商談ケース4:金も信頼もない奴との話し合い2
ある事情で魔王城にも転移できる目印があるので、そこを利用させて頂くのが、俺が考えた秘策だ。
普通に追いかけているだけじゃ、間に合わなくなる可能性もある。されどゴール地点から動けば、行き違いにさえならなければ、確実に出会うことが出来る。
その目論見は正解だったらしく、勇者一行と出会うことは出来た。
ただそれはちょっと早すぎる気もしないでもなかった。なぜなら--。
「うおおぉ! 喰らえ魔王! 聖・破・斬!」
「くっ! 何のこれしきぃ!」
「神よ! 勇者クレインと我らに、どうか癒しの憐みを……!」
「小賢しい! 風刃よ! あの神の下僕を切り刻め!」
「おっと、それは通しませんよ! ロックウォール!」
「よそ見してると危ないぜ魔王さんよぉ! おらおらおらぁっ!」
「っち! この、煩わしい奴らめ!」
--魔王城に来たと同時に出会ったのだから。
場面は間違いなく、勇者と魔王との最終決戦。目印を頼りに転移して謁見の間に出てきたのだが、そこはすでに戦場さながらの様相を見せていた。
計算しつくされた建築様式。その隅々を芸術家たちが珠玉を尽くして作られた壁画で埋め尽くされており、美しいステンドガラスが陽光を豊富に取り込んでいた。そこに置かれているものは、敷かれている毛の長い赤い絨毯や竜の革を使い宝玉で彩られた玉座、果ては花を生ける花瓶ですら一級品。されどその全てに成金などの厭らしさは存在してはいない。
そのような優雅さを体現した場所であったと、前回来たときに記憶しているが、今はその面影を残していなかった。壁や地面は陥没してひび割れており、ガラスは全て破損している。絨毯も細かく切り刻まれており、玉座も倒れている。
そのような惨事を生み出したのがこの二組、いや、一組の人間と一人のヒトであり、この場で唯一破損していない物体と言ってもいいだろう。
一組は勿論勇者一行。どうやら仲間を含めて四人組であったらしい。
もう一方、たった一人で戦っているヒトの方は、黒い肌と三つ目と、両の米神から生やした角を持っている。それらは『クカジ』と呼ばれる種族特有のものだ。彼が『魔王』と呼ばれているヒトである。
その二つの存在が激しく剣戟を交わしている。
剣士と槍使いの息も吐けぬ連続攻撃を、大剣の二刀流を持って捌いていくヒト。両の目は前衛の二人の対処で釘付けになっているが、額にある三番目の眼は後衛の二人を絶えず捉え続けて、警戒を怠っていない。たとえ魔法を放たれても、即座に魔法を撃ち返して相殺し、それどころか神官かなんかの女がアクションを起こそうとしたら、魔法で妨害をするという技量すら見せつけた。
「おおう、すっげぇ。魔王すっげぇ」
戸川も驚きぱなしである。ボコられてないどころか、隙あらば反撃すら試みて、四対一で渡り合っているのだ。見てる方からすればその一の方を応援したくなるのもわかる。
今現在、四人と一人の力はほぼ互角。『クカジ』族は体力にも富んでいるという点から、長期戦になれば四人の方が不利になる、といった処か。
されど現状は非常に拮抗しており、何か一つ切っ掛けがあれば、均衡は容易く勇者たちのほうへ傾くことになるだろう。
ここで聖剣を渡したりなんかすれば、な。
ヒトが力づくで前衛を弾き飛ばし距離を開ける。彼らも一旦仲間の元へと戻り仕切りなおそうとしている。
「さて、さっきからそこでコソコソしているのは、どちら様だ?」
