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僕のたび 第1章 -I go alone-   作者: 城間 奇成
12/19

2部より 第2幕「海の見える風景」

 なんか気配がする。サクッ、

「いっ!フガフガ」

思わず叫びそうになったが、コクハの羽が口を塞ぎ話せなくなった。

「フ−フ−フガー」

「わかった。わかったから放すカー」

「ハァハァ、苦しかった」

 目が覚めた。

「早く起きないからカー」

時計を見た。針は、まだ朝の4:30だ。

「コクハ、いくらなんでも起こすのが早いよ」

「旅人は、あまり寝ないカー」

「それは、そうだけどこんな朝早くから何をするの?」

「早朝トレーニングカー」

「早朝?」

僕にとって早朝は、好きになれない言葉だ。

「まだ3時間ちょっとしかねてないじゃん」

「古代文化のナポレオンは、3時間しかねなかったそうだよ」

「ナポレオンなんて何千年前の偉人だよ。昔の人みたいに短時間の睡眠で疲れは、取れない」

「じゃわかった。これに名前を書いてカー書いたならば寝ていいカー」

「なにそれ?」

「起きたら教えてあげるカー」

「う〜」

紙には、体験という文字が見えた。

「はいペンカー」

なんとなく名前という欄が見えた。

「契約書?」

「違うカー申込書カー」

「なんの−」

「自分で見ればいいカー」

 よく見るとそれには、漁師体験とあった。

「漁師〜?なんでまた−、昨日いろいろあったから今日は、休みたい」

「それは、良くないカー一日休むとそれを補うのにどれくらいの努力が、必要かわかってないカー」

「?」

「毎日の鍛練が、最強肉体を生むカー」

「最強じゃなくていい」

「とりあえず書くカー」

「書いたよ」

名前の欄には、僕名前があった。

「もう寝てていいね」

「あ、あー」

「じゃお休み」

僕は、再びベッドに入った。

「君は、騙されやすいカー」

その言葉にたいして小さないびき声が帰って来た。

「まぁいいか、予定通りカー」


「と書いたじゃないカー」

 朝食をとりながらコクハがはなした。あのあと6時半に朝食の時間ということでまたコクハに起こされた。口には、体験書の受領所を加えていた。

「覚えてないよ」

「でも君は、それに名前を書いたカーしっかり参加するカー」

「だけど参加するかは、本人の自由だよね」

「残念カーこれで釣った魚は、そのまま食べられるのにカー」

「でも生魚は・・・」

「釣ったばかりは、大丈夫カー」

「船は、結構揺れるから初めてはきついと聞くけど」

「何世紀前のことをいってるカー?」

「海を泳いだことないんだけど・・・」

「川なら泳げるから大丈夫カー」

「何で知ってんの?この前あったばかりじゃないか?」

「泳げないほうが珍しいカー」

「荷物や鞄は、ホテルに置いとけばいいカー」

「誰が見るの」

僕は、行きたくないからあれこれと理由をつけた。

「それなら大丈夫カーコクハが、留守番して見守るカー」

だが一つだけ問題が、起きた。

「だってこの受領書、コクハの名前も書いてあるよ」

「何だって?本当カー」

「ほら、僕の名前の横に」

 しっかりとコクハと書かれていた。勿論コクハ、ペンを持つことが出来なく誰かに書かれてしまった。

「謀られた・・・何でコクハの名前を書いたカー?」

「だってなんかたくらんでいたし騙されたくなかったから、僕たちは、運命共同体だろ」

こんなはずでは、こんなはずではとコクハは、唱え始めた。

「コクハが、行くなら僕も行くよ」

「予定が−」

「なんか問題でも、僕は、行ったこともないところでしたこともない漁師をしないといけないんだよ。しかもそれを決めたのは、コクハだよ」

「わかったカーコクハも行くカー」

「途中でとんで逃げるなんて無しだよ」

「と、当然カー」

「約束だよ」

「すみませんがそのお皿をお下げしてもよろしいでしょうか?」

ウェイタ−が、皿を下げようとした。どうやら長く話し込んでしまったようだ。

「えぇ、お願いします」

「どうしようカーどうしようカー」

コクハは、逆にとんでもない約束をしてしまったようだ。


そして今日の話し合いがやっとまとまった。まず、ギルドで昨日の戦利品を換金してそのお金をホテルに預けて11:00からの漁師体験をすることになった。

また、普通漁師は、朝はやくに漁に出掛けるが、観光用は、全く別扱いで昼頃に出るらしい。

 そして鞄を持ちギルドに向かった。

「ねぇやっぱりあそこに行くの」

僕は、あまりあの店主が好きなれない。出来れば別のところに行きたかった。そしたらコクハは、

「隣町のギルドに持って行くことだねカー」と言われた。

そして、ギルドの前まで着いた。

「足が重い」

「文句言わないカー」

ガランッ、カランッカランッ、扉を開けるに連動してまた鐘がなった。

「いらっしゃい、君達かさぁ昨日言ったハゲタカを見せてくれ」

「機嫌がいいね」

「ハゲタカの値段がここ最近でかなり値上がりしたカー」

「またボッタくる口実か」

「聞こえるカー」

僕は、鞄から売れるものを全て出した。品を見るたびに店主は、悩んだ。

「これらは、全てそこのカラスの仕業かい?」

「カラス?仕業?」

「あー骨とか皮とか」

僕は、コクハを見た。

「えぇまぁそうですけど」

「いや、ねぇなんか結構高く売れるように手入れしたみたいだから、まぁ昨日とは全然違うからね質とか手入れとかね」

