幼児期5
町に来ていた。
山から山へ移動ばかりしていたのは逃げていた為なんだと一昨日聞いた。
まだ覚えていない単語は聞いてもよく分からなかったが、前後の話の流れから推察することはできた。
要約すると、
1.王様の第二婦人が、自分の子供を王にするために、第一婦人と第一王子を殺した。
2.陰謀に気づいた王様が妊娠していた第三婦人と侍従を逃がした。
3.逃がすための護衛が父と母だった。
4.王に気づかれたと知った第二婦人は王様も殺した。
5.今は第二婦人の一族が実行支配している。
6.第三婦人は王子を産んで死んだ。
7.大兄さんは第三王子である。
8.第三婦人の侍従達か父の奥さん達だ。
9.十五年たってもまだ殺し屋がやってくる。
10.大兄さんは王位には興味がない。
11.平和に暮らすためなら元凶を何とかすることも考慮する。
ということで、元凶を何とかすることにしたらしい。
元第二王子の現在の王様は陰謀を知らなかった可能性もあるので、まずは話し合いができたらいいなと思っているらしい。
実際戦闘になったら、我が家の人間でなんとかできるのだろうか?
その辺の準備の為に町におりてきたらしい。
まだ幼い我には詳細を知らせることは無いようだ。
我にできることも無いようなので、初めての町を探検することにした。
町の中央から歓声が聞こえた。
近くまで行ってみると、そこは広場になっており、人垣の中で何かやっていた。
一際高い歓声が聞こえてきたので、人垣の足元をくぐって一番前まで行ってみた。
茶色の長い髪を後ろでひとつにしばって、剣を掲げている大姉さんがそこにいた。
「あれ?ミズちゃんひとりで散歩?危ないよ?お姉ちゃんと行こうか。」
我を見つけて話しかけてきたが、姉の足下に人相の悪い男達が転がっていた。
「大姉、その人達どうしたの?」
姉に手を出して返り討ちになったのだろうと思ったが、一応聞いてみた。
「ちょっと礼儀がなっていなかったから、丁寧に教えていたところです。」
「これで彼らも少しはまともになるでしょう。」
「ふざけんな!小娘だから手加減してやってんだ。」
「そうだそうだ。親分が負けるわけがねぇ。」
「そうですか、まだ分からないようですね。ふぅ。」
まだまだ指導は終わらなそうなのでそっとその場から抜け出した。
広場から町の外まで続く大通りを歩いていると、左右に立派な建物が見えた。
どちらも入り口に人垣ができていた。
...両方とも兄姉たちだった。
一方では、赤髪を短く切り揃えている中兄さんと、橙髪を後頭部でくくっている中姉さんが、何やら言い争っている。
もう一方では、黄髪をキノコみたいな形にしている小兄さんと緑髪を肩で切り揃えている小姉さんが取っ組み合いの喧嘩をしていた。
...いつものことなので素通りする。
この町は教会、学問所、商業組合、病院、傭兵訓練所、職人育成所、自警団等があり、かなり大きな町だった。
今までは母達に勉強を、父母や兄姉に武術を教わってきたが、父達は何やら忙しくなるそうで、この町に定住するから、好きな所で学ぶようにと言っていた。
中兄さん達もそう言われてどこに行くか言い争っているのだろう。
我は最初に目に入った教会でこの世界のことを学ぶ事にした。
大兄さん:黒髪、黒い瞳、15歳
大姉さん:茶髪、茶色い瞳、14歳
中兄さん:赤髪、赤い瞳、13歳
中姉さん:橙色の髪、橙色の瞳、12歳
小兄さん:黄色の髪、黄色の瞳、11歳
小姉さん:緑色の髪、緑色の瞳、10歳
我:青色の髪、青色の瞳、3歳