1部より 第2幕 「地図にない町」
前の1部から3部を分けただけです。
2部、地図にない町
村が見えた。
思っていたよりも大きく活気があった。確かに実在した。地図にない町
ぐぅ〜
お腹がなった、熊に襲われて朝から何も食べずにここまで来たから当然の結果だ。
「とりあえずなんか食べよう。おいしそうな店で」
それが今の感想だった。お金は、いつも身につけていたから食べられないことはない
「村人に聞くことが賢明かな」
学校でもし戦場で孤立して道に迷って、食料がなくなったときにどこかの村にたどり着くことができたのならば、村人に助けてもらいなさいと言っていたな。
村の手前に丘に沿って畑が広がり、畑を見回りしているおじさんがいた。僕は、勇気を出して
「すいません。この村に宿はありますか?」
「・・・・・・」
聞こえなかったかな?
もう一度、前よりも大きな声を出して、
「この辺に泊まれそうな宿舎ありませんか?」
しかし農夫は、まるで聞こえなかったように腰あげて自分の家にむかってしまった。
聞こえないのか無視をしたのか知らないが、今の僕が村に行かないで、次の村に行く気力がなく、ただご飯が食べたかった。しかたがなく、村に入ることにした。
「ナニカキタ」
“?”声
「まぁいいや」
村は、僕がいた村と同じでかなり昔に開発された、自己発電装置でライフラインを整えて、食糧のほとんどを周辺に田植えをし、たまに商人が出入りして、村々個別で自立した生活をしていた。僕が村にいたころは、昔ここに村があったと聞いていたがそれがまったくの嘘であることがわかった。
僕は、村を見て回りながら
「ここには、たいした特産品はなさそうだ。別にいり物もなければ買うものもないか・・・」
そういえば、旅の醍醐味は町の食べ物、食材や味付けが違うためその町に行かないと食べられ ないものがたくさんある。路銀稼ぎに集中しすぎて忘れそうになった。飯を聞くなら、村人、すかさず聞いたら教えてくれそうな人を探して、聞いてみることにした。
「すみません。このへんにおしそう・・・」
「・・・・・・」
村人は、無視して何も言わずすたすたと歩き去ってしまった。
嫌われているのかな〜そう思ったが、別の人に尋ねてみることにした。2,3人に聞いてみたけれどもどれも、振り向きもせず歩き去ってしまった。
冷たいな〜
立ち尽くしている訳にもいかず。適当な食べ物屋を探すことにした。そういえば、誰かが「大衆向けの店より、小さな店のほうが今までに食べたことが無いものが食べられるかも知れない。しかし、おいしいかどうかは、責任取れないけど」そんなことを思い出して、僕は、小さな食堂へ入った。大衆向けの大きな店は無かったが・・
ガラガラ〜
しかし店に入れども店員の誰もが、僕に対して何も言わなかった。仕方がないのでカウンター席に座りぼうしをはずし、水を空のコップに入れ、メニューから適当選ぶことにした。すると別の人が入ってきて、
「いらっしゃいませー」
「よぉ」
新たにお客が僕の二つ隣に座った。
「今日は何にしようかー」
上機嫌にメニューから選び始めた。
「今日は機嫌がいいね〜どうしたの」
僕のすぐ隣に座っていた客が話し始めた。
「あー、商人がさ、いつもより高く稲を買ってくれたんだよ」
「そりゃーどうして」
「何が何で隣町に魔物が現れて、畑がやられたらしいよ」
「たいへんだなー」
「他人事に言うなよ」
「はぃ、お冷、今日は何にする?」
えぇ、ちょっとまてよ、この店員は、僕にはお冷、置かなかったよ。
「そうだね、今日贅沢に・・・」
「お客さんは、いつも贅沢なときしか来ないだろ」
「あははは・・・」
店にいたすべての客が笑った。僕を除いて、それに、店に入ったとき、誰も「いらっしゃいませー」と言わなかった、でも、2つ隣の人は、ドアを開けただけで、まして店に入るとき誰が入るかわからないまま言った。
「そうだね・・・う〜ん、じゃ店長のお勧めで」
「またそれ、ならスタミナ定食ね」
「うん、それお願い」
「あいよー」
すかさず
「ぼくもおなじで・・・」
がらがら〜
「いらっしゃーい」
別の男がさらに入った。
「いつもので」
「あいよー」
その男は、2つ隣にいる男のさらに奥に座った。
おかしい。
「ハイ、スタミナ定食お待ち」
「オウ、早いね」
「さりゃ、常連さんだからね」
「あの僕もスタミナ定食で」
「じゃ俺のも早く作ってくれよ」
今入ってきた男が店長をせかした。
「そんな殺生な」
「お金持っているんだけどな」
「あははははははは」
「ッ!!」
僕はここにはいない?
