年中期3
魔物が増えた。
今日も両親達が原因調査に出掛けている。
獣人先生(名前はあるのだが発音できないので、先生としか読んでない)は何かしら知っているようだったが、教える気は無いようだ。
試しに我が聞いてみた。
少し考える間があったが、念話で教えてくれた。
この国の王様が病気で死にかけていること。
正式な跡取りであるコクヨウ兄さんが生きていると知られたこと。
王様にはまだ子供がいないので、前王の妹の子供を次の王にしようとしていること。
前王の妹は元第二婦人(現在国母様)の兄に降嫁したこと。
コクヨウ兄さんが現れたことで、第一王位継承者が変わってしまい、表だって殺せなくなったので、魔物をけしかけていること。
半殺しにした人間を町の近くに捨てることで、魔人にしていること。
全員が魔人になるわけではなく、ほぼそのまま死んでいること。
死んでしまっても強い怨みの感情が残り、辺りに漂って動物に取りつき、魔物が増えていること。
このままでは農作物にも魔の被害が出るかもしれないこと。
やはり平和に暮らすためには根本を叩かないと駄目みたいだ。
獣人先生に対処をお願いしたら、権限がないと断られてしまった。
仕方ないので、人と獣に相談した。
「...難しい。」
「ミズ様、申し訳ありません。個人を消すのは難しいのです。王都一帯の消滅や王都一帯の人間抹消なら簡単なのですが...」
「ミズ様の【ステータス】でしたら、個人から周りの環境まで幅広く書き換え可能です。見える範囲であれば。」
...環境ということは、魔が入れない空間にすることも可能ということか?
見える範囲ということは、山に登って町を見下ろせばかなりの範囲を書き換え可能になる。
早速両親に山に行きたいと言ってみた。
魔物退治ついでに登ることになり、両親と兄姉と一緒に行くことになった。
途中出会った数匹の魔物を退治しながら頂上についた。
町を見下ろし、見える範囲で【ステータス】を見てみた。
町の回りは農地ばかりだが、所々に酪農している箇所や池で魚の養殖をおこなっているのが見える。
細かく設定せずに、エリア毎で書き換えることにする。
アインの町と東エリア、西エリア、南エリア、北エリアの5つに魔排除を書き加えた。
これでこの土地では安心して暮らすことができる。
満足な笑みを浮かべて頷いていると、コクヨウ兄さんが話しかけてきた。
「景色がいいな。」
「うん。町がよく見えるよ。そういえば、王都はどっち?」
「そうだなー。あっちの方に見える山の向こう側かな。」
「そっかー、じゃあ見えないねー。」
守りは固めたけれど、いつか根本を叩きに行こうと思いながら山を眺めた。