『ストーカーを捕まえにくいのはなぜか?』〜法と狙われた人間におきる心の変化〜
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まぁ……無いとは思いますが、被害者たちへの中傷があったら嫌なので。
「ストーカーが捕まらないのは、なぜか?」
答えは単純だ。警察の権力が、日本国憲法によって制限されているからだ。
憲法によって、国民の自由は保障され、全ての国民は、国家権力からの不当な扱い(身体の拘束、自白の強要など)から守られている。
それゆえに、国家権力である警察は、ストーカーのような「グレーな行動」を繰り返す人間をすぐに拘束する手段を持たない。
(グレーな行動……例えば、家の前で待つ、プレゼントを贈る、電話をかける、何度も好きだと伝えるなど。これらの行動は、恋愛感情からくる行動なのか、あるいは、悪意のある付きまといなのか判別しにくい。権力を持つ警察ならなおさらだ。)
もし警察がストーカーを拘束するならば、その拘束の根拠として、明確な「証拠」が必要になる。
しかし、ストーカーはグレーな行動を繰り返す。
決定的な証拠が、なかなか集まらない。
つまり、「証拠が集まるスピード」と、「ストーカーが激情するまでのスピード」に、致命的な齟齬があるということだ。
この齟齬ゆえに、悲劇が起きる。
さて、法律の話はこのくらいにして、ここからは「なぜ逃げないのか?」といった心理的な話もしようと思う。極々、軽度な付きまといを経験をした者として。
軽度だとしても、「狙われる」という経験が、人の精神にどんな影響を与えるのか。
それを知って、問題を考えるときの参考にしてほしい。
◇
私は道を歩いていた。ただ、普通に。
向かいから、バレッタをつけた女性が歩いてくる。
サングラスを掛け、スカーフを首に巻いている。
年齢は四十代くらいだろうか。
その女性が鳴らすヒールの音が、私の横を通り過ぎて5秒ほどたった時だった。
背後でヒールの音が止まった。
私は気にせず歩き続けた。
だが、背中越しに「カツ、カツ、カツカツカツカツ……」と足速なヒールの音が聞こえてくる。
気がつくと、通り過ぎたはずの女性は私の左側を歩いていた。少し離れた位置から、私の顔を覗きこむように首を伸ばしてくる。
私は角を曲がった、急ぎ足で。
背後からヒールの音もついてくる。
さらに角を曲がり、私はコインパーキングの物陰に隠れた。
ヒールの音が近づき、どこかで止まった。
位置が分からない。
10分くらい経っても、歩き出す音は聞こえなかった。
「(……バレてる?)」
そんな不安が頭に浮かぶ。
握っている傘の持ち手には手汗がついている。
さらに5分後。
私は意を決して、物陰から顔を出した。
周囲に女の姿はなかった。
(※ここからだ。付きまといから逃げられない理由がここにあると私は思う)
そう、女がいないのだ。
あいつがどこにいるのか。
何をしているのか。全く分からない。
家に戻るまで、ずっと誰かに見られている気がした。
どんな回り道をしても、「あの女に見られているかもしれない」という不安が頭に浮かび、無駄なように思えた。
だって、「全て見られているから」。
姿が見えない不安は、安心を生むどころか、私の心に「全知全能のストーカーの影」を作り出していた。
◇
この心理状態は、付けられた経験のある女性や、厳しく監視される環境(過度な教育、ブラック企業など)にいた人間は、共感できるのではないのだろうか?
「見れているかもしれない」という不安は、人の意思や行動を大きく縛る。それがもし、同じ人間から、数十回、数百回に及ぶなら精神的な負担は計り知れない。
ストーカーから逃げられないのは、こうした『不安』がストーカーの影を必要以上に大きく見せ、恐怖に怯えているのに、「自分ではどうすることもできない」という無力感が、危険な状況への抵抗力を奪っていくからだ、と私は思う。
そこに、警察の制度上の遅延が加わるならば、ただ死に向かって流されゆく日々に浮かぶのは、絶望だ。
そして――、その絶望を加速させる要因がもう1つある。
それは、不運な体験した被害者に「ありえない」「考えすぎ」「もっとやり方があっただろう」と言う社会の風潮が、当事者を孤立させ、社会への期待を損なわせる。
社会に、自分の不運な体験を「無きもの」とされたとき、当事者もまた、亡き者へとなるのだろう。
これは個人的な分析だ。
信じる信じないは、貴方に任せる。
でも、「自分以外への誠実性は知性を作る。誠実性を完全に捨てさらない限り、何度でも知性を向上させるチャンスが訪れる」という言葉も、ここに置いておく。
【あとがき】
このエッセイは、憲法と心理の観点から簡易な解説を行った。実際の問題はこんなに単純ではない(法の複雑さ、警察の不足、加害者の精神状態など)。
しかし、ストーカー問題を考える上で、このような法と心理の知識があれば、自分の心のモヤモヤや憤りの解消に役立つだろう、と思い、このエッセイを書いた。
そして何より、身近で被害を受けている人の心を理解する助けになるだろう。
法に興味が出た方は、『入門法学読本 著:木原敦』をオススメする。大学生、頑張れば高校生も読める内容だと思う。読破すれば、素人に産毛が生えた程度の知識が得られる。
ただ、「法学」の範囲や量を考えると、その産毛は相対的に″ごんぶとな産毛″と言える。
ストーカーに狙われた人の心理「見られている」に興味がある人は、「パノプティコン」を調べると、より詳しく人間の心を知れると思う。
あくまで、参考までに。