急に気分が悪くなり、すかさず僕は、荷物を手に取り外に出た。
「はぁはぁ、何だはぁはぁ、この町は・・・・」
村の中心に噴水があった、僕は、そこに腰掛、携帯食を食べた。普通なら不安で食べられないのだろうが、朝から食べていないので、昨日食べたときよりもおいしかった。
だがおかしい、さっきから町の誰でもが見える場所に座っているにもかかわらず、誰も振り向きもしない。本当に気分が悪い。まるで僕が、ここにいない三田にでも店にあけるときちゃんとあけたし、それに村人から僕が見えないみたいに外部拒絶し、孤立して生きる。それが地図にない町の由来だろう。
「とんでもない町に来てしまったな〜だからみんなが行くなと言ったのか」
家を出てから独り言が増えたな。でも、宿舎に行って、明日にでもこの町を出よう。しかし、この村を一周したとき寄宿舎らしきところはなかった。
「マジかよ、また野宿かよ」
荷物を持って、この村を出ることにした。
「さて、行くか」
「待って」
声がしたので思わず振りかえると、僕より少し年上の女の子がいた。しかし、この村で僕を見えている人はいない。
以降、もしこれが別の人に見えていたら滑稽だろう。
「そこのマント羽織っている人」
この村でマントは、僕以外にいるのか、村の門を目指した。
「むしすんなぁ」
いきなり後ろから突き飛ばされた。そして前のめりに転んだ。今までに後ろから軽くたたかれることはあるけれども、みず知らぬ人に後ろから突き飛ばされたことは、まずないと思った。
「なにする。いきなり突き飛ばして」
「あっははははっ、無視するのが悪い。そこの旅人」
「僕が見えるのか?」
「なに言っているんだ」
どうやらこの女の子、いやの女は常識を知らないらしい。
「そこの旅人、どこから来た?」
「エーと、方角から、すぐあっちに村からだ」
南の方角をさした。
「へぇー、海の町から、かなり遠かったでしょう」
僕の村には、海とは、かなり離れている。それに海のある村までは、商人の足で5日かかると聞いたことがある。
「たぶんそれは、僕の村ではないな。その手前・・ここから1日ぐらいで僕の村に着くよ」
「ふ〜ん、私は、今までこの村か出たことにいから」
と、陽気に笑った。
なるほど、周辺の町を知らないとすれば、箱入り娘か・・・・
「ところで何で旅をしているの?」
「旅行したくて」
「ぶぁははは、そんな理由でこんな村に来るかよ」
「うそだよ。徴兵制から逃げるため」
「なるほど、だからみんな君を避けるわけね」
「どうして?」
「だって、男はみんな戦争に行くもんでしょう。学校で教わらなかった」
僕は、てっきり戦争に行くことは自由だと思っていただけに驚きを隠せなかった。
「君の村は変わっているね〜それに君の村から何人の脱獄兵がいるの?」
「脱獄兵って」
脱獄じゃないといおうと思ったけど、本当のことだからいいわけするのをやめた。
「何人いるの?」
「少ないよ」
確かにここ最近、10年以内に脱走した人は、僕以外聞いたことがない。
「じゃ何故君は、普通の人みたいに軍人にならなかったの?怖いから?」
少し腹にたった。
「僕は、遠くに行きたいから・・それに他の町にもいってみたいし」
本音だった。
「戦場もここから遠いよ。やっぱ怖いから?」
「自分の力で遠くに行きたい。それに旅も道野途中に何が出るかわからない。」
「へぇ〜君の村では、脱走のことを旅というんだ?」
うらやましいと、小声でいった。だけど僕には聞こえなかった。
「そうだよ、それにこの村に来る途中大熊に襲われて荷物の半分をなくした」
「大変ね」
「もし、運が悪かったら今頃熊の餌だったよ。軍に行っていたら、こんな経験をしないで
すんだのに」
今思うと、荷物を半分落としたことは、痛いことだった。今の自分の力で、補給無しで
次の村に向かうことは、無謀にも思えた。
今の所持品:地図とコンパスとお金、2、3日どんなに頑張って5日分の携帯食と父からもらった剣だけだ。
考え込んでいると、彼女もなにか考えていた。
「なにかがおかしいと思えば、荷物が少ないのね。」
「必要最低限のものは、持っているから、隣町に行けないことはないよ。それになんかこ
の町にはいづらいし、じゃあね」
自分の気持ちが伝わったみたいなのでこのむらから出ることした。
「ちょっと待って、せっかくこの村に泊まっていきなさいよ」
いい話だが、腑に落ちないことがあった。
「いいよ。迷惑になりそうだから」
「いいのよ。せっかくこの村に来たのに何もしないで追い返せないよ」
「いいや、僕みたいな軍に行かないやつが泊めるなんて、君の家族に迷惑じゃないの?」
「大丈夫」
自信満々に答えた。
「なぜ?」
ついさっきまで村からいないようにされ続けたので不安だった。
「村長の娘だから」
はっきり言い切った。
「え、本当に」
「本当よ」
さっきから、箱入り娘な感じで、見ず知らずの人にずかずか話している感じからただ者ではないと思っていたが、村長の娘とは思いもしなかった。
「村長の家に行くのはなおさらまずいって」
でも娘は、もの動じることはなかった。
「大丈夫だからついてきて、いい案がある。後私の名前は、ラサよろしくね。」
「え?えぇっ」
自分の名前を言うなり僕の腕を引くなり歩き始めた。
「どこに行くの?」
「私の家よ。ところであなたの名前は?」
「?・・僕のな・なまえ・・は、あ、あれええと・・・・」
「あなた名前よ」
なんかおかしい
「なまえなんだったけ?」
「名前を思い出せないなんて、荷物を落としたり、君は、なんかおかしいね」
ラサは、笑った。
確かにおかしい。自分の名前を忘れてしまうなんておかしい。
「でもたまにいるんだよネーこの村に来て名前を忘れるやつ。別に珍しくないんだけどね」
村を出ていった後どうなったかわからないけどと、付け加えた。
あ、あれ本当に名前を思い出せない。どうしよう、どうすればいいんだろう。
「本当に名前を思い出せないの?」
歩くのをやめて、僕をのぞきこむように見た。
