第弐話:「初めての魔王。」
魔王といえば圧倒的強さ、魔王といえば暗黒面、魔王といえば仲間思い?
--------~【魔王城】~--------
―――…朝。
ボスは王座に座り込み、顔を埋めて落ち込んでいた・・・
「何を落ち込んでいるのですか? 魔王」
そんな落ち込んでいるボスにスラナは平然と声を掛ける
それに 「魔王っていうな」 と返すボス。
「いやね~・・・あれから魔王になって二日経ったけど、未だに魔王って何すんのか解らなくてさ~・・・」
そう頭を上げて 「あーあ・・・」 と顔を両手で隠し、ゆっくりと下に撫でるように下ろしていく・・・
そうだらしなそうなボスに軽いため息をつくスラナ
「昨日、護身の為に練習をしたじゃないですか」
スラナの言葉にボスは昨日の事を思い出し、ちょっと嫌なことを思い出したとガクッと首を下げて後悔する。
「いや・・・あれ、オレ半分負けてたし、スラナ強すぎだろ~・・・おい」
「まぁ、初代魔王にお仕えし者ですから・・・」
「だからってよぉ~・・・」
―――それは、昨日にさかのぼる・・・。
二人は、魔王城の王間に居た。
王座の前は大きな広場になっており、戦いの場所にはもってこいの場所だった・・・
そんな王座前の広場にボスはスラナに頼みごとがあると告げられ何事かとしぶしぶとやってきていた。
「そんで? 何すればいいの?」
「魔王、私と手合わせを」
「……はい?」
ボスは、スラナの発言に首を傾げた。
「魔王たる者、護身術の一つや二つ無ければいけません。」
「おいおい、待て待てぃ!」
ボスは、必死に話を止める。
「はい、何でしょうか?」
「それは、ギャグで言ってる? マジで言ってる?」
「マジです。」
スラナは涼しい顔でハッキリと答えた。
そんなスラナを見て 「うわぁ~・・・」 と嫌な汗を少し掻きながらボスは顔をガックリと下げる。
(こいつ真顔で言ったよ・・・キリッとした顔で言ってるよ・・・)
「それでは、参ります。」
そんなボスをよそにスラナはボスに向かって走り出す、その突然のことでボスは少し焦った。
「えっ!? ちょっと!? フライングですかい!?」
次の瞬間、 『ボッ』 というまるで空気ごと殴ったような音を鳴らしてスラナの拳がボスの顔面目掛けて飛んできた。
「あばばばばばばばばばあああぁぁ――――!!?」
拳は素早く、〝避けれない〟 そう思えたが・・・しかし、ボスはそれを何とか回避した。
大きな音を立てスラナの攻撃が避けたボスを通り過ぎて床に当たると、ポッカリと少し大きめなクレーターを作った……
それを見たボスの顔が一気に青ざめていた・・・
「ちょっと待て!その攻撃力おかしいだろ!!」
ボスは焦りながらスラナに向かって指を差して怒鳴りつける。
しかし、スラナはそんな怒鳴りも気にせず、再び構えた・・・
「避けて下さいよ、じゃないと・・・本気で怪我しますよ?」
「いや、怪我っていうより死ぬから!!」
スラナの激しい猛攻撃が、次々とボスを襲いかかる。
「ちょっ!おまっ!」
ボスは、何とか必死にギリギリ回避しながら逃げる。
しかし、さすがにボスは人間……スタミナも減っていき、だんだんバテてきていた・・・だがしかし、スラナはそれに容赦なく攻撃をしてくる。
(不味い・・・いくらなんでもこれはマジでやばい・・・銃器は護身用で拳銃を一丁持ってるが、さすがに女を撃つわけにもいかねぇし・・・)
ボスの腰にはコルト・ガバメントM1911A1を備えており、万が一の時にだけ使用すると心から誓ったが・・・さすがにスラナは馬鹿なぐらいに力を持っているが仮にも女性。 撃つのはさすがに気が引けていた。
……っと、そんなことを考えていたボスの顔にスラナの拳が目の前まで迫っていた、避けようにも避けれないところまで拳が迫っており、ボスは冷や汗を掻いて舌打ちを打った。
(チィ・・・!)
次の瞬間 「ドーーーーン」 という衝撃音と共に地面に物凄い衝撃が伝わっていき、王間がビリビリと揺れた。
(やりすぎたか・・・?)
