第参話:「いざ、仲間探しへ。」
わんわんお。(∪ ^ω^)
前回・・・城には自分とスラナしか居ないと知ったボスは、このままではいけないと思い外に出て城に住まわせる仲間を探す為・・・出かける支度をしていた。
そんな中、ボスはスラナと話をしていた・・・
「でも、その初代魔王は亡くなったんだからさ、警備とか就けろよな」
二人は、階段を下りながら話をする。
「申し訳ありません。 それで魔王と私は警備になる者をこの城に招き入れる・・・と」
「魔王言うな。 ……そうだな、せっかくの新築なんだから何人か新居させないとな・・・」 (アパートみたいになるけど・・・)
「了解しました。 ……では、誰を新居させますか?」
そう言って、スラナは背中に背負っていた鞄から分厚い名簿を取り出す。
(め・・・名簿!? 分厚っ!)
パラパラとスラナは名簿を捲る。
「そうですね・・・”ワーウルフ”とかは、どうでしょうか?」
「ワーウルフ? 狼男か・・・」
「いいえ、狼女です。」
スラナは首を振って言う・・・それにボスは驚く。
「えっ!? 女!? 男は!?」
「無理です。 今現在、人間達との戦争中なので、殆どの男のワーウルフが出ています」
「はい!? せ、戦争!? 聞いてないよ、そんなこと!?」
「あっ・・・そういえば言ってませんでしたね」
「うぉい!! そういうとっても重要で大事なことは初日に言おうよ!」
――――それは、1年前の事・・・。
魔王が支配する大陸に突然人間達がやってきた。
人間達は、次々と魔族を倒していき、その領域を自分達の住処とした。
それを怒った初代魔王は、沢山の魔族兵を従えて人間達と戦争を始めた。
現在、大陸の半分が人間の領域。
そして、もう半分が魔族の領域。
今も、両者のいがみ合いが続いている。
そして、初代魔王は、一度人間達との戦いにより大破した城を修復。
新しく生まれ変わるも、その城の主である魔王も人間の送り手により死去。
今現在、魔族を指揮し、支える事が出来るのが―――
「魔王、貴方です。」
「うむ、よーく解った。 あと魔王って言うな」
「何か他に聞きたい事は?」
「んー・・・もしかしてだと思うが・・・その戦争に殆どの男達が戦場に出てる?」
「はい。 さらに詳しく言えば、これまでの戦争は10年近くと続いており、現在は両領域の最期の境界線とも言える場所……”戦場の境界”という所で最期の戦いを今か今かといがみ合っています故に・・・殆どの魔族の男達はその戦場の境界で陣地を取っています。」
「……つまり分かりやすく言うなら、戦場から少し離れた場所にテントを張って住んでいるって事だな?」
スラナの分かりづらい言葉をボスは分かりやすく直し、復唱した。
「そういう事です。」
そして続いては残された女性側の魔族たちはどうしているのか聞くことにした。
「女性の魔族はロクな戦力にならないと判断した初代魔王は、戦争で負傷した者達の介護などを任せています。」
「ふむ・・・女達には衛生兵の役目があるって事か・・・」
「あと、食料や物資などの配達等もやっていますね」
「う~ん・・・完璧に戦争をやってるわけだな・・・」 (まぁ、銃火器を使わないだけでもマシか・・・いや、マシとかそういう問題じゃないけど)
「それで、どうします? ワーウルフを城に新居させますか?」
「う~ん・・・まぁ、もしもの事があるからな。 なるべく多くの魔族をこの城に新居させないと・・・」
