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みんなで綴る物語  作者: サラサ
31/73

年長期1

赤ちゃんはふにゃふにゃで怖い。


抱かせてもらったのだが、我もまだ小さいせいで手に余る。

バランスを崩して落としそうになったらあり得ない体制になっていた。

骨が入ってないのかと思うくらい柔らかかった。

首もすわってないからフラフラしていて、ちょっと怖い。


「80経験値獲得」

「次のレベルまであと118です。」


初めて赤ちゃんを抱いた経験値かな?

この他にも、初めて赤ちゃんのおしめを変える手伝いをして40経験値をもらい、初めて赤ちゃんをお風呂に入れる手伝いをして52経験値をもらった。

生まれて一週間後に命名の儀が行われた。

我の甥っ子はゲンブと名付けられ、教会に祝福を受けに行った。

よく考えたら我を含めた兄姉達は放浪していて祝福を受けていない気がする。

ついでに我らの祝福もしてもらおうと提案したら、我が生まれて一週間目に獣人達が来て祝福して帰っていったそうだ。

その頃から我が特別な人間だと家族は知っていたそうだ。

家族は我が特別な人間だから大事に育てていたのかと思ってがっかりしていたら、我が生まれたときに”この小さな命をみんなで守ろう”と決めたので、後から特別な人間と分かっただけで気持ちは変わらなかったそうだ。

むしろ一番大切だから、大変な目に会うだろう我の未来を守るために、みんなで強くなって少しでも我が普通に暮らせるようにしたいらしい。

例え世界を敵に回しても我を守り抜くのだそうだ。

愛情が深すぎる気がするが、とても嬉しかった。


春になった。

我は五歳になり、中等クラスに入るため編入試験を受けたが、まだ少し体力が足りなかったようで、落ちてしまった。

もう少し鍛練を増やして再度挑戦することにした。

キサラギ兄さんは15歳で高等クラスB級、ヤヨイ姉さんは14歳で高等クラスE級、ウツキ兄さんは13歳で中等クラスA級、サツキ姉さんは12歳で中等クラスB級になった。

