表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/95

53.タマシズメの儀3

 ナナカは返す言葉がなかった。

 昼間の沈んだ表情や、悲しそうな目を思い出す。今タカラは、淡々と語っているけれど、昼に会った時には、目の奥に、湖の底のような昏さがあった。

 ナナカには、はかり知ることのできない程の、大きな恐怖や不安があったに違いない。それを、今は突き抜けて覚悟を決めていた。


 あの時も、学校同様、かなり素っ気ない態度だった。今も素っ気ない内には入るけど、昼間と比べると饒舌なほど、語ってくれている。

「いつも、全然しゃべってくれなかったのに、今は親切に説明してくれるのね。何でいつも愛想が悪かったの?」


「直球で言うねえ。愛想、悪かったかな? それと意識して愛想を悪くしてるつもりはないよ。

 でも、そうだね、今は、二人に興味を持ってるかな」

「私達に?」

「僕をかばって赤牛に立ち向かっていこうとしただろ、あんな狂ったような暴れ牛に」

「ヒイロ、そうだったかな」

「咄嗟だったし、必死だったから、はっきり言って細かいことまであまり覚えてないよ。ただ、俺がどうにかしなきゃって考えてたけど」

「私も、怖かったけど、斎城は目を閉じていたように見えたし、言っちゃ悪いけど、ひょろっとしてて、運動も苦手そうに見えたから、守らなきゃと思ってた」


「本当にずけずけ言う人だねえ」

 タカラは、おかしそうに笑った。

(あ、斎城、いい顔してる……)

 初めてみる心からのタカラの笑顔だった。

 昼間のような悲しそうな色はない。生き生きとして、さっぱりとした表情だった。


「変な奴らだな。自分が怪我でもしたらどうするんだよ。向う見ず過ぎると、いつか本当に大怪我をするよ。

 それに、それほど運動神経が鈍いわけでもないよ」


「何言ってるの? あなたは、喰べられちゃうかもしれないんでしょう。私達の怪我の心配なんてどうでもいいのよ」

 タカラは少しずれている。

 でも、この周辺の人達のために、自分の身を差し出してでも助けようとする勇気がある。


 ナナカ達との心の距離は、大分縮まった。

「斎城のこと、今日からタカラって名前で呼んでもいい?」

 唐突なナナカの申し出に、タカラは意表を突かれたようだ。

「い、いいけど」

「決まり! 私達のことも、ナナカとヒイロって呼んでね」


「いきなりだね」

 タカラは、戸惑いの表情を浮かべていた。

「今日から、トモダチよ」

 ナナカは、笑顔で握手を求め、右手を伸ばした。タカラが恐る恐るそれに応じる。

「こういうの、僕、よくわかんない。今からトモダチってこと?」

 ナナカは、タカラの手をぶんぶん振りながら答えた。


「今からじゃないよ、今日、もうトモダチになってたんだよ」

「ふうん」

 ナナカが手を離すと、まだ納得がいかないのか、タカラは自分の右手を閉じたり開いたりした。


 そんなタカラに、ヒイロも苦笑しながら握手を求めた。

「中学生日記みたいなトモダチの作り方だけど、ナナカに付き合ってやって」

 ナナカは、ヒイロに馬鹿にした言い方しないでよ、と言い返そうと口を開きかけた。その時、タカラがヒイロと握手しながら、はにかんだような笑みを浮かべ、小声で言った。


「トモダチ……。そういうのも、いいかもしれないね」

 中学生日記と言われ、ヒイロに反論しようとしたが、タカラの明るい声音に、ナナカは言葉を飲み込んだ。

タカラが仲間に加わった! (ドラクエ風)


今日もありがとうございました(#^.^#)


明日は、54.赤牛伝説 を投稿する予定です☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