正にあった職業を斡旋していく予定だが、それまでは学校で職業訓練をしつつ学んでもらうことにした。
先生には獣人を派遣してもらうことになっているので、かなり高度な授業が受けられるはず。
獣人が教会以外で人間の生活に関わることはまずないので、最初はみんな戸惑っていたらしい。
獣人も念話ではなく会話の得意な者を採用したので、獣人の国では教鞭にたったことのない飲食店の店員や語学を勉強している学生に来てもらっていた。
我と三人娘は馴染みの先生に特別教室で教わる予定だ。
朝食を食べて支度をしてから三人娘と一緒に南門の少し離れた所に作った駅で車両が来るのを待った。
公共施設に関しては我の意見を大分採用してもらったので、王都の主要箇所を結ぶ鉄道が敷いてある。
魔力による牽引はこれからの研究課題なので、今は馬に頑張ってもらっていた。
我が創り出した光精霊では、車両を動かしたり止めたりの調整が難しい。
歯車を組み合わせて作った模型の機関車は、小さな力で車輪を回し模型の車両を引くことが出来たので、後は歯車を動かす力を絶えず供給する仕組みと止めるときの仕組みをもう少し工夫する必要があった。
馬に引かれ車両が着いた。
歩いて学校に行っても問題ないのだが、馬車鉄道の問題点や改良点を調査するために乗ることにしていた。
問題点としては、
・時間通りに来ない
・乗れる定員が少ない
・子供には捕まるところが高すぎて届かない
・馬が時々休憩して進まない
・歩いた方が早い
・乗り心地が悪い
重い荷物の運搬には便利かもしれないが、人を運ぶにはまだまだ改良しないと使えない。
ようやく学校に着いた。
我と三人娘達は特別クラスに決まっているが、一応入学テストをすることになった。
午前中は質疑応答形式で、この国の法律から歴史や地理、社会経済についてなどの質問に答えていった。
午後は武芸全般の実技試験で、我は馬術と剣術、イワナガは弓術と水泳術、コノハナは槍術と水泳術、サクヤは棒術と水泳術を披露することになった。
初めて三人娘の武術を見た。
旅の間も戦闘は魔力を使ったものばかりだったので、武器は使いこなせないのだと勝手に思っていた。
確かに魔力を使った攻撃の方が威力が高いが、魔力の籠った水晶がいつもあるとは限らないので、武器が使えるのは心強い。
なんでも旅の間に我の母から手解きを受けたらしい。
今までも少しは出来たらしいが、そこそこ使える程度まで鍛えてもらったそうだ。
コノナナもサクヤもまだまだ子供で力が無いので、基本の型を一通りやった後は二人で対戦することになったようで、場所を変える為に試験官の先生と一緒に移動していった。
イワナガは的に矢を次々に放ち命中させていた。
まだまだ子供なので、的までの距離は大人の半分位にしてもらっていた。
我は何故かサツキ姉さんと打ち合いしていた。
中等クラスでもトップクラスのサツキ姉さんが対戦相手とは誰の陰謀なのか。
「小姉、ちょっと待って!」
「何ですか?ミズちやん、男らしくないですよ?」
我が渾身の力を込めて打ち込んだ一撃を軽く片手で弾かれて、そのまま頭に直撃しそうだったので待ったをかけたが、聞いてもらえなかった。
慌てて横に転がり何とかかわしたが、態勢を立て直しながら不意をつけないか考えていた。
サツキ姉とは何度も稽古しているのでフェイントは効かない。
何度かフェイントを仕掛けたが、やはり全く引っ掛かりもしない。
「なんで小姉なの???」
「私が志願したからです。隙あり!」
我が持っていた木刀を叩き落とされ、試合終了した。
まだまだ武術は追いつかないな。
中等クラスに上がるのはやはりまだ無理そうだった。
三人娘達もちょうど終わったらしく戻ってきた。
「ただいまー。ああ、疲れたー。」
「疲れたー。」
「疲れました。」
「お疲れ様。はい、お水。」
