#11 最低野郎姉チーム!
麗美と蘭子は吸血鬼の姉妹である。
生活の保障と引き換えに国家への協力を要求された2人は、社会に紛れて人を喰らう無法の吸血鬼たちと長年戦ってきた。
その結果、吸血鬼による犯罪は激減し、姉妹の仕事はもっぱら自宅警備と宅配受取になった。
この物語は、そんな哀れな吸血鬼姉妹のBLより乙女ゲー派な姉、麗美と、
乙女ゲーよりBL派な妹、蘭子と、
乙女ゲーって時々主人公がすげぇ可愛くね?な対吸血鬼班の刑事であるジローの壮絶な戦いを記した短篇集である。
暗い自室でヘッドホンを装着した蘭子が、パソコンのディスプレイを凝視している。
――――
「違います先輩、僕、そんなつもりじゃ……」
聖也「なら、どういうつもりなんだい?」
聖也先輩の瞳が、僕を捉えて離さない。
「だって……おかしいですよ、こんなの」
聖也「美しいものを愛でたいと思うことの、何処がおかしいのかな」
「それは……」
言い訳を口にしようとも、これを望んだのは僕自身だ。本当におかしいのは聖也先輩ではなく、僕なんだ。
聖也「君が、それを望んでいるんじゃないかな」
心を見透かされ、僕は抗う力を奪われる。聖也先輩の唇が迫り、僕は目を閉じた。
薔薇を思わせるくらい優美な聖也先輩のキスは、柔らかく、優しい感触がした。
聖也「可愛いな、蘭太は」
そういって聖也先輩はもう一度、優しく――
――――
画面を凝視していた蘭子は、不意に振り向く。
「可愛いな、蘭太は」
姉の麗美が画面を見ながら言った。
「可愛いな、蘭太は」
隣人のジローが画面を見ながら言った。
「ああああぅぅ……」
慌てふためく、蘭子。
「どう思います、ジローさん。ボーイズラブは」
「無いな」
神聖なる少女密室に不正侵入した姉と隣人に対し、蘭子がクッションを投げつける。
「もう、出てって!! 出てけぇ~!!」
攻撃された2人はそそくさと蘭子の部屋から退出する。蘭子は引き戸を閉め、再び画面を凝視しだす。
5分後――
「卑猥なシーンですわ、ジローさん」
「いや……こりゃ男には辛いわ」
蘭子、暴れる。