表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「突然ですが、貴方は今から魔王です。」  作者: 野菜イタメ
第一部―――・・・「突然ですが、貴方は今から魔王です。」
6/25

第六話:「戦場の境界」

戦争は勝利と敗北をどちらかに与える。


「う~ん・・・」

 ボスは考えていた。

「どうしましたか? 魔王。」

 そこに、スラナが声をかけてくる。

「いやな・・・幾ら仲間を一人追加してもさすがに警備が一人じゃな~・・・って思ってな」

「まぁ、正直な事を言いますと・・・ウルさんの場合、家の留守番をする子供みたいな感じですね」

「正直が酷いな、スラナ……それでな、もう一人追加したいと思うわけよ」

「そうですか。 では、名簿リストを―――」

 そう言いながら、スラナは鞄から名簿リストを取り出そうとする

「あぁ、今回は名簿リスト無しでOKだ」

「何故です? 何か当てでも?」

「あぁ、今日は〝戦場の境界〟に行くぞ」

 『戦場の境界』 ……それを聞いたスラナは数秒だけ息が止まった。

「……えっ?」

「いや・・・だから、〝戦場の境界〟にだな……」

「危険すぎます」

「……何で?」

 ハッキリと言ったスラナの表情は少し怒っている感じだった

「良いですか? あそこは人間と魔族が日々戦っている場所、つまり戦場ですよ?」

「ああ、前に聞いた」

「聞いたのならば、何故そこへ……、あそこに魔王である貴方が行ってみなさい、人間達の良い的ですよ?」

 スラナは戦場の境界に行ったことがあるから分かる。

 あそこは人間と魔族がもっとも争いを続ける場所・・・幾ら現在は落ち着きを保っていても、魔王である彼が出向いた瞬間に落ち着いていた場が一気に激化してしまう可能性がある・・・

 だから、スラナは注意深く叱るようにボスを止める。

「そこまで言わんでも~・・・」

「事実です。」

「じゃあ、ウルちゃん連れて皆で行く?」

「はっ?」

「ウルちゃんも今は平常に戻っているけど、それなりに強い子だ。 それに・・・もし敵に遭遇しても蹴散らすぐらいの力は持ち合わせているさね」

「いや・・・そういう問題では・・・それに、簡単に敵と言いますけど・・・相手は人間。 言わば貴方と同じ―――」

「同じじゃないさ」

 スラナが台詞を吐いている途中、ボスは突然一変した鋭い声でスラナの言葉をスパッと切り裂いた……

 その顔も・・・先ほどのちょっとヘラヘラした様子が変わって真剣な眼差しをしていた。

「人間てのはね、誰からも怨まれる存在なんだよ。 同族からも、別の生き物からも・・・」

「魔王・・・?」

 語るボスの顔は何処か悲しく、一言で言い表せば『人間不信』と言えるような感じだった・・・

「……言ってなかったが、俺には家族ファミリーが居てね。 人間の姿をしてるが、人間ではない一面が多々あるんだよ」

「人間の姿をして、人間ではない一面が多々・・・? それってどういう・・・」

「魔王様ー! スラナ様ー! 見回りしてきました! 異常はありませんでした!」

 そこへ何も知らず、空気を読まずにやってきたウルがニコニコと見回りから帰ってきて大きな声で元気に報告してきた。

「ああ、ご苦労さまー」

 突然、明るく優しい声を出したボスに少し驚いたスラナはウルの方に逸らしてしまった目を急いでボスに向けると、何時もの優しいヘラヘラとした明るい顔を見せているボスが見えた・・・

