へヴンズ防衛戦線
倒壊する駅内部。
レイが意識を失った後、支えを失った瓦礫たちが降り注ぐ。
「レイッ!」
(気ィ失ってるか!?)
数多の悲鳴が聞こえる中、クロは纏輪をソードシルエットモードに移行した。
(仕方がねえ奴だぜ、全く。俺が支えてやるから、さっさと起きやがれよ!)
こんな日のためにクロが頭を下げてまで教えを乞うた技がある。ウィジェルの決定的な弱点を補うために開発された技術だ。
クロの纏輪は薄く発光を始める。
「深層過剰光! 絶ち切れ、《天絶》ィィ!」
ハガネが開発し、フジミに伝授した技。その名も深層過剰光。
纏輪解放したウィジェルにしか扱えない技術であり、これからの闘いに必須となるスキルだ。
クロはこれを教わるために、ハガネに頼み込んだのだ。
自分の成長に限界を感じていたクロが、一歩進むために得た刃。異常活性させることで纏輪の秘めたる能力を程々に引き出し、終了後のデバフ効果を無くした奥義。
「纏輪刀二式・土塊ッ!」
絶断の力を纏ったソードシルエットが瓦礫を微塵切りにしていく。高速の斬撃は鉄もコンクリも等しく切り裂き、粉々になった欠片は土へと還る。
「このクロ様と《天絶》に絶てねえもんはねえんだよおお!」
「全く。良いカッコしいですね! でもお後が宜しくないですよ!」
「あ!? フタバお前それ……!」
フタバもハガネから深層過剰光を授かったらしい。両くるぶしからちょこんと生えた双翼と桃色の御髪が輝きを放っていた。
「そういうことです、私もうかうかしてられないってことですよ! 《時止め霰の氷世界》! 」
落ち行く破片たちに凍結の雨が降り注ぐ。
駅内に、あっという間に氷の柱が乱立し始め、幻想世界が創られていく。遂に怪我人を出さずに騒ぎを収めた。
「す、すごい……ってレイを助けないと!」
「マコトさん、ご無事で何よりです! お父様とお母様は!?」
「私たちは無事よ」
「おお、これは見事な風景……」
硬直して動けなかった片翅家の三人は、各々現状の把握に努めているようだ。特にマコトの切り替え様はすさまじい。
レイを起こすためにフタバたちも駆け寄る。
「起きてください、レイ君! 彼女を……ツバサさんを追わないと!」
「うっ……ここは、そうだツバサ……いっつ!?」
どうやら失神自体は浅いものだったらしい。直ぐに目覚めたレイは肩甲骨の辺りに痛みを感じ、顔を顰める。
纏輪で瓦礫を受け止めた代償は存外大きかったようである。
「レイー、あんまり無茶はしないって約束したでしょー!」
「ごめんお姉ちゃん、今はそれどころじゃないんだ」
「あう!」
抱き着いてくるマコトを引っぺがして、レイは膝に力を入れた。
「無理はしないでください、動けますか!」
「うん……行こうフタバ、僕の方は問題ないよ。それよりもツバサとあの堕天使たちを止めなきゃ!」
「止めるにしても奴ら飛んでやがるんだ。俺はガンシルエットじゃ何も出来ねえし、精々フタバの《候空》くらいしか――ってレイは空中戦が得意になったんだったな」
レイの纏輪、《天越》はあらゆる法則に縛られない、あらゆる障害を越えるための力。その力を使えば、空中に足場を作るとんでもない技だって使える。
つまり、ここからはレイとフタバの独壇場だ。
「俺はホトリちゃんの手伝いに行ってくるからよ。さっさとカップルパワーであのフォール共をぶちのめしてこいや!」
「オーケー、クロ!」
レイとクロは拳を突き合わせて、互いに信頼し合う。
ここから先は、三十分でケリを着ける。そのつもりで、レイとフタバは全力疾走を開始した。
――目指すは、ツバサの下へ。
夏季休暇もそろそろ終わる頃合いですので、明日から大体22:00に投稿します。
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