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みんなで綴る物語  作者: サラサ
32/73

年長期2

山を迂回して進むのは時間がかかる。

調達出来た幌馬車は二台で、一台にムツキ姉さん親子と三人娘が乗り、もう一台に母達四人が乗っていた。

ムツキ姉さんの馬車の御者台にはキサラギ兄さんとウツキ兄さんが座り、交代で御者をしていて、ヤヨイ姉さんとサツキ姉さんは母達の馬車の御者台に座り、交代で御者をしていた。

幌の上には少ないとはいえ家具と洋服や小物を詰めた鞄をくくりつけてあった。

我はというと、鍛練のため馬車の横を駆けていた。

流石にずっと走り続けられないので、疲れたら兄姉と交代するかムツキ姉さんの馬車で休んだりした。

途中休憩を挟みながら今夜宿泊する第七宿場町に着いた。

まだ赤ちゃんのゲンブに野宿は可哀想なので、王都までは街道を通り、七ヶ所ある宿場町に宿泊しながら進むことにしていた。

宿場町に着くと町長らしき人物が現れた。

ムツキ姉さんとその子供とウマー母さんを屋敷に招待したいとのことだった。

屋敷が狭いので全員は宿泊させることができないので、残りは宿に泊まってくれとの事だった。

一応宿代は出してくれるのだそうだが、歓待はできないらしい。

ムツキ姉さん達と別々になると護衛ができなくなるので、丁寧にお断りした。

宿泊は、町長お勧めの町一番の宿ではなく、自炊が出来て寝るだけの簡易な宿にした。

ほぼ我らの貸しきり状態のこぢんまりした宿だった。

風呂はなく、食事も炊事場を自由に自分達で使うスタイルで、ただ寝る部屋を提供するだけの宿である。

風呂を作ろうと皆で宿の庭に穴を堀り、我は穴の表面を岩に書き換え岩風呂を作った。

魔力で水を集め、温度を調整していい感じのお風呂が出来た。

宿屋のおやじさんは、勝手に穴を掘って怒っていたが、お風呂が完成すると喜んでいた。

我らがいないとお湯を張るのに苦労すると思うのだが、良いのだろうか?

出て行くときに埋め戻すつもりだったのだが、そのままで良いらしい。


ゲンブをお風呂に入れている間に食事の支度を始めつつ順番にお風呂に入ることになった。


最近の我が家の料理は凄く美味しくなった。

我が一年ががりで完成させた調味料は大豆を発酵させて作った味噌にさらに熟成させて作った醤油、色々な食材の旨味を抽出した粉末のだしや、糖分だけを抽出した甘い糖などで、母達に提供したら、色々な味を楽しめるようになった。

今日は魚介をベースにした出汁に、挽き肉を丸めた肉団子とカットした白菜を入れたスープと大根の漬物と味噌に漬け込んだ豚肉のステーキと炊きたてのご飯だった。

ゲンブも離乳食が始まっているので、肉団子をさらにすり潰して、白菜もすり潰して、スープと一緒に掬って食べさせた。

美味しかったのか、ニコニコしながら全部食べていた。


宿では特に何事もなく、朝ごはんを食べたら次の宿場町に向けて出発した。

次の第六宿場町もその次の第五宿場町も同じような簡易な宿屋にして同じように風呂を作り、料理を作り、寝て起きて朝ごはんを食べて出ていった。


第五宿場町を出た辺りで異変を感じた。

宿場町にいた柄の悪い数人が後を追うように出てきていた。

この辺りは王都からもアイン町からも遠いので、かなり治安が悪い。

我らが女子供の旅人だと思いちょっかいをかけに来るようだった。


「お嬢ちゃん達、この辺りは治安が悪い上に魔物も出るから俺たちで護衛してやんよ。」

「そこの綺麗なお嬢ちゃん達を一晩貸してくれたらただで護衛してあげるよー?」

「俺たちは親切な用心棒だから、乱暴なことはしないつもりだよ?」


なんとムツキ姉さんとヤヨイ姉さんとサツキ姉さんを寄越せと言う。

ゴロツキ達は、キサラギ兄さんもウツキ兄さんもいるのに細いからひ弱に見えるのか、強気で言っていた。


ムツキ姉さんは我にゲンブを渡して剣を手に取った。


「護衛は結構です。あなた達程度では何の役にも立ちません。あなた達三人より私の方が強いですから。」

「ほーう。強気なねぇちゃんも俺は好きだぜ。たっぷり可愛がってやるよ。」

「一人づつなど面倒です。三人同時にどうぞ。」

「強がって後で後悔しても知らねぇぞ!」


ムツキ姉さんは相変わらず、すぐに喧嘩を売る。

とりあえず出産時に消してしまった【絶対防御】をつけておいた。

まあ、かすりもしないうちに打ちのめしてしまったので、要らなかったかも。


一難去ってまた一難。

今度は山賊に会った。

山じゃないから盗賊かな?