コクコク
僕は、首を縦に振るしか出来なかった。
「しかたない。もし名前を思い出せなくなったとき、どうすればいいか知っている?」
「知らない。」
首を横に振った。
「別の名前を付ければいい」
「えぇ?」
正直驚いた。
「これから君の名前は、リュウキ、よろしくね」
「よろしく」
そういうと、また僕の腕を引っ張りながら歩き出した。
リュウキ・・・聞き覚えがあって、心頼もしく、優しくしてくれた人・・だけど思い出せない。本当にどうなっちゃんだろう。と、考えているうちに村長の家に着いた。やはり周りの家に比べて大きく歴史がある作りだった。
「いいこれから君は、リュウキだからしっかり私の話に合わせてね。じゃないと村から追
い出すことになるよ」
「わかった」
コクと、首を縦に振った。
僕は、リュウキリュウキ・・・と何度も自分に言い聞かせながら 二人で家に入ろうとしたとき
「ちょっと待って、いきなり家に上がるのも何だから先にお父さんに話してくる」
僕は、またコクコクと首を縦に振った。そして、門の外で待たされた。今の時間は、午後の3時ごろだろうか?時計を持ってないから、確認のしようがなかった。
それから数時間待たされた。(実際は2、30分)そのあいだ村人は、誰ひとりも僕に視線をむけず通り過ぎていった。本当に見えていないようにしかし、この村に入ってから当たり前だったので別に珍しく感じなかった。
家からラサが出て来た。
「OKだって、だけど家には、空き部屋がないから、村はずれにある空き家を使って」
「ありがとう。助かった」
「ごめんね。家に泊めてあげると期待させてしまって」
「そんなことないよ。雨梅雨防げるだけで十分だよ」
「家は、こっちよ」
そういうと、空き家まで連れていってくれた。空き家は、古くなくつい最近まで人が住んでいた感じだった。
「ここが空き家よ、期間は、四日そのあいだ自由に使っていいから、そして、そのあいだ魔狩りをお願いするね・・・あと」
「魔狩りって何?」
聞いたことがない言葉だ。
「あなたの村では、魔狩りをしないの?」
「したこともないし、聞いたこともない」
ラサは、呆れた感じでいった。
「あなたの村は、本当に平和なのね」
「・・・・・・」
「仕方がない。この村の北に昔コンクリートジャングルと呼ばれた遺跡があるの」
「へぇ〜」
地図にない町は、その町かもしれないな
「今は、魔物すみかになっているんだけど、たまに村の作物を襲いに来るの」
「なるほど、魔物は、繁殖率がいいからその数調節をするわけ」
「そうよ。だけどそれだけじゃないの。この村のライフラインは、ほとんどその遺跡にあるの」
「じゃ何故この村は、遺跡の魔物を追い出して、そこに住まないの?」
「出来ればもうやって、昔みたいにコンクリートジャングルにいるよ。だけど」
「だけど?」
「昔からこの国は、大きな戦争をしているでしょ」
「機魔戦争?」
「魔法軍の最初の一撃で壊滅したの」
「・・・・・」
「始めビルが倒れた。そして、地下からおびただしい魔物が出て来た・・・・始めは、村人が力を合わせて戦った。だけど次第に魔物も強くなり始めて・・みんな村から出ていった」
「知らなかった」
「そうね。村を捨てた人は、魔物が怖いから自分の生まれ育った村を捨てました。何て言う人、いないもんね」
「そういえば、僕の村では、魔物が出てくるからここに来てはいけない。て言われた。」
「確かに魔物が出るからといって、人が住んでいないわけじゃないし」
「確かにでも子供が、この町に来るのに魔物に襲わずに通ることは難しい。」
「まぁ、村によって教えかたが違うから。自分の教わった歴史が正しいなんてわからないね」
「魔狩りには、いつ出発するの?」
「今からよ」
「えっ?」
日が傾きだし、もう午後の4時頃だろうか
「今から行って大丈夫なの?もう夕暮れだけど?」
「えぇ、大丈夫よ。私も一緒に行くし、なりよりも大獣(大型かつ凶暴な魔物)は、今いないし」
「そうなの」
朝に会った大熊が頭から離れない。
「地元民を信じられないわけ?」
「そうじゃないけど」
いくらラサが安全だといっても不安だった。
「あなたは、脱走兵なのそのあなたをこの村に泊めさせてあげるのだからしっかりと働かないと困るのよ」
「わかった」
ラサは、何もしようとしない僕に腹を立てていた。また、せっかく泊めさせてれたのだから恩を返さないといけないそんな気がした。
「私も準備があるから家に戻るね。準備がおわったら」
話しながら僕を外に出した。
「君が来た方向から北にある・・・あっちの方で待っていて、わかった?」
コクコク、首を縦に振った。
「あとはー村人には、話し掛けないように」
「なんで?」
「ここの村人は、さっき話した、村を捨てなかった。だからあなたを村から逃げた腰ぬけと思っている。だからさっきあたかもいないようにあしられたのよ」
「なるほど」
「だからあまり私以外の村人と話させいで」
「悲しいな」
「大丈夫、明日から大丈夫よ」
「どうして?」
「いい案があるから」
「わかった・・・それと」
「何?」
「何でラサさんだけ、僕に話しかけてくれたの?」
「村長の娘だから」
そう言うと笑いながら家に帰っていった。
「集合場所は?」
ラサは、振り返って向かいの家を指しながら言った。
「向こうの門でまた会いましょう。」
「わかった」
「すぐに来てね。日が暮れたらまずいから」
「わかった」といったときには、ラサは、角を曲がりもう見えなかった。
「元気すぎる」
僕は、そう口から漏れた。そして家に入った。
家は、綺麗にかたずいていた。しかし
「何もない。なさすぎる。」
他の部屋も見たが、ベッドと机を除いて食器や家電等が見当たらなかった。
「なんで空き家なのか聞くべきだったな」
失敗だと思ったがすぐにラサとの約束を思いだし、準備に入った。
だが、家に置いとくものは、帽子以外なかった。そこで空き家のリビングらしき部屋にある机の上に帽子を置いてそのまま家を出た。
