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「突然ですが、貴方は今から魔王です。」  作者: 野菜イタメ
第一部―――・・・「突然ですが、貴方は今から魔王です。」
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第五話:「Wolf Fang V.S Wolf Claw (狼の牙V.S狼の爪) 後編」

狼の牙V.S狼の爪

【魔王城】


「これからウチで飼う犬だ。 一つや二つぐらいはしつけないとな?」

「フー……! フー……! グアアアアアアァァァ!!!」

 少女は、その鋭い牙でボスの喉に噛み付こうとした・・・しかしボスはそんなに容易くなかった。

 サッと綺麗に攻撃を避けると同時に少女の腹部にパンチを一発当てる。

「グッ……ガッ……!」

 子供であっても控えてしまえば一瞬でやられてしまう・・・ボスは最低限致命傷にならぬように少女を攻撃する

 ……その上、ワーウルフの少女は子供・・・パンチ一発でも相当なダメージが入るため小回りの利いた攻撃は良好的な攻撃手段だ。

「グァウッ!!」

 それでも少女は、ボスに向かって立ち向かう。

 今度は鋭い爪で引っかこうとした・・・だが、それも無駄だった。

 爪で攻撃しようならば、ボスの腕に付いている触手達がその勢いを殺し、少女の体を捕らえてしまうからだ。

「幾ら力があってもそれを上手く使いこなせれるか・・・それが一番の問題だぞ」

 そう言いながらボスは、再び少女の腹部に向かって軽いパンチを当てる

「…………。」

 そんなボスと少女の戦いを見ていたスラナはボスの戦い方にちょっとした不振を抱いた・・・


―――・・・何故だ?

何故、魔王は あの子の腹部しか攻撃しない? しかも、弱いパンチしか当てていない・・・

何度も少女の攻撃をかわし、防御するなどして有利な状況へ持っていっている・・・だというのに、まったく少女へ大きな攻撃を与えず、ただ腹部だけを攻撃し続けている。

子供の体つきを考えれば悪くない位置だが、幾ら弱い部分だからと言って、あんな弱いパンチでは気絶しない上に逆に長期戦になってしまうハズ・・・


 少し考えたスラナは、ハッ! と、何かに気がついた。

(まさか! 魔王は、それを狙って!?)

 スラナがそう考えている最中、ボスとワーウルフの少女の戦いはボスが一方的に有利な状況が続いていた。

 少女は幾度となく攻撃を繰り返すが、どちらも防御か避けられてしまい、その度に腹部に攻撃を食らってしまう。

 その為・・・だんだん疲労が溜まっており、息がさらに荒くなっていき、少女は激しい体力の消耗により動きが鈍くなり体も徐々に沈んでいっていた。

 ボスが腹部へ軽いパンチをし続けていたのは、彼女のスタミナを減らしていき・・・尚且つ彼女へのダメージをなるべく少なくする為だったのだ。

「気づいたようだな、スラナ。 幾ら力を持とうとも、それを維持できなければ勝利など難しいもの・・・」

 ボスが話している途中に少女がもう一度と攻撃を繰り出してきたが、攻撃の速度は遅くなっており、ヒラリと回避されてしまう・・・

「……このまま・・・両手を腹部に当てて、衝撃を・・・押すッ!!」

 ボスはその言葉通りに両手を少女の腹部に当て、そのまま押し出すように打った。

 「ゲホッ!!」 と少女は胃液を吐き出すと同時に意識が吹っ飛び、そのまま気絶した・・・

 それは戦いの終了を合図し、ボスはスッと両手を合わせ深く息を吹くようにして吐いた。

「お見事です、魔王」

「魔王って言うな。 それよりもスラナ、彼女を寝かしていたベッドへ・・・俺は彼女へ飯を作る」

「料理でしたら私が・・・」

「大丈夫。 俺はそれなりに料理ができる奴だからさ・・・まぁそれなりのランチをご馳走してあげるさ」

「……了解しました。」 (私、執事なんだけどなぁ・・・)

 スラナはそう思いながらも少女を元のベッドにへと運び、ボスは少女の為に手料理を作ることになった・・・



―――数分後。



「うっ……う~ん・・・」

「おっ、起きたか?」

「うわぁ! だ、誰!?」

 少女は突然目の前にヒョコッと出てきたボスに驚き、ガバッと上半身だけ起こした。

「ああ、わりぃ・・・驚かせちまったな」 (う~ん・・・暴走しちまってた記憶は無さそうだな)

「失礼ですよ、魔王の御前ですよ」

「ま、魔王さま!? こ、これは失礼しましたーーー!!」

 少女はボスに向かって大きな声で躊躇無く頭を下げた。

「こらっ! スラナ、彼女が畏まったじゃないか・・・」

「失礼しました・・・」

「う~・・・すみません、魔王さま~・・・」

「あ~・・・そんなに落ち込まなくて良いって、それよりも腹減ってるだろ?」

 グ~……

 その時、ちょうど良いタイミングで彼女の腹の虫が鳴いた。

「そ、そういえば・・・ずっと何も食べてないです・・・」

 少女の頬が赤くなる。

「だろうと思って作っといた、食べな。」

 ボスは、少女の前に食事を出す。

 トレーにはスクランブルエッグとサラダ、パンなどが乗っており、まるで朝食のようなメニューだった。

「わぁ! ありがとうございます!!」

「おぉっと! その前に……」

 ボスの言葉にピタッと料理に行く手が止まる・・・

「な・・・なんですか?」

「一つお願いがあってな・・・」

「あ、はい! 何でもどうぞ!」

「元気な返事で良しかな。 そんじゃあ、単刀直入に言おう」



「俺の仲間になってくれないか?」



「ほぇ?」

 ボスは、これまでの経緯と事情、そして現在における城の警備の無さについて話し、彼女に是非ともこの城に居て欲しいということを告げた。

「えっ・・・わ、私がお城の警備ですか!?」

「そうだ。 なーに、入り口を定期的に見回ってくれるだけ良いからさ・・・」

「ん~・・・本当に僕なんかでいいんですか?」

「ああ、正直な話・・・力なんて必要ない。 必要なのは”傍に居てくれる”だけなんだ」

「……分かりました。 こんなひ弱な僕ですが、よろしくお願いします!!」


こうして・・・新たにワーウルフの少女を仲間にしたボス達。

これから先、魔王であることの重大さを感じることになるとは・・・まだボスは思いもしなかった・・・


「そういえば・・・君の名前は何だ?」

「ウルって言います~」

「そうか、改めてよろしくな。 ウル」

「はい!」


資料No.5[ウル]


名前:ウル

種族:ワーウルフ

性別:女

年齢:10歳ぐらい

好きなモノ:魚、ボール、走り回ること、楽しいこと

嫌いなモノ:野菜(ただしニンジンは好き)、ジッとしていること、暴力


※備考※


魔王城の警備をしている子。

ワーウルフの中では亜種と呼ばれる存在で、一度力が暴走すれば並大抵の者では止めることは困難を強いられる。

ボスに救助され一度は暴走したものの・・・ボスの人間とは思えない力によって力は抑えられ、普通の女の子に戻った。

非常にわんぱくな性格で、犬と同じように走り回ったり遊ぶことを好む。

意外にも好物は魚。


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