「全部でどれくらいになりますか?」

「うーん6銀が、だとうかな?」

「それは、ハゲタカの羽だけカー?」

「いやいや冗談ですよ。ハゲタカの骨で13銀かなあともろもろで15銀だな」

「ハゲタカは、妥当だがチーターは、こんなに大きいのは、そう見ないカー」

「そこなんだが、皮も結構傷だらけだし、骨もボロボロだ。せめて綺麗に倒してくれたら・・・」

「16銀」

僕が、少し言ってみた。

「こんなものを買うといってんだ。15銀5000銅だ」

「16銀カー」

コクハも言った。

「それなら買い取らないぞ」

「君は、どう思う?」

コクハが、僕に聞いて来た。

「もういいんじゃない?船の時間近いみたいだし」

「そうカーわかったその値段で」

「まいどどうも」

店主は、疲れたように答えた。

「では行くカー」

「そうだね」

店主からお金をもらい店を出た。ホテルに向かうまで「私なら17銀といった」とコクハが、つぶやいた。


 携帯食料もついでに買いに行くことにした。1日分が、8000銅した。僕の村より10倍近く高い。種類ない上に数も少ない。店員のおばさんに聞いてみると、いつものことと言われた。コクハは、耳元で買う人が少ない上に最近、魔物の肉が不足して仕入が停まりがちだからだそうだ。損するかもしれないが、飢えたくないので10分買った。

 そのあとコクハは、宿に向かうさい寄りたいところがあると言い出した。そこは、時計屋だ。

 旅をしているからといって時間にルーズになってはいけない。だから君には、腕時計が必要だ。というコクハの案だ。僕もそれに共感することがあり、店に入った。店は、時計だけの専門店で僕の村の電気店より多くの種類がある。

「よくこんなお店を知っているね。」

と聞いたら

「この国でも有名なお店カー」

といわれた。

商品を物色しているとあまり無駄使いしてはいけないと思い。安いのを手に取った。だがコクハは、

「せっかくまとまったお金が、手に入ったのだから丈夫でいいのを買えカー」

といわれた。さらに探してソーラーパネルが組み込まれて、電池切れ知らずのをさした。だが洞窟に入ればすぐに止まってしまうといわれ別のをさらに探した。

「ないね」

といったら、コクハは、

「探す気あるのカー」

とまた強く言われてしまった。

「時計には、全く興味がなかったからなどんな種類があるのか、値段の違いが全くわからないよ。ねぇこの1銀と60銀の違いは?形は、ほぼ一緒だけど」

「ブランドカー有名なブランドほど大きな国で作られているから高いカー」

確かにエジプト文字や聞いたことがある名前の時計は、高く、逆に聞いたこともない名前は、安かった。

「お客さんどんなのを希望ですか?」

店員が、声をかけて来た。まだ若い30すぎだろうか?

「ちょうどいいカーせっかくだから聞いてみるカー」

「そうだね・・・でどんな時計がいいの?」

「根本的な問題カー」

「お土産でしたらこちらがいいかと」

店員は、綺麗に飾られた時計を見せた。値段も10銀を超えていた。

「お土産じゃないんだけど」

「ではどんなのでしょうか?」

「旅で使いたいから出来れば、丈夫なのを」

「旅ですか?あれ徴兵は?いやご年齢は?」

「15です」

コクハは、何も言わずただ僕らの会話を見ていた。

「そうですか。では取って置きのを」

「えっ!あまりお金ないんですけど」

店員は、僕の声を聞かずに店の裏に言ってしまった。

しばらくして戻って来た。

「これは、どうでしょう?」

形は、どこにでもあるようなアナログな時計だ。

「これは、ライトもついていて暗いところ洞窟のなかでも使うことができるんですよ」

といろいろ説明を始めた。だが一つだけ気になることがあった。普通の時計は、小さくとも会社のロゴや名前がある。だけどこの時計には、それらしいものはない。

「あとこれは、」

店員の説明は、さらに熱を帯びた。時計を裏に返した。

「見てください。裏もチタンを使いました。そのため強度もなみたいていな・・・」

裏の鉄板には、名前みたいなもの刻印があった。岸崎精巧・・・?キシザキはどこかで見たことがあった。

「すみません。これは、どこのメーカーですか?」

「あっ・・・説明するのが、遅くなりましたね。これを作ったのは、私の父です」

「お父さんの?」

「はい、そうです。父は、時計を売りながら自分でも少し作っていたそうです。これは、それの最後の品になります」

「高いんですか」

自作と聞いてとても高い気がした。

「お客様はどれくらいのを希望ですか?」

「えっ、えーと」

思いもしない答えが、帰って来た。考えてなかったのでいくらといえばいいのか答えた。

「5銀カーそれ以上は、むりカー」

 コクハが、代わりに答えた。

「わかりました。その値段で売りましょう」

「本当カー?君の父が作る時計は、どれも車が買えるような額カー」

「えぇかまいませんよ」

「?」

僕には、その価値は、全然わからなかった。

「どうしてそんなに安いカー?」

「実は、この時計は、もともと父が私にくれたもなんです。ですが、最後にこれを作ったあと魔物に襲われて命を落としました」

「いいんですか?せっかくの父からプレゼントを・・・」

「はいっ、実は私は、徴兵には参加せずにあなたと同じ旅をしようと思いました。そして、世界を周り父と同じように多くの時計について勉強をしようと思ってました。ですが・・・」

