表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
片翼の纏輪  作者: 物語あにま
人と半天使と堕天使と
81/153

重き選択の天秤

 路乃重羽という半天使の情報をほとんど集められないまま、その日は来た。レイとオモハの決闘は、東京支部の半天使ご用達の訓練場で行われる。


 その広さと来たら、今までの訓練場が小学校の体育館だったのでは? と勘違いしてしまうくらいだ。さすがに東京ドーム単位までいくことはないが、それでも五倍以上の広さはあるだろう。


(うわ、静岡や長野の支部とは比較にならない大きさの訓練場だ……)

(ヘヴンズが一番力の入れる支部なだけはある……ということだろう。それより私たちの相手はすでにスタンバイしているようだが?)


 ツバサの言葉通り、訓練場の中心にオモハはいた。そこで一つ、レイは訓練場に入ってきたときからの疑問をぶちまけた。


 それは、二人を遠巻きに囲んだヘヴンズ職員たちの野次馬である。


「こんな大勢の人に見られるなんて、聞いてませんよ! それに皆さん仕事はどうしたんですか!?」

「ここにいる人間は皆休憩中ですわ。それに、口約束なんだから、当然伝え忘れたこともありますわ。それとも、ここまで御止めになります?」


 オモハは、レイたちの状況を分かっている。だからこそ、当たり前の答えが返ってくると分かっていても質問するのだ。


「……そんなことは言ってません」

「ふふ♪」


 可笑しくなるようなことは一言も発していないつもりだったが、オモハはもう箸を転がしても笑う次元んで興奮しているらしい。


「アレが《不屈の双翼》か……まだウィジェル歴半年だろ? その上オモハさんとやりあうって……」

「まあ、あの人のころの世代は大概ヤベエって聞くしなあ、十年に一回くらいはそういうのも沸くんじゃね?」


(なんか僕までボロクソ言われてるし……)


 レイがどうにでもなれと諦めていると、東京支部の隊員らしき半天使の男性が近寄ってくる。らしきというのは、あまりにも自然な、それもムラの無い茶髪と瞳だったからだ。茶色というとウィングズの第二師団をまとめていた《礫鎧(ザ・グラベル)》を思い出す。今は監獄囚と同じ扱いをされているらしいが、ツバサがどんな反応をするのか気になるところである。


 ――それはともかく。


 男は審判役として選ばれたのか、運動会で使うような紅白フラッグを手にしていた。そして、念を押すように確認。 


「ルール無用の決闘だ、準備は出来ているか?」

「はい」

「よろしくてよ。それと、たとえ審判と言えど安全ではありませんので、開始したらとっとと退散してくださる?」

「イ、イエッサ!」


(あ、慌てて距離を取ってた……)


 その様子はもう命からがらといったようだった。レイは、そんなにオモハの戦闘は凄惨なのかと恐れを抱きつつ、精神と表情を引き締める。 


 対するオモハは、やたらふわふわとした雰囲気を出し続けている。見た目だけはおっとりしているからかもしれない。彼女は、脱兎のごとく逃げていく同支部の仲間を詰まらなそうに眺めた後、レイに向けて笑顔を見せた。


「これで邪魔はありませんわ」

「そうまでして僕の何を……?」


 本気で、レイの実力を知りたいだけなのか。それとも真の興味が他に存在するのだろうか。


「戦ってみればわかりますわ」


 オモハは結局はぐらかすだけだった。


「両者所定の位置に着くように! なお、開始はこの宣言から三秒のカウントダウンが完了してからとする!」


 審判役は、身の安全を第一に考えて両者に視線を泳がせ、男性にしては良く通るさわやかな声で宣言を始めた。


 二本のフラッグが水平かつ平行に並べられる。続けて、彼はカウントを取り始めた。


「三……」


 レイはいつもの構えに移行し、オモハは自然体を維持する。この時点で、両者は纏輪を召喚していた。


 双翼の降臨型であるレイと、天使の輪のようにかかるオモハの纏輪――天輪型が一度に顕現する様は、伝説の一部始終のようだ。。 


「二……」


 とっくに交差していた半天使二人の視線が、より強く絡まっていく。


「一、始めッ!」


 レイは一足飛びでオモハに接近しようと試みるが、いち早く相手の重圧が高まる。


(まさか、いきなりッ!?)

(ボーッとするな! こうなれば突っ込むのみだ!)

(ああ、もう脳筋だなあ!?)


 しかし、ツバサのおかげで躊躇することは未然に防げた。だが、それはオモハも同じで、纏輪開放が止まることはない。


「纏輪開放、傾きなさい《天秤(てんびん)》」


 重き選択の天秤が傾く。

お読みいただきありがとうございます。よろしければブックマーク、評価、感想等お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