「了解しました。 それでは、参りましょう」
「OK……しかし、道中あたりとか大丈夫なのか? 初代魔王を襲撃に来た輩みたいに侵入者が来る位だから道中にも敵が出てくるんじゃあ・・・」
「大丈夫です。 今回の件は例の無い事件でしたし・・・普段は人間が入れる状態ではありませんので・・・」
「そうか? なら良いんだけどよぉ・・・」
確かに・・・外に出てみると、辺りの木々は少し黒に近い色合いをした濃い緑色をした葉っぱが茂っていたり、鳥の鳴き声が森の雰囲気をより一層引き立てていた・・・
まさしく、魔王城の周りに相応しい景色だった。 そんな森の中を二人は、ワーウルフの住処を目指して歩き始めた。
しかし・・・本当にほぼ全ての魔族が出払っているのか・・・歩いていても鳥と小動物以外、何も出てこず・・・RPGでお馴染みのモンスターなど、それといった魔族が出てこなかった・・・
「本当に皆、戦争で出て行ってしまってるんだなぁ・・・」 と思っている最中・・・歩いて一時間程度で二人は、ワーウルフの住処へと辿り着く。
「割と近いんだな」
「ええ、城から一番近い場所に住んでいる種族ですので・・・それも含めて丁度良いかと・・・」
ワーウルフの住処に着いた二人は、早速 城に住む事が出来るワーウルフを探す事にした。
スラナはワーウルフ達を集めて、ボスが新たな魔王という事を伝える。
「この方が、我等の新たなる魔王……ボス様です。」
「スラナ・・・『様』を付けるのは止めろ。 何かハズい上に、違和感がバリバリだ・・・」
「ふん!新しい魔王?笑わせるんじゃないよ!」
だが、ワーウルフの女達は全員否定していた。
「そいつは人間じゃないか!」
「魔族も堕ちた物ね!」
「そうだ! そうだ!」
女達は、ボスにいちゃものを掛けるような怒った喋り方で寄ってきた、そこにボスが前に出る。
「あ~・・・”御託はどうでもいい”現在の魔王城は警備も0で誰も居ないんだ。 誰か城に移住する者はいないか? いてくれたらそれなりに助かるんだが・・・」
ボスは、さっきのワーウルフ達のブーイングそっちのけで、話を進めてきた・・・
その顔は豪く涼しく、何も恐れていない、何食わぬような顔付きであった。
そんなボスの素っ気無い言葉にワーウルフの女性達はニヤニヤとしているが、眉と口元が引きつっており、今にも襲い掛かりそうな顔立ちになっていた。
「おい、あんた……人間のクセして、随分と根性あるじゃないか・・・」
「本当だね~・・・」
「やるぞ、ゴルァ」
ワーウルフ達が、ボスに向かって睨み付ける。
「はいはい・・・顔面近づけんな、正直獣臭い。 ……んで? 誰か城に来る奴は居ないのか? 今なら、スペシャル丼をプレゼント。」
ボスは”そんな程度”な事を気にせず話を進めた。
そんなボスを見ながら 「完璧に舐めて掛かってきてますね」 とスラナは小声で言った。
まぁボスがこんな態度を取るのも無理というわけではなく、ワーウルフの女性達の殆どが30から40までの熟女ばかりで、男としてはあんまり誘いたくない連中だった。
ボスは舐めた態度を取りながらもう少し若いワーウルフは居ないのかと辺りをキョロキョロと探る・・・
(ん? あれは―――)
ふと、ボスの視界に一つの檻が映る。
「おい、そこにある檻。 その中には、お前等の同族が入ってないか? それっぽい姿が見えるんだが……」
(えっ・・・?)