そんなとき、ヒトから声を掛けられた
ありゃりゃ、気づかれていたか。剣を交えて後衛に意識を割きながら、なおこちらに気づく余裕があるとは。流石の一言に尽きるかな。
まあばれてしまっては仕方ない。隠れる必要もなくなったので、壊れた柱の陰から姿を現す。
「やはり、うぬだったか」
「何者だお前は!? 魔王の手先か!?」
二人から同時に声を掛けられた。まあ初対面の人もいる訳だし、自己紹介しておくか。
「はじめまして。私は『飛垣根総合商事』に勤めます、海藤と申します。以後お見知りおきを」
「同じく、戸川と申します」
今更ながらなんで俺に対しては『っす』という口調なのだろう。お客様の前では直しているからいいが、気にはなるな。
戦闘が一時中断したので、ここで初めて勇者一行をじっくり観察することが出来た。
話しかけるのは剣を持った金髪の青年。すれ違えば振り返らずにはいられないほど、甘く整った顔している。事前に伝え聞いていたものと違わぬそのブロンドと整った容姿から、彼が勇者であると分かった。同じ美形である戸川の方を向くと、まるで感心したような態度で勇者を見ていた。自分も相当なものであるのに、まるで自分のことを棚に上げたような態度を取るので、非難を込めた視線で見咎める。
勇者の仲間たちとしては、槍を持った戦士、杖を持った魔法使いと、女の神官がといった顔ぶれが並ぶ。
先ほどの戦闘を見る限りでも、相当能力が高いことが窺える。戦士の槍捌きは凄まじいもので、穂先が一瞬で消えたと思えるような速度で振り回しているというのに、その軌道は正確無比。防御が甘いところを逃さず攻めていた。
魔法使いも攻撃や防御に最適な魔法を選択し、それを高速戦闘中の目まぐるしく変わる仲間の立ち位置などを把握して、前衛の隙間から魔法を通すというコントロールには目が見張るものがある。
神官は一行の治癒や補助を一手に担い、生命線ともいえる立場にかかるプレッシャーにも負けず、その役割を完璧にこなしている。服装からも宗教内での地位が高い-勿論爺ほどではない--ことが読み取れる。
勿論、肝心要の勇者本人に関しても、剣の腕は紛うことなき一級品。勇者という肩書に見合った実力と言っていいだろう。
そのような高水準のパーティだからこそ、その面子と一人で渡り合う彼の力量の高さが際立つ。将軍ならともかく、やはり王というものが持つべき力ではないな。
「商事? つまり商人か? 商人がこのような場所に何の用だ!?」
勇者が引き続き大きな声で質問を投げ掛けてきた。
されどここは『魔王』が住まう城。普通の人間では入るどころかお目にもかからぬような場所である。自分たちしか人間がいないと思ってたら、しがない商人風情が近くにいたのだ。驚きも一入だったはずだ。
「はい。『純白光』の王都の方で、商談を開かせていただいていたのですが、貴方方勇者様一行が担当だとお聞きしまして」
取りあえず自分たちがここに来た用件を伝えるか。
「俺たちが担当、だと? 一体何の話だ?」
困惑したような声を上げる勇者。その仲間たちは推移を見守っているのか、口は出さずに俺たちと『魔王』と呼ばれる彼に警戒をし続けている。
「はい、勇者様が現在、この『聖剣』をご所望していると聞き、馳せ参じた次第であります」
「おおっ!」
戸川が聖剣を取り出して見せると、今まで怒鳴り声や困惑の声ばかり挙げていた勇者から、初めて歓喜の声が湧いた。勇者の仲間たちも同様に喜色に満ちた顔をしている。