「あの津波カー」

「そこの機会仕掛けのカラスさんは、詳しいみたいですね」

「少しならな」

コクハが、語尾を延ばさない。

「私が、旅立つ2日前に津波がやって来てそれを起こした魔物にやられてしまいました。

働き手がいなくなったわが家では、私が徴兵に行かねば、ならなくなりまして」

「その魔物は、そのあとどうなったんですか?」

津波を起こす魔物なんて聞いたことがなかった。

「一人の旅人と一人の人魚によって討ち取った。ときいています」

「すごい話しだな・・・で人魚とは、実在するんですか?」

「えぇ、そうみたいです」

「みたいって?」

「私も聞いただけなのででも漁師が、ここ最近よく見ると聞いてますよ」

「へぇ〜」

僕は、本やアニメでしか見たことがない人魚が、実在するとは思えない。

「そこのカラスさんは、聞いたことないですか?」

「そんなの知らないカー」

「そうでしたか、あっ」

見せていた腕時計の針が止まっていた。

「売る前に止まっている腕時計なんて初めてカー」

「・・・・・・」

 僕は、何も言えなくなった。

「多分電池切れです。たびたび調整は、していたつもりなのですが」

「この時計は、何年前に作られたのですか?」

「もうかれこれ30年前です。でも大丈夫です。よく部品を新しくしたり、掃除しているので、まぁ電池さえ変えればあとまた10年止まりませんから」

 定員は、笑いながら答えた。そして悲しい顔でいった。

「本来これは、旅をするものに与えるはずなんですが、結局私は、旅が出来ませんでした。ですから旅をしているあなたに似合うと思うんです」

 コクハは、さりげなく別の時計を見た。船がでるまで30分を切った。

「おいそろそろ時間カー早く決めるカー」

「これにします」

僕は、この時計なんか惹かれた。

「では、サイズを合わせるので腕を出してください」

僕は、言われるままに腕を出した。

店員は、腕時計をつけたままサイズを変えてしまった。

「では、サイズを調整しましたので電池を替えますね」

僕の腕から手早く時計を外した。

「おい、もうすぐで船の時間カー」

「そうだね」

「船ということは、この村をあとにするのですか?」

「いや、ただの漁体験カー」

「なるほど、では電池を変えましたらお泊りのところに預けましょうか?」

「そうしてくれカーお金も今すぐ払うカー」

「わかった」

僕は、慌てながらお金をだし渡した。

「ありがとうございます。お泊りの所は、といっても1ヶ所しかありませんね」

「お願いします」

「コクハ、急いで宿にもどるよ。急いで」

「私は、もう少し店を見ていくカー先に戻ってほしいカー」

「わかった」

僕は、店を出て急いで宿舎に戻った。

「あなたは、機械じゃないですね」

僕が、店を出たのを見張らかって店員がコクハに聞いた。

「機械じゃなければ何カー」

「人の化身、もしくは召喚獣」

「何故そうだと言えるカー」

「私も機械いじりをしているので何となくあなたは、出来過ぎてる。もしここが田舎ならいい見せ物だ。都会でも」

コクハは、呆れた。

「君は、父親に似て洞察力があるな」

「父を知っているのですか?」

「洞察力ある君に期待して一つだけ頼み事がある。いいかい?」

「はい。なんでしょう」


僕は、店でそんな会話を知らず走っていた。部屋に全速力でもどるとさっき買った携帯食料を置き、そのまま全速力で港を目指した。

「なんかここ最近、走りっぱなしだな」

 港までの道程は、部屋から海が見えて、港も見えたので道に迷うことはなかった。

 だけど一つ問題があった。海を目の前にして集合場所は、どこだろう。

辺りを見回しても30隻以上の船が停まっていた。その中から一つを探さなければならない。

「集合場所を決めとけばよかった」

 とりあえず端から端まで走ることにした。

目の前にコクハが、いた。

「オーイ、コクハ−」

 コクハと呼ばれたカラスは、カーカーと叫びながら飛んでいった。で僕は、端から端まで走った。というよりは恥ずかしく逃げたかった。


 その頃、コクハは、今日乗るはずの船の近くで出されたお菓子をクチバシでつまんでいた。

「もう時間だがおたくの連れは、来るのかい?」

 今日乗るはずの船の船長が話して来た。コクハは、お菓子をつまむのをやめた。

「もう少ししたら走ってきますカー」

「本当だろうね」

「本当カー」

タッタッ、タッタッ、タッタッ、僕が、走ってくるのが見えた。

「ほら」

「本当だ。走って来た」

タッタッタッタッ、だが僕は、コクハを見たけれどお菓子をつまむ普通のカラスだと思い素通りした。

「あれ?」

「本当におまえさんの連れかい?」

「すぐに戻ってくるカー」

「じー」

「本当カー」

