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片翼の纏輪  作者: 物語あにま
片翼の半天使たち
12/153

堕天使たちのサプライズプレゼント

「ツバサ……」


 無線のインカムは切っておいた。発信スイッチを入れなければ問題ないが、念には念を入れてだ。これで、ここでの会話は支部の指揮者オペレーターにも隊の皆にもにも伝わらない。

 全てはツバサという少女を知ってみたいが故のワガママだった。


(ウィングズについて聞きたいこともある)


 レイは話を切り出そうとツバサを見つめた。すると彼女は、存外驚いたような、怪訝そうな表情をしていた。


「ん? 私は名乗った覚えがないぞ。なぜ私の名を知っている」

「え、は?」

「とぼけるのか? まあ、私もカタバネの情報を秘密裏に入手しているからお互い様かな、フフフ」


 個人情報が駄々漏れである。

 そういえば、レイはツバサに名前を教えていなかった。そこはウィングズの情報網を褒めるべきなのだろう。納得はしていないが。


「いやコードネームなんだけど、僕らが勝手に呼んでるんだ」

「随分と粋なネーミングじゃないか……ああそうか。あの方か」


(……あの方?)


 脳内で自己完結したのか、ツバサはもうその話題に触れはしなかった。


「それで? 私が誘惑したとはいえ、カタバネが付いてきたことに委細違いはないはずだ。早く用件を言ってみろ」


 レイがツバサに興味を持っている。それがバレている、とは信じたくない。それ以外で考えるなら、もしくは、彼女の方から好奇心で近づいたか。

 降臨型のよしみ、というところがいまのところ都合の良い最大の解釈だ。一度目では、レイなど視界にすら映さなかったというのに。現金で、傲慢な人柄なのだろう。


「じゃあ」


 任務を放棄して、イケナイことに首を突っ込んでいる。その自覚はある。

 レイは、幸か不幸か、その止まり方を知らなかっただけ。現実とは冷酷で、そこに一時停止の線など引いてくれてはいないのだ。


(いや、言い訳はやめよう。僕はツバサと話がしたかった。それで良いじゃないか)


 罰なら後で受ければいい。ツバサと密会する価値は、レイの中でそれだけ高い位置にある。


 ――それで良い。


「どうして、ウィングズはフォールを天使と崇めているの?」

「はあ?」


 ツバサは、訳が分からんと、眉を潜めた面を見せた。

 リンゴはなぜ赤いのかとか、記号の乗や商の原理はどうなっているのかみたいな、そういったことを質問されたのだ。「はあ?」と返したいのは、自然なことだった。


「それは、天使様が偉大な存在だからだろう」

「……ああ。そ、そうだね」


(う、ん。もう一回試しても、同じことの繰り返しになるかな)


