第壱話:「Trip」
(出落ち注意。)
「どわあああああああああああぁぁぁぁぁ........」
―――これは一体何事か?
今日の昼・・・俺は散歩していた。
ええ、それはそれは心地のよいお昼でしたよ・・・
公園では昼休みで持参した弁当を同僚と仲良く食べるOL女性がペチャクチャ何かを話してましたとも・・・
中にはペットを連れて昼の散歩をするお年寄りも居て、そりゃあ・・・賑やかで楽しそうな公園の風景でしたとも・・・ええ。
それがどうしたことか・・・気がついたら変な穴に俺は落っこちてしまって現在大好評落下中というね・・・
「いや、可笑しいだろ!」
……そう声出してツッコんでも落下止まらんよねー、そーだよねー・・・
しかし・・・このまま底まで到達したらどうなるんだろうか?
「……ペシャンコ?」
いやあああああああああ!!!
ま、待て! 話せば分かる! だから、グロイ死に方はご勘弁!!
「だ、誰か助けてーーーー!!!」
〝悪しき光を打ち勝つ闇よ・・・来たれッ!!!〟
―――その声と共にボスの意識は失った。
…………
…………カン……
…………キィン……ガキィン!
近くで鉄がぶつかり合う音がしている・・・
(うっ・・・ここは・・・?)
ボスはボヤける視界を頼りに状況を把握しようとし、何とか気力で視界だけハッキリとするようにした。
……彼の目の前に途轍もない光景が写った。
――― 一人は白い鎧と黒い鎧を着た騎士二人が剣を交えて戦っていた。
(こ、これは夢なのか!?)
しかし、床の冷たい感触が頬に伝わる辺り・・・これは現実で今、目の前で起きている現状は事実でしかなかった。
そうボスが考えていると 『ガキィンッ!!』 ・・・っと、その音と共に黒い騎士が敗れ、床に勢いよく倒れこんだ。
しっかりと手に持っている剣には黒くてカッコいい装飾が施されており、胸には黒龍が象られたペンダントを着けていた。
「これで終わりだ・・・魔王!!!」
少し息を切らしている白銀の騎士が魔王と呼ばれた黒い騎士に止めを差そうとした・・・しかし―――
「甘いっ!!」
『ズドッ!!』
その音と共に翡翠色の床に血が散る。
黒い騎士が最後の力を振り絞り、止めを差そうとした白い騎士の体をその黒い剣で突き刺したのだ・・・
「ぐふっ・・・! 馬鹿……な…ッ!」
刺された白い騎士は、そのまま崩れ落ち絶命した・・・
そして・・・黒い騎士は残りわずかしかない力を必死に絞りながら地面を這いずり床に横たわっているボスの近くに近寄る。
ボスの傍に着くと黒い騎士は胸にしていたペンダントを外し、横たわるボスの手に渡してこう言った。
〝この城を……頼む…………〟
そう言い終える・・・黒い騎士は息絶えてしまった。
(くっ……そ……、こりゃ、どういう……あく………む……)
ボスは再び意識が遠のいていき、そのまま意識を失った・・・
―――意識が完全に消えるその時、何を言っているのか分からなかったが・・・女性らしき声が薄っすらと聞こえた。
…………。
―――私の名は〝スラナ〟……魔王様にお仕えする者です。
仕える者・・・なのですが・・・ねぇ・・・
これは一体、どういう状況なんでしょうか?
①突然、大きな爆発音がする。
↓
②何があったのかと急いで駆けつける。
↓
③到着すると、そこは惨劇だった。
↓
④王広間は半壊、そして何時もと違う侵入者。
↓
⑤倒れている魔王様を発見、救助するも時遅く他界。
↓
⑥そして、魔王様の近くに一人の男が・・・
↓
⑦その男の手には、魔王様が大事にしていた黒龍のペンダントが・・・
↓
⑧そして、今に至る。
…………はい。
そんな感じで今に至ってるんですがね? そうなんですけど・・・
何故か私、その男に膝枕をしています。
……まぁ、別に支障はありません。 死んでしまった魔王様を膝枕しても意味のないことでしょうし・・・
いえ、それよりもです・・・一体誰なんでしょうか? この男・・・
人間・・・なのは人間ですが、それにしては向こう側の人間に有るまじき格好ですし・・・それに寝顔が何とも穏やかというか何というか・・・
そこでまるで苦痛のあまり首でも掻き毟ったような死に顔をしている白い鎧騎士とは大違いですよ。
魔王様も魔王様で「やってやった」って自慢と達成しきったような顔で安らかに永遠にお休みになっているし・・・
はぁ・・・これだから仕える者というのは疲れるのですよ・・・
―――そして、一分の時が経ち……
まだ膝枕をしているスラナの上でボスが 「んっ・・・」 と小さく声を出しながらうごめいた・・・
「こ…………」
(おや? ようやく目覚めた様ですね。)
「コロンビア~・・・」
(…………。)
ボスの腑抜けた寝言にスラナは少し呆れた感じな顔を見せ、「はぁ・・・」と一つ軽いため息をついた・・・
「ていっ」
そしてボスの顔面目掛けて手刀を食らわして起こした。
「ぶっ!!」
顔面に手刀されたボスは無事 (?)目を覚まし、一回だけ辺りをキョロキョロと見渡す。
そんなボスの反応に少し驚いたスラナは 「ようやく起きましたか。」 と声を掛けて首を向かせる。
「あ、ああ……って・・・あれ? ここ何処? あんた、誰?」
ボスの頭の中では、まだ先ほどの事も整理がついておらず、首を傾げながら 「う~ん」 と順々に事々を整理する。
そんなボスの態度に再びため息をつくスラナ・・・
「まったく・・・それが第一声に 「コロンビア」 と言った男が言う事ですか」
(コロンビア!? そんな事言ったか!? 俺!?)
