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第11話 嘘の発覚(シファ視点)

「ミシェールさん。助かった」

「ありがとうございます!」

「さすがの強さだ」

「どうなることかと思ったぜ、ミシェールさん」


地上に戻ると、冒険者たちが口々にミシェールにお礼を言っている。


「遅くなってすまなかったな。しかし、スタンピードは終わっていない。エルダーウルフもオークキングもボスじゃなかった」


通常のスタンピードならボスになってもおかしくないモンスターだが、彼らは証を持っていなかった。


スタンピードという現象は各地のダンジョンでたまに起こっている。

その時ボスになるモンスターに統一性はない。

あるとしたらそれは悉く下層で出現するモンスターであると言うこと。


それから、証を持っていることだ。


証というのは不思議な黒い結晶だ。

悪意の結晶と呼ぶ地域もあるらしい。


なぜかスタンピードボスは必ずこれをドロップする。

このアイテムをエルダーウルフもオークキングも落とさなかった。

だからスタンピードはまだ終わっていない。


つまりこれからまだモンスターが出てくると言うことだ。

そしてそれはオークキングやエルダーウルフよりも強いと言うことだ。

スタンピードのボスはスタンピードを起こしたモンスターのことで、その他のモンスターは全てボスの統率下にあるか、ボスを恐れて逃げたモンスターだからだ。


その事実を改めて認識した冒険者たちは黙り込む。


「それにしても、ジキルさんとクレアさんはどこに?」

ふと、冒険者の一人が呟く。


地上に出ると、逃げた一部の冒険者は残っていて、再合流した。

逃走したことに思うことはあるが、戦力になるのだから文句を言っている暇はない。

逃げた者たちもバツは悪いだろうが、駆け込んできたミシェールと私の姿を見て残っていたのだし、なんなら一部は本当にダンジョンに引き返して戦ってくれた。



「ジキルだと?そう言えば、あいつ……あんなあからさまな罠を踏み抜いてラクスを深層に落としたくせに、のうのうとここで冒険者をやっていたのか?」

「えっ?」

そう言えばその話の途中だった。ミシェールに皆の前で話してと言ったままだったわね。でも、大丈夫かな?そんな時間はある?


「どういうことですか?ジキルさんは罠にかかったのはラクスだと……」

「はぁ?そんなわけがあるか!?」

「えぇ?」

そして案の定、冒険者たちが驚く。

もともと寡黙なミシェールが大声を出したのに驚いたのかもしれないけど。



「罠解除はシーフの役割だ。だから先行して罠を探知する。その後でパーティーの盾である私、そしてリーダーで司令塔のラクス、最後に少し離れてクレア。それが私たちの陣形だ。それなのにラクスが罠を踏み抜くとかありえないだろ!」

「言われてみれば……」

「どうしてラクスが罠を踏んだんだ?」

「だから踏んでない!踏んだのはジキルだ!」

「ジキルさんが帰還して、ラクスが穴に落ちたんですよね?それはラクスが罠にかかったからでは?」

「馬鹿を言うな!ラクスはチェンジという魔法でジキルを庇って落ちただけだ!」

「えっ?」

「はっ?」

「マジで?」


冒険者たちはあまりの驚きに声を失うが、私の受けた衝撃はそれ以上だ。

ラクスさんは本当にジキルを庇っていた?それなのにあんな仕打ちをジキルと姉たちはラクスさんにしたの?


「ラクスはリーダーだ。だから咄嗟に庇ったんだろう。後ろを振り返っていたからクレアが問題ないことすら確認していた!」

「マジかよ……」

「でもラクスは討伐報奨金をかすめ取ってたんだろ?酷い奴には変わりないよ」

「それは違います!」

「えっ?シファ様?」

「この際だから言いますが、報奨金を出さなかったのは姉のエランダです。皆さんに支払われていたものはラクスさんが個人で建てた基金からのお金だけになっていたのです。3年前から」

「なんだって?」

「どういうことですか?シファ様?」


私も完全に調べがついたわけじゃない。

お金の使い道、盗ったお金がどこに行ったのかはわかっていない。

どうしよう、これ以上説明できることがないのに熱くなって喋ってしまった。


「待て。その話はあとで聞く。そろそろ回復したな。モンスターが来る前に、ここを埋めるぞ」

「はい」

スタンピード対策の最善策は、上がって来たモンスターを殲滅することだ。

次点はボスを見つけて倒し、証である黒い結晶を破壊すること。

こうすればスタンピードのモンスターは勢いを失って去って行く。


しかしそれが難しい時の策は、入り口を埋めてしまうことだ。


これをやると、モンスターが行き場を失う場合がある。

勝手に解散してくれるのだ。

だが、強力なモンスターがいた場合には、埋めた場所を破壊して出てくることもある。

その場合は単なる時間稼ぎに終わると言うことになる。


また、埋めた後、どのくらいでスタンピードが解散しているかはわからない。

そもそも解散したのか、埋めた場所を攻撃しているのかすらわからない。

つまり、そのダンジョンは使えなくなる。


ドロップアイテムで潤っていた街にとっては大打撃だ。


それでも街の人々は助かる。

最低でも時間は稼げる。

背に腹は代えられない。


「埋めて時間を稼げばラクスも戻ってくるだろう。ラクスに対して不審があるのはわかったが、眠っていた私にその理由はわからん。今はやれることをやるぞ。その後で聞かせてくれ」

「「「「「はい!!!!!!」」」」」」

お読みいただきありがとうございます!

おもしろかった!と思っていただけた方は、ぜひ↓下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価を★★★★★に変えて頂けたら作者が飛び上がって喜びます!(面白かったと思って頂けたなら★★★★★、つまらなかったら★)


18話位の完結予定です。完結までお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

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