壱
『雨と涙』
はらはら、はらはらと
灰色の空から、透明な雫が落ちてくる
それはたちまち
地を濡らし、草木を濡らし、私を濡らした
はらはら、はらはらと
灰色の瞳から、透明な雫が落ちてくる
それはたちまち
顔を濡らし、衣服を濡らし、心を濡らした
心も体も
なにもかも
透き通った雫に
濡らされた
無色の雫は流れ落ち
濁った水に変わり行く
雨が流れ
泥水に変わるように
涙もいつか
濁って落ちる
それはまるで
それはまるで、心の穢れを洗うようで
『教科書』
じりじりと照りつける太陽
かつかつと黒板を踊る白チョーク
かりかりとノートを走る鉛筆
ぱらぱらとページを繰る教科書
無限の文字を刻み
無数の数字を並べ
沢山の知恵を持ち
数多の歴史を描き
異国の言葉を口ずさむ
だけど、そこにあるのは過去だけで
どんなに文字を追いかけても
どんなにページを捲っても
未来を教えてはくれない
なぜなら
これは未来を探す方法を教えているから
『BIRD』
鳥になれたなら
翼を広げて、大空を翔ぶだろう
自由を謳歌し、高らかに鳴くだろう
あなたのところに、翔んで行くだろう
『図書館』
扉を開く
鼻腔に広がる、不思議な香り
辺りを包む、温かな沈黙
まるで、そこが異世界のようで
背が高く、年季の入った本棚
そこに並ぶ、無数の本達
色とりどりの、背表紙
一つ一つ違う、本の名前
その全てが、私の心を踊らせる
瞳が、一生懸命に文字を追う
頁が、急かすように捲られる
人と本の、無言の追いかけっこ
ここにいる限り、何にも邪魔されない
ここは聖域
私と本を繋ぎ
私と世界を繋げる