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第10話 スタンピード戦

□ダンジョン上層(---)


「おい!オークキングにエルダーウルフだ!どうするんだよ!?」

「おい、押すなよ!あんなの無理だ!」

「ジキルさん!どうする!」

「えっ?ジキルさん!?」


なんと強力なモンスターであるオークキングやエルダーウルフの登場に慌てる冒険者たちの後ろでこの作戦を指揮していたはずのジキルの姿が消えていた。


「逃げたのか?」

「マジかよ!?」

「おい!やばいぜ?向かってくる!」

「にっ、逃げろ!無理だ!」

「おいっ、押すな!」

「なんだ?なにがあったんだ!?」


冒険者たちも、襲ってくるオークキングとエルダーウルフを前に、そしてジキルがいなくなって騒ぎ出した後方の喧騒に、一気に混乱に陥った。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

「やめっ、やめろー」

「俺の腕が!?」

「ぎゃあああああ」

「くそ!よくもダビドを!!!」

「クレアさん!回復を!!」


そこについにエルダーウルフが冒険者の前衛部隊に襲い掛かった。

混乱していた冒険者たちに喰らいつく。

オークキングも大斧を振り回して突入してくる。


何人もの冒険者が蹴散らされる。

それに対して怒り、攻撃する者もいた。怯えて倒れ込むものも。後ろを向いて逃げようとするものも。

その全てがモンスターからの蹂躙の対象となる。



後衛の魔法使いたちが散発で攻撃魔法を使っているが、せいぜいダークウルフやオークを倒すのみ。

強者たる群れの長には届かないし、さらに上位であるエルダーウルフやオークキングの足は止まらない。

 

一部の冒険者はジキルに続けと言わんばかりに逃走してしまった。当然、クレアもだ。

この作戦を指揮すると豪語していた2人が真っ先にいなくなったのだ。

冒険者たちは怒りと恐怖で大混乱に陥ったのだった。


 

そんな混乱の中、オークキングは悠然と大斧を掲げる。

これから死んでいくであろう冒険者を見下ろし、下卑た愉悦を浮かべながら。

そして冒険者の心が恐怖に染まるのを待ってから、大斧を振り下ろした。




ガキィイイィィイイイイィィイイイイイン!!!!!!!!!!!!




しかし悲鳴は上がらなかった。


オークキングによる大量破壊を予期して目を逸らした者たちが突然の静寂を不思議に思って視線を戻した先には





「すまない。遅くなった」





純銀の美しい鎧をまとった聖女のごとき騎士……


半年間眠っていたはずのミシェールが盾でオークキングの大斧を防いでいる姿があった。




「ミッ、ミシェールさん????」

「ミシェールさんだ!?」

「まじか?」

「目覚めたのか?」

「すまないな。まずはこいつらを蹴散らそう」

「行ける!行けるぞ!」

 


「シューティングレイ!」

そしてミシェールが魔法を唱える。

無数の光の槍を放つ、聖属性魔法だ。


その槍は目の前にいたオークキングを撃ち抜き、さらに次々に周囲のモンスターを屠っていく。


「すっ、すげぇ……」

「俺たちもやるぞ!」

「あぁ、病み上がりのミシェールさんだけに任せるなんて、冒険者の名が廃るぜ!」


冒険者たちは勢いを盛り返し、モンスターを狩っていく。

なにせオークキングが消えたのが大きい。


恐怖の対象だったモンスターのうちの1体が消え、さらにもう1体をミシェールが続けて相手取っている。

図体が大きく、パワー型で動きは早くないオークキングとは違って、スピード型のエルダーウルフは光の槍を避けることに成功していた。


しかし、その状況を予測していたかのようにミシェールは光の槍を避けたエルダーウルフに斬りかかる。

エルダーウルフは牙で応戦し、そのまま戦闘に移行していた。



「エルダーウルフはミシェールさんに任せて俺たちは周りを狩るぞ!」

「みんな頑張れ!この戦い、勝てるぞ!」

「回復が足りないけど、気合だ!!!」

「おぉ!!」

ミシェール参戦によって、明らかに冒険者たちに気力が戻った。



□ダンジョン上層(シファ)


なにせミシェールはこの街のトップ冒険者パーティーで長らく盾として、そして純火力として活躍してきた冒険者だ。

"閃光"が罠にかかった際にも、落ちて行ったラクスは仕方ないにせよ、残ったジキルとクレアを守りながら下層から脱出してきた。

そこだけはジキルも真実を語っていた。

なにせ脱出まではミシェール1人の手柄と言っても過言ではないくらい活躍していたのだから。

しかし傷だらけだった彼女はそこで意識を失ってしまい、その後眠り続けた。

血を失いすぎた、回復が遅かった、魔力も尽きていた、状態異常攻撃も喰らっていたなど、いろんな理由が合わさった結果だったが、その時点ではわからなかった。

だからジキルも嘘はつけなかったんだろう。


そんなことを思い返しながら、私は回復魔法を唱える。


「オールヒール」


「!?」

「全体回復魔法?」

「クレアさん。戻ってきてくれたのか?」

「いや、違う……回復の効果が低い気がする……」

「じゃあ誰が?この街で他に全体回復が使える魔法使いなんかいたか?」


私の魔法の効果はまだクレアには届かない。

そこは……申し訳ない。

最近ようやく使えるようになったレベルなので……。

 

「すみません、効果は弱いのです……」

「シファ様???」

「えっ?なんだと?」

「シファ様。ここは戦地です。避難を!」


しかし、私の釈明には耳を貸さず、みんな危ないから逃げろと言ってきます。


「見ての通り私は魔法が使えます!私だって戦えます!」

「シファ。私が眠っていた間に、練習していたのか!?」

私に気付いたミシェールが叫んでいますが、その通りです。


ラクスさんが消えて、ミシェールが眠ったのはショックでした。

でも、私は領主の娘です。


できることをしなければなりません。

だから……



「助かる!シファ!引き続き定期的に回復を!他の魔法使いも、火力はいいから支援と回復に専念してくれ!」

「「「「「「はい!!!!」」」」」」 


ミシェールは私の表情を確認すると、ひとつ頷き、そして私も含めた指示をくれた。




私たちはこのままモンスターを殲滅し、地上に戻った。

お読みいただきありがとうございます!

おもしろかった!と思っていただけた方は、ぜひ↓下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価を★★★★★に変えて頂けたら作者が飛び上がって喜びます!(面白かったと思って頂けたなら★★★★★、つまらなかったら★)


18話位の完結予定です。完結までお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

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