第八章 手紙(4)
四月も半ばを過ぎた。加代へ贈る本は、本棚の一段を占めるようになり、加代に買った洋服は袖を通すこともないままクローゼットにしまわれている。
ひと月以上、加代からの手紙はなかった。
春物の洋服をクローゼットから出していると、奥の箱から、加代と知り合った定食屋のアルバイト仲間と居酒屋で撮った写真が見つかった。加代が働き始める前だったので、加代の姿はなかった。その写真の中に、加代と二人で撮ったシールプリントが紛れていた。正月に池袋を歩いた際、ゲームセンターで撮ったものだ。
久しぶりに加代の笑顔を見て、会えない、話せないことに耐えられなくなった。せめて、今何をしているかだけでも知りたいと思った。
私は我慢できずに、受話器を取って、加代の実家に電話をかけた。母親なら加代の居場所がわかると思ったのだ。
トゥルルルー。
呼び出し音が数回鳴った後、ガチャッと受話器を取る音がした。
「もしもし。」
女性の声がした。声色から母親だと分かった。
「もしもし。大変ご無沙汰しております。」
母親は私の声ですぐに私だと分かったようだった。
「その節は、加代が大変お世話になりました。」
「いえ、こちらこそ十分なことができず、申し訳ありません。」
「あなたのおかげで加代は本当に救われました。」
「いえ、とんでもないです。それで、加代さんは今どちらに?」
「・・・。」
母親は無言になった。そして、しばらくの沈黙の後、母親の小さな声が聞こえた。
「加代は、亡くなりました。」




