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第14話 マジックシールド(シファ視点)

現れた神話上の生き物。


ドラゴンは上空で大きく口を開けた。


見えるのは赤い光。あれは魔力だ。



まずい。ブレスだ。



全てを焼き尽くすと言われた。


神話の中で、伝説の街を一夜にして焼き尽くした、あのブレス。


そんなものを相手に抗うことなど不可能だ。



「みんな逃げて!できるだけ遠くに!」


「いや、逃げ場などない。覚悟を決めろ!全員全力で防ぐんだ!」


私はなんとか声を出したが、それを覆いかぶせるようにミシェールが叫ぶ。

 

そうなのかもしれないけど……。



「もう死んだものと思う。ならやることは固まって防御魔法だ!」

「全員で重ね掛けするぞ!」

「シファ様の周りに集まれ!」

「なんとかシファ様だけでも助けるんだ!」

「みんな……どうして?」

冒険者たちが集まってくる。

もちろんみんな顔見知りだ。ダイさんも、ルーダさんも、エテルナさんも、サミドさんも、マルクスさんも、バレッドさんも……。

みんな知ってる。

私はギルド職員だったんだから。

慣れない中で受付に座って、緊張しながら対応していたらみんな笑顔で応援してくれていた。


声をかけて、ゆっくり待ってくれて、たまに愚痴を聞いたり、相談を受けたり、夢なんか語られたり。


みんな楽しい冒険者だったの。



「ダメよ。私なんかいいから、逃げて。逃げてよ……」

「それこそダメだな」

「あぁ。聞けない相談だ」

「なんでよ」

「俺は嬉しかったぜ?あのシファちゃんがスタンピードで慌てふためく俺たちに全体回復かけてくれたんだぜ?」

「そうよ。あれは痺れたわ。逃げたクズなんてどうでもいいわ。今度は私がシファ様を守りたいわ」

「だな。どうせドラゴンなんて出てきたら逃げたって生きれるかわかんねぇんだ。だったら好きなようにやってやるよ」

「そして好きなようにってのはシファ様を守ることなんだ」

「みんな……」


もう周りが良く見えない。

ドラゴンだけを睨むつもりが、視界がぼやける。


私には魔法使いの才能が少しだけあった。

だから必死に練習して回復魔法ができるようになって、みんなの役に立ちたいと思って必死に全体回復を覚えた。

でもそれしかないの。今はまだ。

だから本当に今は何もできないの。

防御魔法すらできないのよ?

そんな役立たずを守って何になるのよ?

そう言いたいのに、口も動かない。


ドラゴンの口元の赤い光がどんどん大きくなる。


「私だってシファを守る。全員覚悟はできた。マジックシールド!」

「もちろんだ、ミシェールさん。マジックシールド!」

「当たり前よね。マジックシールド!」

「こうして最後にシファ様を見て逝けるだけで満足だよ。マジックシールド!」

「勝手に死ぬなバカ。守るためにかけるんだろ?死ぬ気で魔法を使え!マジックシールド!」

「良いこと言うよな、お転婆ルーダのくせによ。マジックシールド!」

「そろそろ放ってきそうだぜ?マジックシールド!」

「全員でかければ案外守れねぇかな?マジックシールド!」

「かな?じゃねぇんだよ!守るんだよ!マジックシールド!」



どんどんと重ね掛けされていく。

もともと100人近くいた冒険者だが、今は70人ちょっとまで減ってしまった。

でもそのうちの半分以上が魔法を使っている。


それぞれ効果範囲や強度は違う。

でも全員で固まって、全員を守っている。




グルォォオオォォォオオオオオォォオオオオオオオオオオ!!!!!


しかし、そんな私たちの覚悟を揺らすように、ドラゴンの咆哮が轟く。


「なんつぅ圧力だ……」

「やべぇな。神話上の生き物って感じだ」

「そろそろ立ってるのすらきついんだが……」

「気持ちで負けるな!あれはただのデカいモンスターだ。守りきったら攻撃するぞ!?」

「ミシェールさん、すげぇな。あれ見てまだそれが言えるなんて」

「みんな。ありがとう。来るわ。その前に感謝を」

「あぁ、シファ様」

「わかってる。シファ様」


ついにドラゴンが口を開く。

溢れ出てくる赤い魔力。

燃え盛るようなそれは、ドラゴンの口から出て凶暴に暴れ回りながら、私たちの方へ振ってくる。


目は閉じない。

みんなが張ってくれた魔法障壁だ。


私は。

私だけは信じないといけない。


例え呆気なく崩れ去るにしても、私が目を閉じちゃいけない。



そうしてドラゴンが吐き出した赤い魔力が魔法障壁に到達する。


その衝突は激しい振動を引き起こし、周囲に衝撃をまき散らす。


一瞬の拮抗。



凄い、赤い魔力に抗っている。


一番外側の障壁はミシェールのだろうか?


それがひび割れ、次の障壁に赤い魔力が到達する。


あれはエルテナさんの張ったものだろうか?


一枚一枚の魔法障壁が全て赤い魔力に抗っていく。


少しずつ、本当にドラゴンのブレスを軽減していく。


それでもブレスは止まらない。


みんなの力。



それを無慈悲に打ち砕いていく。




誰か……。



私はいい。



どうかみんなを助けてほしい。



どうか……。










「すげぇな。マジックシールドの重ね掛けでブレスにある程度対抗できてるなんて」




「えっ?」






「嫌かもしれないけど、俺も混ざるぜ?マジックシールド!」



幻聴かな?


何か聞こえた気がした。



それと同時に赤い魔力が最後のマジックシールドに到達して爆発が起こり、視界が真黒になったが……。








「よく耐えたな。みんなすげぇよ」


「えっ?」


この声は……?



「ラクスさん?」


「あぁ。悪いな、遅くなって」


私が名前を呼んだ人は、飄々とした表情で私に応え、抱きしめてくれた。

お読みいただきありがとうございます!

おもしろかった!と思っていただけた方は、ぜひ↓下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価を★★★★★に変えて頂けたら作者が飛び上がって喜びます!(面白かったと思って頂けたなら★★★★★、つまらなかったら★)


18話位の完結予定です。完結までお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

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