2部 補足「桜とコクハ」
2部5幕で主人公の僕が、気絶して倒れているとき桜とコクハの会話です。
あの倒した蟻はいったいなんだったのか?
なぜリュウキが桜をだまして離れたのか?
なぜコクハが桜を攻撃したのか?
ブレスレットの行くへは?
読めばわかる(たぶん)
翡翠村からそう離れない海岸にて、宿の2階の部屋のバルコニーからカラスが飛び立ったとき
「重い−」
人魚の桜にとって仕事後の労働は体に一番応えた。手には、15歳くらいの少年が、引きずられている。その少年は、溺れて海水を飲んだせいか、息をしていない。
「そっ、れー」
握力が、水中で人の数倍の握力がある人魚の桜でも地上となれば足(?)に力が入らないため人一人運ぶのにてこずる。
「生きてる−?」
時折振り返っては、旅人に声をかけるが返事がこない。そろそろ蘇生をしないと旅人は、ドザエモンになる。
「オーイ、生きてる−?」
返事がない。
「水飲みこんでるか−、人口呼吸しますか−でも、力加減難しいんだよね」
握力以外にも肺活量も人を遥かに越える、桜は、以前にも今みたいな事があり、焦ったあまり呼吸が多すぎて人一人殺しそうになったことがある。だが、このまま考えていると旅人は、本当にやばそうだ。
「仕方ない」
桜が、決心して、人口呼吸することにした。息を軽く吸い込むと旅人の口に向かって吹き込んだ。だが
「起きてよ−」
いくらなんでも弱すぎだ。もし起きていたら肺所か口先に軽く風が吹いた程度だ。桜は、胸に耳を当てると、心臓の音がしない。
「もしかして、心臓も止まってる〜」
気付くのが少し遅いかもしれないが、桜をあせらすのに十分だ。
「あ〜もう」
桜は、深呼吸して、旅人に人口呼吸することにした。
「やめろ〜」
声の後すぐに羽の音がして、桜が振り向くとそこには、一羽のカラスがいた。
「何このカラス、今忙しの後にして」
「落ち着け!また、桜は、人を殺す気か?」
「あんたなんかと討論する暇ないの!この旅人の命がかかっているんだから」
「なら息の吸い過ぎだ。さっき半分でいい。そうでなければ肺を破裂させるぞ!!」
桜は、そのカラスに言われたとおりにさっきより手加減して人口呼吸した。
旅人は、むせながら海水を吐き出した。そして、ゆっくりと呼吸を始めた。
「よかった」
桜に安堵の顔をした。
「やれば出来るのに・・・」
カラスは、呟いた。桜は、両手を重ねて旅人にあてた。
「次は、何をする気だ?」
「心臓マッサージよ。心臓が止まっているもの」
「呼吸しているのに心臓は止まるのか?」
桜は、あわてて旅人の胸に耳をあてた。波の音しかない。
「聞こえないよ」
「首の頸動脈を触ってみろ」
「ここ?」
桜は、喉仏を指した。
「違うここだ」
「えっ?どこよ」
「ここだ」
「?」
「だから、ここだ」
試行錯誤しながらようやく旅人が、生きていることがわかった。
「さて、これからどうするべきかだ」
「この子起きないよ?」
桜は、不安な顔をして聞いた。
「おそらく魔法の使いすぎだろう。魔法を使う分からだを休めないといけないからな、それに」
「それに」
「なんでもない」
「?」
「人魚さん、息子がご迷惑おかけしました。おかげで我が子が無事帰って来られました」
カラスは、頭を下げて御礼の仕種をした。
「何言ってんのあなたは、カラスよ。この子の親な訳無い」
桜は、目を丸くして言った。カラスは、自分の身を見た。
「あぁそうか」
「何が?」
「なんでもないカー」
カラスは、語尾に「カー」をいれた。
「あんた、一体何物?」
桜は、カラスに疑いをもった。
「単なるお守りロボットのカラスカー」
「そんなわけない。ロボットが、語尾の「カー」を忘れる訳無い」
「急なときは、会話を迅速にするために省略するカー」
「都合のいいこと・・・もしあんたが、ロボットならロボットの証拠を見せなさいよ」
