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プロローグ

小説家になろう大賞2014に向けて、新たに投稿します。

とにかく頑張っていきますのでよろしくお願いします

中まで響いてくる轟音と共に、モニター一杯に爆炎が広がる。

視界が眩むが、構わず目の前にいるであろう敵を持っているソードで斬り裂き、敵は体液をまき散らしながら断末魔を上げて息絶える。

敵を倒したことによって、ほんの少しだけ状況を確認する余裕ができたため、自機の損傷状況と味方の残存状況を確認する。

すでにエネルギーは残り二十パーセントを割り、換装してきた武器も八割方撃ち尽くしてすでにパージした。残っているのは手に持っているソードとハンドガン、予備弾倉のみ。損傷については装甲のあちこちに亀裂が入り、すでに脱落している箇所もあるほど損傷が酷い。そんな状態で未だに四肢が一つも欠けていないのは奇跡に近い。

味方も大半が中破、もしくは四肢が欠落した状態での小破の機体が多い。支援機ももう殆どが撃墜されている。

そして、目の前には一向に減らない敵……パラセトラが群を成して、こちらに殺到してくるのが目に見える。

すでに大型の物なら百以上、小型のパラセトラは数え切れないほど倒したというのに……疲れてくる。

一つため息をついてもう一度攻撃しようと機体を動かそうとした時、司令部から通信が入る。


『残存する各機へ。これより敵発生源にMOABを投下する。動ける機体は対衝撃防壁まで後退せよ』

「無責任だなおい……結局長屋は放棄するのかよ」


日本の商業の中心地である長屋を捨てるということは、日本の経済の半分を停止させるような物だ。だが、こちらの損害も多いので正直四の五も言っていられない。

すでに上がり始めた防壁を見て、ハンドガンを群れに撃ち込みながら後退を始める。

一発の威力が高いハンドガンを撃ち込まれるたびにパラセトラの群れは四散してはその穴を埋めて迫ってくる。

急いで防壁の向こうへ機体を走らせていると、救難信号をキャッチした。


『メーデー、メーデー!! 機体が座礁して動けない。現在も攻撃を受けている!! 誰か助けてくれ!!』


レーダーで場所を確認して、メインカメラをそちらの方に向けてみると大型のパラセトラに今も攻撃されている半壊状態の機体の姿があった。

本来ならば撤退命令を出された時点で、各機は自機の生還を最優先とすることが義務付けられている。これは貴重な戦力を無駄に失わないための予防策であり、感情に走って味方を救い、結局二人とも死んでしまったというケースが多いためにこのような規則が設けられたという。

だが、そこまで薄情になれないのがこの男である。すぐさまハンドガンをパラセトラに向けて撃ち込む。穿たれた弾痕から体液を噴出させながら、大型のパラセトラは機体から離れ、こちらに向かってくる。攻撃される前にソードで胴体ごと真っ二つに斬り裂き、半壊した機体の方へ駆け寄る。


「大丈夫か!?」

『すまない!! 救援に感謝する!!』


パイロットだけを救出して、手に抱きかかえて再び走り出す。防壁はすでに半分以上せり上がっている。MOABの衝撃から守るには最低二十五メートル以上上げなければならないが、そこまで上がればいくらこの機体といえども飛び越えることは不可能だ。

パラセトラの群れがすでに眼前まで迫っているが味方を抱え込んでいる今、ハンドガンを撃ち込むことすらためらわれる。対衝撃、防刃、防火機能を備えているパイロットスーツを着ているとはいえ、数百度もあるマズルフラッシュに焼かれながら発砲時の衝撃で吹き飛ばされる可能性がある。

トリガーを引きたいという衝動をグッと耐えて、あと少しの所まで迫ってきた防壁に走り続ける。


『各機へ。たった今MOABを投下した。着弾まであと二分』


直感的にやばいと思ったのか、防壁に向かってジャンプし、逃げ遅れた味方のために付けられている取っ手を掴む。

その取っ手を起点に片手と両足を使ってすいすいと登っていく。ロボットとは思えないほど身軽さで上がっていくが、突如コックピット内でアラートが鳴り響く。


『警告。エネルギー残量が十五パーセントまで低下。右腕部に過負荷発生、このままか負荷をかけ続ければ欠損の可能性あり。MOAB着弾まで残り一分。下方より敵接近』

「こいつはマジでやべぇぞ……」


下を見てみると、パラセトラ達が一つのタワーになりながらこちらを肉薄してくるのがわかる。しかもタイムリミットが六十秒を切った。

ぐずぐずしていられないとばかりに機体を登らせていくが、不意に後一歩の所で動けなくなる。


『警告。パラセトラが左脚部に取り付きました』

「くそがぁっ!!」


右足首部分を噛みつかれて、これ以上上に上がっていけない。無理に引きちぎろうとすれば、逆に今もか負荷がかかっている右腕がちぎれる。

まだ腰に保持してあるハンドガンを撃てれば何とかなるが、そうするには助けた味方を見捨てなければならない。無論そんな事すれば規律を無視してまで助けた意味がない。絶体絶命かと思われたその時、足下のパラセトラが撃ち砕かれる。吹き飛んだ反対方向を見てみると狙撃砲を持った機体が足に噛みついていたパラセトラを撃ち砕いたのだ。


『駆けろ! 時間がない!』

「りょ、了解!」


一気に頂上まで駆け上がり、そのままの勢いで防壁の内側へ飛び込む。

飛び込むと同時にMOABが着弾し、凄まじい衝撃波と共に地表を埋め尽くすパラセトラを粉々にしていく。

その衝撃波は厚さ十メートルもある防壁を容赦なく叩き、凄まじい轟音が防壁の内側にいる者の耳を突き破らんと飛び込んでくる。

永遠とも思われる轟音の嵐は一分ほどで収まり、衝撃波と共にやってきた砂塵を振り払いながら、スタンバイモードになった機体を立ち上がらせる。

レーダーで確認すると、どうやらパラセトラは一応殲滅できたようである。残っているエネルギーで、防壁の上に機体を移動させる。コックピットを開けて下に降り、防壁の上から先ほどまで戦っていた戦場を見下ろす。


「これが……俺達が生きる世界」


高層ビルが建ち並び、人の喧噪で賑わっていた昔とは違う、死体とパラセトラの死骸が転がっている広がるばかりの荒れ地。自分達が今どれほど危険世界で生きているかということを思い知らされる。

後ろを振り返ってみると、生き残った人たちがシェルターから出てきて生還したことに喜びながらも、これからもこういったことが続くのかという恐怖に怯えていた。

人々の生活を守る事が自分達の仕事なのに、全くできていない。例え相手が未知の生物であったとしても、守らなければならない。

何もできなかった自分を情けなく想い、地面に膝を付ける。


「俺は……俺達は……なんて無力なんだ!」


防壁に拳を突き立てて、頭を地に擦りながら涙を流す。防壁に落ちた涙を、MOABの熱波が絡んだ風が乾かしていった……

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