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31.新しい情報4

昨日は、更新の手順を踏んだつもりが、中途半端にパソコンをやめてしまったらしく、投稿できなかったことに今起動して気がつきました。

すみません...

 ナナカは、えへへっと笑った。

「そうか? それならいいけど――――富士山と、『ネコミミ』……、『石此せきし島』の関係だけど、実際に繋がっているとは考えにくいな」


 カイリは、本を、ぱらぱらとめくった。そして、低く響く声で語った。

「2つの場所の距離、島が出来上がった年代、富士山の噴火時期などを考えると、どこかで繋がっているという説は、難しいよ。

 富士山が噴火した時にな、風穴ふうけつっていうのがいくつも出来たんだ」


「ふーけつ?」


「そう、風に穴と書く。

 風穴は、風が通り抜ける洞窟や、洞穴のことだ。

 富士山が噴火した時、溶岩が流れ出して、その溶岩はガスを内包していたんだ。

 そして、溶岩は、外側から冷え、収縮し、ガスが溜った。時間が経つ内に、冷えた所の弱い部分が破れて、ガスや溶岩を噴出した。


 風穴は、その時に出来た空洞だ。

 その空洞と、繋がっているんじゃないかということなんだよ。でもな……美浦は、富士山からは距離が遠いから、ちょっと考えられないな」

 美浦からは、天気のいい日なら、高台から富士山を望むことが出来る。でも、距離にしたら、相当なものだ。


 カイリによると、こんな所まで溶岩が流れて来ていたとは、考えにくいらしい。実際、専門家の調査からも分かっているのだそうだ。

 ナナカは、ちょっぴりがっかりして下を向いた。せっかく、手掛かりが得られたと思ったのに。

 そんなナナカの様子を、カイリがちらっと見た。

「ただ、全くの無関係だと、言い切れないとは思う。

 こういう話が残ってるってことは、何か、どこかで関係性があるからなんじゃないのかな」

 ナナカは、顔を上げた。


「カイちゃん、本当?」

 ナナカは、身を乗り出し過ぎて、ベッドからもう少しで落ちそうになった。

「ああ、そうじゃなかったら、わざわざナナカに言う訳ないだろ」

 カイリが、いたずっらぽくナナカに笑いかけた。


 ナナカは眉を開いた。

「そっか、そうだよね、私、自分でも考えてみる」


「宝珠についても、少しだけ分かったよ。

 宝珠っていうのは、仏教上の宝のことらしい。

 ナナカも竹取物語のことを言ってただろ。龍が玉を持っている絵を見たことあるか?」


 ナナカは、中学の修学旅行で京都へ旅行に行った時、そういう絵を見たことがあった。墨で描かれた荒々しい龍が、こちらを睨みつけている絵だった。その鉤爪の中に、玉は握られていた。

「あるよ」

「その玉なんだ」


「また、龍?」


「ああ。その玉は、本来の形は、球体の上に円錐がついた、雫のような形をしているものらしい。

 お寺の屋根や、塔の上に乗っている飾りのことも宝珠というようだ」

 カイリは、画像を見せてくれた。建物のてっぺんの真ん中によくあるものだった。

「このスライム見たいなののことなんだね」

「スライム……まあ、そうだな。必ずしもこの形だけとは限らないけどね。仏教上の宝物で『如意宝珠』というんだ」


「にょい、宝珠?」


「如意とは、字の通り『意の如く』……意のままにってことだ。

 要するに、何でも願いが叶う『宝の珠』ってこと」


「何でも願いが叶う!」


 ナナカは、立ち上がってカイリのパソコンを覗きこんだ。細かな字で何やらたくさん書いてある。

「字がいっぱい。ねえ、私の願いごとでも叶うかなあ」

 カイリの目は、パソコンの画面上の光が映り込み、青い。


「だから、そんなのある訳ないだろ」

 カイリに鼻で笑われて、ナナカは内心ショックだったけれど、ここまで親身に調べてくれた事に対する感謝の気持ちの方が大きかったので、反論は我慢した。


 でも。

「もし、仮にだよ。それが実在したらの話……。

 私の願いも叶うよね」

 カイリは苦笑いを浮かべた。

「まあそうだな、多分ね」

 カイリの青い目が妖しくきらりと揺れたように見えた。

(何しようかな、頭が良くなるように、とか、お金持ちになれますように、とかかなっ)


「まさに、ドラゴンボールだな」

(ヒイロなら、どんなことを願うかなあ)

 ナナカは首を傾げた。

(桜子ちゃんと、信乃ちゃんが、やさしいお姉さんになりますように、とかかなっ)


「でも、機織姫に返さなきゃならないんだから、私達がお願い出来るかはわかんないね」

「ま、そんなものが本当にあったらだけどな」

 カイリは、嗤っている。

(絶対、あるもの!)

 ナナカは、口をついて出そうな言葉を、ぐっと思い止まった。


「カイちゃん、明日桃香島に行ってみようと思うの。

 電車の時間調べるのに、パソコンやらせて」

「ああ」

 カイリはデスクチェアから立ち上がった。


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