「まぁ、そういうワケだスラナ。 早々相手も攻めてくるわけじゃないし・・・パパッと行って、パパッと用事を済ませば良いだけの話だ」

「あ・・・え、えぇ・・・仕方ないですね・・・」

 一瞬だがボスの悲壮感を感じたスラナは突然の台詞に焦りながら、うっかり承諾を受けてしまった。

 そして数秒してからふと我に返り、先ほど答えた返事に 「しまった・・・」 と後悔をしていた・・・



~~~~〚戦場の境界〛~~~~


 その後、三人は何事もなく戦場の境界へと辿り着いた。

 ・・・戦場の境界では、傷ついた魔族も居れば次の戦闘に備えて準備する魔族も居て少しピリピリした様子だった

「す、凄い所ですね・・・」

「まぁ・・・戦場ってーのは、いつもこんなもんだ。 誰も彼も笑いながら戦争をやってるわけねぇからな」

「それで魔王。 この中で誰を選ぶのですか?」

「そうだな~・・・重傷者は流石に無理だからなぁ・・・」

 見て回るかぎり負傷兵が多くおり、とても城の警備にするには正直役不足な面々ばかりだった……その時・・・

「あの・・・もしやと思いますが・・・先日、二代目魔王様ではありませんか?」

 一人の男がボス達に近寄り、声を掛けてきた。

 男は特徴的に耳が尖っており、身長も高く、それに顔もイケている・・・女性から見れば十分なイケメン男性だった

「ん? ああ、そうだが・・・君は?」

 それを聞くと男はビシッと敬礼し、礼儀を込めてこう言った。

「はっ! 私は対人族攻撃部隊長たいじんぞくこうげきぶたいちょう、イグナス・クリナであります!」

「しっかりとした挨拶どうも。 それより・・・君のその尖った耳・・・エルフ族だね?」

「はっ! エルフであります!」

「ふむ・・・主要する武器は?」

「人間から奪った長銃という武器と剣、弓であります!」

「ほう・・・剣術、及び弓の扱いは慣れている・・・ってところかな? 奪った銃は、ともかくとして・・・」

「はっ! ですが、魔王様には及びません!」

「お褒めの言葉と受け取るよ。 それで奪った長銃だが・・・腕前の方は?」

「弓とは大分扱いが違いますが・・・命中精度には自身があります!」

「まぁ、最初の内は誰も百発百中ではないからな。 ・・・それで、エルフってんだから、魔法は当然?」

「お恥ずかしいながら、治療魔法しか使えません!」

「使えるが回復魔法のみか・・・OK、採用だ」

 ボスの突然の言葉にイグナスは驚き、拍子抜けな顔でボスを話しかける

「はっ? ……っと言いますと?」

「魔王、突然そんなことを言っては・・・」

「ああ・・・わりぃ・・・イグナス君・・・で良かったかな? 君、俺の城で警備をしてくれないか?」

「け・・・警備ですか?」

「今、城には警備が一人しか居なくてなぁ・・・いつ何時、幾らなんでも警備が一人だけって寂しいだろう?」

 ボスがそう言っている最中、後ろでウルがこっそりとイグナスに向かって手を振る

「そんで、もう少し警備が欲しいから、君にその警備を頼みたいって訳だ・・・頼めるかな?」

「で、ですが・・・私には、戦場の教会こちらでの役目が・・・」

「あぁ~・・・そうだよなぁ・・・君って、確か隊長さんだったね・・・」

「はい。 前には別のワーウルフの方が隊長を務めていたのですが・・・すみません、今回の件は―――」

 その時だった。

 ウルが突然人間側の土地を目を細めて見つめだし、難しそうな顔になる

「どうした?」

「…………魔王様、人間達です。 気配で分かる通りだと・・・ざっと100人近くだと思う・・・」

「なんだと?」

 そこへ人間側の偵察をしていた兵士の二人がイグナスの元に戻ってきた。

「伝達!! 現在、100名もの人間の兵隊がこちらに向かって進行中! 即刻、指示を・・・!」

「くっ・・・! まさか、魔王様がこちらに来られるのを機に・・・!?」

「いえ、それはありえないでしょう。 幾ら情報を掴もうと、こんな短時間で兵を出すことなど……それに兵隊の数も数です、幾ら魔王が来ていても100の数は少数ですよ」

(それって、俺が完全に化け物クラスの野郎だって発言に聞こえるんだけど・・・?)

「確かに・・・そうであるならば、弱まっている我が軍に一気に襲撃するつもりだったのか・・・? それならば100の兵数で挑むのは頷ける・・・」

「…………果たしてそうだろうか・・・?」

 その時、ボスは人間側の領域を目をやり、睨むように考える・・・

「確かに襲撃するならば100の兵数は事足りるだろう。 ・・・だが、それでも何か・・・引っかかるものを感じる・・・」

「人間軍、目視確認!!」

 双眼鏡で確認をした兵士一人の声に全員が人間側の領域に目をやる

 そこには確かに100とも言える兵隊が剣や槍を装備し、銀色の甲冑を身に着けてガシャガシャと遠く離れていても聞こえる金属音を鳴らして迫ってきていた・・・

 魔族の兵士達は全員臨戦態勢を取り、深く負傷してしまっている兵士は安全な場所まで避難していた

「魔王様、ここはまもなく戦場と化する・・・! あの兵隊共は我々が仕留めて見せます故、どうかお引取りを・・・!」

「いや・・・俺は引かない」

 ボスはイグナスの肩を掴んでそのまま後ろに下げる

「し、しかし・・・」

「ここで引いたらな、嫌だったが折角貰った魔王の座が廃っちまう。 ……そんなの、あのぱっつぁんが報われねぇ・・・!」

 片手を横に出し、何も言われずに触手達は自動で刀の形状へと固まっていく・・・

「お前らは、ここで待機してろ」

「魔王様! さすがに危ないよ!」

「魔王様!」

「…………魔王、貴方のお力・・・信じてもよろしいのですね?」

 ボスを必死に止めようとするウルとイグナスを除き、スラナだけはボスの望む返答をした

 それを聞いたボスはニッと笑ってこう言った―――


「無論、余裕で勝って帰ってくる!!!」


 ボスは人間の軍に向かって大きく走り出した

 そんな彼の後ろ姿は、鎧など身に着けていないのに見えてしまうほどの絶対勝利と願う強い思いと力強い勝利の気だった。



資料No.6[イグナス]


名前:イグナス・クリナ

種族:エルフ

性別:男

年齢:25(身体年齢)

好きなモノ:平和、肉料理、狩り

嫌いなモノ:戦争、女性(積極的な女性が苦手)


※備考※


戦場の境界で隊長をやっているエルフ族の男性。

前まではワーウルフ族の者が隊長をやっていたが、前の戦闘の時に戦死、そのまま実力が良かった為に隊長を務めることとなった

戦闘はあまり好まないが、やむ得ない時は仕方なく戦う

剣や弓などの武器の扱いが優れており、それらは戦争に入る前に身に着けていた狩人のスキルからきている

本当は戦争など参加したくなかったが、(初代)魔王の命令で仕方なく戦争に参加している

イケメンだが、積極的な女性が大の苦手だがお人好しな性格ゆえに拒絶が出来ない

意外と肉食男子だったりする

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