スラナはボスの安否を心配し、砂煙が立つ中に入りボスの姿を探す。
「ふぅ~・・・」
ボスの声が聞こえる。
その時、丁度煙が晴れボスの姿が見えた、同時にボスの姿を見たスラナは驚いた。
ボスの腕には、何本ものピアノ線状の触手が固まり、一つの半透明の色をした盾となっていた。
「魔王……その腕は……」
その光景に流石のスラナも驚きを隠せずにいた。
ボスは盾の形状に固めた触手を解き、解けた触手たちは再び腕の中に戻っていった。
「あぁ、これか? こいつ等は、俺を守ってくれる”家族”だ。」
「家族……? それがですか?」
「”それ"とか言ってやるな、こいつ等はこんな形だがちゃんと生きている上に意識があるんだ。 家族と呼んでも構わないだろ?」
「成る程、貴方は普通の人間とは一味違う・・・ということですね・・・」
「まぁそんなところかな? だが、正直な話・・・人間から離れるのがまだ不慣れってところだな」
「もうこれで分かったろ?」っと戦いを切り上げ、疲れたと言って彼は寝室へと歩いていった。
スラナはそれを見て、少しだけ彼の背中から大きな何かを感じた―――
そして・・・話は戻り、今―――
「まったく・・・あん時はガチで死ぬかと思ったぞ・・・」
「申し訳ありませんでした。 私もまだ魔王のお力を知らずに居たので・・・」
「だから魔王って言うなって・・・、……それよりもだ・・・どうしてこの城にはお前以外誰も居ないんだよ? 普通は、メイドとか城で働いている奴が色々居るだろうに……」
ボスの言うとおり、魔王城には魔族も鼠一匹も居なかった。
城はボスとスラナだけのしか居らず、二人が居るところも二人の会話でも周りが寂しかった。
「申し訳ありません、ここには誰も配属されていないのです」
「いや、それは分かったから・・・どうして魔族の一人も居ないわけ? 何か事情でも?」
「……全ては初代魔王様の言いつけなのです」
「あのぱっつぁん(初代魔王)の言いつけ?」
「はい、初代魔王は城を建てた時に、配下の魔物達に……」
冷静に説明するスラナにボスは (『ぱっつぁん』って言った事は全然否定しないのかよ・・・) と説明よりもそっちの方が気に掛かった。
そんな中でもスラナの説明が続く・・・
【この城に警備も召使いもいらぬ!我と秘書のスラナが居れば良い!】
「―――っと、言っておりました。」
その初代魔王の言いつけにボスは眉をよらし、(ええええぇぇ~・・・) と言いたそうな衝撃と呆れが混ざった顔になっていた。
「スラナ・・・お前、その発言で身の危険を感知しなかったのか?」
「……やはり、貴方も解りますか?」
スラナの言葉にただ何も言わずにコクリッと頷く
「……やっぱ、ここはエロゲの世界だろ・・・」
「まぁ、初代魔王はヘタレが不幸を招いたのでしょうか・・・城を建てた数日後にお亡くなりになられましたしね」
(へ、ヘタレ!? ……ん?) 「……つーことは~・・・この城って新築?」
そう言って辺りを見渡す。
確かに・・・城の床、そして飾りつけも全て新品そのものだった。
「はい、だから床もこんなに綺麗でしょう?」
「えええぇぇ....ちょっとそれって悲しくない? やっと新築で建てたのに速攻で攻められて死ぬとか……」
「まぁ……”不運だった”・・・って事でしょうね。」
「亡くなる前日には階段から落ちてましたし」
「初代魔王・・・」
とことん不幸の初代魔王に少し同情を感じるボスだった・・・
資料No.2[スラナ]
名前:スラナ
種族:ダークエルフ
性別:女
年齢:19歳
好きなモノ:読書、世話
嫌いなモノ:あまりにも面倒な事、または人。
※備考※
初代魔王の秘書だったダークエルフ。
冷静で口数はあるにはあるが、多少堅苦しいことを口にすることがある。
力はとても強く、魔力などはそれほど強いものではないが一応魔法などが使える。
初代魔王に積極的なアプローチを受けていたのか・・・初代魔王の話になると少しだけうんざりとした感じで話す。
何故、彼女が秘書になったかも初代魔王にあり、口にはしないが大方 「ちょうどいいな、俺の秘書になれ」 といった感じの凄く回りくどい告白に断れず秘書になったと思われる。
戦闘面は、ほぼ肉弾戦がメイン。
それなりの相手になると簡単な魔法を交えて戦う。
力がかなり強い為、パンチやキックの一撃がかなり重い。