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第13話 現れたボス(シファ視点)

「エランダ。なんということを……」

「致し方なかったのですわ。"閃光"はこの街のトップ冒険者パーティーなの。彼らの名前が消えては誰も安心してこの街に来なくなるわ」

それはお腹の子供のことにも、個人資産を奪うことと関係ないのでは?と思って声を発しようとしたが……


「子供を作った理由になっておらぬ!ジキルに迫られたのか!」

なるほど。もしかしてそうなのか?

あの姉が?ないと思うけど。交換条件で身体を差し出すような可愛い性格なんかしてないでしょ?


「違うわ。私が利用したのよ。ラクスが死んだとなれば、仕方ないでしょ?クレアを言いくるめて"閃光"はジキルに渡した。そしてラクスの遺したアイテムで強化し、ソロのメンバーを入れて強化した"閃光"にダンジョン探索をさせる。下層のモンスターさえ間引ければ問題はない。私の伴侶がリーダーであれば、出て行く心配もないわ」


まぁ、そんなとこなんでしょうね。

ジキルなんて扱いやすそうな軽い男だったし。


それでも子供まで作ったのにあっさり逃亡するほど軽くて責任感がない男だったというところは想定してなかったのでしょうね。

お父様は沈黙してしまった。

 

 

「個人資産を奪った理由にはなっていないわね」

そしてミシェールも怒っていた。どうしてそこをそんなに?とは思ったが、口を挟めるような状況じゃない。

 

「百歩譲って死亡扱いで市民権喪失は理解したとしても、ラクスには遺産相続人がいるのだから資産はそちらのものよ。だから今すぐ返しなさい!」

「え?」

「ラクスに遺産相続人?……どこに?」

ミシェールが完全にキレていた。それに対して姉は虚を突かれたような表情でぶつぶつ言っている。

そうだった。遺産相続人はなにも親類でなくてもいい。

たしかギルドにはもしもの時に備えて遺産相続人を登録する仕組みがあったわね。

普通は親族しか登録できないのだけども……。


「知らないと言うのか?ギルドに登録した書類を見ればわかったはずだ。それすら怠ったのか?」

「そんなことは……ギルド長はなにも……」

「驚いたな。まさかギルド長もグルか。じゃあ、教えてやろう。義理ではあるが、私は彼の姉だ!だから何かあった場合のお互いの遺産相続人として登録している!」

「えぇ?」

それは驚きだった。

それなら怒りは理解できる。知らなかったけど。


「ミシェールが?」

「あぁ。彼は私の両親の養子だ。だから義理の姉弟なんだよ。祖国では彼の方が身分が高いから積極的に話しては来なかったけどね」

つい聞いてしまった私に対しては丁寧に教えてくれた。


「さぁ、返せ。推定死亡で半年というのはつい最近と聞いたぞ?」

「……」

「なにか言いなさい。お前がやってしまったことだ。その資産はきちんと返さなければならない」

「……ないわよ……」

「はぁ?」

「どういうことじゃ!」

「もう全部使ったからないわ!」

「お前!?」

「どういうことよ!金貨1,000枚に武器やアイテムもあったでしょ!?全部使ったの!?」

「そうよ!もうないわ!だから返すお金なんてないわよ!」

「まっ、待て!」



ドッカァァアアァァァァアアアアアアア~~~~~ン!!!!!!!!!!



「なっ、なに?」


言い争いをしている私たちの目の前で、ギルド協会の建物が上空に向かって打ち上げられたのだった……。




「くっ、スタンピードか。もう下層のモンスターが来たのか?」

ミシェールは慌てて武器と盾を構える。


「お父様は避難を」

私は衛兵に指示してお父様をここから引き離す。


「待て、オークキング以上のモンスターに抗うなど無茶じゃ!逃げろ!」

「冒険者たちを逃がしたら後を追いかけます!」

お父様は納得していないようだが、誰かしら領主の一族が残らないとまずいだろう。


この場には集まってくれた冒険者たちがいる。

ミシェールもいる。

私は既に戦う覚悟を決めたのだから、当然残るわ!


あのクズな姉は一目散に逃げてるし……。

結局、お金をどうしたのかも、なぜラクスさんを死亡扱いにしたのかも喋らなかったわね……。


しかしそんなことを考えている余裕はもうない。



打ち上がったギルドの建物は隣のカジノの建物の上に降ってきて、一緒に崩壊した。


魔法使いたちが防御魔法を張ってくれたおかげで、冒険者たちに被害はない。


「シファ様?逃げてください。ここは俺たちが……」

「逃げません。逃げるなら、皆さんが行った後です。私は責任者として、リオフェンダールの領主の娘としてここに残ります!」

「シファ……」

「シファ様……」


そこへ、地下に空いた穴からついにモンスターが現れる。



それは一体だけだった。



恐らくほかのモンスターは(おそ)れたのだろう。


 

なにせ出てきたのは……



私の体くらいある大きな爪……。



凶暴な牙を剥く巨大な口……そして顔。



天高く広がった漆黒の翼……。



ギルドの建物を吹っ飛ばしてあけた穴だけでは入りきらず、周囲の……宿場やカジノ、領主館、いや、もっと広い範囲で地面を崩しながら現れた怪物。




これは無理だ……。



戦うとかそんなレベルじゃない。



矮小な人間なんかが挑める相手じゃない。




周囲の地面と崩壊させて這い上がって来たもの。


そのまま大きな翼を広げて空に飛びあがったもの。


それは伝説や神話の中でしか聞いたことがないもの。










ドラゴンだったのだ。

お読みいただきありがとうございます!

おもしろかった!と思っていただけた方は、ぜひ↓下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価を★★★★★に変えて頂けたら作者が飛び上がって喜びます!(面白かったと思って頂けたなら★★★★★、つまらなかったら★)


18話位の完結予定です。完結までお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

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