第八章 手紙(3)
「
大輔さん
お元気ですか?
先月、すごい雪が降りましたね。近所の農家さんのビニールハウスが壊れてしまいました。
それで今日、お手伝いの皆さんと一緒にビニールハウスを直しましたよ。
あと、収穫しているキャベツは、雪にも負けずに頑張って育っています。
知ってましたか?キャベツって、収穫しないで放置していると茎が伸びて花が咲くんですよ。意外とかわいい花なんですって。それに、花が咲く前のつぼみなら食べられるんですって。スタッフの人が「おひたしにしたキャベツのつぼみを食べると、春を感じる」って言っていました。スーパーでは売っていないので、農家ならではの楽しみですね。私も今年の春を楽しみにしています。
」
私は手紙を読みながら、加代が畑で土にまみれて働いている姿を想像していた。
「
昨日、ニンジンを植えました。急に温かくなったので、今年は早めに植えたそうです。ワラをかぶせるのは、保温と乾燥を防ぐためなんですって。女の子と同じで、ニンジンもお肌が弱いんですね。
夏前には収穫できるそうです。美味しいニンジンができたら送りますね。
追伸
そういえば、大輔さんの小指におみくじを結んだこと、気づきました?
」
加代がいなくなった日に、指に巻かれていた紙を思い出した。加代の置いていった書き置きに気を取られ、そのまま机の引き出しにしまっていたのだ。慌てて取り出すと、初詣で加代が引いた「大吉」のおみくじだった。私は、「おみくじを枝に結ぶのは、神様と縁が結ばれるように」と説明したことを思い出した。加代は、私との縁を結ぶためにおみくじを私に巻いていったのだろうか。
そんな加代の愛らしい行動を想像し、私は加代にとても会いたくなった。しかし、手紙には差出場所が書かれていない。私から連絡を取る術がないのだ。
加代からの便りを待つ日々は続いた。