「もう一つ、名前を教えてくれないかな」


 これは、流石に出過ぎた行為だっただろうか。

 緊張で汗が出ればまだ可愛いげがあるが、生憎この体は、そんな生理現象は起きない。

 結論、レイの心配は杞憂に終わった。


「いいぞ。主様に戴いた私の大切な名前を尋ねるとは、貴様を見誤っていた。カタバネは図太いな!」

「う、うるさいなぁ! 分かってるよ!」


 二度しか会っていないのに、見破られるのか。自分の振る舞いに、中学以来ぶりで頭の処理を割くレイだった。

 今さら性格の路線変更なんてできそうもないが。


「名は翼、姓は暮色。暮色くれしきつばさだ。夕暮れを彩る一枚の片翼と知るがよい!」

「暮色、翼」


 やっと、遂に答えを聞けた。

 威風堂々と路地の一部を占領する仁王立ちに、その背中に、巨大な片翼を幻視する。それは、レイの憧れが生み出した産物だった。

 ツバサは、実際には纏輪を召喚していない。ただ風格のみが、その幻を作り出していた。


「その目。日々を怠惰に生きる塵芥から脱し、無闇やたらに生き延びるのをやめた、尊い眼差しだ。貴様の睨みは実に心地良い。はっきり言おう、好みだ」

「ありがとう、でいいのかな」


 口の端を裂くような豪快な笑み。

 何も知らずにいられれば、どんなに気分良く見られたのか。

 そうは言っても、ラブコメディ染みたことは始まらないはずだけれど。

 レイが、己の勢いに遅れをとっていることを察知したらしい。ツバサは上機嫌そうだった。


「良いぞ! 私が許す!」


 よくもこの高慢ちきが外界で育ったものだ。常識外れも一周外れ通せば、ここまで清々しいということにビックリする。


(ウィジェルになる前は、違ったりしたのかも)


 レイとてウィジェルだ。ちょっぴり勝ち気な、ともすると危なっかしい性格になったのは否定しない。

 だからツバサも、前は粛々と生活していたと断じはしない。あくまでも可能性。


「今度は私の話を聞いてもらおうか」


 これは予想の範疇。

 ヘヴンズ戦闘員のレイに接触したリスクを犯したのなら、当たり前の要求だろう。むしろ安いと言いたいくらいに。


「その気になれば、私は貴様を三秒で拘束できる。そのことを頭に留めて聞け」

「ああ、分かってる」


 その程度の実力差は理解している。クロを相手に一本も取れない、レイのつたなさでは反応すらできるか怪しい。


「固くなるな、私の言いたいことは一つだけだ」

「……」


 ――ウィングズに入れ。


「な、簡単だろう」


 ツバサは、本人的にはごく当然の感覚でそう告げた。世界の半分でも分けてくれそうな言い方だった。


「今日一日、貴様ら二人を見ていた。そしたらどうだ、あのゴミ共。我ら有翼の新人類を、化け物と呼ぶ愚か者達。あれが地上を蝕んでいると思うと反吐が出るだろう? おかげで少し仕置きをしてしまった」

「手を出したのか!? まさか……」

「ふっ、殺してはいない。なに、ほんのちょっと私刑に処したのさ」


 最悪の一歩手前といった所か。一線を踏み越えていないようで安心する一方、結局は暴に頼ったのかと残念に思う自分がいる。

 テロ組織にそれを望むのが馬鹿らしいと、笑いたければ笑え。


「あの翅無し人間たちに肩入れする必要がどこにある。諦めて天の御使いを受け入れろ。我らウィングズは、それを人類に促すことが目的だ」


 この堅苦しい表現を要約すると「フォールになされるがまま、地球を明け渡せ」だろう。これではヘヴンズと対立する……いや、妨害に出るのも仕方がない。


「さあ、選べ」


(ここが……別れ目なのか? 本当に?)


 これは一方的で、サディスティックな命令だ。従わなければ戦いは即発。一瞬で潰される。

 ツバサは、既に一ヶ月レイを待ったのだから、答えを考える期間を設けるとは思えない。


「僕は……」

「僕は?」


何を悩むことがあるのだろう。自分本意で他人を汚す、そんな人間を守るか否か。


『レイは……どうしたいの? ヘヴンズで……闘いたい?』

『レイは人の子で、私と母さんの子で、家族だ。お前の原点は消えないんだ』


(母さん、父さん)


 違う。レイは、人間が好きだから人間を守るのではない。


『僕は、母さんと父さんの子で、お姉ちゃんの弟、だよね』

『当たり前だよっ!』


(お姉ちゃん)


 人間でありたいから、人間を守るのだ。


『僕たちは、人間だ……』


(そうだった)


 本当に、何に迷う必要があった?