「内部構造は、企業ヒミツカー」
桜は、素手でカラスを掴もうとしたがカラスはたやすく飛んでかわした。
「本当に都合がいい体だな」
地を這う桜が、空から見下ろすカラスに悪態をいった。カラスは、桜から少しはなれたところに舞い降りた。
「まるで陸に上がった河童だな」
カラスは、小声でいった。桜は、波音で何を言ったのか聞き取れない。
「なんか言った?」
「何も言ってないカー」
「うそっトーンが、少し変わってる。うそついているでしょ?」
桜は、地獄耳で耳が良かったなとカラスは、思い出したがもう遅い。
「これからどうするカー?」
「これから?私?」
「そうっ、桜のここでの仕事は、もう終わったカーこれからどうするカー」
「そーね。考えもしなかったわ。これからどうしようかな?」
「ここに居ろといっても聞かないんだろうな〜」
桜は、単調なことを嫌うのは、このカラスは、十分に知っている。
「そうだ。この旅人とまた旅でもしようかな〜♪」
カラスは、急に目付きを鋭くした。
「こいつと旅をして、一体なんの得がある?」
「えっ?だってここにいても退屈なだけだし、どこか遠くに行きたいし、それにリュウキにも会いたいし」
「だめだ。桜は、ここから離れてはいけない!」
カラスは、強い口調でいった。
「なんでよ?どこ行こうが、私の勝手じゃない」
「この村をどうする気だ?」
「ここ?いいじゃん別にこの村なんて私に関係ないし」
「は〜何でこの付近の海は、周りに海に比べて魚が取れるか知ってるか?」
「あーあれでしょ。蟻の巣から出すフェロモンが、海に溶け出して、それで辺りの海から魚が集まって来るんでしょ」
「知ってて自分のしたことがわかるのか?」
「もちろん。化け物退治」
「違う。蟻が全滅したということは、この海に周りの海から魚達が集まらなくなるんだぞ」
「そんな事今の私に関係ないよ・・・っ!何であんたがこの海の事知ってんのよ?巨大な蟻の巣があることは、私とこの旅人それにリュウキしか知らないはずよ。村人だってこの事は、知らないのに」
「そっそれは」
思いもしないツッコミにカラスが動揺した。
「それになんで私の名前を知っているのよ?バカカラスのくせに」
「私は、バカカラスではない。私の名前は、コクハだ」
「じゃ聞きますけど、何であなたは、私の名前を知っているのですか?それにこの海にいた蟻のことを知っているの?」
コクハは、少し考えていった。
「リュウキから聞いたから」
「あなたリュウキのことを知っているの?」
「桜のいうリュウキと私の知っているリュウキが、同じとは限らないがな」
「ねぇねぇ、今リュウキは、今どこにいるの?お姉さんに会えたの?」
カラスにコクハが、リュウキのことを知っていると聞くなり、急に桜の態度が変わった。
「姉さんには、会えた。だが気付くのが遅かった」
「今どこにいるの?」
「姉さんがいた村の近くに住んでいる。多分そこからはなれないと思う」
「まさか、リュウキに私以外の変な女がいるんじゃないでしょうね?」
コクハは、すぐに答えようか迷った。
「そこに倒れている旅人がいるだろう」
コクハは、魔法の使い過ぎで倒れている15歳くらいの旅人を指した。
「うんそれが」
桜は、平然と答えた。どうやら勘は、鈍いらしい。
「だれかに似ているとは思わないのか?」
「そうね〜、リュウキに似ているような似ていないような。あっもしかして彼が、リュウキ?」
コクハは、呆れた。
「ハ〜あほらしい。桜と別れたのは、もう30年近く前の話だよ。なのになんでまだ子供なのさ−」
桜の顔が曇り出した。桜にとっては、最悪の結果になるからだ。
「もしかしてリュウキの従兄弟」
「こいつは、5人兄弟の4男だ」
「嘘よ。そんなはずない。そんな訳無い」
桜もいい加減に気付き始めた。
「仕方ないさ」
「嘘よ。リュウキが、私を置いて・・・誰だかわからない女と・・・」
