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伝説の勇者に転生した元社畜、魔王候補のロリババア魔族と逃亡生活始めました  作者: 冬狐あかつき
勇者は辞退しました

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15話 うちの子は凄かった


 洞窟に身を寄せて四日経過した。

 その間に俺はイリアから色々なことを教えてもらった。

 最初に教えてもらったのはこの土地の情報で、人族は五大国と呼ばれる、五つの強力な国が統治しているらしい。

 それらはかつての大戦の英雄が、寿命を終えた土地に繁栄した国のこと指すようだ。


 国の特徴は軍事国家――リューテンガンド、魔法大国――ネヴィラ、宗教国家――セレスティア、獣人の国――ガンガダ、商業都市――ルミナスで、その中で気になる国は獣人の国と、魔法大国、次点で商業都市も楽しそうだ。

 逃げ出したリューテンガンドは論外で、宗教国家にもあまり魅力を感じない。

 なので、これからはどうにかしてリューテンガンドから離れるように動いていこう。


 


 次に、この世界の種族についてを教えてもらった。

 この世界にいる人型の種族は、大きく分けて三つ。

 一つ目は俺たち人種で、人口は一番多く、各地に根付いている。

 特徴として身体能力では獣人に劣り、魔法では魔族に及ばない器用貧乏の種族という評価らしい。


 二つ目はイリアたち魔族だ。彼らは数は少ないが総じて長命で、強力な魔法を自在に操る。

 全体的に体が弱く、近接戦闘を苦手とする者が多い魔法特化の種族と言えるだろう。


 最後は獣人族。彼らは性別問わず、並外れた膂力を持ち、接近戦では無類の強さを誇る。

 その反面、魔法を使える者は少ないようだ。

 繁殖力が高いが寿命は三種の中で最も短いため、総数は人種よりも少ない。

 

 そして、創作の中の存在だった、エルフやドワーフもこちらでは普通に存在しているらしい。

 彼らも魔族に分類されているが、生産技術に長けているドワーフなどは魔族としては珍しく、こちらに移り住んでいることもあるようだ。

 

 それ以外の魔族は、人間たちが住む場所とは別大陸――魔大陸に住んでいて、基本的にこちらの大陸にくるためには、特別な転移門を経由する必要がある。

 そう聞くと、人間と魔族は交流があるのではないかと感じるが、多くの人間たちは魔大陸に住む魔族のことを嫌っているらしい。


 それは魔族の国としてのあり方に原因があった。

 魔族は国の代表者──魔王によって統治される。

 才ある魔族から魔王候補者を選び、その中から最も強いものを魔王と認定し、国を運営していく。


 魔王の言葉は絶対で、人間嫌いの魔族が魔王に認定されれば、人間が住むこの大陸への侵攻が始まることも珍しくない。

 実際に、ここ四百年ほど前の魔王は人間と戦争をしており、長命種である魔族の中には当時を知る者もいるらしい。

 転移門を破壊すれば侵略は防げそうだが、転移門は先日、イリアが言っていたアーティファクトなるもので作られていて、今の技術では破壊することができないようだ。




  

 そして、イリアが俺の部屋に飛んできた理由も話してくれたのだが、その経緯が頭を抱えるような話だった。


 イリアは魔大陸で悠々自適に一人で過ごしていたらしい。

 この悠々自適を俺の価値観に当てはめると……盗賊と同義だ。


 一部の魔王候補者は貴族的な役割を与えられている者も少なくないらしく、イリアは知り合いの魔王候補者の領地の近くを陣取って、貢物を少しばかり拝借(脅して奪い取ったとも言う)する生活を送っていた。

 そして先日、恐らくその被害者であろう者たちから襲撃にあい、命からがら埴輪の魔道具(これも盗品)を起動して逃げ出したのだ。

 

 襲撃犯が特定できていないのは、顔を隠している集団に襲われたからで、少なくとも彼女を追い詰めることができるのは、魔王候補者の誰かか、魔王の権利を放棄した一部の強者の仕業らしいが……

 憤慨するイリアを見た時、自業自得という言葉が喉から出かかったが、すんでのころで止めておいた。


 

 話を聞く限り、イリアを襲ったであろう魔王候補者は友人関係にあったらしいが、堪忍袋の緒がきれたということなのだろう。

 貢物を根こそぎ奪っていない程度の良心はあったようだが、それでも邪魔者には変わりない。

 被害者の友人の肩を持ちたくなるくらいには、イリアの方に非があった。


 

――――――――――――


 

 寝起きのイリアがお腹をぽりぽりとかきながら酒に口をつけている。

 その横で俺はルルを膝上に乗せながら、イリアから授業を受けていた。


「魔法とはマナを代償にして世界の法則を歪める力じゃ。水の中に炎を生み、空に大地の橋をかける。わかりやすく言えばこのような力じゃが、歪める力が大きすぎると相応にマナも消費する。先に挙げた魔法を使えるのは魔族でも一握りの存在だけじゃの」


「簡単な魔法なら俺もできるかもしれないってことか?」


「お主、自分の中にあるマナを感じたことはあるか?」


「ないけど?」


「……そうであろうな」


 イリアの指摘に正直に答えると、彼女は意味深な言葉を返す。

 この世界ではマナを感じ取れるのが普通なのだろうか?


「俺の体に欠陥でもあるのかな?」


「マナを扱う感覚は一朝一夕で身につくものではない。……だが、あれ程のマナを一度に吸われることがあれば、嫌でも自覚するはずじゃ」


 吸われるというのは……ルルの食事のことか。

 イリアも寝ぼけたルルにマナを吸われたことがあり、一度の食事でどれくらい持っていかれるかわかっている。

 そして、人間の潜在的なマナの保有量は、魔法を得意とする魔族と比べると劣っているらしく、一日に何度も吸われて顔色変えずにいるのはそうとしか考えられないと話す。

 イリアは話の流れでルルに目を向けると。


「……こんな幼体で、これほどのマナを必要とする存在を見たことがない。そいつはどこで拾ったのじゃ?」


「俺もルルがどこからきたのかわかってないんだよ。他の魔獣もマナが餌なのか?」


「当たり前じゃ。肉食、草食、違いはあれど、内包するマナを取り込んでいるのには変わりない。だがこの摂取量……もしかするとそいつは、進化前なのかもしれんな」


「進化?」


「一部の魔獣や魔物は溜め込んだマナを使って特異な成長を遂げる奴らがおる。どんな種族にも可能性があるものじゃが、進化に至る確率はかなり低い。普段の食欲を考えるに、そいつは進化に達する可能性が高いのは確かじゃろう。お主よくそんな存在に好かれたの」


 珍しくイリアが俺を褒めてくれるので、鼻高々だ。

 

「進化したらどうなるんだ? 巨大化とかしちゃう?」


 いつまでも可愛いままでいてほしい気持ちと、成長した姿が見たい気持ちで葛藤している。

 でもまあ、その時がきたら素直にルルの成長を喜べるんだろうが……



「身体的に変化が生じることが一番多いな。お主の言ったように体格が変わったり、硬質的な体に変化したりと、生存競争を勝ち抜けるように、前よりも強靭な体に成長するのじゃ。次に多いのが属性をその身に宿すタイプ。この種の厄介なところは、同属性の魔法で攻撃しても効き目が薄いのと、一見して進化しているのかわからないほど外見に変化が出ないものがいることじゃ。最後は魔法を使えるタイプ。これはかなり数が限られてくる、言わば希少種じゃの」


 どうしよう。うちの子ってもしかして天才なのかもしれない。

 

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