表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/95

47.夜の湖は別の顔1

「ちょっと、ナミ小僧ってばあ」

 ナミ小僧が、海の中から頭だけちょこんとのぞかせた。


「おいら、口固いも~ん。えへへッ」

 そう言って、水掻きのついた手を一度振って、海へ潜り、そのまま消えてしまった。


(もう。ナミ小僧ったら)

 ナミ小僧の消えた辺りでは、相変わらず波と波がぶつかり合って交錯している。もう、上がって来てはくれないようだった。


 ナナカは仕方なく今日の所は諦めることにした。

 どうしたら、教えてくれるだろう。


『タマシズメ』……。夜のイベント……。『ゴのイチゾク』……。また、知らないキーワードが現れ、難しい顔になってしまうナナカだった。

 その時、ヒイロから携帯がかかってきた。

「どうしたの?」


 携帯から、ヒイロが早口で話しかけて来た。

「近所に、二翠湖ホテルでバイトしてる人がいて。

聞いたんだ。

 そしたら、今日は休業で泊まり客はいないらしい。二翠湖にいた観光客の話だと、どこも満室だって言ってたよな。

おかしくないか? 夏休みっていったら、一番お客が入る時なのに……。満室どころか休業なんて」


 これはもう、直接二翠湖に行って、自分達の目で夜のイベントを見るしかない。そう思うナナカだった。


 すっかり遅い時間になってしまった。

 一度家に帰ったら、夜から出掛けるなんて、となかなか許してもらえず、家族の目を盗んでやっと出て来たナナカだった。

 夜の二翠湖でバスを降りたのは、ナナカとヒイロだけだった。


 街灯に、虫が集まっている。

 空を見上げると、雲がすごい速さで動いているのが見えた。


 風が出てきている。

 夜には雨が降ると予報が出ていたけれど、まだ雨の気配はなかった。

 それどころか、今日は、月が明るい。時々、雲が隠してしまうけれど、スピードが速いので、すぐに皓々と冴え渡る月が現れる。


 静かだった。

 静かが過ぎた……。


 昼間見たおしゃれなホテルやペンションは、完全に真っ暗だ。

 見渡す限り、どこの建物も、電気が消え、物音一つしない。そんな中、街灯の無機質な白い光だけが、道路を照らしていた。


 とても、異様な光景だった。


「誰もいないのか?」

 ヒイロが呟いた。


 ナナカはぞくぞくした。

 桃香島の展望台の時とは違ったぞくぞくだった。


 無人の山奥に、ヒイロと2人。

 誰もいない所へ取り残されてしまったようで、恐怖が押し寄せてきた。

 ……のかと思ったら、そうではなくて、『怖いもの見たさ』が募り、俄然やる気が出てきた!


「ねえねえ、これから何が起こるのかしらね」

「呆れるほどこの状況を楽しんでるな。

 普通じゃないぞ、誰もいないなんて」

「きっとこの辺りの人が、総出で真夏の一大イベントをやってるんだわ。

 どこかしら♪

 かき氷とか、私達も食べられるのかな」


「そういう心配か。気楽だなあ」

 ヒイロの声の調子には気にも留めず、ナナカは陽気に笑っている。

「楽しい夏祭りをやってるなら、音が聞こえてきてもよさそうだけどな」


 耳を澄ませてみても、何も聞こえてこなかった。

 時々、車がバス通りを走って行く。びゅんびゅんと飛ばしている他県ナンバーが多かった。真っ暗な通りに対して、特に何も思わないのだろうか。


「湖の方へ行ってみるか」

「うん」

 湖の方への下り坂にも、街灯はちゃんと設置されていて、明るかった。

 一応、ナナカは懐中電灯をカバンの中に入れているが、今のところは必要なさそうだ。ヒイロは、父に厳しく稽古をつけられているので、夜でも獣のように辺りが見渡せた。


「足元、気を付けてな」

「うん」


 左側のみやげ物屋も、食堂もその他の建物も、全て、明りという明りが消えていた。

 目の前には、月光を反射して輝く、二翠湖が広がっている。


「本当に、静か。虫の鳴き声はするけど」

「祭りをやってそうな感じは、全くないな」


 強い風が吹き、輝いていた湖面が細かく波立った。

 左のボート乗り場の方で、湖面に浮いているスワンボート同士がぶつかったらしく、かつんかつんと音がした。

 ナナカは、その音につられて、ボート乗り場の方を見た。何か黒い影が、動いている。目を凝らすと、かろうじて人だと分かった。


「ヒイロ、あそこ誰かいる」

また、思わせぶりな区切り方をしてしまってごめんなさい。。。


続きは明日の朝5時に(^O^)


今日も読んでくださってありがとうございます。


楽しいなと思って頂けるように、一生懸命書いていきます(*^_^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