#6 奏でるはピカピカピカリン一輪の花!!
麗美と蘭子は吸血鬼の姉妹である。
生活の保障と引き換えに国家への協力を要求された2人は、社会に紛れて人を喰らう無法の吸血鬼たちと長年戦ってきた。
その結果、吸血鬼による犯罪は激減し、姉妹の仕事はもっぱら自宅警備と宅配受取になった。
この物語は、そんな哀れな吸血鬼姉妹の太陽燦々熱血力を浴びると死んじゃう姉、麗美と、
勇気凛々直球勝負とは一切無縁な妹、蘭子と、
30年後くらいには頭がピカピカピカリンしちゃいそうな対吸血鬼班の刑事であるジローの壮絶な戦いを記した短篇集である。
録画しておいた日曜朝放映の少女と大きなお友達向け美少女変身アニメを再生しながら、麗美とジローは夕食を啜る。
「今回のアオ、いいよね」
麗美が呟く。
「いい……」
ジローが返す。
スーッ、と蘭子の部屋の引き戸が僅かに開き、すぐに閉じる。それに気付いたジローが引き戸の方を見てみると、文字が書いてある紙切れが落ちていた。
ジローはそれを拾い、書いてある文章を見る。
『青は無いでしょwww』
内容を確認したジローは、無言で紙切れを麗美に渡す。麗美も紙切れを一瞥し、2人はお互いの顔を見て、頷く。
破壊しそうな勢いで蘭子の部屋の引き戸を開けるジロー。そして、大声を上げる。
「青は良いだろ青はぁぁぁっ!!!!」
「蘭子、青は良いものなのよ。クールビューティーなのよ」
「き、黄色の方がかわいいし……」
「黄色だと、おい……!?」
「黄色、ねぇ……」
顔を見合わす、ジローと麗美。
「まぁ、黄色もいいな……」
「いい……」
テーブルの上で、チリトマト味のカップヌードルがぬるくなっていた。