門までの道のりは、難しくなくすぐに着いた。ラサより早く着いた。数分もしないうちにラサが走って来た。
「ハァハァ・・・待った?」
「いや、今来たばかり」
数分だから嘘ではない。
「準備が早いのね」
「必要最低限以外のものは、落とした。」
「帽子は?」
「おいてきた」
「大切なものじゃなかったの?」
「言いや、いつもの複服装の方が動きやすいと思うから」
「なるほど。じゃ行きましょうか」
「うん」
そういうと僕とラサは、門を出た。
目的地に着くまで、魔狩りのことについて聞いた。
昔近くに大きな町があった。ほとんどの建物が今では考えられないほど高くそびえていた。しかし、魔法を使う国との戦争が始まると特殊な砲撃が飛来していくつかのビルを壊した。幸い古く廃墟のビルだったので誰も怪我をせずにすんだ。しかし砲弾から、魔物が発生した。始め魔物は、破壊力が弱く特に心配がないとされ放置されて来た。だが魔物は、魔力の力でひそかにおびただしい数まで増殖、さらに知能まで備え付けていたので巧みに町の農場を食い散らかした。さすがに放置できなくなったので当時住んでいた町人で駆除することにした。だが、一部の魔物は、大きくなりかつ凶暴になっていた。次第に人と魔物のイタチごっこが始まった。
その時はよかった。なぜなら、魔物を狩るために多くの人がでは入りし、国からの援助も最大のものになり、戦争が始まる前くらいまで復興した。しかし、戦争が長引くに連れて国の支援が無くなり、衰退するようになった。多くの人が村から出ていった。だから男は、戦場に行き強くなって帰り、村のために戦う。だから、15を過ぎた男は、20まで帰ってはいけない。と、ラサは、教えてくれた。
僕は、ここに長居をしはていけないようだ。
「ここよ」
ラサは、あるビルの前に止まった。そのビルの上層部は、崩れて今では、何回建てなのかわからなかった。
「ここは何があったの?」
「わからない。でもここは、魔物の子供の遊び場になっているの。親は、ほとんどいないからちょうどいい練習場よ」
「なるほど」
子供狩りなんて残酷な・・・明らかにおかしいイメージだが、魔物を駆除するに弱い子供を狙うことは、妥当かもしれない。だから口にするのをやめた。
「あっ、そうだ子供だからって気を抜かないこといい」
僕は、首を縦に振った。
「そうならいいけど」
そういうと仲に入っていった。
「キューイ、キューイ」
変な泣き声が、上からした。上を見ると目の大きなかわいい魔物(30センチぐらいのトカゲ)がこっちを見ながら鳴いていた。
「かわいい」
魔物について何も聞いていないので、目の前にいる動物を魔物とは、思わなかった。
「何していんの?早く来なさい」
ラサの声がしたので急いで追いかけた。魔物は、その間も鳴き続けた。
「のんびりしていたら置いていくぞ」
「ごめん。今行く」
一瞬ラサを見失ったがすぐ見つけることが出来た。階段を上っていったので急いで追いかけた。
僕も階段をのぼろうとした途端、ラサが急に下りて来た。
「逃げるよ!」
「え?」
そして、僕の横を走りながらとおり抜けてビルから出た。僕もラサを追い掛けることにした。
「なんで?」
「キューイて聞こえたでしょう。あれは、子供が親に近いときに鳴くの」
ビルを出るとラサが待っていた。気がつくと周りには、大小様々なトカゲで囲まれていた。ほとんどが四這に這っているが中には二本足で立っているものもいた。
「こいつらよ。」
ラサが言った。
すると二本足で立っているトカゲみたいな魔物が、こちらに歩み寄って来た。
「きみか。いつもこのビルで私の大事な息子達を殺しているのは」
声からして、女性だろう。
「そうよ。私よ。私の村に居座り続けて」
強い口調で言い返した。
「昔のことでしょ?それにあなたが生まれた頃には、もうこの村私たちのものよ。私たちがこの村を統治しているの」
「うそだ。おまえたちが勝手に支配しているだけだ。」
「クックックッ・・・」
女のトカゲが笑い出した。
「何がおかしい。」
「よく考えれば、昔私たちがしたことをおまえは今やろうとした。所詮おまえと私たちは、同族さ」
「何を?」
「子殺しさ。私たちは、おまえ達を減らすために確実な学校を襲った。またここは、学校でね。よく貴様に放課後に残った子供がよく殺された」
「うそ・・・・」
ここに来るまで強気だった。ラサが怯んでいた。
「そこにいるおまえ!」
「ボ、ボク?」
「おまえ以外だれがいるんだ!?おまえには、悪いがここでこの女と一緒死んでもらう」
「なぜ?子供を殺したのは私でしょう?」
ラサが入った。
「おまえらは、今からここに入って子供達を殺そうとした。同罪だ」
「どうしよう。この数では助からない」
ラサが震えていた。
「大丈夫!」
僕は、ラサの手を持って行った。
女のトカゲが、大きく口を開けた。
「みなのものかかれ」
すると周りにいたとかげたちが急に襲い掛かった。
すかさず僕は、ナイフを取り戦うことにした。生きるために
「うぉ−−−−」
今までにないほどに体が動いた。
1メートルぐらいの四這のトカゲが先に襲い掛かった。ナイフを大きく振り回し、トカゲの牙より僕のナイフが勝った。次に三体がきた。剣より小さいため振りやすく、鮮やかに魔物を倒していった。
10体ぐらい倒したところで急に周りにいたトカゲが引いた。
「おまえ強いな。さすがに一人の人間に多勢で襲うのもなんだ・・・」
女トカゲが言った。そして手でなにかを合図した。
「ナイト601、602、603行け」
そういうと2体の2メートルをゆうに越える直立したトカゲが来た。しかも、手には斧みたいなものを持っていた。
「魔物が武器を持っている・・・」
そういえばこの魔物は、高度な知識を持っているとラサがいっていたことを思い出していたら目の前にいた2体のうち、1体が消えていた。急に暗くなったので本能で後ろに飛んだ。
ガスッと鈍い音を立てながら大トカゲが降って来た。
「ッ〜」
