65.伍の一族2
おはようございます。
投稿時間が、少し遅くなってしまいました。
「ま、待ッて待ッて! 何でいつもけんかになるかなあ。伍の三代揃ッて仲良くしなよ~」
「仲いいぜ」
「仲いいさ」
「仲いいよ」
3匹は、一斉に言って頷いた。
その3匹の様子がおかしくて、ナナカは笑い出した。
つられて、ヒイロもタカラも笑い出す。
「あはは……、おっかしいの!」
「息ぴったりだな……姉ちゃん達よりけんかっ早い」
「これが、伍の一族なんだね。お爺さんと、お父さんと、孫がいるんだねえ」
伍の一族は、愉快で、強烈なインパクトだった。『五』なのに、『三』匹で、『三』代……。
「笑ってる、何か喜んでくれてるみたいじゃな」
「喜んでるのか? 嬉しいんだろう? 俺達『レアもの』だからな」
「嬉しい? 俺は、星降る祭りが始まるのが嬉しい」
「俺も」
「わしも」
3人は、息がぴったりと合っていた。
「その辺にしといてよ。また言い合いになるから」
ナミ小僧は、ナナカ達を伍の一族に紹介した。
「あのね、伍の一族にお願いがあるんだよ。
この3人を、『龍蛇穴』に連れて行ッて欲しいんだ」
ナナカは、ドキドキした。
胸の前で手を合わせ、心の中で連れて行ってもらえるように、祈りたい気持ちだった。
「ええ?」
「どうしてだって?」
「何の為だって?」
3匹が、またナナカ達を見た。真っ赤な目で上から下まで、じろじろと胡散臭そうに眺めている。
ナナカは、意を決して一歩進み出た。
「お願い、伍の一族さん。
私、機織姫を助けたいの。あの、寂しそうな人を何とか元気付けたい。
これを預かった時、すごく思い詰めてたように見えたから」
暗闇の中で、ナナカは櫛を取り出した。
手にしっとりと馴染む、機織姫の木の櫛を。
「お、それは!」
「確かに姫の櫛だ。間違いねえ」
「姫の友達だ。知り合いだ」
「そうとわかりゃ、無下に断ることも出来ねえな」
伍の三匹は、う~ん、と唸って悩み出した。
「この櫛は、ナナカが機織姫から預かったんです。宝珠を探し出すって約束したんだ。
是非、そこに連れて行って下さい」
ヒイロが、3匹に訴えた。
タカラも、後ろでコクコクと頷いた。
「なあ、どうする?」
「おい、こういう時こそ年の功、爺さんの出番だろ」
「こういう時は、真ん中だろ。いつも頭がいいことを自慢しておるじゃないか」
「自慢だって? 事実じゃないか」
「事実? なんたるうぬぼれだ!」
「何だと!」
「やるか!」
「いいともさ!」
そこに、再びナミ小僧が割って入った。
「ああ、もう、またけんかになる~。ちょッとは仲良く出来ないのかなあ、もう。頼むよ、連れッてやッておくれよ」
「そんなに言うなら」
「まあ、こんなに頼まれたら」
「頼りにされてるってことだし」
「頼りに?」
「そう!」
「俺、頼りか?」
「下の孫じゃなくて、わしが頼りなんだよ」
「何だと! 爺さん」
「やるか! 真ん中」
「はいはい、おしまい、おしまい!
3人とも、頼りになるよ。とッてもね。だから、けんかはしないでよね。それで、ナナカお姉ちゃん達を、連れてッてくれるの?」
「ああ!」
「それは!」
「もちろん!」
「なんたって、頼られちゃったし」
「そうだし」
「たしっ……」
「ありがとう!! 良かったね、ヒイロ、タカラ」
ナナカは、ヒイロとタカラを振り返った。
「ああ、本当に」
ヒイロは、ほっとしたように爽やかなほほ笑みを浮かべた。タカラも嬉しそうだ。
三匹は、照れたようにお互い謙遜して譲り始めた。
「そんな、俺が頼りになるなんて、息子の方こそ」
「俺も頼りになるなんて、爺さんの方だろ」
「いや、孫だろ」
三匹で小突きあっている内に、またけんかが始まりそうになったので、ナナカ達は急いで止めに入った。
「みんな頼りになるから。ね? ね?」
「そうそう、誰がどうってことじゃないんだ」
ヒイロも、落ち着かせようと声をかけた。
ナナカは、苦笑いを浮かべた。疲れるけど、楽しいお爺さんと、お父さんと、孫だ。
「よし、そうと決まれば、参るぞい」
「おう、龍蛇穴だ」
「よし、乗れ!」