喉から手が出るほど欲しかった。現状の打破を可能とする希望の剣。それがこんな形で手に入るとは思っていなかっただろうが、今の彼らには些末事に過ぎないのだろう。
その様を、『魔王』と呼ばれた彼は冷静に見ている。勇者たちは
「さあ、早くその剣を--」
「--また、失礼ながら、もう一つの商談も同時に行おうと思っています」
喜び勇んでいる勇者たちの機先を制すように、言葉を重ねていく。勇者たちは自分たちにとっての吉兆となった男の言葉を、遮ることなく聞こうとしているようだが、残念ながらこれは君たちのための商品でも商談でもない。
「ラールライ様がご所望されていた医療品及び食糧についても準備が出来ましたので、最後の確認だけさせて頂こうと思います」
「……? ラールライとは、誰だ?」
勇者が疑問の声を上げる。聞き覚えがないのだろう。後ろの仲間たちに振っても、一様に首を振るばかりだ。
聞き覚えはないようだが、しかし君たちが知っている相手だよ。ちゃんと覚えておいた方がいいと思うよ。
「ああ、余のことだ」
だって、さっきまで、殺し合いをしてた相手の名前なんだから。
君たちが『魔王』だと勝手に呼んでいる、そのヒトだよ。
そう、ある事情とはつまり、この『魔王と人間たちに勝手に呼ばれているラールライが、ウチの会社の客であるということである。
勇者たちは驚いたようにラールライの方を見ていたが、すぐさまこちらを睨んできた。
「俺たちの聞き間違いか? 今、魔王に薬や食糧を売る。そういっていたように聞こえたのだが?」
「はい、皆様が魔王と呼ばれているその方に売りますが、何か?」
「……ッ! ふざけているのか貴様! 冗談でも言っていいことではないぞ!」
「これは大変失礼しました。冗談のように聞こえていたようですが、勿論冗談などではございません。ですのでラールライ様、どうかご安心を」
「よい、余は海藤を信頼しておるからな」
「もったいなきお言葉」
途中から無視された形になった勇者の額に青筋が浮かぶ。
「何をほざいている貴様! 魔王に物を売る人間など聞いたことがないぞ!」
今聞いただろ。聞こえていないわけでもあるまいに。
「私は商人ですので、必要な方に必要な商品をお売りするのが私の仕事です」
「……そうか。わかった。ならばさっさと俺に聖剣を寄越せ! それが貴様の仕事なのだろう!?」
この世界の人間は沸点低すぎるわぁ。そんなんじゃ早くから禿げてしまうぞ。
「かしこまりました。それでは代金を頂きたいと思います」
「なっ! 金を取ろうというのか!?」
「はい。こちらは商品になりますので」
「こっちは世界を救う勇者だぞ! その俺たちに協力するのは当然のことだろうが!」
「生憎ボランティアではございませんので」
なんか同じような遣り取りをさっきもしたなぁ。ちょっと飽きてきたよ。さっさと代金だけ受け取ってオサラバしようか。
「代金さえ頂ければお渡しいたしますのでご容赦ください。それでは価格なのですが--」
「--無理だ。ない」
「そ、れは、どういう意味でしょうか?」
おいおい雲行きがおかしいぞ。まさかとは思うが、こいつもしかして……。
「だから、金がないから、払うことはできない、そう言っているのだ」
マジか。マジで文無しなのかこいつ。
仲間たちの方へを見ると全員が視線を逸らした。え? なんで?