僕がかわしたと同時に1体の獣が、目の前から突進して来た、大きく斧を振りかざしたのが見えたのでさらに一歩後ろに動いた。
シュと斧と一緒に風が通り過ぎていった。
もし今の両方をまともに喰らっていたらどうなっていただろうか考えるだけでも血がひいた。
ガスッと背中になにか感触がした。
「いたい」
後ろからくるトカゲには予想外だ。意識がもうろうになりなが前から来る斧にまともに喰らった。 最初に飛んだ大トカゲが、地面に着地した後今度は、横振りで僕の腹に向かって振った。
そして、突進して来たとトカゲが、斧を頭から振り落とした。
「すごい、コンビネーションだ・・・」
僕の頭は、戦っている最中に変なことを考えているきがした。だが体は、顔面からくらいもう立っていることが難しいぐらいに意識がとうのいた。
おそらく後ろから来るトカゲでもう終わりだ・・・・
僕は、倒れた。気絶ではない。死んだ振りをすればたすかるカナ・・・
「このやろう〜〜〜」
目の前を強力な火が通り過ぎていった。トカゲ達は、火だるまになりながら暴れた。
「こっちに来て」
ラサが叫んだ。僕は、すぐに立ち上がりラサを見た。 ラサは、腰にあった、大口径の銃を真上に構えて打った。 弾は、2、30メートルまで飛び赤い煙を出しながら落ちて来た。
「救難信号?」
思わず僕とトカゲ達は、弾を見ていた。
「何見ていんの?早く来て」
僕は、我に帰りラサの元へ走り出した。トカゲ達もラサの元に集まり出した。
「いったんビルへ・・・頭を思いっきり下げて」
ラサが眩しく光だした。
「魔法・・・やばい」
光が、広範囲系の魔法だとわかり思いっきり頭を下げた。周りに物凄い炎が通りすぎた。さっき僕をトカゲから助けた炎に比べて弱いが周りにいたとかゲには、充分な威力があった。
炎が過ぎてすぐに頭を上げ周りを見回すと多くのトカゲがやけどをしていた。ラサも今にも倒れそうにふらふらしていた。 魔法は、元々戦争している敵国が生み出した兵器で特殊な物質に自分の力を送り使うことが出来る。それに対してこの国は、実弾を使う昔からある兵器を使う。実弾の兵器は、誰にでも教われば使うこと出来る。だが魔法を使うには、自分の力を放出するために訓練が必要。しかもそのためには、才能も必要としときには自分のコンディションで威力に影響される。かといって、実弾も弾が切れれば使えないが、魔法は、気持ち次第で弾切れがしないこともある。つまりこの国で魔法を使うことはタブー視されている。
僕は、ラサの元まで走りながらラサを抱えてビルに入った。そして階段を上がった。三階のところまで上がると部屋に入った。ラサもようやく自力で立てるようになった。
「大丈夫?」
「えぇ」
言葉に力がない。魔法の威力に寄るのだが全体に高威力の魔法を使うと人によっては、自分の力を使い果たし最悪死ぬこともあると聞いたことがある。
みぢかな人に聞いたのだがそれが誰だかは、思い出せない。
窓から外を見下ろすと女トカゲが仲間に命令しながら入るのを見た。辺りのトカゲもまだ姿が見えない。
「ラサ、ここも危ない」
「そのようね。今の魔法は、威力が弱いし、まともに喰らってもザコでも、まだ生きているでしょうね。・・・上に行きましょう。」
「魔法使えるんだね」
「めずらしい?」
「いいや。さっきの大口径の銃は?」
部屋を出て階段に向かった。
「大口径?」
「空に向けてなんか花火みたいなやつ」
「救難信号よ・・・村の人が気付けばみんなで助けてくれる」
「ここに来るのは、どれくらいかかりそう?」
「気がつくのに時間がかかるけど準備を合わせて3、40分ぐらいかな」
「じゃそれまで生きていないと・・・」
階段の下からに大トカゲがいた。
「幸い、このタイプのトカゲ大声が出ないから仲間を集まることはないよ」
「でも倒さないと前に進まないか」
大トカゲは弱かった。それからひたすら上を目指した。途中何度か足の早いトカゲに追い付いたが、すべて倒した。それでも上を目指した。
「ハァハァ・・・ラサも手伝ってよ」
「無理言わないでさっきの魔法で体力使い切っちゃたんだから」
「ところでこのビルは、何回建て」
「細かいところまでは、わからないけどこのタイプは、50階ね。」
「今は、ハァハァ・・・」
階段の踊り場を見ると21、22とかいてあった。
「21階かこんなに階段をのぼったことなんてないよ。」
「?君の村には、高い建物で何階くらい?」
「高くても学校の4階かな」」
「じゃこんなに階段をのぼるのは、始めてだね」
「そうだね。20階なんて初めてだよ」
「そうじゃついて来て」
ラサは、僕の袖を引っ張りながら部屋に入った。
「こんなところにいて、魔物が来ないの?」
「大丈夫あいつらは、以外と体力ない上に臆病だからすぐには、来ないよ。」
「そうならばいいけど」
部屋の窓の前でラサは立ち止まった。
「みて」
目の前には、綺麗な夕日が見えた。ちょうど向かいのビルが崩れていて景色を遮るものは何もなかった。
「綺麗」
「でしょう。君のことだから見たことがないかなと思って」
ビルは、古くから放置されて電気も通っていなくて汚かったけどその時見た景色が頭に刻み込まれた。
「じゃ降りよっか」
「えっ!?」
「えっ、じゃないでしょう。えっじゃ」
「だって逃げるためにここまで・・・」
「だっていつまでもここに隠れていたら、せっかくみんなが助けに来ても私たちを見つけられなければ助けてくれないよ」
ラサは、笑いながら答えた。
「大丈夫だって、ここから助けに来た村人が見えたから。」
「本当に」
僕が、窓の下を覗こうとすると、また、僕の袖を引っ張った。
廊下の外に出るとなんかただならぬ気配がした。
ヒタ、ヒタ足音がした。トカゲではない独特な何かが近づいている。日が沈み廊下が暗く見えないので凝視していると、ラサが小声で話しかけて来た。
「戻るよ」
すぐに出たばかりの部屋に戻り、ラサの指示で隠れた。
何かは、部屋の前で止まった。僕は、恐怖のあまり目を閉じた。そしてまた、歩き出した。
