第一章 再会(6)
絵美とは、これまであまり恋愛の話をしたことがなかった。私は、彼女の趣味仲間であり、同時に会社の同僚として、共通の話題を持つ、月1度程度の話し相手程度だと思っているので、そういった話題を避けることが暗黙の了解だったのかもしれない。
しかし、彼女の沈んだ気持ちを少しでも軽くするために、何か別の話題を探した。ふと先日テレビで見た絵画のことを思い出した。
「この前、テレビで見たんだけど…どこの国かは忘れたけど、たぶんアジアの国だったかな。その国の美術館に飾ってある油絵がとても印象的だったよ。少年と少女の絵なんだけど、もともとは別々に描かれた作品だったらしい。でも、その美術館で二つの絵が並べられたとき、まるで少年と少女が惹かれ合っているように見えたんだ。それ以来、一緒に飾られるようになったんだって。とても心に残る絵だったよ。」
「どこの国の話だろう?」
絵美は少し首をかしげながら答えた。私も正確なことは覚えていなかったが、続けて話した。
「テレビでちらっと見ただけなんだけど、もちろん同じ作者なんだけど、書いた時期は違っていたらしい。別々に色んな人の手に渡っていたらしいけど、偶然手に入れた人が、美術館に飾ってあった少年の絵を思い出し、並べてみると、一対として描かれたよう合っていた。それから美術館で一緒に飾らえるようになったらしい。多分、その絵の中の二人は結ばれる運命にあったのかも知れない。」
絵美は私の言葉に引き込まれた様子で、記憶の中を探るようにして、いくつかの絵のイメージを挙げてみたが、結局その絵の正体は見つからなかった。
「その絵が気に入ったのは、少年と少女が純粋に好きって気持ちを表していて、そんな風に素直に好きって言えるのって素敵だなって思ったんだ。」
私がそう話すと、ふと恋愛の話に戻ってしまったことに気づき、少し焦ったが、絵美は遠くを見つめながら、静かに言った。
「恋愛よりも、ただ恋をする方が楽しくていいですね。私もまた、そんな恋ができるかなぁ。」