 それから5分もしないうちに戻って来た。

「オーイここだよ」

タッタッタッタッタッ・・また素通りしてしまった。

「・・・・・」

「・・・・・」

「本当におまえさんの連れかい?」

「すみません。すぐに呼んでくるカーその間これを預かっててカー」

 コクハは、買ったばかりの時計を船長に預け僕を呼びにいった。

「どこに行くカー」叫びながら


 結局20分近く約束の時間を遅れてしまった。

「本当にすみません」

 僕たちは、謝った。

「時計屋の言ったとおりだな」

と言われた。そして、船長からあずかりものの袋と救命ジャケットを渡された。袋の中からさっき買ったばかりの腕時計が、入っていて時を刻んでいる。

「思っていたよりも電池交換早かったね」

「あの時計屋の腕は、最高カー」

僕は、すぐに腕時計を付けた。さっきサイズを合わせたのでピッタリだ。そして、船長から渡されたもう一つの物を手に取った。

「救命ジャケット?」

「海に落ちてもこれを着れば浮いてられるカー」

「着方は、わかるか?ボウズ?」

「ボウズって・・・」

「そういわれても仕方がないカーわからないならすぐに聞いたほうがいいカー」

「これどうやって着ればいいんですか?」

「どうやってて普通に上から着ればいいんだよ」

「なるほど」

「しっかり締めるんだぞ。じゃないと船から落ちたら大変だからな。それに船は、かなり揺れるからな」

「えっ?」

「当然だろ。海なんだから」

僕は、コクハ睨んだ。

「朝と話が違う」

「船は、揺れて当然カー」

「・・・・・・コクハも乗るんだよね?」

「と、当然カー」

「途中で飛んだり逃げたりしないよね?」

「・・・・」

コクッ、首を僅かに縦に振った。コクハが、逃げないようにヒモかなにかで縛ろうか本当に考えた。

「そろそろ船を出したいんだかいいか?・・・て大丈夫みたいだな」

「すみません」

「なんだ?」

「酔い止めの薬ありますか?」

 村を出る前に学校の先生からもらった薬には、よい止め等なかった。

「そんなのないよ」

「・・・」

「まだ昼飯食べてないんだろ?」

「えぇまだ」

「なら大丈夫だ。腹の中は、からっぽだからもし酔っても吐きたくても吐けないからな、ガハッハッハッ」

船長は、笑い出した。僕は、頭から血が引いた。コクハも僕を睨んでいた。

「・・・・・・」

「さぁぼちぼち出るぞ」

 船長が船に向かって叫んだ。

「了解、船長」

 船長の一声で周りにいた2人のクルーが答えた。周りが忙しく動き出す。

ちなみに僕は、さっきから話していた人が船長だと今更知った。

「さぁボウズ早くのりな」

 船長に促されるまま僕達は、船に乗った。都会なら見たこともないジェットコースターに乗るような感じだろうか?

船の大きさは、多分15Mぐらいでやく30年ぐらい前に作られた船で形は、1000年近く変わらない。と僕より5才上の船員が、教えてくれた。


 そして、僕は、5分もたたないうちに

「うぇ気持ち悪い」

酔った。コクハは、酔いもせずに船頭で海を見ている。波は、穏やかで、白波もない。だが船は、異様に速い速度でやたらに揺れた。僕にたいするなんか怨みでもあるような感じだ。また、吐きたくても吐くことが出来ない。

「あ−う−」

 僕が、出来ることは唸ることぐらいしかない。それが延々と10分ぐらい続いた。別に時計を見ていたつもりはない。見る気にもなれないが・・・

ガタンッ、船が大きく揺れた。すぐに船は、停まり揺れもおさまった。

「よーし、始めるぞ−」

船長が、叫ぶどうやら漁場に着いたらしい。

「う−」

バサッバサッ、コクハが、飛んで来た。

「大丈夫カー?」

 もちろん大丈夫ではない。

「う〜〜」

「ほらボウズしっかりしろ、今日は、おまえのためにこの時間に来たんだからな。まぁ、時間を守ってくれたらもっとゆっくり来れたんだかな、ガハッハッハッ」

「せっ、船長−」

 さっきいろいろ教えてもらった船員も酔っていた。

「おまえらだらしないな」

「・・・・・」

「おいみろこのカラス!元気だぞ!なぁ」

「当然カー」

「仕方がないか」

 船長は、そういうと操縦席からよい止めの薬を持ってきて飲ませてくれた。5分もしないうちによいから覚めた。


「では漁を始める!総員配置につけ」

 号令で船の上が慌ただしくなった。というより船員の2人と船長が作業を始めた。僕は、邪魔にならないようにそれを見ていた。

 この漁船は、広げると300Mを越える網を広げそれを引っ張りながら進み沢山の魚を捕まえられる、と説明された。

 僕の作業は、よく魚が、釣れるポイントでの一本釣だ。つまり釣りをするまで僕が、することはない。手伝うことも出来るが、手慣れてない人がやっても邪魔なだけだ、と船長に言われ作業を見ていた。