しばらくして、肩を叩かれた。今で僕は、声を出して跳びはねた。
「キャ」
「クスクス、驚きすぎ」
上を見上げるとラサがいた。物凄い汗をかいた。しかも到底敵わない恐怖があった。
「今のは、なに?」
「あいつよ。この村を壊滅させた張本人は」
ラサは、冷たく言った。
「今すぐに降りないほうがいい。あれがこのビルを出ることが確認出来るまで」
「・・・・・・」
「疲れたてるみたいね」
「今日は、いろいろあったから」
「そうね。ところでさっき怪我したでしょう。見せて直してあげるから。」
そういうと僕の服を脱し始めた。抵抗したが、疲れていてすぐに力負けした。
「あれ?」
血の跡やアザが少しあったがたいして怪我をしていなかった。
「さっき血が出るぐらい戦ったのにどうして・・・・」
「あぁ、あの時なんかフレーズを思い出してそれをいってみたら怪我が直った。」
嘘ではない。本当だ。と小声でいった。
「そんなはずがない。なんか首飾りを付けているでしょ?」
「そういえば・・・」
僕は、胸元から首飾り取ろうとすると急にラサが服を脱がしてそれを取った。
「何するの?」
僕は、服が顔を隠すほどめくられた。バランスをとりならが転ばないように乱れた服をもとにした。やっと元に戻ったとき、ラサは、それに夢中で見ていた。
「これ誰からもらったの?」
今までにないほど興奮していた。
「・・・・・思い出せない。・・・これは、大切なもの」
「知らないの?これは、国内所持禁止物よ」
「そうなんだ」
「それにこのタイプは、誰でもどこでもどんな魔法でも使うことが出来る。汎用型魔攻石、しかもかなりのエネルギーを蓄えているから体力がなくてもつかえるのよ」
「へぇ〜」
「ねぇ、これちょうだい。」
母さんの顔が浮かんだ。
「ダメ」
「何でよ。多分あなたが持っていても使いこなすことが出来ないはずよ。どうせこれは、道端で拾ったのでしょ?」
「駄目」
「どうして?」
「これは、僕が10才の時にもらった大切なものだから」
「なら仕方がないね」
すごい残念な顔をした。
「・・・・・・あれ、もしかして記憶が思い出した?」
暗くなったとたん急に明るい顔をした。
「うーん。名前が思い出せない。お母さんの」
「あなたよ」
ラサが僕の頭を殴った。
「・・・・ごめん、思い出せない」
「ガク・・・・残念。そろそろ下に行きましょうか」
スクッと立ち上がり部屋を出ていった。小声で
「強く殴りすぎたかな?」
「なんかいった?」
「何も!」
ラサが部屋を出ていったあと
「怒らせちゃたかな?」
僕もラサを追いかけた。階段を下りながらしたから酷く鉄臭い臭いがした。
「上る時こんなに臭かった?」
「なんか言った!?」
「いや何でも」
確かにラサが怒っていた。
大分降りた。階段を見ると3、4階とあったから3階だろう。壁がべっとり何かで濡れていた。日が沈みかけているのか暗くそれが何なのか全くわからない。
ボスッ、何かにぶつかった。
「ごめん」
「この先に何かいる・・・」
ラサが固まっていた。耳をすますと何か音がした。
ドス、ガス、ボキッその音は、近くで何かを落としたり砕いたり、気味の悪い音がした。時たまミューミューと喚く音がした。魔物がまだ下にいた。僕は、ラサを抜いて音のする3階から1階までのエントランスを物影からこっそりとのぞいてみた。見るも無残な光景が見えた。
トカゲと魔物が戦っていた。魔物は、今まで見たことがない、凶暴そうで角が生えてどす黒い皮の・・・まさに鬼と表現することが適切かもしれない。
戦いといっても一方的だ。逃げ回るトカゲを追い回して、ひたすらに食べていた。そこらじゅうに残骸が落ちていた。床は、血の海だ。
後ろからラサが、
「あんなに進化したんだ。」
と、ぽつりと言った。
「始めの頃は、子供のトカゲにも勝てなかったのに・・・・」
「あれは、何て言うの?」
「さぁ?」
「名前を知らないわけないでしょう。あいつに村を滅ぼされたんだから」
「ないわよ。」
「?」
「あれは、日に日に進化するのだからいちいち名前なんか付けてられない。」
「・・・・・」
「でも」
「!」
「あえて名前をいうなら、鬼ね」
「鬼?」
「今ここの地名は、鬼ヶ島にちなんで鬼ヶ谷」
「鬼ヶ谷・・・・・」
「そして私たちは、鬼を退治にするために来た桃太郎」
「・・・・・」
「でもそんな簡単には、いかないみたい」
一体の鬼がこちらを見た。僕とラサは、その鬼に気がずいてすぐに伏せた。
「危なかった〜」
「そうねでも私たちここに来るのが早過ぎたみたい。だからといってここにのんびりしていたら助けに来た村人を危険にさらしてしまう・・・・」
「村人思いだね。」
「そうよ。だって私は、村長の娘ですもの」
その気持ちが嘘かまことかは、さておき、この状態をどう打開するべきか。真剣に考える必要があった。
真っ正面に鬼に挑んでも勝てる見込がない。だからと村人に助けを呼んでも助かるとは、限らない。逆に自分の位置が鬼にばれて無事はでいられなくなる。
逆に村人に鬼の存在を教えないとここにいる鬼達が今いるトカゲを食べ尽くして外に出て村人を襲いかねない。
ドンと鈍い音がした。二足歩行しているトカゲ達と鬼達が死闘を始めた。その結果ビルの一階部分の壁や柱が壊れたり砕いたりしていた。
ドーン、ビルが揺れた。まるで食い殺すことを楽しんでいるように見える、鬼と仲間を必死で守るトカゲの死闘がどんどんひどくなった。
ふと廊下の上を見ると、一体の鬼が天井にへばり付きながら不思議そうにこちらを見ていた。おそらく食べられるかどうか考えているのだろうか・・・・・・
ドーン、また、ビルが揺れた。
ラサは、まだ上に
「ねぇ」
「何よ」
「上・・・」
「上がどうしたのよ。」
「お、お、わわ」
恐怖感でろれつが回らない。ラサが上を見た。
ガーンまた揺れた。鬼が天井から手を離してこちらに飛んでくると同時に僕は、ラサの手を握り逃げた。鬼も追いかけてきた。
真っすぐに吹き抜けに沿って廊下を走り、突き当たりを右に曲がった。最初は、10