「えぇ、バッチリ。 ハッキリと」
「ちょっと!? 心の中読まないで!?」
「読めるんですから仕方ないでしょう?」
ボスはスラナの少し大人な態度に少し焦るように驚いたが、そういう人には慣れており、
すぐに別の本題に入る事となった・・・
「えっ・・・とぉ~・・・初対面で早速悪いんだけど・・・」
「えぇ、これから重大な事をお告げしますので、よくお聞きください。」
「話が早いな。そんで? 重大な事とは?」
【突然ですが、貴方は今から魔王です。】
「へぇ~・・・そうなんだ、オレ今から魔王……はぁぁぁーーーッ!!?」
驚くボスにスラナは答えを返すように無言で頷いた。
当然、そんな衝撃的なことを告げられたボスはワテワテと慌てふためく・・・
「ちょっ・・・ちょっと待て! お、俺が・・・ま、魔王!?」
「えぇ」
「あの悪役ポディションが当たり前の?」
「はい」
「何か世界征服とか好きっぽくて世界支配した後の計画性がゼロに等しいおバカな?」
「少し分かりませんが・・・そうですね。」
ボスは 「ナンテコッタイ」 と言わんばかりに頭を抱え込み、自分の置かれている状況と気を失う前に何が起きたのかようやく思い出した。
(ああ・・・そういえば、俺ってなんか黒い騎士っぽい人にペンダントとか渡されたっけ・・・)
ボスはいつの間にか胸に付けられてる十字架に絡みついている黒龍の形をしたペンダントを物珍しそうに触る・・・
「それは〝魔王の証〟です」
「魔王の証?」
「えぇ、その黒龍のペンダントは魔王様が何時も身につけていた・・・言わば魔王の象徴とも言えるペンダントなのです」
「それを気を失っていた貴方が持っているということは、魔王様は貴方に魔王の座を託した・・・というわけです」
スラナのその説明にボスは 「えぇ~・・・」 と眉にしわが出来るほど寄せて小さく口を開けていた。
「なんですか? その 「勝手すぎじゃないか」 ・・・って言いたそうな顔は」
「いや・・・だって・・・魔王だぜ? 色々と悪いイメージあるけど誰かは一度は憧れるポディションの人物だぜ?」
「至って一般ピープルの俺がするのはこれいかに・・・」
「……多少、何を言っているのか分かりませんが・・・つまり魔王になりたくないと・・・」
ボスはスラナの返答に言葉を発さず首を頷かせた
だが、すぐにスラナは首を振った。
「無理です、ちゃんと魔王としての役目を果たすまで元の一般人には戻れません」
「なん・・・だと・・・? 何それ、呪いの類?」
「・・・まぁそう思うならば思ってください」
ボスはまた眉にしわを寄らす。
こうして・・・ボスと名も無い世界での魔王生活が幕を開けた。
果たしてボスは魔王として、ちゃんと出来るのか
そして、無事にサラ達の所へと帰る事が出来るのか
今、ハチャメチャで、ちょっとスタイリッシュな物語が始まる。
「……マジで俺が魔王なの?」
「しつこい様ですが、マジで貴方は今から魔王です。」
「ナンテコッタイ・・・」
資料No.1[ボス]
名前:ボス
性別:男
年齢:20代前半。
好きなモノ:食事、家族、嫁、楽しいこと・面白い奴
嫌いなモノ:両親、ムカつくこと・奴、心から嫌いと思える奴
※備考※
至って普通の一般人。
少し他の者とは違う身体能力、武器の扱いが慣れている等を除けば普通の人。
意外と世話好きな性格で、頼まれたりお願いされたことは嫌々でもなんだかんだでやってくれる。(でも、本当に無理な事には正直に断る)
元の世界には家族と呼べる仲間達がおり、その中には大事な嫁が居る。
戦闘面ではその他の者より強く、家族を守るためということで何時も強くなっていく・・・
主な攻撃手段は多数あり、ゲームや漫画など・・・二次元のキャラ達が使うような技や攻撃を真似て攻撃することもある。
その為・・・刀や剣、銃などの武器は使い慣れている。
他にも色々と不思議な能力を持っており、ボスのバックにはとんでもない化け物集団(ボスの仲間ではあるが別物)が居る・・・