第二章 出会い(2)
加代がその店に入ってきたのは、私が働き始めてから半年ほど経った頃だったと思う。彼女は面接を受けたその日から働き始め、長い黒髪を後ろで一つにまとめた姿で店長に連れられてやってきた。その日出勤していたアルバイトの中で一番の古株で、仕事も一通り覚えていた私が、加代の指導係に任命された。初めての指導役であったため、私も少し緊張していた。
加代は内向的な性格のようで、挨拶も小さな声で行い、大人しい印象を受けた。接客業が務まるのか、正直なところ最初は心配だった。店の仕事に慣れてもらうため、仕事を教えながら、加代のことを尋ねてみた。
加代は十七歳で、高校を中退していると言う。今は実家を出て、先週から高校の先輩である美香の家に居候しているらしい。美香は加代の二歳年上で、高校を卒業後、都内で一人暮らしを始め、表参道の洋服店で働いている。二人は同じ中学の出身で、そこで親しくなったという。しかし、美香が高校を卒業してからは、友人の少なかった加代は一人で過ごすことが多くなったようだ。今は事情があって実家を離れ、美香のワンルームの部屋に身を寄せているが、その部屋は狭いため、加代は自分で部屋を借りるためにお金を貯めようとしているらしい。
加代の初勤務の日は火曜日で、客足も少なかったため、仕事の説明をする時間が十分に取れ、私は加代に付きっきりで仕事を教えることができた。未成年である加代の勤務は二十二時までだった。
「じゃあ、今日はここまでにしようか。」私がそう告げると、初日の緊張が解けたのか、加代は「今日はありがとうございました」と元気よく答え、小さな笑顔を見せた。その後、店裏で片付けをしていると、帰宅する加代と偶然会った。
「大輔さん、お先に失礼します。」と彼女が声を掛けてきた。自己紹介の際、私は苗字しか名乗っていなかったはずだが、タイムカードでも見たのだろうか、名前で呼ばれた瞬間、少し戸惑った。しかし、それ以上に、十歳以上も年齢の離れた年下の子に名前で呼ばれるのは新鮮で、初めての指導係として加代との距離が縮まったように感じ、少し嬉しかった。




