22.朝のひととき
慌ただしさも一段落したので、更新はできるだけかかさず、毎日できるようにしていきたいと思います。
どうしても更新できない時もあるかと思いますので、その時はごめんなさいです。。。
「9時に磯って約束だったけど、カイリ兄が帰って来たって電話をくれたから、こっちへ来たんだ。そしたら、ナナカが熱を出してるって言うから、どうしたのかと思ったよ。
朝飯出来たって。
カイリ兄は下にもう降りたよ」
「うん、わかった。着替えたら行くね」
「お先」
立ち去り際、りん、と爽やかな音が響いた。
ナナカは、急ぎ、身支度をした。
昨日の夜、あんなに寒気がして、頭が痛かったのが嘘のように、体は軽くすっきりしている。
ドアを開けると、落としたてのコーヒーの香りが2階まで漂っていた。
階下で母が、朝食の支度をしてくれているのだろう。
今まで、蒼田家はインスタントだったが、最近両親がコーヒーメーカーを買い、ナナカも真似して飲むようになった。この香り。気持ちがしゃきっとする。ほんのちょっぴり、お上品で大人の気分になる。
1階から、母の、いつもより数段高い声がする。
「ヒイロくん、よく来たわねえ、久しぶり。
カイちゃんがいなくても、ナナの所に遊びに来てね。
それにしても、どんどんいい男になっていくわねえ。
10年後が楽しみだわ、うふっ。
カイちゃんもパパに似て、どんどんいい男になってくけどね」
朝から、母はテンションが高い。
ナナカは、この母をちょっとだけ、変だと思っている。
ただ、十分にナナカもその血を引いていることに、本人は気付いていない。
そして、母は、変なだけでなく、祖母の血を引いているだけあって、どこか得体のしれないところもあった。
母は、カイリの帰省とヒイロが来たことが、ダブルで嬉しそうだった。
(全く、ママったらさあ、ナナカの所じゃなくって、自分に会いに来て欲しいの、ミエミエ!)
やっぱりおばちゃんの飯は、おいしい! とヒイロが喜びの声を上げているのが聞こえた。
「おはよう!」
ナナカは、勢いよくダイニングへ入り、カイリの目の前の自分の席に着いた。カイリの隣にはヒイロが座っている。
「まあ、おはよう、ナナちゃん。もう大丈夫なの?」
母は、キッチンから、心配そうにナナカを見た。
「うん、ありがとう。心配かけてごめんね、もう熱もないよ」
「そう、良かったわ」
「うん」
ナナカは、元気になったことをアピールするように、母へ笑顔でそう言い、兄のカイリを見た。
「おはよ」
低く、響く声で、ちょっと微笑むその顔は、まさしく大好きで自慢の兄、カイリだった。
ナナカの顔は、ぱっと輝いた。
「お兄ちゃん、お帰り!!」
久しぶりのカイリは、都会の生活で前より洗練されたように見えた。
明るくなった髪の色のせいだろうか。
整った顔立ちに、すっきりとした目元。ゴールデンウィークに会った時よりも、日焼けして、黒くなっていた。妹の自分が言うのもなんだけど、カイリはとっても素敵だった。
「ナナカ、ヒイロから聞いたぞ」
カイリの声は、低く落ち着いている。
「うん……ごめんなさい」
ナナカは、しょぼんとした。
足がもじもじしてしまう。
「危ない目に合ったらどうするんだよ? この時期は、観光客の男どもも多い。
みんな、夜中うろうろしてるんだから、遊ばれて泣いたって知らないぞ」
そういう危険もある。
夏に入ってから、海やプールに遊びに行って、見知らぬ男達に何度も声をかけられた。
ナナカとしては、友達と楽しく遊んでいるところをしつこく話かけられて、うんざりだった。
でも、友人の中には、ちょっとかっこいいと話に乗ったフリをする子もいたりする。今の所、さすがに付いて行ったりする子はいないけど、中にはもしかしたら悪い人だっているかもしれない。
ヒイロも、カイリの隣の席で、腕を組んでいかめしい顔を作って頷いている。
「今回ばっかりは、本当に反省してるよ」
「今回だけじゃ済まないだろ。あんまり、後先考えずに危ない真似ばっかするなよ」
そう言うと、カイリはおもむろに右腕を伸ばし、下を向いたナナカの頭をがしがしと掻き混ぜた。
読んでくださってありがとうございました。
蒼田家は優雅な朝食タイムでうらやましいです。
私は、朝は戦場! 時間との闘いです。