「かなりの軍資金を頂いたと聞き及んでいますが、それはどうされたんですか?」
「……旅の装備や食糧などで使い切ってしまっのです」
女性神官はそう言っているが、ぜってぇ嘘だ! 勇者だなんだで俺から剣を巻き上げようとしたやつが、普通の買い物に金を使うはずがない。
「そういえば部下からの報告で、勇者たちは賭博の街でかなり豪遊していたとあったな。特に女の神官の使い方が最も荒かった、と」
「黙りなさい魔王! 殺されたいのですか!?」
「言わなくても殺しに来るだろうに」
ラールライが思い出したように教えてくれた。
こいつら世界を救うだなんだと言っときながら、カジノで遊び惚けてたのかよ。信じられんよマジで。
社長が『最悪の場合もあるかもしれないから、そのときはよろしくね』なんて言ってたが、このこと予想してやがったなあのガキ。ちゃんと連絡しとけよな。
さっきからマジで勇者もうるさいし。
「うるさい黙れ! もう御託はたくさんだ! さっさと剣を渡せ!」
……もうほんと。
「先ほども言いましたが、こちらは商品ですので」
……さっきからこいつ。
「だからどうした! 俺は勇者だぞ! お前らは俺に奉仕すればいいのだ下賤な商人め!」
……うっせぇな
「……さっきからピーチクパーチクうるせぇな。なにが勇者だボケが。金も信頼もねえくせに欲しいもんだけ寄越せとか、商社マン舐めてんじゃねぇぞクソガキが」
俺は止まらない。
「いいか? 俺たちにとって客とは詰まる所、金と信頼を持っている人のことを言うんだ。その二つがあれば俺たちは可能な限り要望に応えようとするし、金がなくとも信用があればそれを担保に商品を買えるし、金があれば信用を得るまで取引を続ければいい。それがあれば悪魔にでも取引するし、なけりゃ神だろうが眼中にねえんだよ」
これを表しているのが、俺たちの会社の社訓『差別することなかれ。侮ることなかれ。保証のない貸し借りをすることなかれ』である。例え誰であろうとお客様になりえるが、何も持たないものとする取引などないのだ。
「どうやら一段落したようだな。では余との交渉に移ってもらってよいかの」
「勿論でございます。ラールライ様」
「しかしよいのか? そやつの言うとおり余は、人間たちがいう所の『魔王』だぞ」
「それはあくまで『この世界』の人間が決めたことでありますので、私には一切の関係がありません。ラールライ様は既に何回も我が社をご利用いただき、代金もしっかりとお支払頂いているお得意さまであります。なので当社と致しましても可能な限り融通させていただいております」
我が社にとって、魔王であるとか勇者であるとか、そんなことは関係ない。お客様足りえるかどうか、問題はそこなのだ。
「なるほど、大変ありがたいね。では代金を払おう」
「はい、それでは契約成立ということで--」
「--後ろだカイドウ!」
ラールライの言葉を聞いて振り返ると、目前に勇者が立っていた。剣は振りかぶられており、あとは振り下ろすだけの体勢。目は血走り、その形相は悪鬼羅刹もかくやの如し。
ラールライも俺を助けようと動いてくれているようだが、勇者の仲間三人によって足止めされている。受け取れない以上奪うことも仕方のないということか。奴らも聖剣を奪うことを承知しているようだ。その顔も自然と険しくなっている。まあこいつらも金を無駄遣いして、商人から色々巻き上げているんだから、同罪なんだよな。誰かが止めてたり、少なくともまっとうな使い方をしていればこんなことにならなかったのに。
冷静に回りを見渡してはいたが、ついに勇者の凶刃が振り下ろされた。触れるまであと僅かという瞬間に見えたのは、勇者の鬼の表情、魔王の諦めを多分に含んだ顔。勇者の仲間たちの勝ち誇ったような笑み。そして--
「ぐ、っはぁ……!」
--大したことでもないような風情で、ぼうっとこちらを見ている、後輩の気の抜けた表情。
「え、そんな……!」
「何……で、クレインの方が倒れてるんだよ!」
「あいつ、只の商人じゃなかったのか!?」
そう、倒れているのは勇者とか呼ばれているクソガキの方。槍使いの戦士が何故倒れているかと呟いていたが、答えはとてもシンプルだぞ。剣をギリギリまえ引き付けてから紙一重で躱し、懐に飛び込んで鳩尾に一発ぶち込んだだけである。それがお前には見えなかっただけだろ。
