第16回 酒場回②ラクス様かっこいい(掲示板的なやつです)
掲示板回的な酒場回その2です。
「いや~今日も酒がうまいな」
「だな!」
「ギルドの建物は立派になっちまったけど、ここが変わんなくて良かったぜ」
「間違いないな!」
「あれだろ?領主様が綺麗に新設しようとしたのに、ラクスさんが反対したんだろ?」
「らしいな」
「ギルドの酒場は荒くれ者の住処なんだからオシャレなんていらないんだ!ってな」
「わかってるね~あの人は」
「ほんとだぜ。もしここが若者がデートするみたいな店になったら入りづらいもんな」
「騒ぎづらいしな!」
「殴り合いもできないしな!」
そう言ってもう誰が誰かもわからない中で、みんな笑顔で語り合っている。
スタンピードを制圧して早1か月。
凄まじい速度で復興したリオフェンダールの街のギルドでは今日も冒険者たちが日々の疲れを癒すため、あえて薄汚く作られた空間で明るく元気に酒を煽るのだった。
「でもよぉ、まさかシファ様とラクスさんがくっつくなんてな」
「ラクスさんのロリコン!!!!」
「あはははは」
「エランダ様の話は聞いたけど、酷いものだったからなぁ」
「領主様も言ってたけど、怒って出て行ったのにシファ様が心配で戻ってきたんだろ?」
「カッコいいね~」
「羨ましい……」
「それでドラゴンのブレスから守ってな。マジですげぇ」
「さらに俺たち全員逃がして、ズドン……ドラゴンが空中で消えていくとか、夢みたいな景色だったぜ」
「でも、あの落ちて来た大きな黒い結晶。すごかったよね」
「やばい。あれだけで一生遊んで暮らせそうだよな」
「倒したのはラクスさんだからラクスさんのものよね?」
「お前ら知らないのか?」
「なにを?」
「ラクスさん、あの結晶、王家に献上したらしいぜ?」
「マジかよ!」
「えぇ~~~~?」
「信じられない……」
黒い結晶はスタンピードのボスの証だ。
発生したスタンピードを討伐したことを証明してくれる。
それはとても貴重な宝石で、大量の魔力が籠っているから、様々な魔道具に利用される。
そんな黒い結晶の中でも、今回のものは過去最大だった。
まぁ、そもそもドラゴンなんて神話上のモンスターだ。
今までスタンピードで出て来たなんて言う報告は一度もない。
それが実際に起こり、倒したんだから、王都の方でも大騒ぎになった。
「王家は大喜びらしくってな。ここだけの話だが、ラクスさんが叙勲されたり、貴族になる可能性もあるらしい」
「まじか」
「えっ?それ大丈夫なん?」
「シファ様が泣く姿は見たくないぜ?」
「そこは大丈夫よ」
「あっ、ライラさんお疲れ様です」
「ライラちゃん、おつ~」
「ありがと!」
「で?なんで大丈夫なの?」
「ラクスさんは、リオフェンダールの発展支援と、自分とシファ様の婚約のお墨付きとか、そう言うものを依頼するお礼として結晶を献上したんだ」
「なるほど。で?王家は?」
「もちろん、全部了承。なんとシファ様とラクスさんの結婚式の際には、王都の神殿長が来る検討がされてるらしい」
「やばっ」
「国賓待遇じゃん」
「さすがラクスさん」
「もうさ。ラクス様って呼んだ方が良いんじゃない?」
「だよな」
「まずい。ラクス様がシファ様を娶って逆玉の輿とか思ってたのに、反対なのか?」
「そもそもラクスさんって隣国の貴族家出身らしいよ」
「えっ、まじで?」
「えっ、俺たち大丈夫?ちょっと前に酷いことしたばっかだぜ?」
「どうか斬られるのはサミドだけにしてください」
「なんでだよ!!!」
「大丈夫だろ。そもそもラクス様が怒ってないし」
「ほんと、良い人だよな」
「んだんだ」
「それに加えてジキルのやつは。とんでもなかったな」
「あいつ死体すらみつからないんだろ?クレアさん曰く、婚約者でお腹に子供がいるエランダ様を置いて逃げたらしいじゃん」
「クズ過ぎる」
「そのエランダ様も行方不明なんだろ?どこに行ったんだろうな?」
「どこかで生きてて、もしエランダ様が出産したら、リオフェンダールの血だろ?将来お家騒動とかなければいいけど……」
ちなみにアレサンドロとジキルはドラゴンのブレスの餌食になったことはほぼ確実視されていた。
なにせ砦から出て行くのをクレアが見ており、馬車の後が道に残っていて、その馬車の後の先にブレスが着弾して爆発、大火事になっていたのだから。
一方でエランダの行方はわかっていなかった。
黒き森に入ったのはわかっているが、その先が追えなかったのだ。
「まぁ、結晶を王家に献上したときの願いの1つが、シファ様を次期子爵と認めてもらうことらしいから、そういった対策は領主様はちゃんと考えてると思うわよ?」
「だよな。領主様なら安心だ」
「それにしてもラクス様が行方不明になって以降、暗かった街が一気に明るくなったよな」
「まぁ、スタンピードで一回真っ暗になったけどね」
「それすら薙ぎ払ってくれたラクス様に乾杯だ」
「あぁ、乾杯!」
「いいね!乾杯!」
「でも、そう言えば今日はクレアさんもラクス様もいねぇな」
「クレアさん、あの胆力はすげぇな。俺ならあれだけやらかした後に普通にギルドや酒場にいたり、"閃光"に居座ってるのは無理だ」
「なんでも『私はラクスの奴隷になってもいいから、残して……いや、いっそ安心するから抱いて』だっけ?」
「爆笑した」
「あそこまで打算しかない告白も珍しいよな」
「断るラクス様の方が平常心保ててなかったの、ここで見てて笑っちまった」
「シファ様に見つかってクレアさんが公開打撃刑くらったやつだろ?笑っちゃいけないけど笑った」
「思い出させるなよ。『シファ……こういうのが好み?わかった。拘束した私をラクスに〇させながら叩けばいい』とかやばい」
「ぶはっ」
「やめろよ」
「ほんとにな。あれだろ?ラクス様達"閃光"は明日からダンジョン探索だろ?」
「あぁ、マジで行くのか」
「行くらしい」
「なんかあったのか?」
「ほら、ジキルがいなくなって、"閃光"のメンバーがラクス様とミシェールさんとクレアだけになっただろ?」
「あれ?ジキルが2人くらい入れてなかった?」
「あの2人はスタンピードで死んだ」
「そうか」
「で、なぜか隣町のギルド長の娘のメリアさんが加入したんだ」
「なんでだよ」
「なんでも、スタンピードって聞いて戻るラクスさんにくっついてきたんだってさ」
「くっ、まさかのお邪魔虫……」
「いや、一旦帰ってたらしいけど、ダンジョンに興味があるってんでもう一回来て強引に加入したらしい。ちなみに実力は問題ないんだってさ」
「なるほど」
「そるなると男はラクス様1人で、女3人だろ?」
「なんだその羨ましいハーレムは」
「それにシファ様が拗ねたらしくてな」
「は?」
「拗ねるシファ様かわゆい」
「で、シファ様も行くらしい」
「は?」
「なにしてるの」
「知らん。でも領主様も許可したらしくって、ハーレム確定なんだってさ」
「ウケる。きっとラクス様が緊張してそうなのがウケる」
「ははははははは」
そうして今日も夜が更けていくのだった……。