「船長!網を出します」

「了解」

 船が、再び走り出した。走りながら300Mの網をだし続けた。それが延々と続く、網をだし終わると次に船と繋ぐロープをだし始めた。

「網を出したら終わりじゃないのですか?」

 思わず僕は、船員に聞いてみた。

「網を出したらロープで船との距離を開けて深く広範囲の魚を捕まえるんだよ」

「へぇ」

 海にいくことすら少ない僕にとって全てが新鮮に見えた。

「オイ、ボウズ!釣り道具は、持ってきてないのか?」

 事前に聞かされなかったので、待ってくる以前に知らない。

「いいえ」

「わかった」

 そう船長が、いうとどこかに消えてしまった。

「あれ?」

「そういえば、旅人さんは、釣りしたことあるの?」

 ここで僕が、名前で言われることは、まずないだろう。それ以前にここの船長は、僕の名前がなんだか覚えてもないかもしれない。

「川でなら何回かありますが」

 友達や兄弟で何どかいったことがある。毎回妹が、溺れて釣り所ではなくなるが・・・

「川なら餌は、ミミズとか?」

「いえルアーです」

「じゃ生きたものを餌に使わないんだ」

「そうですね。授業で作ってそれで遊ぶ感じですから」

「そうですか」


 その後、船長から釣り道具を借りたが生きている虫を餌にしたので驚いた。

 コクハは、しきりに辺りを警戒していた。時たま波音に驚いている。船は、再び停まった。ここが、釣りに最適なポイントらしい。

「じゃ始めましょう」

 船員の掛け声の後ようやく針に餌を通しおわり、餌を垂らした。

「網をそのままにしてせっかく入った魚が逃げないのか?」

 と聞いたら、船長は笑いながら

「入ったら逃げられないように構造なんだよ」と笑いながら答えた。と話していたら

「きた−」

 隣で同じく釣りをしている船員の餌になにか食いついたらしい。1人では無理らしく別のところで後ろで釣りをしている船員も助けにきた。僕は、海を覗いたが、暗くて何が釣れているかわからない。2人でもてこずり船長も手伝う。しだいに魚が見えてきた。2Mぐらいの大きさだ。

「サメか」

 僕が、叫ぶ

「いやカジキマグロだ。ボウズ!モリをとって来てくれ」

「はいっ」

 ハジャン、マグロが空を舞い太陽を覆い隠した。思わずそれに見取れ、またそれの大きさに腰が抜けた。

「大きい」

「何してんだ。早く持ってこい」

「はいっ」

 船長の言葉で我に戻りモリを探した。探しているとコクハが、ふらふらと抱えながら持ってきた。

「早くこれを使うカー」

 僕は、それを船長渡そうとしたが手を離せない。僕は、船から体を半分乗り出し、モリを投げれるように構えた。

「危ないカー」

「大丈夫」

 マグロの動きが、止まるのを見張らかい投げた。モリは、うまくマグロの頭に当たりさらに暴れ始めた。また、僕の目の前で大きく飛んだ。その勢いで2人の船員が、吹き飛ばされ、船長一人で釣竿を押さえていた。

「もう一度だ。おまえなら出来る」

 船長が、叫んだ。だが僕は、モリを使わず別の方法で仕留めることにした。

「オイやめろ。今ここで使うな」

 コクハが、気付き止めようとした。だが、もう遅い。

「流れに導きに従い、流れろ!雷!」

 僕は、小声で言った。胸のペンダントが黄色く光る。電気が、ペンダントから、指先に集まりモリに伝わり、マグロに流れた。マグロは、大きくしなるとひっくり返り動かなくなってしまった。電気の光は、僅かですぐだったので普通の人には、まず見えない。

「あっあれ?ボウズがやったのか?」

 僕は、首を横に振った。

「いやこいつ、さっきなんか唱えた。するとなんか電気みたいのが・・・」

「はやくマグロを引き上げないと、また暴れ出しますよ」

「あぁ、そうだな。よし、引き上げるぞ」

 船長の言葉で、マグロの引き上げ作業が、始まった。かなり大きくと船員が、いった。マグロの引き上げ作業が、一段落すると今度は、僕に対する尋問みたいなことが始まった。村を出るさいにお母さんから渡された。フーブと三角帽子を待ってこなくて正解だ。