「例えリュウキが、桜から離れなかったとしても君と結ばれる事はないよ」
「?」
桜は、コクハの意味がわからなく頭を傾けた。
「桜は、魔物でリュウキは、人間だ。決して結婚なんか出来やしない」
「愛があれば!」
「無理なのは無理、現に君は、歳を取らないのに対し、私は、もう45だよ」
「何言ってんのこのカラス?もしかして」
「私は、メカカラス〜」
「語尾に「カー」を忘れてるし」
コクハは、慌てた。
「そういう仕様カー」
「うそ」
桜は、体をバネのように縮ませ、戻ろうとする反動でコクハを捕まえた。
「はっ離すカー」
「いやよ。あなたは、一体何もの?リュウキとは、どんな関係?」
コクハは、暴れたが桜の体が動かない。
「仕方ない。話すから離して」
「いやよ。たいていそう言って何もいわないで逃げるのでしょ?」
「・・・・」
コクハは、暫く黙って考えた。そして、長い沈黙の中、波音だけが聞きこえた。
「久しぶり桜、私は、リュウキだよ。わかるか?今は、この子を見守るためにこんな姿だけどね」
「はぁ?何言ってんの自分のことをロボットやコクハカーでしまいには、リュウキだよ?からかうのもいい加減に」
「本当だよ。君とあったのは、砂浜に生えている桜の木下で最初は、珍しい木を言ったのに君は勘違いして自分の名前だとかいいはじめたのにね」
桜の言葉を遮って、リュウキ(コクハ)は、話した。
「何で知っているの?リュウキは、そんな事も話したの?」
「そういえばもしかしたら、まだこのこのポケットの中に君にあげたブレスレットがあるはずだよ。探してみな」
桜は、リュウキに言われるがまま、旅人のポケットに手を突っ込んだ。
「何もないわよ?」
「じゃ反対かもしれないな」
もしかしたら海に流されたかも?リュウキが付け加えた。
「あった」
旅人のポケットからハゲタカを倒したて剥いでるときに手に入れた、人魚のブレスレットがあった。”桜”と刻まれていた。
「もう戻ってこないと思ったのに・・・」
「確かそれは、この町に来る前の町で君とであって1年目を記念してあげたものだったよね」
「何でそんな事も知って・るの・・よ・・・」
桜の言葉が、小さくなり途切れた。そこには、もうカラスの姿はなく、代わりに桜の見知らない男が立っていた。
「リュウキ?どうやって?」
「今の魔法は、かなり便利でね。ある魔石に自分の思う物体をあたかもそこにいるように存在することが出来るんだよ」
「えっ?」
魔法や魔石など聞き覚えのない言葉を言われ桜は、混乱した。
「親ってさ、木に立って見るって書くんだよ。だから、姿を変えてこの子を見守っているんだよ」
「この子って、やっぱりあなたは、もう・・・」
桜の言葉が続かない。
「もう結婚したよ。子供も5人いるよ」
「嘘よ。そんなのある訳無い」
リュウキは、出来ればその事を言いたくはなかった。しかし、嘘を言い通す自信はなく、本当の事をいった。
「・・・・・」
「なぜ、お姉さんに会ったらすぐここに戻るっていったじゃん」
リュウキは、桜が涙を流したのがわかった。
「君と別れてから考えたんだ。これからどうしようかとね。それでやっぱり私は、君と旅を続けられないと思ったんだよ」
「なぜ?」
リュウキは、その理由が多分言ってはいけない言葉とわかっていた。しかし、ここで言わないわけにはいかない。
「確か君は、移動サーカスの見世物だったね。そして、自由を得るためにサーカスの飼育員を殺した?違う?」
「そこであなたに会った」
「だけど私も自由になるために多くの人を殺し傷つけて来た。だから、君、桜のした行為をどうこう言う権利はあの時はなかった」
「じゃ今は?」
桜は、恐る恐る聞いた。
「君は、魔物だからだよ」
「っ!!」
桜は、言葉を失った。