『それでも、私はレイ君に汚い部分をぶつけてもいいですか?』


(フタバから、まだ、何もぶつけてもらってない僕が)


 レイは奥歯を噛み締める。


(人間を辞めるわけにはいかない)


「僕は人間だっ! フタバァァァァァァッ!」

「そう言ってくれると信じていましたっ!」


 持てる声量を使い果たすほどに、力一杯叫んだ。

 そして嬉しいことに、応えてくれる人がいる。

 両くるぶしに双翼を宿した少女。フタバは鬼の形相を浮かべて、路地を突っ切っていた。


「レイ君に変なこと吹き込まないでください!」

「クソッ、長いこと話しすぎたか。面倒なァッ!」


 ツバサもアホではない。フタバに合わせ、金色翼を最小限に展開し、迎え撃つつもりだ。


「ヤッ!」


 風切り羽のような鋭利なハイキックを無遠慮に放つ。

 フタバの纏輪はほぼ足先にあるので、構造的に蹴り主体のスタイルになる。

 それを迎撃するのが、クロが強いと評した降臨型でなければ、この一撃で決まっていた。

 小さくしてなおフタバの金色翼を上回るそれで、鍔競り合っている。


「ほう、二枚翅の女か。ちょうどいい、貴様も捕らえてくれる」

「誰がそんなことをさせますか!」

「その通りだぜえっ!」

「ムッ……!」


 頭上から降ってきた乱入者に、またもツバサの表情が歪む。

 慌てずに退いた、元々ツバサがいた所にクロのソードシルエットが突き立った。


「また会ったな、ツバサだっけか? 俺のダチ公を素行不良にしようとしてんじゃねえよ!」

「全く……コバエか、鬱陶しい羽虫めェッ!」


 激情に呑まれたツバサが 肥大させた金色翼で押し潰しに掛かるが……そこに五柱の条光が降り注ぐ。

 飛び退いた体勢で崩れた絶好のタイミングだったが、降臨型は伊達ではない。ベールのようにツバサを包み、攻撃を全て防ぎきる。 


「今度はなんだ!」


 最高潮にイラついた声で振り返る。微妙な距離を置いた場所に、ブルーハワイ色の髪の平均的な中学生程度の身長の少女がガンシルエットを向けていた。

 身体の年齢だけは部隊最年少で止まっている少女、ホトリがキツイ視線を送っている。


「レイさんは私に必要な方です。いないと本格的に朝が困るです」

「ハ、ハハ、ホトリちゃん」


 どんな理由でも必要としてくれているのはありがたい。本音は別にあると信じたいところだ。


「お二人を呼び戻した甲斐ありました。近くにいてくれてよかったです」

「いきなりレイの無線が切れたってから、度肝抜かしたんだぜ」


 推測するに、通信が切れた地点の座標を指揮者が送ったのだ。それから今の今まで、機会を、チャンスを探っていたのだ。まさかあの選択が吉と出るとは、自分だけの考えはいまいち当てにならない。