メートルあった間隔も見る見る縮まった。
もう駄目だ。
ガス、音がした途端に後ろから追われている気配が消えた。止まって後ろを振り返ると、転んでいる鬼がいた。
鬼は、スクッと立ち上がりとても痛そうな目でこちらを見た。そして叫びながらまた追い掛けた。
もう逃げてもすぐに追い付かれる。立ち止まったでも恐怖で動けないわけではない。
「いける!」
鬼が飛び掛かって来た。腰を落としながら交わしつつナイフで切り掛かった。
ザクッ、見事体に当たった。鬼は、着地に失敗しながらナイフで腹を切られて、のたうちまわった。
鬼は、見た目が怖いが別に体が強くはなかった。むしろ柔らかかった。
鬼が暴れるため床にひびが入り下に抜けた。
「落ちちゃった・・・・」
「すごい・・・・鬼に戦うなんて」
ラサは、すごく驚いていた。
「そうかな。鬼も見た目が怖いけど別に強くないみたい。」
「でもすごいよ。鬼に戦おうとするなんて」
体が勝手に動いただけで少し照れた。
一階のほうを見るとトカゲ達が鬼に対して有利に戦っていた。しかしよく見ると下の大乱闘でビル全体にひびがはいり、今にも一階から崩れそうにだった。
「ねぇ、ラサ」
「何?」
「このビルの耐久年数ては、もしかして過ぎてる?」
「当然よ。細かい数字は、わからないけどもう2、30年は、過ぎているはずよ。だってこの辺の建物は、歴史があるからみんな遺跡ビルと呼んでいるよ」
「じゃ−いつ崩れてもおかしくないわけだね。」
「ま−言ってみれば、そうだね」
ガタガタとビルが揺れ出した。
僕は、エントランスに向かって大声で
「トカゲ達、よく聞けー−−!」
戦いがやんだ。
「もうじきでこのビルが崩れる−−!」
すべての魔物がこちらを見た。
「早く逃げないとビルの下敷きになるぞ−−−」
トカゲ達は、我に帰り我先に出口を目指した。鬼は、一斉にこちらを目指して群がり始めた。
「バカーこれからどうするの?おかげで鬼に囲まれるじゃないの責任をとってよ」
ビルの揺れが次第に多きくなり出した。もう数分でビルが持たなくなった。
「バカー」
ラサの声が次第に弱くなって来た。
「大丈夫、何とかする」
「どうやって−」
「こうやって!!」
鬼が集まる中、僕は力無くうなだれたラサを抱き抱えて、
「ワレにツバサを!」
胸にある首飾りを蒼く輝きながら、僕の背中からとても大きい白い羽が生えた。
「目を閉じて!ゆくぞ−!」
羽を大きくはばたかせ、体が軽くなり足に力を込めて飛んだ。すぐにいたところが鬼の大群になった。
そして、廊下が鬼の重さにたえきられなくなり、とうとう崩れ始めた。
僕とラサは、かなり早い速度でエントランスを滑空した。下では、トカゲ達が出口へ目掛けてパニック状態だ。
少しづつビルが崩れ出した。
「すごい、飛んでる。」
「目を閉じて−」
目の前に窓が見えた。今になって方向転換なんて出来そうにない。
バッシャン、ガラスに頭から突っ込んだ。正確にいうと腕で抱いてるラサが先にガラスにぶつかった。・・・後が怖かった。
妹が崖に生えている木に登っていた。
「ねぇ、それ以上のぼるのを止そうよ。」
「大丈夫だってお兄ちゃん、早くおいでよ。」
「そんなことしたらお母さんに言い付けるよ」
「何いってるの−お兄ちゃんだってお母さんの大事なブレスレットを付けているに〜」
「わかったよ〜」
「はやくーはやくー」
「せかさないでよ〜」
登きるとついさっき見た。夕日が見えた。
「すごいでしょここ私のお気に入りな場所なんだ」
「キレ−」
僕たちは、日が沈み切るまで見ていた。
「じゃ降りよっか。」
急に強烈な風邪か吹いた。
「きゃ−−」
妹が風で木の枝からぶら下がりになった。
「あぶない。」
「キャー落ちるよ−」
妹の手を掴んだけど僕の力では、到底持ち上がらない。
「タスケテ−」
叫ぶが、近くに人がいないからすぐには助けてくれなさそうだ。
「うっ、重い、離してたまるか−」
少し持ち上がった。
「お兄ちゃん〜」
泣きながら見てる。
「うぁ!」
また風が吹いた。それもさっきより強い。僕は、バランスを崩して一緒に落ちた。
「おちる−」
僕は、妹たぐりよせきゅっと抱き寄せた。
「僕に羽を−−」
ブレスレットが光背中から羽が生えた。羽が生えたおかげで落ちる速度がゆっくりになった。生えたばかりの羽でも、思う通りに飛べた。でも地面まで後少しのところで羽が消えた。
「・・に・・ん、お・い・・・ん、お・ちゃん、おきてよ・・・・」
誰かが、僕を呼んでる。聞いたことある懐かし声・・・・
前にも同じことをしたことを思い出した。今なら自分の記憶を思い出せるそんな気がした。
ガスッ、
「うまく着地できた。」
「成功に浸ることが出来なさそうよ。」
「えっ?」
僕たちは、ビルを出てすぐのところに着地した。ビルが轟音と共に崩れ出したので、すぐに走り廃屋の裏に隠れた。白い埃で目の前見えなくなった。
ゲホッゲホッ、埃がひどい、おまけに日が沈んで辺りも暗くなかった。
「と・こ・ろ・で何であんな魔法が使えたのにすぐに使おうとしなかったのよ。もっと早く使えばあんな危険な目に会う必要もなかったのに」
ラサは、僕の襟を掴みそれを前後に揺らした。
「叫ぶ前に急に思い出したんだよ。幼い頃に使ったことを〜」
「それにトカゲ達を何故助けたの?」
「だって見殺しにすることは、出来なかった〜」
「あなたは、本当に馬鹿ね!」
ラサが、手を放した。今にも泣きそうな目で見ていた。
「ごめん・・・・」
それから僕たちは、埃が納まるまでここに止まることにした。しかしなかなかおさまりそうにないから手探りで村に帰ることにした。
煙を抜けたとき、一匹のトカゲがいた。あの女トカゲだった。
「さっきのケガは、大丈夫か?」
「何のようだ?」
僕が言うより先にラサが言った。
「お前には、関係ない。用があるのは、その隣にいるやつだ。」
辺りを見回す。他のやつがいない。今やつを倒すべきか?だけど今の僕が、敵の大将を
倒すことが出来るのだろうか?
