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世界を救った伝説の英雄の体を借りパクした件について  作者: 冬狐あかつき
異世界転生したらとんでもない英雄の体だった

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7話 繋がった呪い


 背筋に冷たいものが流れる。

 ゆっくりと視線を下に落とすと、少女が生み出した黒い鎖が俺の左胸を貫いていた。

 不思議なことに傷口から血が出ている様子はなく、痛みもない。

 異様な光景に戸惑いながら、ぴんと張っている鎖へと手を伸ばせば……指先は空を切るばかりで、鎖に触れることはできなかった。


 これは威嚇のようなものなのだろうか?

 そうなら、どう反応したらいいかな、なんて考えていると、鎖が小さく振動を始めた。

 震えは徐々に大きくなっていき、ぴんと張った鎖の反対側がくの字に折れ曲がる。

 鎖は不規則に動いたあと、今度は少女の方へと真っ直ぐに伸びていった。

 

「へ?」

 

「呪い返し! 馬鹿な、こんな芸当が……」


 少女が驚愕の声を上げながら身を捩るが、無常にも鎖は彼女の心臓へと突き刺さった。

 少女も俺と同様に怪我をすることはなく、パクパクと口を開けながら、俺と繋がる鎖を見る。


「貴様のせいで、呪いが繋がってしもうた」


「呪い⁉︎ そんな危なっかしそうなものは、人様に向けちゃいけません。お願いだから穏便にいこう。俺はあんたをどうこうするつもりはないからな」


 少女はここの人たちに敵対的な行動をとってはいるが、彼らを殺すまではしていないようだ。

 なので、争いの理由を知らない俺にとって、勝手にやってくれ案件だった。


「わしの体に何が起きとる?」

 

 繋がっていた黒色の鎖が、空気に溶けるようにして消えていく。

 少女は体の調子を確かめているのか、胸に手を当てながら目を閉じた。


 そんな少女の脇を忍び足でそっと通り抜けようとしていると、隣からくそッと吐き捨てるような声が聞こえてくる。


 ……お願いだから、そのまま目を閉じていてくれ。

 それと、俺が逃げ切るまで、兵士の足止めも任せた。

 

「最悪じゃ。呪いが繋がってしもうた。おまけに付与した効果も変わってしまっておる」


「へ……へえー、そうなんだ。それは残念だな。じゃあ、俺は行くから。平和主義者のモブは、ここらで退散させてもらうよ」


 少女の言葉を適当に流して離れていこうとするが、引き留めるように俺の腕を握られる。

 少女の手を振り払おうとするが……

 

「最後まで話を聞け。改変された呪いの効果は死繋ぎ。わしが死ねばお前も死ぬ。逆も同様に、じゃな……」

 

 少女の爆弾発言を聞いて一瞬固まる。

 そうか、そうか。こいつが死んだら俺も死ぬのか。おかしな話もあったもんだ。

 それは――


「対話でどうにかなったかもしれないでしょうがー! こっちは攻撃するつもりなんてなかったのによ! 出会い頭で、最終手段みたいな攻撃してきやがって! そんで、なんで失敗してんだ下手くそめ!」


「このわしに下手くそじゃと⁉︎ 効果を絞って簡略化した呪いなんじゃぞ! 普段はこれほどのペナルティも力もないわ! これはお主の呪い返しが原因なんじゃ!」


「人のせいにしやがって! 呪い返す人よりも、先に呪う奴の方が悪いって相場が決まってるんだよ! どうすんだよこれ! 解除できんのか⁉︎」


「……無理じゃ。少しの間、動けなくする呪いのはずじゃったが、お主の体を通したことで変質してしもうた。……わしにはどうすることもできん」


「──動けなくするって、なんて酷いこと考えるんだ! こちとら現在、平和な未来へ大脱出劇決めてるところなんだぞ!」


「意味わからんこと抜かすでない! 元はと言えば貴様らが……」


 二人でギャーギャー叫びあって、最後に両者はガックリと肩を落とす。

 諦めたように少女が大きくため息を吐くと。


「……仕方ない。お前も一緒に来てもらうぞ」


「荷物持ちは俺に任せてくれ」


 少女の提案を二つ返事で了承する。

 変な話にはなってしまったが、それでも、俺の最優先はここから抜け出すことだ。

 そのために利用できるものは利用させてもらおう。

 

 少なくとも彼女はここらの兵士を圧倒できるほどの力があるので、もしもの時はこいつに追手を押し付け……任せても問題なさそうだ。

 


「なんで嬉しそうなんじゃ気色悪い。魔族と行動を共にするんじゃぞ?」


「そんなに変なのか。……もしかして魔族って人間を食べたりする感じ?」


 それならば考えを改める必要がある。

 俺としてもここから脱出することを望んではいるが、非常食代わりにされるのは願い下げだ。


「わしをそこらの魔獣あがりと一緒にするな。人なんぞ食いはせん」

 

 だが、少女は俺の言葉を不愉快そうに否定する。

 とりあえずは少女を信じることにして。


「そうか。ならここから早く逃げよう。城の中にはまだまだ兵士がいるだろうからな」


「そう簡単にはいかぬぞ。あれを見てみい」


 少女が親指で背後を指差すが、そこには巨大なはね橋が一つあるだけだった。

 一本道の出口以外は、水路がぐるりと取り囲んでいる。

 はね橋に兵士は見えず、急いで逃げれば間に合いそうだけど……

 そんな俺の疑問に答えるべく、少女が出口に向かって石ころを一つ投げつける。

 すると、石ころは空中で何かに弾かれて地面に落下してしまった。


「何が起きた?」


「ここら一帯には、わしを逃さぬように障壁が張られておる。お主にはどうすることもできんよ」


「……お前ここで何したんだよ」


「魔道具の事故で、たまたま城の中に入ってしもうただけじゃ。すぐに出ていくと言ったんじゃが、勘違いした連中に襲われてな」


 それでこの光景になったと。

 殺さないようにしているだけ良心的ではあるが、悪いのは侵入してきたこいつなんじゃ……


「……今は深く考えるのやめておこう。なあ、それで、どうやってここから抜け出すんだ? 強力な魔法で障壁をぶっ飛ばすのか?」


「やってやれんことはないが、残りのマナが心許ない。そのあと連中の相手をしながら脱出するのは面倒じゃから……」


 少女はニヤリと笑い、腰がけ鞄から埴輪のような姿の人形を取り出した。


「何それ? そんなんでどうにかなるのか?」


「これは転移の魔道具でな、もうすぐ発動に必要なマナも注ぎ終える。そうなればこんな隠気臭い場所からもおさらばじゃ」


 転移の魔道具⁉︎ なんてワクワクするワードだろうか。

 だとすれば、あとは彼女が準備を終えるのを待つだけで良さそうだ。


 彼女が不細工な埴輪人形をさすっているのを待っていると──王城の入り口から一体のマネキンが吹き飛んでくる。

 少し間をおいて、マネキンがもう一体、同じように飛ばされてきた。

 少女の視線が城の入り口へと向けられる。


「悪しき魔族よ! 四番隊隊長、エルグが裁きを下してくれよう」


 暑苦しい名乗りと共に、一匹のハゲが現れた。


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