「ヤレヤレ」

 コクハは、呆れながら行き先を見ていた。この国で魔法を使う人は、敵国のスパイぐらいだ。そのためお母さんから魔法を教わったなどNGワードだ。

「ボウズは、魔法使えるのか?」

「いいえ、北の人ではないから無理です」

「だってさっき何か唱えていただろ。導けとかなんとか」

「そんなこといってませんよ。ただでかいなぁとかですよ」

 船長は、すぐにごまかせるかもしれないが、船員には、呪文みたいな精神統一文(魔法を想像しやすくする分)を聞かれたので難しい。

「じゃなんでこのモリ焼けてるんだ」

 モリに電気が、通ったので黒く焦げた。

「雷だと思います」

「こんなに晴れているのにか?」

「はいっ晴れていても空気中にあるごく僅かな水分で雷が起きると本で読んだことがあります」

 嘘のかたまりだが、自信満々で言ったいたらなんか信憑性が、出てきた。

「雷カー」

 それで全ての話が、まとまった。また、僕を疑ったのも一人の船員で他は、疑いなど毛頭にもない感じた。

 北のスパイが、わざわざここまで来て漁師体験など馬鹿げているので疑う以前の問題かもしれない。

「危なかったカーでも嘘を着くのがうまくなったカー」

 とコクハに耳元で言われた。


 それからしばらく時間が、流れたが何も釣れない。船長が、僕の釣りを見て

「ここから餌が見えるな、その深さだと釣れないぞもっと餌を深くしないと」

 僕は、川と同じかんじなので餌を浅いところで釣りをしていた。

「はい」

 どれくらい深くすればいいのかわからないのでひたすら深くまで沈めてみた。ガツッ、釣り糸の限界まで延ばした。

 クイックイッ、早くも反応だ。クルクル、糸を引くとそれなりの反応だ。

「釣ったー」

 思わず声を上げだ。それから1分以上リールを回した。家の釣竿は、電動だから楽だったが借りたのは、手動だ。餌を沈めるのは、楽だが引き上げるのは、しんどい。

 しばらく引き続けていると急に反応が、強くなった。

「持って行かれる」

 僕は、釣竿ごと海に落とされそうになった。寸前で村長に支えられ海に落ちずにすんだ。

「おい、タカシ金具で固定しろ。かなりの大物みたいだ」

タカシは、さっきからいろいろ教えてくれた人だ。

「わかった」

 船長も釣竿を押さえた。これで釣竿を海に落とす心配はないが、糸を巻くどころか逆に海底引っ張られている。手早く金具の台を釣竿の下に置くと船長は、それに固定した。そして、力強く釣竿を回し始めた。 ピッパーン、糸が切れて、釣竿が、空に向けてのけ反る。反動で船までもが大きく揺れた。

「糸が、切れた」

 川で魚に糸を切られることはまずない。海底にぶつけたのか?それもない、手応えでわかる。じゃ・・・

「おい、ボウズ俺が、餌を沈めろといってからどこまで沈めた?」

 船長は、急に険しい顔に変わった。

「出来るかぎり深くの海底まで」

「早く船を走らせろ。ボウズが、クラーケンを引き当てやがった」

 バササッ、コクハが、クラーケンと聞いた途端飛んだ。

「コクハ、どこ行くの?」

「逃げるんだバカー」

 どこか遠く(おそらく島のほう)に飛んで逃げた。船では、みんなが慌ただしく走り回る。

 ギュン、モーターの回転音が高鳴ると共に船が、走りだした。

「ワッ」

 僕は、反動で海に落とされまいと船にしがみついた。海を見ると黒い丸が、二つ平行しながら近ずいている。周りをうっすら影が見える。次第に赤く斑模様が、見てきた。

「イカだ・・・」

 ぽつりといった。本には、透明になって姿を消したり体の色も変えることが、出来る。そして、足が10本、僕は、今までに干からびたイカしか見たことがない。イカは、徐々に船に近ずいてきた。そしてあることに気がついた。

「明らかに船より大きい・・・」

「君は、すごいな−」

 タカシと呼ばれた人が、抱腹前進しながらきた。

「どこが!」

 エンジン音と波を切る音でまともに聞こえない。

「初めての釣りでクラーケンを釣る人などそういないよ−」

 釣ろうとしたイカは、クラーケンと言われていた。クラーケンは、昔に船を沈めたきた化け物で巨大イカではないかと昔から言われている。

「これからどうするの?」

「逃げるに決まってんだろ」

 だが、一つだけ気になることがある。コクハは、大陸に向かって飛んだが、この船は、その反対に向かって進んでいる。

「この船は、どこに向かうの?」

 タカシは、少し驚いた。

「君は、方向感覚あるね!」

「連れのカラスが、飛んだ向きの逆に進んでるから」

「島と反対に進んでる」

「なんで」

「今島に向かったらクラーケンに村の全ての船が沈められるかもしれないからね!」

 ザーッ、辺りが、急に暗くなった。後ろに突如、大きな塔が、出来た。形は、今までに見たことあるが信じられない・・・イカの1番大きな足だ。

「イカの足が、来るぞ−−!」

 船が、大きく進路を変えた。塔が、船の横ぎりぎりに倒れてきた。その衝撃の波で船が大きく揺らぐ。

「よっしゃー」

 回りが騒ぐが僕は、疲れた。命拾いしたような、危険にさらされたような・・・海を見ると黒い二つの丸が見えた。クラーケンも船に合わせて進路を変えて追い掛けている。

「まだいるよ」

 僕は、顔を引っ込めた。

「多分網に引っ掛かったな・・・」

 船長が、つぶやいた。そういえば、さっきから網を広げたまま進んでいる。釣竿も途中まで引き上がっていたが、海面近くで急に重くなり糸が、切れた。船の上で誰もが無口になった。

「いっそのこと引き上げるか?網の中は、イカでいっぱいだろうから・・・」

 僕は、心のそこから網を切り落としたかった。僕は、あることを思い出した。

「あっ・・・」

「どうしたの」

 タカシが、聞いてきた。

「いや、なんでもないです」

 イカの足を切り落とそうと思ったが、肝心の切り落す物、ナイフを宿に置いて来て持ってこなかった・しまった・・・

「おい、網を引き上げるぞ」

「了解」

 網を引き上げた、重くてゆっくりとワイヤーが、引き上がる。

 船員は、口々に網が上がるのが遅いといった。クラーケンは、それほどに重いらしい。網が見えると次第巻き上がる速度が速くなった。そして色鮮やかな魚が次々に船に上がった。だがクラーケンは、網の半分が引き上がったがイカなどの見る影もない。

