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第一章 再会(7)
自宅の最寄り駅近くに小さなバーがある。
飲み足りない時は、顔見知りのマスターがいるこのバーで締めくくる。
絵美を見送ったこの夜も、なんとなくまっすぐに帰る気になれず、数杯飲んで帰ることにした。
少量の強い酒が、見送る私に振り返って手を振る絵美の姿が何度も思い出させた。
絵美に対しての恋愛感情なのだろうか。いやそうではなく、どこかで見た光景と重なっていたようだ。何か温かい気持ちに包まれるような気もした。
アジアの美術館に飾られた少年と少女の対の絵に登場する少女のような純真さを、絵美に重ねていたのかもしれない。
そんなことを思い返しながら、数杯のウイスキーを飲んだ。
締めくくりに飲んだ酒が私には適度な寝酒になったようで、その夜は熟睡できた。
清々しく目覚めた翌日、家を出る支度をしていると、先日、見かけたコンビニの女性が誰だったか鮮明に思い出された。
あれは、加代だ。
いや、加代である筈がないのだが、限りなく加代に似ていた。
洗面所の鏡の前に立って、私は一人口に出して呟いた。
「加代。」