 これぞ嬉しい誤算だ。


「俺たち四人が相手でも余裕ぶっこけるならこいてみろや」


 クロがツバサに剣態を突き付けるのは二度目。一度目は忘れもしないあの日。


「ハッ、ほざくがいい。喚くがいい。我が《天継あまつぎ》の力に、慄け」


 ツバサの周りを圧倒的なプレッシャーが渦巻いて、レイたちを一歩退かせる。止めなければいけないのに、動けなかった。

 降臨型の真骨頂を覗きたい、欲が勝っていたのかもしれない。


「纏輪解放!」


 ドス黒く、暮れる空に負けない勢いで、染まる纏輪。またも大気を打ち据えて、巨大な翼が威を示す。



 夕闇に伸びる堕天の翼が、レイたちを見下ろした。



 空気が喉と肺を攻め、唾を飲み込むのに労力を要求される。なんて、些細なことを気にしている余裕は無かった。

 ツバサの纏輪、その名も《天継》が猛威を振るおうとしている。


「普通の纏輪解放なんて目じゃねえな、こりゃすげえ」


 無意識に自分の纏輪、つまりクロの場合は《天絶あまだち》と比べたのだろう。仰天と顔に書いてあるのが丸分かりだった。


「おバカクロ! それより、警戒を強めてください! この三十分を耐えきれば私たちの勝ちです!」


 フタバの言には一理ある。あるが、その程度の対策も無しに、ウィジェル四人を相手取るのは不自然だ。それも最後の奥の手、秘奧でもある纏輪解放を使うなんて。

 強者が強者足り得るのは、力と知恵があるからだ。それをツバサが蔑ろにするとは思えない。

 人を見下す彼女だが、その根底には、根拠となる基盤があるはずなのだ。


「甘く見られては、我が片翼の名が廃る。私直々に手を下すまでもない」


 時代劇の悪役をふと思い出すが、その言葉に応える人間は皆無。


 ――人間は。


「おいで下さい、愛しの天使(、、)様。私が扉を繋ぎましょう」


 瞬間、レイは内蔵器官に鋭い痛みを味わった。

 同時に平和だった街に警報が鳴り、木霊する。跳ね返って跳ね返って、それは圧倒的なスピードで、あっという間に広まる。


「この嫌な感じと警報は、」


 一ヶ月と少々が経過して、まだ耳朶の記憶に残る忌まわしい音。

 フォールダウン警報が、街に混乱のサプライズプレゼントをばらまいた。


「纏輪の能力によるフォールの召喚!? 貴女は狂っているのですか!」

「フォールなどと呼ぶんじゃない、不敬であるぞ。あと私は狂っていない」


 カルト思想の人間は、大抵そう抗言する。そして、発した言葉に責任を持たない。


「それよりも良いのか? 貴様らが大事に分別、管理、保全しているゴミ共。ピンチだよなあ? しかも今回応じてくださったのは、なんとお三方もの天使様だ。私はここで退くが、貴様らは御大層な使命とやらがあるのだっけか? クハハッ!」

「チクショウッ、待てってんだよ!」


 クロは、同色のツバサに対して声を荒げる。良いようにあしらわれたのが気にくわないのだ。

 ツバサが、周囲の背の高い建築物を跳躍の土台として扱う様は、現世を忍んで過ごす隠の者のようだった。


「仕方ないです。私たちは、私たちにできることをしましょう。あれを追わなければ泥沼になるだけで済みます。ですが、今あれを追えば、街は壊滅してしまう」

「「了解っ!」」

「です!」

「それからレイ君は通信をオンにしてください。指揮者から通達が来るはずですから」

「うひい」


(やば。この雰囲気は、後でお説教コースだ)


 支部からの罰則は勿論あるだろうけれど、フタバの方がもっと恐ろしかった。ほぼ毎日顔を合わせる仲で、さっきなど「喜んで、受けて立つよ」と大見え切ったのだから。

 それも仕方がないと観念し、レイはインカムのスイッチを入れた。


『ようやくつながりましたか。もう少しでこちらから強制起動コードを送るところでしたよ。それでは鳳凰寺ほうおうじ双羽ふたば隊は、方位WNW、約二キロメートル地点に現れた牙獣タイプのフォールの駆除をしてください。なお、敵は速度に特化しており、固有能力は不明。十分に警戒するようお願いします』


 長野支部の指揮者がさらりと肌の粟立つことを言う。レイが通信機のスイッチを切ったのは、どこもかしこにもばれていたということだ。

 ともかく、優先なのは民衆を死守すること。それから任務だ。緊急警報も手伝って、ほぼ逃げて始めている国民を先導する必要がある。

 が、今回は状況が状況なので、長野支部の非戦闘員がその役割を担っているそうだ。


「私たちは今回、速やかにフォールを始末しなければなりません。いざとなったら、纏輪解放を使いますし、その時はレイ君とホトリちゃんに後を任せます」

「俺も使うかもしれんから、よろしく」

「わ、分かりましたです」

「無理なく倒したいところだけどね」


 ウィジェルは不老であっても、不死ではない。

 纏輪解放で弱ったところを突かれれば、ナイフの一突きでも死亡しかねないのである。慎重に物事を進めたい反面、レイたちは任務の遂行速度を求められたのだった。



『目標、牙獣タイプフォールが補足できましたか?』


「はい……ですが」


 フタバは言いにくそうに言葉を濁している。

 分からなくもない。

 地表一メートルほどをくり貫いて作った穴蔵の中。物質吸収をオフにしているのか、チーターに翅を生やした珍生物が尻尾を巻いて、居眠りに耽っていた。体高はおおよそ成人男性二人分か。