「擦り抜けたか」

 船長が、小声で漏らしたが自分でもその言葉を信じることが出来ない。

網は、なんとか指3本ぐらい入る間隔あるが普通の魚では、まず通り抜けられない。タコは、骨が小さく例え自分より穴でも用意に抜けられるがイカでは、聞いたことがない。例えできたとし小さな骨が、あるから無理だ。

「おいっ前!!」

 船の前にイカの足が、無数見えた。そして、それらが一斉に船に巻き付いた。

「重みで船を沈める気だ」

 船長が叫ぶなり船がクラーケンの重さで前に傾き出した。僕は、海に落ちないように船のふちにしがみついた。

「やられてたまるかー」

 船長が、モリを持ってクラーケンに飛び込んだ。モリは、クラーケンの足に刺さったが抜けない。力いっぱいに引っ張るが

「あぶないよけて−」

 タカシが、叫ぶが船長が、気付いたときには別の足で大きく吹き飛ばされていた。

「船長−」

「オヤジ−」

 船長は、高く飛んでそのまま海にたたき落とされた。クラーケンは、足にさらに力を増し船が軋む音だした。

「オヤジ−」

 タカシが、すかさず海に飛び込もうとした。

「まて今飛び込むな」

「止めるな、兄さん」

 もう一人の船員は、タカシのお兄さんだ。

「クラーケンの餌になるぞ」

 ミシミシ、船の悲鳴だ。このままでは、船が沈む。もうやばい、僕に力があれば、ナイフを宿に置いてこなければ・・・

「つかまれ−」

 お兄さんは、浮輪を船長に向かって投げた。だが船長は、うみで顔を浮かべて反応がない。気絶しているかもしれない。

「ハァハァハァ」

 僕は、ただ船にしがみついて見ているしかない。お兄さんは、すぐに浮輪を手繰りよせてまた、船長に目掛けて投げた。

「だめだよ。行かなきゃ」

 タカシが、海に飛び込んだ。

「やめろ。戻ってこ−い」

 お兄さんが、叫んだ。するとタカシが、視界から消えた。クラーケンの足がタカシに絡め海に引きずり落とした。このままでは、みんな死ぬ。

「オーイ、戻ってこ−い」

「ハァハァハァ!僕に力を!最強の矛を!」

 ペンダントが、海より青く光出した。そして、クラーケンに走りだし手には、透明な刀みたいな物が現れた。

「船から離れろ!」

 その刀で船にからみつく足を次々に切り落とし、クラーケンの胴体へ飛んだ。足を切られたクラーケンは、残る足を僕にたたき付けた。

「くらうかー」

 刀でその足を切り落とした。

「これで吹き飛べ−」

 片手にある刀で胴体を突き刺し、もう一つの盾をなくし、素手で突き刺した刀ごと殴り、傷を広げた。その時ペンダントは、黄色く光っていた。すぐに傷口から物凄い海水が吹き出した。

「うわ−」

 僕は、船に叩き戻された。

「ごへっ」

 背中から当たってとても痛かった。空に飛ぶようにクラーケンは、物凄い音を出しながら海水をだし続けた。辺り一面に嵐のような雨が、降り注ぐ。

 トスッ、しばらくして海水をだし終わったイカが空から船の上に落ちてきた。

「小さっ」

 海水をだし終え、数十Mあった体は、30cmほどになった。その後すぐ、タカシと船長が、自力で船に戻ってきた。

「危なかった−」

 2人が言った言葉だ。そして、船長から「倒してもこれくらいにしか残らないから戦いたくはなかったんだよね」と言われた。僕は、かなりの力を消費してまともに立つことも出来ない。

「さっきのクラーケンは、大きかったな」

「これも人魚様のお力かな?」

 タカシが、つぶやいた。

「人魚?」

 思わず聞いてみた。

「この町には、人魚がいるんですよ。そのおかげでこの辺りは、豊富に魚が集まるんです」

「これ以上しゃべるな」

 タカシの兄が途中遮った。

「えっ?」

「人魚は、町の宝だ。だからあまり見ず知らずの人にいうな!、すみませんね旅人さん人魚は、繊細な人ですからあまり手を出さないでくださいね」

「はい」

 僕は、人魚がこの町の宝であり、また、実在することがわかった。

「あっ・・・」

 僕は、思わず身震いした。

「どうしましたか?」

「なんかやばい。沢山の気配がする」

「たくさんって何の?」

「・・・」

 僕には、その気配が何かだとわからない。

「すぐに戻るぞ」

 船長が、きた。なにか慌てている。

「どうしたの?」

 タカシが、聞いた。

「漁郡探知器に物凄い数のクラーケンだ」

「なんだって数は?」

 お兄さんが、驚いた顔で聞いた。僕は、頭から血がひいた。

「30を越えている」

「さ、30!!」

「ああっすぐに戻るぞ」

 ドンッ、船底になにかあたり大きく揺れる。

「飛ばすゾなにかにつかまれ」

 ドンッ、再び何かがあたり、大きく揺れる。

「なにかって何?」

 船が、後ろに傾きすすむ。

「あっ!」

 さっきの魔法で体力をほとんど使い果たし、手に力が入らず僕は、海に落ちた。船長は、船の操縦に没頭していてほかの二人もしがみついて僕の存在に気付いていない。

 バシャン、僕は、海の中から船が、遠ざかるのを見た。いつまでも潜れない僕は、全力で海面を目指した。途中でなにか見えない壁にぶつかった。ぶつかった衝撃で色を帯始めた。