ボスの檻に向かって言った台詞にスラナは驚いた。
自分には見えなかったが・・・ボスの目にはハッキリとそれは見えていた。
その檻の中に入っているのが、ボロ雑巾のようにボロボロになって眠るように横たわっている”ワーウルフの女の子”だという事を……
そのボスの台詞を聞いたワーウルフ達の態度が一変した。
突然、一人のワーウルフが檻を隠し見えなくするようにボスの前に立った。
「ふ、ふん! 人間には関係ない事だよ。」
「何が関係ないだ」
ボスは檻を隠すように前に出てきたワーウルフの体を押し退け、小走りで檻の傍に近づき女の子の様態を目視で見る。
「随分と衰弱しているじゃないか・・・このままじゃあ、この子は息絶えてちまうぞ?」
「知ったこっちゃねぇんだよ! 人間ッ!!」
とうとうブチ切れてしまったワーウルフ達は一斉に人間の姿から狼の姿にへと姿を変え、威嚇をし始める。
「皆ァッ!! かまう事はないよ!! こんな人間一匹、食い散らかしてやんな!!」
「オオオッ!!」
ワーウルフ達が一斉にボスに向かって襲い掛かってきた。
スラナはそれに何も言わずに腕を組んで、ただジッと見ていた。
「……はぁ」
ボスはため息をつき、両腕をバッと前に出す。
それと同時に腕からピアノ線状の触手たちが溢れ出ると、ワーウルフ達の首に向かって一気に巻きつき始めた。
ワーウルフ達も一瞬とも言える出来事に驚いていた。 自分達が何をされたのか・・・それさえも分からずに―――
「ぐ……が……?」
ギリギリ・・・と、ピアノ線状の触手が狼の姿になったワーウルフ達の首を思いっきりと言わんばかりに力強く締め付ける。
ボスは、クルッと首を絞められているワーウルフ達に背を向け、そのまま檻へと向かい檻を開けようとした。
しかし、当然のことか・・・檻には鍵が掛けられており、ボスはガチャガチャと鍵を揺する。
「ん~? あちゃー・・・鍵されてるのか……おーい、この檻の鍵は何処なんだ?」
ボスは首だけ振り向き、首を絞めているワーウルフ達から檻の鍵の在り処を聞き出そうとした。
「ぐッ……! そんな……物……とっくの昔に処分したよ……!」
「マジかよ……しゃあねぇな、っと・・・その前にもう少し絞めてくれ」
ボスの指示により触手が喋ったワーウルフの首を更に強く締め上げた。
「参ったな~・・・処分されちまったなら、仕方ないか……頼む。」
何本かの触手は、以前、ボスが言ったとおりに意思を持っており、ボスの言葉を理解してボスの片手に集まり、鎌の様な形に変形した。
そして、そのまま檻に掛かっていた鍵を破壊した。
運がよく鍵はサビ付いており、一回だけ攻撃するだけでポロリと砕け散った。
ボスは、そのままその檻からワーウルフの少女をお姫様抱っこのように抱きかかえながら取り出した。
さらに触手は気前がよく、ボスの指示無く自動的に弱っているワーウルフの少女をモーフのように包み込んでくれた。
「おう、サンキュー」 (ん~・・・やっぱり、かなり衰弱しているなぁ・・・息をするのがやっとだぞ、これ・・・)
「おみごとです、さすが魔王。」
「魔王っていうな。 スラナ、急いで城に戻るぞ。 ダッシュだ」
「はい、それより大丈夫なのですか? ワーウルフ達がああなっていますが・・・」
「ああ、忘れてた・・・」
ボスの指示を聞いた触手たちは首を絞めていたワーウルフ達を解放し、ボスの腕に戻った。
解放されたワーウルフ達は狼のままの姿でビクンビクンと白い泡を吹き、痙攣を起こしていた・・・
「……少しやりすぎましたね」
「いいや、これで丁度。 ベストなんだよ、スラナ」
「そうなんですか?」
首を傾げて言うスラナ。 それに対してボスはこう言った。
「自分の同じ種族の仲間の一人を大事にできねぇ野郎には丁度いいお薬さ」
そういい残し、ボスたちは走って魔王城にへと戻っていった。
資料No.3[触手]
名前:触手(ピアノ線上)
種族:不詳
性別:不詳
年齢:不詳
好きなモノ:世話ごと、ボス
嫌いなモノ:ボスの敵
※備考※
とっても便利で頼りになる触手さん達、ピアノ線状でボスの腕に住んでいる。
腕に住んでいるとは言え、腕毛のようにボーボーに生えているわけではなく、まるで幽霊のように肉体の内側に居る。
出すときも戻るときも感触は無いが、いざ戦闘や用事ごとになると物に触れれるという謎の性質を持っている。
常にボスの傍におり、所有者であるボスは彼らを家族のように可愛がっている。
戦闘面では大変万能で、様々な武器や物質になる。
作り出すのに限りはなく、その気になれば人間も作り出せそうなぐらいの勢い。
ピアノ線状では透明なので見えないのだが、集まって物質に形成すると半透明の色になって見える。
強度はオリハルコン並みとも言われる(ボス談)ほど頑丈で質がよく、モーフなど布状では心地よい手触りをしている。