「そこの男、なぜ助けた!?」
「僕の事か?」
「ハハハ、おまえ以外誰がいる?あの時私たちを見捨てれば、私たちは、全滅した。なの
におまえは、私たちを助けた!どうしてだ!!」
「僕は・・・・僕は、おまえ達を放っとけなかった。だから逃げるようにした。」
「それだけの理由か?」
「そうだ!」
「もしかしたらまだ私の仲間がおまえを追って殺そうとしているかもしれないのにか?」
「・・・・・・」
「まだおまえ達は、私たちを殺さない。もしそうならもう死んでいる。」
ラサが、話に入り込んで来た。
「そうだな。今回は、生かしといてやる。」
急に煙が消えた。周りには、多くのトカゲ達がいて女トカゲを見守っていた。数は最初に囲まれた時よりも少なかった。もし女トカゲに戦いを挑んでいたら、今生きているかどうかわからない。
「ふ−助かった。」
日が沈み完全に暗かった。
「オーイ、大丈夫か−」
近くから声がした。それは、明らかに人の声だった。
見えるぐらい近ずくと明らかに村人だった。
「驚いたよ。救難信号が見えたから急いで着たのにビルの周りにたくさんトカゲがいたから、近づけなかったよ−それになんだいきなりビルが崩れてさ−、怪我しなかったか?」
ひどく訛りのある言葉だ。おそらく山奥からこの村へ狩りをしに来た人だろうか。
「大丈夫よ。助けに来てくれてありがとう」
ラサの声が、急に気品のある声になった。
「ところでーさっきまでトカゲ達に囲まれていたけど大丈夫だったか?それに一人で」
「えぇ、この子のおかげでケガせずにすみました。」
「?」
「この子よ」
ラサが僕に指で指した。村人もこちらを向いたので一様頭を下げた。
すると村人の態度が急に変わった。
「おまえか−村長の娘をたぶらかして、こんな危ないところに連れて来たのは−もしこの子になんかあったらおまえ責任とれんのか−」
「いや、僕が連れて来たのでは」
「ごめんね、じい・・私がここまで連れて来たの」
ラサがかばった(?)
「ほんとかーでもなぜこんなところに」
「だって今日は、祭の日でしょう。だから、トカゲの新鮮な肉を採ろうと思ってだから」
「本当なのか?」
「えぇだって彼のおかげでさっき、トカゲ達に囲まれた時に彼のおかげでみんな逃げていたもの、じいもさっき見たでしょう。」
「まぁーそうだが−ところで君!」
「ハ、ハイ」
「見た感じ15才だが、戦争は、どうしたもしかして、逃げ出したのか。そうならば脱獄
兵じゃないのか?」
「僕は、・・・・」
脱獄兵じゃない。と言おうとしたが喉まできていうのをやめた。
「この子はね、まだ15才じゃないの。だから旅をしているのだってもし戦場にいったら
他の町に行く機会なんてないじゃない。」
「そうだがー学校は?まさかサボっているわけないよな−」
僕は、首を横に振った。
「だってまだ冬休みなわけないだろ−」
「何言ってるの?彼の町では、彼みたいに旅で学校を休むことは、認められているのよ。ねっ」
首を縦に振った。
「本当か−なんか嘘をついてる気がするけど−」
「そんな事ないよ。」
「まぁ、ラサを救ったのが本当なら今のが嘘でも村を出ていかせるわけには行かないしな−仕方ない。おいでそこの若物」
向きを変え、息をおもいっきり吸い、
「皆の者、ラサの安全が確認できた−−!トカゲの肉を持って村に帰るぞ−−−」
大声が周囲にこだました。するとまわりからぞろぞろ人が集まり始めた。
「こんなに隠れていたとは」
集まったのは、みんな強そうで50人くらいいた。
「私たちの得意技は、待ち伏せなのだから隠れることは、得意のよ」
「そうだよー来てみたのはよかったけど−あんなにトカゲがいたからなかなか近ずけなかった−。そしたら−みんな引いて中からお前達が二人だけいたから−おれが罠かなと思ったよ−」
「ご迷惑かけました。」
「そんな私たちは−、あなたのためならーどんなところでも行きますよ」
ツンツン、僕が軽くラサの肩を叩いた。
「お祭りっていったけど何の祭なの?」
笑顔で
「あなたの祭よ。歓迎するためにだから肉を取るため来たのよ」
僕の村でも祭があるけど、僕のために祭をした事がなくうれしくなった。
村人の肩を見るとぐったりもしくは死んでるトカゲがのっていた。それもみんな子供
だった。
「あれを食べるのか・・・」
小声で誰も聞こえないようにぼくは、言った。