「眠っています」

「だな」

「兎と亀です」

「僕たちは亀か、なら勝てるね」


 灰色の体表に特有の丸斑点などはないものの、外見はまさしくチーターそのもの。

 目標は、地球にバカンスでもしに来たのか、建築物などお構い無し。鼻付近にある髭が時たま、寝息で震えている。


「フォールじゃなかったらペットにしたかったです」

「ホトリちゃん、君、居眠り仲間にシンパシーを感じただけだよね」


 レイとしては、是非とも視線を合わせていただきたいところだった。


『鳳凰寺双羽隊に通達。各員は、それぞれNESWの方位に分かれて下さい』


 レイ、フタバ、ホトリの三人による三方向ガンシルエット狙撃から、後退したフォールをクロが討つ。

 もしも、目標が想定外の行動を取った場合。つまり、クロ以外に襲い掛かったり、その他不明瞭な仕草を見せたときは、遊撃者以外の二人がカバーをすること。

 以上の点を押さえた上、作戦開始だ。


『各自、襲撃の準備はよろしいですか?』


 戦場のコンダクターこと指揮者の最後通告。あまり気にしてはいなかったが、名前は深山みやま澄玲すみれ。名前の通りの聡明さを感じさせる女性である。 

 四方向に散ったレイたちは、各々好みの言い方で了承を返した。


作戦開始オペレーションスタート! これより私、指揮者ミヤマが最大限のナビゲーションとバックアップをさせていただきます。レッツ・キル・ジ・エンジェルス』


「れ、れっつ……?」


『レッツ・キル・ジ・エンジェルス、です。初めての討伐ミッションですね? 少し力を抜きなさい、カタバネ隊員』

『『『レッツ・キル・ジ・エンジェルス』』』


「れっつ、きる、じ、えんじぇるす」


 一呼吸置いて発言しつつ、レイは誰よりも先に飛び出した。これは組織の都合上しょうがない掛け声。恥ずかしくない。絶対に恥ずかしくない。

 レイがこのセリフに慣れるのに、意外と時間はかからないのは、今の彼は知らぬところだ。


『目標との距離、約百メートル。波状輪開光攻撃、どうぞ!』


 オペレータールームでは、レイたちを示す光点が事細かに点滅していた。スミレの指示で、それらは尾を引いて動き出す。

 スミレにとって声はタクト、システム盤上は楽譜、レイたちは演奏者。


 そして、フォールが(被害者)だ。


 レイたちは、命令を違わずに進めるのみ。

 走りながら降臨型纏輪をガンシルエットに。レイの感覚的にガンシルエットは、スーツケースに目一杯、自分の体を突っ込っこまれた感じなのだ。

 どういう事かというと、つまり非常に動きにくい。筋肉が硬直して肩回りがうまく扱えなくなる。

 チャンスと勝機をリスクの天秤にかけ、ようやく使用するかなと思える代物の水準に達する。


 ――その、くだんのガンシルエットから、輪開光を解き放つ。


「輪開三光、発射ファイア!」


 レイの反対側にはフタバが見える。見えはしないが、交差点左手にはホトリが待ち構えているだろう。

 本命のクロは右手側の視界外か。

 フタバの輪開光数はなんと十、輪開十光ディカプルレイだ。部隊長の貫禄を示すに相応しい。更に、ここにホトリの光条八本が加わり、計二十一本の煌く雨が降った。

 翅付きの牙獣は……まだ動かない。

お読みいただきありがとうございます。

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