78.伝海の力
毎朝5時に投稿していますが、間違えて、5時間早く投稿してしまい増した(-_-;)
なので、次話の投稿は、6月19日にさせていただきます。
久々に投稿をミスりました(;一_一)
最近ばっちりだったのですが<(_ _)>
「昨日は、恥をかかせてくれたな。あれから交番まで連れて行かれ、わしらは大変な思いをしたんじゃ」
思い出し、その時の怒りが込み上げてきたようで、伝海はみるみる顔が真っ赤になっていった。
そう言えば、初めてサトの家の庭で会った時、ヒイロに警察を呼ぶと言われ、警察なんか呼べるもんなら呼んでみろと伝海は啖呵を切っていた。
それが本当に警察のお世話になるはめに陥るなんて……。
「まあ、和尚さま。怒るのは後にして下さい。それより、今は」
「うむ、そうであった。
おい、娘。お前達は、龍蛇穴への行き方がわかったのだろう」
「えっ?」
何で、伝海達がそのことを知っているのだろうか。
「ふん、これがあれば、何でもお見通しじゃ」
そう言って、伝海は懐から装飾の施された、古い灰皿の様なものを取り出した。
「これには、不思議な力がある。お前達のやっていることは、全部分かっとるんだ」
伝海は、あくどい笑みを浮かべた。
「何の事?」
「ふん、とぼけても無駄じゃ。さあ、わしらを龍蛇穴まで案内せい」
「知らないってば」
ナナカは、つんと顔を背けた。
「うぬぬ、しらを切る気か。
この鏡は、事実をありのままに映し出すんじゃ。言い逃れは叶わん」
「鏡? 灰皿じゃない」
「何じゃとっ、罰当たりな!」
伝海は、さらに赤くなった。また怒りが大爆発しそうだ。
「ですから和尚、落ち着いて下さい。挑発に乗ってはいけません。
ナナカさん、とやら。
これは、灰皿に見えるかもしれませんが、ここに水を張ると、われわれの願っている物のことが、いろいろと映し出されるのですよ。
和尚には、そういう特殊な力が具わっているのです。
でも、最近まで、この『水鏡』は、われわれの欲しい物のありかを映し出すことはなかった。しかし、やっと反応し始めた。
ゴールに近付きつつあるということです」
ナギラは、もったいぶった言い方で、ねっとりと話した。
「何の事だか、全然分かんないっ」
「ふん、こちらはもう知ってるんじゃ。お前らが、機織姫の宝珠を探していることは。
そして、龍蛇穴には、何らかのヒントが隠されておる」
「ヒント?」
全く覚えのない話だった。
ナナカはただ、ヒイロとタカラを助けに行きたいだけなのだ。
「ごめんね、私、急いでるの。またね」
ナナカは、駆け出そうとした。
「おっと、そうはいきませんよ」
ナギラは、さっと動き、ナナカの腕を掴んだ。ナナカは振りほどこうとしたが、やはりすごい力で、ビクともしなかった。
「何す……モゴモゴ」
大声を上げようとしたナナカの口を、ナギラが抑えた。
「ふふ、また警察を呼ばれたらたまりませんからね」
ナギラは、にいっと気味悪く笑った。
「むぐぐ」
そのまま、ナナカを引きずるように、サトの家の庭から、宝専寺へと続く階段を上って行った。
宝専寺の境内は、子どもの頃の記憶とは違って、日中の明るい時間に来たら、写真を撮りたくなるような素敵な所だった。
一面芝生の、緑の絨毯になっていて、白い丸テーブルと四脚のおしゃれな白い椅子が置いてあったり、小さな水の流れがあった。ナナカが引っ張られながら、通り過ぎざまに見た所では、小川は、人工的な石造りで、そこには、暗がりではっきりとはわからないが、丸々太った鯉らしき魚数匹が優雅に泳いでいた。
しかし、相変わらず、建物は、今にも吹き飛ばされそうだった。
(もう、いい加減降ろしてよ)
暴れようとすると、ナギラも気付き、引き摺っていたナナカを離した。
「さあ、連れて行ってもらいましょうか」
「ここ、昔はこんなじゃなかったのに」
ナギラの言葉に答えずに、ナナカは辺りを見回した。以前来た時とは、周りが大分変わっている。