「上半身は、人間そのものだけどしたは、明らかに魚、これからも一緒に旅なんか出来ない。君は、ここでいつまでも蟻と戦い続けるし、例え一人では駄目だと気付いても人間嫌いだから、町の人には、絶対助けを求めないからね。いつまでもここからはなれないからね」
「・・・・・」
「現に君は、息子が来るまで一人で戦っていたからね」
「なぜ?」
「んっ?」
「何故あなたは、変わってしまったの?私とあったときあなたは、魔物じゃないっていったじゃないの?」
「・・・・・」
「私が、魔物じゃないからこの町まで一緒に旅をして着たんじゃないの・・・なぜ?」
「・・・・若気のいたりさ」
桜は、泣き出した。
「仕方がないことだ。人と魔物は、合間入れない。それが、どんなにも知識を持ったとしても」
桜は、泣き続ける中、リュウキは、しゃべり続けた。
「泣くな!!これからだ!これからどうする??」
桜を思わず泣くのをやめた。
「・・・・・・・」
「顔を上げて、ここから離れるんだ。そして、人のいない島に行け!!」
「えっ!?」
「だって君は、人殺しだ。もし仮に人なら場裁判で裁かれるが魔物は、焼却処分しかない。だからここから遠くへ」
「嫌よ。わたしは、この旅人と旅をしたいの!昔みたいなまだ行ったことがない世界に行きたいの!」
「なら一人で行け。息子を巻き込むな」
「何で行けないのよ」
「何故なら人と魔物は、決して交じらない。結婚できないからだ」
リュウキは、急に黒い羽に包まれたかと思うとカラスの姿になって桜を攻撃した。
「何するのよ。やめて!」
「早く行け!息子が目覚める前に!!」
「止めさせなきゃ」途端に僕は、体を起こした。コクハが、宙に飛び、桜の頭目掛けて後急降下した。
「ギャ」
「コクハヤメテ」
息子が、虚ろな瞳でこちらになにか言っている。だがやめるわけにはいかない。
「最後だ」
「あっクソッ覚えてろ〜」
勝ち目がないと見た桜は、海に飛び込んだ。
「やめて」
僕は、思うように声がでない。桜は、まともによけられなく直撃だ。ソシテ、よろめきながら海に飛び込んだ。
「待って」
ザーッ、波が僕の声を掻き消した。
コクハが、下りて来た。
「ふーっ、よし!やっといったか」
「コクハ!桜に何するんだ!」
息子が一生懸命に体を起こしてこちらを見た。
「何で?」
かすれた声で聞いた。
僕は、怒鳴った。
「やっと起きたカー私は、魔物を蹴散らしただけカー」
そして、「仕方がないこと・・・カー」と小声で付け加えた。
僕の家にて
「痛ッ」
「どうしたの」
妻が駆け寄って来た。手の甲から血が出ていた。どうやら桜に一撃喰らったみたいだ。
「なんでもないよ。どこかで切った見たいだ」
「どこってどこよ?」
遠隔に召喚して、それを自由に扱えさらにその視覚や聴覚など5感を感じさらに、光や電波の類でもないからこの星の中であれば例え室内でも地下でも制御できる。しかし、その物体のダメージは、自分に降りかかる。現にコクハのダメージが、自分に帰って来た。
これが、どんな仕組みで動いているのかわからない。蛍光灯、テレビ、冷蔵庫・・・それら、同様に一体どんな構造でどんな仕組みなのかわからないが十分使える。
「紙で切ったのかな?」
「早く塞がないと雑菌はいるよ」
「魔法で直してよ」
妻は、多くの種類の魔法を使うことが出来る。
「いやよ、面倒だし疲れる」
確かに、これくらいの傷を直すとなるとかなり厄介だ。
「わかった。救急箱どこだっけ?」
「取ってくるわ」
妻は、席を立ち救急箱を探した。
「ありがとう」
私は、部屋に残された。桜に厳しくいったつもりだけど思いは、届くだろうか?
「思いは、正しく伝わらない・・・か」
「何?」
「なんでもないよ」
私も、新聞を畳んで一緒に救急箱を探した。
そして、桜のたびが始まる。
僕が気絶していたときに聞いた歌は、走馬灯で聴いたのかもしれない。
続編は、完成のめどが立ち次第ブログで報告します。