 クラーケン、足元を見たらたくさんのクラーケンが、うごめいている。何とかここから逃れようと泳いだが全く進めない。

 障害も僕の進行に合わせて進んでいる。魔法を使いたくても水の中では、言葉を出せないから使えない。

「うっ、息が」


 ・・・・・・・・・・

 「それ以上行くなよ」

 「また溺れる気かよ」

 「大丈夫よ何回この川で溺れたと思うの?」

 「毎回・・・」

 「アハハ・・・」

 双子のお兄さんが、笑った。

 「私だって学校のプール25M、泳げるもん」

 妹は、むきになって怒る。お兄さん達は、高らかに笑う

 「早く戻って釣りできない」

 「もう少し、だってまだ暑いもん」

 「釣りするから下流に行かないでね」

 「わかった」

 「今日は、何が釣れるかな?」

 「川の主今こそ」

 「お兄さん同じところで釣るのをやめて」

 「やだ」

 「自分がどけ」

 「来た−」

 僕の釣竿に早速反応があった。

 「早っ」「何!」

 「ぎゃー」

 妹の姿がもうない。

 「あの野郎もう溺れやがった」

 「えっ!あっ!」

 「もう少し粘れよ」

 「行くぞ」

 「諦めろ」

 川の主が、目の前を跳ねた。まだ誰も捕まえたことがない。

 「ぎゃー」

 「ワァー」

 「えっ!」

 妹に駆け寄った兄達が、姿を消した。僕の釣竿に食らいついた川の主は、暴れた。

 「助けて−」

 僕は、釣竿を投げて川に飛び込み、溺れかかっている妹を掬い上げた。お兄さん達は、自力ではい上がって来た。

 「助かった」

 「ルアーと釣竿が・・・昨日出来たばかりの自信作が・・・」

 「はぁ−死ぬかと思った」

 「おぼれた−」

 僕は、川下を見たがもう自分の釣竿と自作のルアーは、もうない。

 「ありがとう。いつも助けてくれて」

 妹は、僕の頬にキスをした。だが、僕は、大切な物を逃した。目の前にルアーが、外れて喜んだのか川の主が、飛んだ。

 こんなんで諦めてたまるもんか!!



 目の前にクラーケンが、いる。

「ここで諦めてたまるもんか!」

 水中で刃を作り真上にいるクラーケンを真っ二つにきりわけた。だが、切れたと同時に物凄い水圧で海深く沈められた。クラーケンの溜め込んだ海水だ。さらに口を開けてしまい海水が、体に流れ込んでくる。意識が、保てない。もうだめだ・・・

「グハッ」


 港では、二つの話題が、持ち切りだ。1つは、魔法が使える旅人が漁師体験中に海に落ちて消えたことと、と森に物凄い数の魔物の死骸が発見されたことだ。旅人は、丸で紙を切り落とすかのように足を切り落とし、自在にカミナリも扱えた。森では、どれもが刃みたいので無残に切り裂かれている。これらが、共に北から来たスパイではないかという話だ。

 また、そのスパイが手名付けていた。言葉を使うペットは、そのスパイが泊まっている、宿のバルコニーでご主人のお帰りを待ち望んでいる。

 尚、この件についてそのペットは、「ノーコメントカー」と話している。


 僕は、なにかに引っ張られる感じがある。僕は、ひたすら海深く沈められている。どうすることが、出来ない。それに以前に体が、全く動かない。僕は、深い眠りについた。


 コクハは、ひたすら海を見続けた。波の少しの動きも逃さないように、海は、いつも繰り返し同じ音と一定の波の永遠に繰り返した。時より港につく船にも気を配る。だが、どれも魚と疲れた表情をした漁師だけだ。魔法が、使えるだけで誰も探そうとはしない。ただの旅人が、野垂れ死んだ。ただそれだけである。だが、コクハは、諦めない。ひたすらに海を見続けた。

 コクハは、海が怖くて近づけないわけではない。ただこの海にいる”人魚”に会いたくない。それだけである。コクハは、信じた、いや願った。その”人魚”が、一人のまだ幼い旅人を助けてくれることを


次回「僕のたび」

第3幕「海の祠」


人魚に助けられ生きていた僕は、助けてくれたお礼を言うために人魚を探すことにした。


しかし、コクハは人魚を探すことに消極的


だけど村人のおかげで何とか人魚がいるという祠の入り口を教えてくれた。


しかし、祠まで大迷宮と未確認の魔物にあって戦闘戦闘の繰り返し・・・


そして、僕は祠の果てで月を見る人魚に・・・


               それではまた、


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