年中期6
先生が来た。
我が城下町に通うのかと思っていたが、自由に歩き回られると困るようだ。
コクヨウ兄さんが公務をしている間は、侍従達はそちらに行ってしまうので、我の監視が手薄になるから部屋に閉じ込めておきたいらしい。
「ミズ様、お久しぶりです。体調はいかがですか?」
「先生、こんにちは。お久しぶりです。毎日大変ですが、なんとか元気です。」
口での挨拶はそこそこにして、念話しつつ授業を開始した。
『実は毎日のように城からの使者が教会にみえて王様の治療をしろと言ってきているんです。』
『???、治療は城の医者達が担当してるはず?』
『ミズ様がコクヨウ様を治した事を神獣様の奇跡としたことが原因です。』
『「コクヨウ様を治したのなら、その兄君であられる王を治さないのはおかしい。」だそうです。』
『国母の兄は自分の子供を王位につけるため、甥である国王に毒を盛っていたようですが、第三王子が出てきたことで、今国王に死なれると王位継承がコクヨウ様の系譜に移ってしまうので、なんとか助けて自分の娘を王妃にして孫を王位につけようと方針を変えたようです。』
『???、コクヨウ兄さんにはまだ子供はいないはず?』
『ミズ様達が王都にいらっしゃる少し前にムツキ様とそういった関係になったようです。現在は懐妊が確認されています。』
『いつのまに!!』
『我々が見たところ、男の子を妊娠しています。ミズ様の甥ということになりますね。』
『そうかー。とうとう我よりも小さい子ができるのかー。もう末っ子じゃない!』
『いえ、生まれるのは甥ですから、兄弟で一番下なのは変わりませんよ?』
『...そうだった。でも楽しみだ!コクヨウ兄さんは知ってるのかな?』
『王都には知られたくないようですので、コクヨウ様にも秘密にしていたようです。』
『問題は、国母の兄の密偵に知られてしまった事です。既に情報が渡っているから治療の催促に繋がっていると思います。』
『如何されますか?』
コクヨウ兄さんのお兄さんは、まだ見たこともないから特に助けたいとも思わない。
コクヨウ兄さんは王位に興味はなかったはず。
ムツキ姉さんが妊娠してるなら町に戻りたいはず。
我が推測しても仕方ないから、今夜にでも聞いてみよう。妊娠の件は我から伝えるのはおかしいかな。先生から教会経由で聞いたことにしよう。事実だし。
『今はなにもしない。でも近いうちに町に戻りたい。』
『分かりました。城下町の教会まで来ていただければ、すぐにお送りできます。』
午前の授業は終了した。
昼食が運ばれてきた。
本来なら従者の身分だから、食堂に食べに行くのが普通なのだが、寵愛を受けている小姓と思われているせいで、迂闊に外にも出られない。
コクヨウ兄さんも勘違いされている方が、色々便利だからと否定しないし。
食事も運ばれてくるから楽だけど、毎回毒入りなのはコクヨウ兄さんには内緒である。
食事は先生の分もあった。
コクヨウ兄さんが、頼んでいたらしい。
運ばれてきた料理を見て、先生が眉根を寄せた。
『いつもこのような食事なのですか?どれも冷めきっている上に毒入りとは。』
『ああ、見たんですね。いつも酷く不味い上に、毒入りです。お腹は満たされるので我慢していますが。』
『城下町の料理店の方がこれよりは数倍良いですね。』
『王族の食事は毒味されながら運ばれるそうで、熱いものは冷めて、冷たいものは温くなるそうだけど、最後に運ばれる時に毒入れ放題だから意味無いですね。』
『ミズ様なら料理の毒を消去できるのでわ?事象を書き換え可能なら、味だけでなく温度も改変できると思います。』
『それは考えつかなかった。できるかやってみよう。』
見た目まで変えると給仕の人間にばれてしまうので、毒を消して塩分の割合を書き換えた。
料理の経験がないので、適正な塩の量がわからず、旨味の成分がどれかも分からず、失敗した。
次は頑張ろう。
「90経験値獲得」
「次のレベルまであと234です。」
料理の経験値かな。まずは旨味成分の解析からやろう。