この会社に居る以上、これぐらいの危険は日常茶飯事。社長のおかげで命の保障があるといっても、意思ある者たちからの脅威を排除できるようになっておかなくてはな。
「ふっ。いやまったく、余の眼を持ってしても、危うく見落とすところであったわ」
ラールライがそう言って褒めてくれた。言い分からして見えてはいたんだし、実戦なら気配とかもろもろで避けそうな気もするけどな。
「いやー、凄いっすね先輩。僕もなにがあったか分からなかったっすよ」
そんな気のない言葉を掛けられても嬉しくないぞ戸川よ。というか将来的にはお前もこれくらいできなきゃだめなんだけどな。
それはともかく、俺は目の前で這いつくばるクソガキを見下ろす。そいつも俺の方を見上げていたが、その眼には恐怖、それも、己では到底理解しえないものを見たときの類の恐怖を抱いている。いくら美形でも野郎の、しかも性根が腐った奴の上目遣いなど欲しくはない。さっさと言いたいことだけを言うことにするか。
「おいクソガキ。お前自分がやろうとしたこと分かってる? 他人の物を強引に奪おうとするのを、強盗って言って、今のお前は強盗犯。ま、山賊や盗賊と同じだな。そこん所理解しとけよ」
「ッゲホ! ッグ、ガホ! す、すまなかった! 俺が全面的に悪かった。金は払う。だ、だから、剣を……聖剣を、売ってくれ」
「いやだ」
絶望したような表情でこちらを見てくるが、当然だろう。
「いいか、取引には当然金が要るが、それより大前提の、『取引の場に着くための、最低限の信頼』が必要なんだよ。賊と同じ今のお前には、その大前提が崩壊してんだよ。そんな奴と商売の卓に着くと思ってんなら、甘すぎるよ、お前」
なにより
「俺はこの剣を打ったヒトに、勇者に売ると約束した。だから勇者ではない、勇者と呼べないようなお前に、剣を売ることはできねえ。そのヒトとお前との縁を結んでやることは、できないんだよ」
再び恐怖を目に宿し、目線を落としてそれきり動かなくなった。
「立って! クレイン! 魔王に殺されるわ!」
「く、くそ! お前らクレインを連れて逃げろ!」
「僕も残って時間を稼ぐよ。一人で良いカッコはさせないよ」
まずお前らは時間ではなく金を稼げよ。売らないけどさ。
「カイドウよ。今後も彼奴らに聖剣を売るのか」
そんな悲壮な覚悟を決めた勇者の仲間たちを華麗に無視して、ラールライは俺に話しかけてくる。
「そうですね。検討の必要はありますが、今後の取引が無くなる可能性は極めて高いでしょう」
「そうか。ならお前ら帰っていいぞ」
いいの?
「馬鹿にしてるのですか? 魔王」
「何故そうなるのか理解に苦しむが、それは違う。昔はどうか知らんが、今となっては人間どもに興味がないのだ。それがそっちからちょっかいを出してくるから、仕方なく応戦しているに過ぎない。故にそちらが何も起こさなければ、こっちからは手を出さないことを約束しよう。その旨をそちらの王に伝えてほしいのだ」
「こっちが、はいそうですか、って信じるとでも思ってんのかい?」
「もうそちらには聖剣を売らないとこやつは言っておるのだぞ。それでそちらに勝ち目はあるのか?」
「っく……! くそぅ」
そして、彼らは魔王の提案を飲み、勇者を連れて、逃げかえっていった。
「よろしかったのですか? 逃がしても」
「ああ。嘘ではないからな」
ラールライが決めたことだから、別にいいのだろうな。
魔族は王の言うことが絶対だからな。王が言えば皆それに従うだろう。
「さて、それではご注文の品の代金を--」
「--ああ、ものは相談なのだが」
ん? 他に欲しいものがあったのか?
「なんでしょうか?」
「あれは売ってもらえないのかね?」
その先には、戸川に持たした聖剣が。
なるほどそう来たか。その返答は決まっている。
思いっきりの笑顔を見せて、告げた。
「申し訳ありません。あの剣は勇者に売ると約束していますので、お売りできません。ましてや魔王様などには、とてもとても」
「……ふっ。そうであったな。戯れだ。許せ」
苦笑を浮かべたラールライの顔は、やはり皮肉の色に染まっていた