ヤヨイ姉さんは14歳なので、そろそろ本格的に結婚を考えなくてはいけないのだが、まだ学問所に通うようだ。

普通の女性は初等クラスを卒業したら、2~3年花嫁修業をして12~14歳でお嫁に行くのだが、ヤヨイ姉さんはまだ嫁入りする気が無いようだった。


ここでの勉強も後少しだった。

王都の建設が終わり移住する人達が次々に町を出ていっていた。

父とコクヨウ兄さんと母達半分は、王都の受け入れ準備で先に行っていた。

ヤヨイ姉さんと残りの母達は、赤ちゃんがもう少し大きくなるまで待ってから行くそうなので、我と兄姉達も王都の学校が開校するまでは残ることにした。

王都の学校に先生も通ってくれるので、特に変わることもないのだが、なんとなく寂しい気持ちがした。

残り少ない期間を楽しむためか、学問所でも春祭が催されることになった。

今までの学習の発表ということで、我と三人娘もS級の研究発表をすることになった。

最近ずっと研究しているのは魔力の活用法についてだった。


第一の目標は魔力を蓄積できる物質を見つける事だった。

魔力は水に良く溶け込んだが、すぐに流出してしまって使えなかった。

少し時間がかかるが、鉱石にも貯められることが分かったが、取り出す事は出来なかった。

しかし魔力を帯びた鉱石は変質して炎耐性のある鉱石になったり、固さは変わらず凄く軽くなったりした。

込める魔力の違いで性質が変化するようだった。

これはこれで利用価値があるので、今後さらに研究することにした。

次に水晶を試したところ、伝導率も良くかなりの魔力を貯められることが分かった。

第一の目標の魔力を蓄積する物質は水晶に決まった。


第二の目標は魔力に規則性を持たせて大気に干渉し、水を生成させることだった。

我は空気から水を取り出すより、地下水を汲み上げる方が大量に水が出ると思うと告げたのだが、何もない所から水が出る方が皆が驚くとのことだった。

魔力で大気を冷やせれば水滴が取れるから、頑張ればコップ一杯分は取れるかも?と言ったらやる気が無くなったらしい、素直に地下水を汲み上げる方向になった。

意外だったのは地面に穴を開けることなく地下水を吸い上げることができたことだった。

まるで水蒸気のように白く吹き上がる地下水を一ヶ所に集めていってお風呂一杯分になった所で終了した。


第三の目標は魔力でお湯を沸かす事だった。

要するに単にお風呂に毎日入りたいという欲求から研究が始まっていたのだった。

温度の変化は簡単に出来るようになっていたので、問題なく適温になった。


我は席を外そうと教室から出ようとしたら、コノハナとサクヤが両側に立って我を拘束し、イワナガに服を剥ぎ取られた。

子供なんだから皆で入りましょうと笑顔で言われたが、良いのだろうか???


...いい湯だった。

少し逆上せてしまった。

春祭の発表では、純水ではなくミネラル入りの温泉にして楽しもうと提案した。


春祭は大盛況だった。

温泉は外に四ヶ所開設することにして、浴槽や脱衣所やそれらを囲む天幕等の設置は三人娘の親達に頼んで職人に作ってもらった。

我らは定期的に温泉を入れ換え、結構忙しい思いをしたが、とても楽しかった。

商人達は誰でも使用可能に改良したら販売させてくれとか、開発に必要なら資金援助もするからとか、物凄い勢いでしゃべっていった。

まあ、多分三人娘の親達が独占するんだろうなと思ったが、とりあえず頷いて愛想笑いをしておいた。


しかし、三人娘達は侮れない。

このまま車両を引くための動力の開発に進めれば王都の暮らしもぐっと楽になるのだが、次の欲求は食べることのようだった。

何でも新鮮な魚介を食べたいから鮮度を保ちつつ輸送できるように試みるのだそうだ。

我は雪山では野菜を雪に埋めてたら長く保存出来たことを教えると、冷蔵保存とか冷凍保存を試そうという話にまとまった。

王都の学校では冷凍保存や冷蔵保存の研究をすることになりそうだった。


甥っ子が3ヶ月になった。

ようやく首がグラグラしなくなり、何か周りをキョロキョロ見ている気がする。

時おりニコニコ笑っており、機嫌が良いようだ。

まだ寝返りは出来ないのだが、仕切りに足をひょこひょこ動かして布団を蹴っているので、少し上の方に移動していた。

我が手を差し出すと小さな手で我の指を握ってくれた。

赤ちゃんは本当に愛らしい。

健康にすくすく育ってくれと思い、我が赤ちゃんの時に人と獣がしたように職業を[赤ちゃん]にしておいた。

これで早くレベルが上がれば丈夫になるだろう。


一週間ほど経って生後100日になったので、御食い初めの儀をすることになった。

一番年長者に赤ちゃんに食べさせる真似をしてもらうのだが、家族で一番年長なのはムツキ姉さんの母であるウマー母さんだった。

コクヨウ兄さんにも御食い初めに参加してもらいたいので、獣人に頼んで連れてきてもらった。

母達もコクヨウ兄さんについて一緒に来ていた。

父は残念ながら王都の業務で来られなかった。

ゲンブの為に作った新しい膳と椀と箸を揃え、我が獣の国から貰ってきた新鮮な鯛を塩焼きにした尾頭付きの鯛と赤飯を盛った。

歯固めといって黒曜岩と玄武岩も添えられていた。

コクヨウ兄さんとゲンブの名前と同じ石なので、用意してみた。

無事に御食い初めも終わり、久しぶりに会ったコクヨウ兄さんと母達とのんびり一晩過ごしてから、獣人にまた王都へ送ってもらった。


一月後、ゲンブがお座り出来るようになった。

職業を赤ちゃんにした効果なのか、平均より少し早い気がするが、お座り出来るようになっていた

お座りが出来るようになったら王都に移住することになっていたので、あらかた片付いていた荷物を馬車に載せて、町の人達に別れを告げた。

三人娘が家族の一員のように付いて来ていた。

もうすでに王都に家を買ってあるらしく、アインの町にある三人娘の実家はそのまま商館として使用されていた。

商館だと寝起き為難いそうで、移住するまでの間、三人娘は我の家に居候していた。

今回ようやく移住することになったので、王都に着けばもう夜中に布団に潜り込まれる事も無くなるとホッとした。

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