#7 究極VS嗜好
麗美と蘭子は吸血鬼の姉妹である。
生活の保障と引き換えに国家への協力を要求された2人は、社会に紛れて人を喰らう無法の吸血鬼たちと長年戦ってきた。
その結果、吸血鬼による犯罪は激減し、姉妹の仕事はもっぱら自宅警備と宅配受取になった。
この物語は、そんな哀れな吸血鬼姉妹のBO型の血液が好きな姉、麗美と、
A型の血液が好きな妹、蘭子と、
血液の味の違いが分からない対吸血鬼班の刑事であるジローの壮絶な戦いを記した短篇集である。
「血液の味は、大きく分けて3つあるの」
麗美はジローに向かって、指を3本立てる。
「A型は、甘めの味。B型は、酸っぱい味。そしてO型が、しょっぱい味」
珍しく真剣な様子で話を聞くジロー。吸血鬼の生態を理解することは、対吸血鬼班である彼にとって非常に重要なことなのである。
「だからAB型は甘酸っぱくて、B型でもO型の血が混じっているのは酸味に塩気が加わっているの」
「なるほど」
「好みには個人差があると思うんだけど、私が思う最高の割合は……」
麗美が立ち上がり、冷蔵庫を開ける。そして中から、紙パックの飲料水を取り出す。
「カゴミ120%トマトジュースね」
紙パックをジローに手渡す麗美
「……」
ジロー、紙パック付属のストローを外し、刺す。ストローの口を麗美に向けて、紙パックを押す。
ぴゅー。
麗美の顔に、トマトジュースがかかる。
「……ぶっかけ?」
押す。
ぴゅー。
もっかい。
ぴゅーー。