先程出番の無かったキサラギ兄さんが憂さ晴らしのように戦っていた。

ムツキ姉さんはゲンブの授乳の時間で手が離せなかった。

母達もムツキ姉さん達を守るために馬車の側で護衛していた。

ヤヨイ姉さんとウツキ兄さんとサツキ姉さんも賊を蹴散らしてはいたのだが、かなりの人数で襲ってきているので、うち漏らした賊が馬車まで来ることも度々あった。


賊が馬車に手をかけた所に、熱湯が注がれた。

なんと三人娘も魔力を使って参戦してきた。

馬車に近づく賊の頭上に魔力で熱湯を作って浴びせて大火傷させたり、逆に凍らせて氷柱を作って串刺しにしたりしていた。


我も何か手伝えないかと思って外に出ようとしたら、危ないからゲンブと一緒に大人しく待ってるように言われた。


コノハナやサクヤやイワナガが良くて、我が駄目な理由が分からない。

納得出来ないと駄々をこねてるうちに戦闘も終了して兄姉達が帰ってきた。


討伐した賊達は百人程度でみな重傷だけど辛うじて生きていた。


「中兄、この人達どうするの?」

「どうすっかなー。町に近ければ自警団に引き渡すんだが、遠いしなー。」

「放っておけばいいんじゃない?」

「中姉、それじゃあ死んじゃうし、死ぬまで時間かかるから何人かは魔人になっちゃうよ!」

「魔人ってそういうものなのか?」

「うん。あまり知られてないけど。」


我が治療するのは簡単だけど、他の人間に知られるのは問題が多いので、どうしようかと考えていたら、三人娘が手をあげた。


「私達で治療できるかも!」

「魔力を使って傷の治療を実験してみたい!」

「小鳥の治療は出来たので、もしかしたら可能かもしれません。人体実験になりますが、悪人に人権はないのでちょうど良いかと。」


コノハナ、サクヤ、イワナガが次々に発言した。少し怖いことも言っていたが、目的は治療なので大丈夫だろう。


「よし!何だか分からんがよろしく頼む!」

「「「はい。」」」


元気良く返事をして賊の一人の所に行った。

自分達で大火傷を負わせた盗賊だった。

ぐったりしていて虫の息な賊に魔力の籠った水晶を掲げた。

そこに手のひらサイズの一枚の黒い板を取り出して賊の体に乗せた。


「その板は何?」

「鉱物に魔力を入れると性質が変化したでしょ?色々試していたら偶然治癒力が上がるものが出来てたの。」

「鉱物のままだと魔力を入れる度に別の性質に変化しちゃうけど、加工した物だと同じ素材なら同じ性質に変化することが分かったの!」

「これは炭を捏ねて纏めて伸ばしたものです。魔力を入れるとこのように固く変化します。獣人先生にお聞きしたところ、カーボンと呼ばれる物質に似ているそうです。そしてこれを体につけると自然治癒力が劇的に上がって傷が治ります。 」

「凄い。僕にもやらせて!」

「「はいどうぞ。」」

「個数に限りがあるから、全員は助けられないのが難点ですね。残りの方はどうしましょう?」

「魔人になられると困るし、殺すか。」

「そうね。その方が簡単でいいわね。」

「中兄も中姉もちょっと待って!炭があれば助けられるんだから、僕が炭の板を作るから!」


急いで近くの木々から炭素を抽出して見よう見まねで炭の板を百枚程生成した。


...我が生成した物は性能が向上していた。

なんと使い捨てだったはずなのに再利用可能になっていた。

炭素をだけを固めたのが良かったのだろうか?

今後の研究課題がまた増えた。


完治させるとまた襲ってくるかもしれないので、自力で動けるようになったら治療を終わりにした。

とりあえず、全員助かったのを確認してもう悪さをしないように言い聞かせ、職が欲しければ王都に来るように行ってから離れた。


色々邪魔が入ったせいで、夜になる頃にようやく第四宿場町に着いた。

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