次は水泳なので、休憩して着替えてからプールに行くらしい。
我も休憩してから馬に乗ることになっていた。
「どんな調子?」
「私は大分上達していたので満足のいく結果でした。」
「私達は引き分けで決着がつかなかったのー。」
「ねー。」
コノハナとサクヤの実力は同じだったようだ。
イワナガは部屋の隅で黙々と弓を射ていたのを時々見ていたので上手いのは分かった。
コノハナとサクヤの槍と棒の試合は今度見せてもらおう。
馬術は障害物を飛び越えながら進むだけで終了した。
中等クラスの人達は馬に乗りながら弓を射たり、剣で打ち合ったりするらしい。
剣術も馬術も他の武芸もまだまだ修行が必要だなとつくづく思った。
帰り支度をしていると三人娘達が水泳から戻ってきた。
まだ髪が濡れていて毛先からポタポタと水が落ちていた。
「お帰り。お疲れ様。」
「ただいま。すぐ支度するので少し待ってて。」
「髪の毛早く乾かそう!」
「だねー。」
いつも持ち歩いているのか魔力の籠った水晶を取り出して、火か風を生み出そうとしていた。
そんなにすぐに新しい魔力操作は出来ないと思うが、コノハナとサクヤは真剣に頑張っていた。
「コノハナ、サクヤ、今すぐは材料も足りないから無理よ?普通にうちわで仰いであげるから布で拭いたら?」
「「はーい。お願いしまーす。」」
コノハナとサクヤはイワナガに言われてすぐに諦めていた。
我はこっそり光精霊にお願いして三人娘の髪に太陽光を集めて髪の乾燥の手助けをした。
「???。頭だけ暖かい???」
「あ、ほんとだー。」
「頭だけ日向になってるよ!ふっしぎー。」
我を怪しんだ目で見つめているサツキ姉さんと三人娘を誤魔化すために太陽光をあちこちに当ててもらった。
「この部屋は光が乱反射するみたいだね!」
「「じぃーーー。」」
「怪しい。また一人で何か開発したでしょ?」
思いっきり疑われているが、しらを切り通した。
三人娘達の支度が終わったので、女子寮まで送って?行った。
女子寮と男子寮は学校を挟んで両隣になっていた。
女子寮は男子禁制のはずだが、まだ子供だからか普通に中に入れてもらえた。
三人娘の部屋は三階の角部屋でちょうど三人用の部屋になっていた。
我は部屋に入りしばらく明日からの研究課題について話し合った。
三人娘達は魔力を冷蔵冷凍へ転換する研究をしたいと主張し、我は魔力を機関車の動力へ転換する研究をしたいと主張したので、今回から別々に研究課題を進めることになった。
何か行き詰まったらお互いに助け会う事にして、基本は好きなことをすることになった。
女子寮から城までは徒歩一時間位なので、軽く走りながら帰宅した。
自室に戻り着替えをしてから夕飯を食べに降りていくと、母達の人数が増えていた。
前に父さんとコクヨウ兄さんが助けた母娘の母の方が、父さんの奥さんになったそうだ。
確か隣国の工作員の可能性が高いからあまり近づかないように注意していたはずなのだが、知らないうちに店に通っていたらしい。
すでに常連になっていて、王都にも店を出すついでについてきていたらしい。
獣人の工作員からはそんな報告を受けていないので、どうやって監視を潜り抜けたのか不思議だが、既に妊娠しているようで母に加わるのは決定事項のようだった。
我に弟か妹が生まれるのは嬉しいが、その母は親しくなれそうもない。
あまり雰囲気の良くない食事になってしまった。新しい母の名前はシェーシャというそうだ。
前に一緒に助けた娘はトゥラシーといい、歳は15歳で店でも一番人気だそうだ。
12歳で産んだので、シェーシャさんはまだ28歳だそうだ。
母達の中で一番若いのは我の母だったのだが、シェーシャさんの方が4歳若かった。
兄姉達も気まずそうにしているし、これからうまくいくのか不安だ。
我の素性を知られるのも困るから部屋には厳重に結界を張ることにした。




